オラリオ中に、エルフの主神である『豊穣の神フレイ』が世界三大クエストの最後のクエストの戦いで、義弟のために戦死したことを明かされ、その犠牲で黒竜を倒したとしても
エルフたちは泣かずには居られなかった
それで世界は救われても、自分たちの居ないところで、誰も知られずにこの世を去ったも含め、誰もが泣き喚き、エルフたちはその壮絶ない真実を、受け止めることは簡単にはできなかった
だから
リヴェリアと言う。エルフの中で王族の種族であるハイエルフが、泣き出すエルフたちをダイダロス通りの広場にて、集めて慰めている。もちろんそこにはエイナ、レフィーヤやアリシアなど、有名なエルフたちもそこに集まっていた
「フレイ様は、義弟であるジークのために戦死なされた。仇はジークが取った。言うなればあのセルディアもジークが仇討ちしたことになる。世界を救うためだ。フレイ様は家族のために天に還られた。何度泣いてもこの事実からは逃れられないぞ」
「うう・・・・リヴェリア様は、平気なんですか?」
「仕方ないだろ。私だってこの事実をジークに告げられた時は悲しかった。だが・・・・フレイ様はそういうお方だった。義弟のために命を捨て、義弟がフレイの仇を取った。仇討ちしただけでも。マシと言うものだ。こればかりは・・・・受け入れることしか何もできない」
レフィーヤの質問にリヴェリアは流されることなく、受け入れている。彼女はその前から俺に告げられている。だから嘆くことはない
それに彼女だってハイエルフのプライドがある。況してや他のエルフたちに自分の泣き姿など見せるわけがない。今まで皆を引っ張ってきた彼女が、主神が去った事を告げられても、居ない者は居ないと彼女なりに受け入れている
でも、それでも聞き分けができないのが、エルフたちだ
行方不明で誰も手掛かりも無かったこの20年、居ないなりにやってきた。もしくはいつかどこかで会えるか、など希望をいくつか抱いていた
そしてその希望が、俺の現れと共に俺がフレイの義弟であることを知らせが来る。そして俺の故郷にフレイが居ると知る。いつか俺にフレイの元へ連れて行って貰いと願うエルフは多くだった。
だが
そのフレイがもう亡くなっていると知らせが来るとは思いもしなかった
それがあの隻眼の黒竜を倒すために犠牲になったなど
信じられない事実に、リヴェリアの励ましでも、あまりに受け入れることはできなかった
しかし
「何を泣き喚いている?まだフレイの戦死が受け入れられないのか?」
「ジークさん!?」
「「ジーク!?」」
「「「「「「「「義弟様!?」」」」」」」」」
「ジーク!?なぜここに!?その顔に巻いている包帯は!?まさか怪我を!?」
「リリルカに聞いて、まだエルフ達がフレイの真実を受け止めきれずに泣いていると聞いたから、義弟として慰めに来た。エルフではないのが申し訳ないがな。あとこれは怪我ではない」
そこで俺が広場の入り口から、ラフな格好で一人で現れる。もちろん顔の左半分と左腕は包帯で巻かれている。黒竜化した姿など見られないために
もちろんここへ来たのはエルフ達を馬鹿にしに来たわけではない
我が兄が居なくても生きよと、喝を入れに来た
「それで何を泣き喚く?お前達はフレイが行方不明になっても今まで普通に生きてきただろう?なぜそこまで嘆く?確かにもうフレイはこの世には居ない。だが・・・・・・・彼がこの世界のため、俺のため、この世に生きる者達のために、世界を滅ぼすかもしれない黒竜に、俺たちの盾となってくれた我が兄だぞ!!!」
「「「「「「「っ!?」」」」」」
「言うなら我らに生きる道を開いてくれた!なら我らはその命を貰った責任としてこれからも希望を持って生きるのが、我が兄フレイに報いる信仰であろう!!」
「ジーク・・・・」
「我が兄が授けたこの平和な下界を生き、我らがフレイに捧げる想いを、この命で証明せよ!我らがこれから生きることがフレイの最大の願い。ならば、我らがこの願いを叶えるために、嘆くことなく、まっすぐこの事実を受け入れ、前へ進むことが大事と思え。フレイを殺した黒竜は、俺が仇討ちした!!もはやフレイが亡くなったことに対して、嘆くのはやめよ!こんな哀れな姿を、天に居る我が兄に見せるな!!前を向け!!!」
「ジークさん・・・・」
「ジーク・・・・」
俺はフレイにこの命を貰った。その責任を、何度も命を削って無駄にしたことはあったが、それでもこの想いを伝えねばならない。
我が兄が、最後の最後まで、俺に何を残したのかを
常に苦しいことも受け入れなければ、人は強くなれない。それが我が兄を犠牲にしようとも、
いや
犠牲された人たちが、どんな想いで俺たちに繋げようとしているのか、それを忘れずに生きよ。残された者達はこう生きるしかできない。戦死した者達の悲願を叶えなければ報いることはできない
と、俺は皆の前にフレイの神器である『レーヴァテイン』を出して地面に刺す
「誓え!!この剣に!!お前達の意志をこの剣に見せよ!!我が兄が最後の最後に俺に託し、黒竜に仇討ちしたこの剣に、我が兄の魂が込められたこの剣に。誓え!!!お前達エルフの信仰を!!!この剣に示せ!!!」
「ジーク。そうか・・・お前はもうフレイ様の意志を繋いでいるのか、流石はあのお方の義弟だ」
「リヴェリア様!?」
「リヴェリア様が膝を着いて、誓いを!?」
リヴェリアは、もう俺がフレイの亡くした悲しみなど、とっくに乗り越えて、その命を貰った責任を背負って生きていると、その仇討ちした者の姿になっても生きようと足掻いた姿
それでも生きようと、否定できないこの現実を受け入れて生きることしかできないと、この俺の想いが、リヴェリアが先に届き
誰よりも先に、リヴェリアは杖を地面に置いて、レーヴァテインがフレイであるように、片足を地面に着き、両手を合わせて祈りを捧げる
「リヴェリア様・・・・・・うん!皆さんも!しましょう!」
「ジークの言う通りです!誓いましょう!」
「私たちはこの想いを継がないとなりません!」
「それがフレイ様の意志を受け継ぐ我らの使命です!」
「「「「「「「この意志!我らが繋げさせていただきます!!フレイ様!!!」」」」」
リヴェリアの誓う姿に続いて、レフィーヤやエイナやフィルヴィスやアリシアが、皆に声をかけて、リヴェリアに続こうと膝を着いて祈る
「フレイが去ったこの下界を生きよ!これが我らの!我が愛する主神が授けられた使命!!!」
「「「「「「「「その誓いをここに!!!」」」」」」」」」」
リヴェリアも含めて、全員が声を揃えて誓いを掲げた。全員が揃えてフレイに信仰をしている彼女達を見て思う
フレイ。今この光景を見ているなら、やはりお前の嫁が、ゲルズ姉さんがモンスターでも受け入れるはずだと思っている
なぜなら俺がヒューマンでも、彼女達は俺がフレイの家族であるなら受け入れると、俺の言葉に合わせて誓いを立てた。
それならお前もエルフの里を出る必要もないと思っている
今の彼女達はそれくらい変わって成長した
「さて、義弟としてお前達を慰めるのはここまでだ。リヴェリア、立て。お前に渡したい物がある」
「なんだ?」
全員が泣き止んだ事を確認した。だがここへ来たのはそれだけでない。リヴェリアにある物を渡そうとここへ来た。
彼女の手を取って立たせ、片方の手からパンドラ・ボックスの中を漁って、リヴェリアに渡す物を出す
「お前には前回色々助かった。これは『本来両腕に付けるために』フレイが俺に渡してくれた物だが、その片方をお前に渡したい」
「両腕に?」
「これだ」
俺が出したのは
「な!?ドラウプニル!?」
「今俺の右腕にもあるが、もう片方もフレイが左腕に付けるために貰ったのだが、俺は両方を付ける気はない。もう片方はお前にやりたい。その方がフレイの誓いが強くなるだろう?まあ・・・・お前だにしかやれないがな」
リヴェリアに渡したのは、フレイが俺に渡してくれた。黄金の腕輪『ドラウプニル』
本当は全部で9つあるのだが、その内の最後の腕輪だ。フレイは俺に両方を付けるつもりで二つ渡されたのだが、両方を付けるのは重りを持っているみたいで好ましくなく、片方だけで十分だと仕舞ってあったのだが、
前回彼女はファミリアの仲間を裏切ってまで俺を助けてくれた。彼女は本当に俺を愛している。だから俺もそれに答えねばならないと思いこれを渡す
「いいのか?フレイ様の黄金の腕輪を?私に?」
「お前が本当に俺を信じ、ファミリアの仲間を裏切ってまで、俺を助けてくれた。来年に予定している婚姻をするか、俺は本気で考えようと思う。お前の愛。しっかりと俺の心に響いた。お前が俺を想う気持ちに答えて、俺もお前にこれを授けたい。まあ・・・・ペアルックと言うことになる。受け取ってくれ」
「そうか・・・・ありがとうジーク。私はもうこんな年齢だが、それでも私はお前を諦めるつもりはないぞ?」
「ああ。別々のファミリアでもいい。この想いは決して嘘ではないのだから。大切にな」
「ああ」
今は答えられない。こんな状況でもあるため
リヴェリアも、今の俺の姿を見て、いつの日か俺がゼノスのような、怪物の菅谷なることは予想はしているだろう。それでも諦めないと、そんな事を言うまでもない程、彼女は理解して俺を望む
俺はそんな想いに答えられることはできないけど、今はこのお礼だけはしておきたい。この気持ちは嘘ではない。だからせめてものの気持ちで、彼女の右腕にドラウプニルを通す
「い、いいなあ・・・・」
「リヴェリア様だから付けるべき物です。羨ましがる気持ちはわかりますが、欲張ってはいけませんよ。レフィーヤ」
フレイからの所有物でもあるため、そのフレイのアクセサリーをリヴェリアだけに身に付けるのは、レフィーヤでも羨ましいと思っている
アリシアが必死にレフィーヤを横取りさせないように注意する。ハイエルフだからこそ身に付けるにふさわしいと思っている。でも羨ましがるのはレフィーヤだけではない。
他のエルフも、いくらハイエルフであるリヴェリでも、唯一残されたフレイの最後の所有物を身に付けるのはエルフにとって誇らしきこと。他のエルフでも羨ましい視線を送っている。フレイの最後の所有物であれば
もちろんこれが最後の一品であるため、残念ながら他にはやれない。俺が身に付けているのがあるが、これはお守りとして渡すわけにもいかない
すると
「ジーク・・・・・」
「っ、アイズか・・・・」
「アイズ・・・・・・・」
「アイズさん!?」
「どうしてここに!?」
「ジークがここに向かっているのを、さっき見掛けたから」
広場の門から、アイズが出てきた。先ほどここへ向かう俺を遠くで見つけて、ここで追いかけてきたようだ。
ここへ来た理由は知らないが、当然俺は彼女だけは敵だと判断している。俺は黒竜だからな。両親の仇を取りに来たのではないのかと、念のためにグラムを取り出し、アイズにグラムを向けて俺に近づかせないようにする
「一応聞くが、何しに来た?やっと俺を殺しに来たか?」
「ジーク!」
「そうじゃない!私はジークと話がしたいだけ!私はもう貴方の敵になりたくない」
「両親の仇が目の前に居るのにか?」
「ジーク!?アイズの両親を知っているのか!?」
「とある個人の事情でな。それで?」
「黒竜は・・・・・ジークが倒した。私が倒したかったけど、もうそれは叶わないってわかった。貴方は黒竜じゃない。貴方はジーク、私の・・・・・・・・・救えなかった人」
「ほお・・・・やっと理解ができたようだな」
アイズは、もう自分の復讐は消えたとやっと理解ができたようだ。
俺を人間として扱うらしく、もう彼女に敵意はないと理解して、俺はグラムをパンドラボックスにしまう。話がしたいと言うから、俺は彼女のところまで近づき、話を聞く
「それで?話とは?」
「ジーク・・・・・・私はこれからどうすればいい?」
「なんだ?そんなことをまた俺に聞くのか?常に一つだ」
「常に一つ?」
「これからもファミリアのために冒険者を続ける。それだけだ」
「っ・・・・・・」
復讐が終わった。確かにもう黒竜はこの世から消えた。もうアイズの復讐は無駄に終わった。奴に挑むことなく
だから復讐を無駄に終えたアイズは、これからどう生きようかわからない
そんな至極単純な事を理解できていないとなれば、やはりアイズはまだまだと言うことがよくわかった。
そんなものは常に一つだ。ファミリアのために戦い続ける
俺のように化け物になってもファミリアの冒険者で敵である怪物やイヴィルスを葬る。まだ俺たちの戦いは終わりではないと言うことだ
「俺は三日前、黒竜の力を使ってでもお前らを倒そうとした。常に俺を信じた者達のために、全て反逆した。全てはファミリアの家族のために、お前の家族は両親だけじゃない。フィン、ガレス、ベート、ティオナ、ティオネ、ロキ、ラウル達、そしてここに居る。リヴェリアやレフィーヤやアリシア。お前にはまだ守るべき家族と、やるべきことがあるんじゃないのか?」
「・・・・・・・・」
「お前はこれからも、ロキ・ファミリアの家族として、ロキ達のために生きろ。お前がまだ戦うべき敵はこの地下に居る。お前の生きる理由はたくさんあるぞ?」
「ジーク・・・・・・うん、私はみんなを守りたい」
「それでいい、お前の両親の分まで生きろ。お前の家族の仇討ちは俺が取らせてもらった。復讐に囚われてないで前へ向いて生きろ。それがお前の生きる理由だ」
「うん、私はこのファミリアで戦い続ける」
彼女の生きる理由はまだこれからだ
言うなら彼女の旅はまだこれから、やっと復讐に取り憑かれることなく前へ向けるのだ。成長の一歩前進と言ってもいいだろう。本来なら俺に言われるまでもなく動けば満点なんだが、こういう所はまだ子供らしいのは相変わらずだと、理解した
そんな事を話していると
「アイズ!」
「ここに居たのね。って・・・・ジーク!?」
「っ!ティオナ!」
「今度はティオナとティオネか」
今度は門の方からティオナとティオネが出てきた。おそらく突然居なくなったアイズを探しにここまで来たのだろう。
そしてティオネが俺の顔を見た途端睨み出した。言うまでもなく、以前俺がフィンを倒してしまったことが原因だろう。フィンが望んで戦ったことにしても、嫌いな俺に想い人を倒された時点で睨まれる自覚はしている。
そして偶然出会した俺に二人は話かけてくる
「ジーク、その包帯は?まだ怪我は治らないの?」
「怪我じゃない。包帯が巻いている部分だけ、黒竜の皮膚になっている。言うなら怪物化しているってことだ」
「っ!?ジークは・・・・・これからモンスターになっちゃうの?」
「なっても、竜人の姿になるだけだろう。人間としての形はそのままだ。だがいずれ、竜の翼が生える日がくるだろう。尻尾もな」
「ジーク・・・・私は!そんなになっても・・ぶ!?」
「それ以上言うな。あまり他のファミリアに干渉するな。フィンにどやされたと思うが、あまり俺に関係を入れてくるな」
「そうよティオナ!そいつは別のファミリアよ!あんまり関わったりしないでよ!」
「ティオネ!まだ怒っているの!?フィンだって言ったじゃん。『あれは自分が挑みたかっただけだから、彼を恨まないように』って、ジークを敵にしないようにって言ったじゃん!」
「あいつがそんな事を言ったのか?」
「うん!ジークだってクノッソスを入りやすくするために、鍵を四つも私たちにあげたんでしょ!ジークは別のファミリアなのに私たちのためにしてくれたんでしょ!?」
「助けてくれたからな」
フィンはどうやら、今後からあまりもう俺に干渉しないようにと決めたらしい。やっと俺との決別を選んだのか、これからもうあまり俺に関係を入れないようするようだ
やっと俺を抜きでやり遂げるようだと、三日前の俺の戦いの意味を理解しているようだ。これで俺もロキ達と関わりを入れる事なく、自分のファミリアに専念できる
だが、ティオナは別だ
「ティオナ。これを首に」
「ん?小さな・・・・・笛?」
「これを鳴らせば、俺がいつでもそこへ駆けつける。三日前、お前はティオネを邪魔してくれたおかげで、俺たちの目的は達成しやすくなった。そのお礼として受け取ってくれ。何かあった時は鳴らせ。俺がお前を助ける。ただし使用回数3回までだ」
「本当に!?ありがとう!!」
「ちょ!?ティオナ!?ピンチになったらそいつからの助けを呼ぶ気!?」
「別にお前を助けるつもりはない。助けるのはあくまでティオナだけだ。まあ本人が他も助けろと言うなら話は別だがな」
三日前、ティオナが姉であるティオネを足止めしてくれたおかげで、目標は順調に成し遂げた
そのお礼として、『ミニギャラルホルン』を渡す
俺の作ったマジックアイテムで、鳴らした場所を俺の感知で特定する。俺は鳴らした場所へ向かい。ティオナを助けると約束をする
「ジーク。私は・・・・・団長の望みであんたと戦ったにしても、やっぱりあんたの事は嫌いだわ」
「だからティオネ!」
「よせティオナ。恨んで当然だと思っている。例え本人が望んだことにしても・・・・想い人がやられる姿を見れば、想いを寄せる人物にとって怒って当然だろう」
「自覚はあるのね」
「来るならいつでもかかって来い」
「それはできないわ。団長の指示だから」
「そうか・・・・」
ティオネが俺に怒ることに関しては否定はしない
あそこまで追い詰めたのだ。そんな姿を見ればティオネが怒るのは予想していたこと、ただフィンの言う事を聞いて俺を殺しにかからないだけ、ちゃんと理解力はあるようだ。普段からこれくらいあるとフィンも苦労しないだろうと俺は思う
「お前がその調子なら・・・・他の奴らも?ティオナ?」
「ううん。フィンは今回の件でジークと戦えて良かったと言っていたし、ロキもガレスもクノッソスの鍵を四つも渡してくれたこともあって悪いことは言ってないよ。ラウルたちはともかく・・・アキとベートが・・・・」
「あの二人が?」
「アキはジークに思い通りにやられた事を少し怒ってた。ベートは・・・・言うまでもないと思うけど・・・・・ジークじゃなくてフィンにやられた事をイラついて、でもこのままじゃあジークにもフィンにも及ばないって言って、怪我がまだ治ってないのに今日もダンジョンに行っているよ」
「まあアナキティとベートだからな、俺はあの二人と仲良いわけじゃないからな」
むしろ俺はアナキティとベートとは一番仲が悪い方だ
ベートと仲が悪いのはベルたちも知っていると思うが、俺がアナキティとあまりに仲が悪いと知っているのはロキ・ファミリア内だけだろう。まあその理由は年齢差と言うか、アナキティの方が俺より歳が上なのだが、俺が年下で器用だからなのか、なんだかんだで俺を目の敵にしていた。単に年下なのに自分よりもなんでもできて、年上なのに自分が出来る限りなことしかできない自分に、嫌気を指していた
凡人と天才・・・・そう呼ぶのだろうか
年下の俺が優れていて、年上のアナキティが劣っている。ただそれだけで二年前も俺に嫌悪感を出し、俺と仲が良い訳ではないことは明白だった。ベートやティオネのように暴言を言い合う程ではないのだが、お互い必要ない喋りはしないで、距離を置いとくと言った所だ。いつ俺と自分を比較するようになったのかは知らないが、関係をなるべく入れたくない。そんな感じで俺とアナキティは仲は良くはない方だ
年下で部下だった当時の俺が、自分より優れている。それが自分のファミリアに居る、そんなことなんて気にする女ではないのだが、どうしても俺の目の敵にしたいようだ
無論、俺は『勝手にしろ』としか言わない
ベートのことに関しては、予想済みで何も言う気はない。言わなくてもわかるしな。あいつのすることなど
「そろそろ行く。またなリヴェリア。お前たちも。ティオナ三回までだからな」
「ああ」
「はい。お体を大事にしてください」
「うん、また」
「うん!三回まで!」
「そうね、また会うことになりそうだしね」
そう言って俺はリヴェリア達の前から去る。
ティオナからフィンが俺との決別を果たしたと聞くが、俺自身がティオナとリヴェリアに関係を入れている時点で、もう決別なんてできてないと思っている
だが助けてくれたのは事実
礼の一つもなければ、流石に人として情けないと思い、リヴェリアとティオナに見合う礼をした。ティオナが変な時に応援を掛けられそうだが、その時はその時だと、応じる以外俺の選択はない
ティオナの言う通り、まだこれからも関わりがあるだろうと思い、決別は二度と叶わないと、俺はフィンに言った『決別をしろ』なんて言うべきではないと、今になって俺はアホな事を言ったなと自覚をした
そして俺が次に向かった先は
「今回はお前の娘を借りて悪かった。ミア」
「ま、私もあんたの事実には驚いたけどね、体の方は?」
「痛みはない。だが・・・・・見ればわかると思うが半分くらいは人間の姿はしていない」
俺が次に寄ったのは、『豊饒の女主人』
の店長であるミアの謝罪。
今回でシルやリュー達を総出で借りた。更にほとんどの冒険者を敵に回したせいで、今日はあまりに客が少ない。まだ昼だからだと思うが、三日前の事件でリュー達はたくさんの冒険者を相手にし、俺を助けるためだからと冒険者を殲滅したが、ギルドにも用心するべき人物だと通報され、ここの店員だと皆が知っているから、ほとんどの客がここで酒を飲もうとすることは、ルノア達の恐ろしさを知って立ち寄んなくなった
「悪かった。店の評判を落としただけでなく、お前の愛娘を借りてしまった事を」
「ほとんどあの娘たちが勝手にした事だしね、シルも、また私の眼を盗んで勝手にルノア達まで手伝わせたんだ。全部あの子の勝手だから仕方ないさ。まあ・・・・・その分の働きを今日からして貰うけどね!」
「店自体もあまり忙しくなさそうだな。今客はあまり居ないと見る」
「それはあんたが居るからだよ」
「だろうな」
全部シル達のしたい事だからと、ミア自身はそれについての文句はないようだ。伊達にシル達の母を名乗っているだけではないようだ。娘のために母が背負うか、だがその娘達はサボった分を補うために、今日も奥で忙しそうに働いている、俺が来たのにシルでも来ない
客は居るには居るが、俺が居るせいで、皆恐れいるのか、酒を飲むにしても、ずっとチラチラとこっちを見ていて、集中できずに食事ができないようだ
俺もあまり迷惑をかけないと、用件を言ってさっさと去ろうと思う
「お前の娘を五人借りたんだ。対価は?」
「五人分で、五週間ここで働きな。もちろんキッチンだ。あんたはその状態でしばらくはダンジョン休みだろう?」
「そういう指示になっているからな」
シル達が勝手にした事とはいえ、借りたのは事実。その分の対価を受ける。それで五週間ここでキッチンで働く条件で成立
リリルカから、俺がこの状態であるなら、俺だけダンジョン探索はしばらく禁止だとヘスティアからの伝言指示らしい。ダンジョン探索で俺が黒竜の体に悪化するのを早めないようにするためだとリリルカから聞いた
まあ、それなら休む暇が省けたと、俺も了承する
それと
「ミア。これを」
「ん?なんだいこの金は?」
「50万ヴァリス。今この店を利用している者達の分だ」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
「なんの真似だい?」
「彼らは三日前、ギルドに俺の指名手配を取り下げるよう抗議をしてくれた者達だ。礼はしないとな。礼を言う、俺の後ろに居るモルド・ラトロー」
「俺はまだ・・・・・・・・・お前を英雄だと思っている」
「そうか、何にしてもすまないな」
フィンからもリリルカからも全て聞いた。三日前に俺たちがフィン達と戦っている最中に、俺の指名手配を取り下げるように抗議した市民と冒険者達の中に、
オグマ・ファミリアの団員。モルド・ラトローが居たと言う事。
その他にも、抗議したと思われるそれらしいメンバーがここに居ると思い、俺はせめてもののお礼に酒代を多めに渡しておく
モルド・ラトローはいつから俺の味方をするようになったのか、俺をまだ英雄だと扱っているようだ
「どう思うかは自由だ。俺は何も言わない。敵にならない限りはな。そろそろホームに戻る。また一人でブラつくと今居ないヘスティアに怒られそうだからな」
「それはいいけど、あんたのお気に入りがそこに居るよ?」
「ん?・・・シル」
「ジーク・・・・」
目覚めたばかりで、こんな姿で外を彷徨くのは、流石に仲間にも今居ないヘスティアにも心配されると思って帰るのだが、
奥でシルが待っていた
俺が居ることに気づいたのか、こっちまでやってきた。もちろん今の姿を見て心配でいられない理由である
「体は大丈夫?」
「痛みはない。ただ怪物化が激しくなっているだけだ」
「ジーク・・・・私は・・・」
「もう何も言わないでくれ。君の言いたいことはもうわかる。そしてこれからどうなるかもわかっているなら、何も口に出さなくていい」
「でも・・・・私は・・・・」
「君の気持ちは俺に届いている。でも俺の進んだこの道に引き返すことはできない。どうか俺の安静を願ってくれ」
「うん。私はいつでもジークの味方だから」
「ああ、ありがとう。君の気持ちが俺に届く限りは怒りに縛られない」
俺は彼女が何が言いたいのかなんて、全部お見通し、そして何も言わなくても彼女がいつでも俺を助けてくれると信じている。問題は俺がこれから心配されない行動をしなければならないと言う報いがある
しばらくはダンジョン探索はベル達が代わりに行くことになるため、また少しだけ長い休みを貰うことになるから問題ないだろう
彼女が居る限り、俺は黒竜になっても怒りは抑えられる
俺は黒竜に意志を取られるわけではない。と言うよりもう奴の意志は俺の体にはない。奴は完全に俺の意志に喰われた。だがその力を使うと、憎む気持ちが強くなってしまう。かつて黒竜が散々人に攻撃をされ、人間に憎しみを深く抱いたから、俺にもその憎しみを覚えてしまったのだろう
今は問題ない。体の半分は奴の体へと変色しているが、それでも彼女の想いが今俺に向けられている間だけは
これから俺は、どれだけの時間を費やして、この姿が完全に怪物になるかは不明だがな。
治す方法もないわけだからな
そして夜を迎え、久しくホームで全員集まって夕食をする
その時は神会から帰ってきたヘスティアも居る
「ジーク君。無事に起きてよかったよ」
「あれだけ魔術を使えば、俺も流石に耐えきれない。そして夕食を取る前に君に聞きたい。神会で話した内容について」
「うん、結構長引いてね」
ヘスティアは俺が無事に起きた事を喜ぶが、そんなことよりも食事を取る前に神会で何を話したのかを聞く。もちろん俺が黒竜に変身したことについてだと思うが、
果たして内容は
「君が黒竜ファフニールを倒したことについては、もちろん他の神々は驚いたけど、君を罪人として扱うことはないよ。君はその力でまたこの街を守ったわけだしね。仮にあったとしても君に殺されるのがオチだからね。君は僕らに対抗できるレアスキルを持っているわけだしね」
「あのレアスキルを他の神々には言わないんだな?」
「言うわけないさ。あれは・・・・話す
わけにはいかない力だからね」
「そうだろうな。俺がもっと危険人物扱いされるだろうな」
「今後は君を敵に回さないようにってことで、君の処遇の話は終わったよ」
「そうか、それで他は?」
「一応ミアハとディアンケヒトに君の体を治せるかを聞いてみたけど、今まで人間がモンスターになる事例なんてないから、残念だけど治せない。でも・・・・・・治す気ないよね?」
「覚悟の上だからな」
「あとは二つ名の話で終わったよ」
「対して重大な罰は出さなかったんだな、あれだけのことをしておいて、意外と後始末が楽になったな」
俺が今回の件でダイダロス通りを大暴れにして壊した、かなり罰を貰うかと思ったが、免れたようだ
黒竜の力を使って街を守った。一応まだ人間として扱ってくれるらしく、人権自体はなんとか守られたようだ。
でもまだこの街で、俺を怪物扱いしている。今後は今まで通りのような平和な生活は送れそうに無いかもしれない
また何かのトラブルに巻き込まれて、何かの戦いをすることになる
と、今後の事を想像する
「あとジーク君と、ベル君と、ヴェルフ君の二つ名が決まったよ」
「またか?」
「え!?僕のですか!?」
「お!俺の二つ名が遂に来たか!」
「まあヴェルフはわかるが、まさかベルもとはな・・・・・・アイズと戦って、レベル4になったからだろうな」
神会で二つ名が、俺とベルとヴェルフが決まった。
俺はおそらく黒龍の力を物にしたから、ランクアップはしていないが、ヴェルフは前のダンジョンでやっとレベル2になった
そしてベルは
レベル4になった
おそらくアイズと激戦を繰り広げた結果であろう、勝ったわけではないが、それでも新たな強さを得たのは事実。もちろんレアスキルのリアリス・フローゼのおかげでもある。14歳でレベル1からレベル4まで、俺が言うのもなんだが、すごい奴だと思っている。それに応じて二つ名が用意されたのだろう
これでいつの日かするアステリオスの戦いに挑むべき対抗する力をまた一つ手にしたという事だ
彼だってまた彼に勝ちたいだろうと思うしな
「それでベルの二つ名は?」
「ベル君の二つ名は・・・・・」
「僕の二つ名は!」
ワクワクしながら二つ名の名前を期待するベル。前回もリトル・ルーキーと言う名前もあまり納得してなかったからな
今度こそ、彼の気に入る二つ名になるのか
そしてヘスティアは告げる
「ラビット・フット!!!」
「「「え?」」」
「ラ・・・・・・ラビット・フット!?」
「白兎の脚。と言う意味か・・・」
ベルの新しい二つ名は『ラビット・フット』
白兎の脚と言う意味、どう言う意味でそんな二つ名にしたのかは知らないが、残念ながらベルは神々の中では『白兎』と言う可愛い扱いされているようだ。
白兎の脚ってことは、兎のように脚が早いと言う意味だろうか?どんな意味でそんな名前をしたのかは知らないが、どうやらベルは白兎としてこれからも扱うのではないかと思った
「これはもしかして君が?」
「うん!良い名前でしょ!」
「「「はい!とっても可愛いです!」」」
「どうしてですか神様〜〜〜〜〜!!!」
「ま、どんまい・・・・・」
「ベル。これからも神々に白兎として扱われる事を覚悟して置いた方がいいぞ?」
「それどう言う意味ですか!?ジークさん!?」
ま、俺もベルは男とは思えないウサギのような可愛さがあると思った。おそらくベルは性格は父親似で。顔は母親似で、可愛い顔をしているからと、いつまでも子供扱いされるのだろう。ま、まだ14歳だしな
「それでヘスティア様!俺は!」
「あ、ヴェルフ君はだね!」
次はヴェルフ。レベル2になっから初の二つ名。一体なんの名前にされたのか
ベルと同じ変な名前だったら最悪かもしれないが、果たして
「イグニス!!!」
「え?」
「「「おお!!」」」
「イグニス?」
「『不冷』と言う意味だな。この二つ名は・・・・・もしかしてヘファイストスが?」
「うん!ヘファイストスがどうしてもこの名前にしたいだって!」
「なんでだよ!ヘファイストス様〜〜〜!!」
「それはそうですよ。ヘファイストス様に込める熱い炎は、いつでも冷めませんよねヴェルフ様?」
「畜生め!」
ヴェルフの二つ名は『イグニス』
おそらくヴェルフの両親と向き合った後に、ヘファイストスに熱い告白をした言葉を元にした二つ名だろう。
あまりにヴェルフ本人は恥ずかしさに、料理が置かれたテーブルに顔を付けて愚痴る、想い人が考えた二つ名なため、文句は言えずにこの恥ずかしいと思われる?名前で受け入れるヴェルフ
「それで最後にジーク君の名前なんだけど」
「二人より、酷い名前になったか?」
最後は俺の二つ名だが、もちろん黒竜に変身したこともあるから、二人より恥ずかしいではなく、もっと悪口に近い名前になったのではないかと想像する
が
「酷い名前にはならなかったけど、候補がいっぱいあってね」
「候補?例えばフレイヤが考えた『ヴァナディース・オーズ』とかか?」
「え!?よくわかったね?」
「フレイヤが最近俺に眼をつけ始めているからな。大体想像が付くんだ。君だって最近そう思うんじゃないのか?」
「まあね。君があの黒竜を討伐して、その力を得たなら、欲しがってもおかしくないって僕も思うよ」
候補がいっぱいあると言った。ならその中には当然フレイヤの考えた名前もあるとすぐに想定していた
ヘスティアだってわかっている。
天界で余程自由やりたい放題な事をしていたのを知っているのか、ヘスティアもフレイヤの性格をわかっているようだ。本人を前にして苦手だと言うくらいだ。フレイヤが俺を狙うのは時間の問題だな
「あと、ウラノスから『黒き魔王』と言う意味で、『ファーブニル・ジズ』って言う二つ名を君に付けたいと言っていたよ」
「ウラノスが神会に参加したのか?」
「珍しいですね。ギルドの主神が神会に参加するなんて?」
「それだけ君の事実は重要な話だからね。ウラノスも参加せざるを得ないんだよ」
まさかウラノスが神会に参加するとは思わなかった。
それがまさか魔王と言う二つ名を付けるとは、ヘスティアが言うには、これ以上市民の味方をしたくないと、俺が人間の愚かさを知っているからと、もう頼れない二つ名にして、俺が市民に恐喝する立場を作らせようと、もう信用できる者にしか味方にしないと分からせるためにその二つ名にしたと言っていた
「それで候補が多くあったとして・・・何が決まった?」
「それはね・・・・・・」
結局何が決まったのか、結論を聞いてみる。酷く無いというから、果たしてどんな二つ名になるか
「君の二つ名は・・・・・『ヘラクレス』!!!」
「ヘラクレス・・・・か」
「「僕(俺)たちより良いじゃないですか!!?」
「「「ヘラクレス!?」」」
『『おめでとうございます!主!!』』
「不屈の戦士って意味だよ」
ヘラクレス。不屈の戦士と言う意味
まさかまた戦士の二つ名を付けられるとは、俺は戦士の血統でもあるが、ここでも戦士の二つ名が付けられるとは思いもしなかった
それで誰がその名前を提案したのか聞く
「それは誰が?」
「もちろん僕だよ!だってみんなめちゃくちゃな二つ名ばかり付けるんだもん!だから僕が自ら付けた!」
「どういう意味でそんな名前を?」
「黒竜って、僕がまだ下界に降りる前に、あのゼウスとヘラがここオラリオに居たみたいだけど、相当強いファミリアだったんだよね?」
「ああ。まだ誰も到達していないレベル8や9も居た」
「でも黒竜にはそのゼウスとヘラの眷属でも勝てなかった。でも君はレアスキルで君は勝った。フレイの想いを継いで。そんな君に、不屈の戦士と言う意味でヘラクレスって言う二つ名を送りたかったんだ。どんなことでも諦めない、不屈の精神を持っているキミにね」
「僕より良いじゃないですか!?」
「そうだぞ!!なんで俺とベルはこんな恥ずかしい二つ名なんだ!?」
「いいじゃないですか、私は好きですよ?お二人の二つ名も?」
「自分もです!」
「リリもです!ヴェルフ様の二つ名は特にですね・・」
「嬉しくないよ!」
「俺もだ!」
「・・・・・・・・」
「なんだか・・・久しぶりの平和だね?」
「ああ。もう俺の正体を知られたら、こんな平和なんて送れないと思った」
今二つ名を伝えられてから、その内容で面白く盛り上がり、皆笑いながらその話をする姿が、なんとも平和らしい
もちろん俺は笑っては居ないが、それでもそんな平穏な時間をまた過ごせるとは思わなかった
まさか俺の正体を知られてなお、それでも乗り越えて平和を勝ち取るなど、よく生き残れたものだ
「リリルカ?そういえば俺が用意した金はアスフィたちにやったか?」
「はい。泣いて喜んでいましたよ?ヘルメス・ファミリアの皆さん」
「それはそうだろうな。全部ヘルメスのせいだからな」
「でもその肝心のヘルメス様が今日旅だったとか」
「ん?どういうことだ?」
「それは僕が説明するよ。それを説明する前にジーク君に言っておかなきゃいけない事があるんだけど、君が黒竜を倒した事を、ヘルメスはまた世界に広めるつもりだよ。『黒竜を倒した、ゼウスとヘラを超えた英雄ヘラクレス』としてね?」
「なんだ?せっかく俺の英雄と言う名誉がなくなった事で自由になれたと思ったのに、またしても英雄にされるのか?あいつはそんなに英雄を仕立てなければこの世界は保たないと、勘違いしているのではないのか?」
「旅に出た理由のその一つで、もう一つはこの事をアフロディーテやアルテミスとかに、オラリオに居ない主神たちに伝達するためにも、もちろんフレイがこの下界を去ったこともね」
「そうか、あいつは伝令の神でもあるからな、そこは納得だが、俺を今度は『英雄ヘラクレス』として世界に広めるのはどうでもいいな」
本当に俺にとっては英雄は『世界の使い捨て』でしかないと思っている
化け物扱いされることに関しては、人において負い目にしかならないかもしれないが、変に英雄として仕立てられると、誰もが俺に救って貰おうと勘違いするバカが出てくる。だから市民はいつでも弱者だ。自分の立場も考えず、自分には何もできないことを言い訳に誰かに守ってもらっているのに、それができなかった瞬間非難してくるのだ。
だから俺が彼らを下等生物だと言うのは、偏見だけで態度を示すと言う愚かさがあるからだ
全員ではなかったにしても、俺はそれでも自分に関係のある人間以外は守りたくない
いつ裏切るかわからないからな。自分のことしか考えないのか、それを常識にしたらどうなるか、その愚かさを気づかないのが、それが人間の本質だ
だからヘルメスが英雄と仕立てることに関して、どうでもいいと思う
アルテミスやアフロディーテに伝達するのは構わない。それは俺もしてくれて助かると思うし、俺も手紙を書く文を減らせる。
だが英雄として扱われるのは面倒だ。外ではそう扱われるが、俺の本性を見た市民の半分は俺を怪物として非難する者も居る。オラリオで英雄扱いされることはないだろうと思うが
それでも今回の件で、もう市民に本性を出した俺は味方をしないようにし、英雄としての立場を放棄する
まあ、それは後にして
「ヘスティア?もうこれで俺の睡眠中や不在中の知らせは無いな?」
「これで全部だよ」
もうそろそろ食事にしないとせっかくの料理が冷めてしまうため、そろそろこれからのファミリア活動を全員伝える
「皆聞け。どうやら俺は英雄としての名誉はまだ続くようだ。だが、俺の正体知られてもヘスティア・ファミリアの活動はこれからだ。俺たちが終わったわけじゃない。それだけは覚悟して置いてくれ。俺たちはこれからまた今回以上の難解に立ち向かうことになる」
「そうですね」
「ああ」
「リリも頑張ります」
「はい!」
「いつでも!」
「うん、僕らはこれからだ!」
「今回の件、黙っていて悪かった。誰にでも言いたくない秘密があるものでな。この際ハッキリ言うが、俺には『まだ秘密』がある」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「もちろんそれはウンディーネとノームたちは知っている」
『はい』
『申し訳ありませんが、こればかりは・・・』
「二人がまだここに居続けるのはそれに関係する。もちろんそれに関しても言えない。だが・・・いずれわかる時が来る。秘密と言うのはそういうものだ。それにリリルカがなんだかんだで俺のその『秘密に気づいてる』と思うが」
「確信はありませんので、リリも深くは聞きません」
「とにかく誰にも秘密があると言うことで、聞かないで欲しい。例えファミリアの仲間同士と言えども、それでも聞かれたくない内容がある」
いずれわかるのなら言ってしまえばいいと思うが、それでも言いたくない。そうなったらファミリアの立場がとんでもないことになるからだ。
もちろんそれは『俺の結婚』にも関係している。
とにかく言いたくない。ウンディーネもノームもここに居続ける理由もその一つである。俺は今の立場で居たいがために俺はそれを言わない
「こう見えて俺もワガママなところがあるのを承知して欲しい。だから俺はこの身に付けた黒竜の力を我が物にするために、これから少しダンジョンはお前たちに任せたい。その間に俺は少し勉強して試したり、シルの所でしばらくだけバイトする。ミッションの場合は俺も出る。その事だけは承知して欲しい。まだまだ我らはこれからだ。頑張るとしよう!」
『『「「「「「「はい(ああ)(うん)!!!」」」」」」』』
「では食事にしよう!。これからも我らは高みを目指して!平和を望んで!」
それだけを伝えて食事にありつける
今度ばかりはかなりピンチな事でもあった。まさかオラリオ街ほとんどのファミリアを相手にすると言うなんとも無謀な作戦でもあった
だがこうして乗り越えた。協力しあった結果だ
そしてヘルメスが要らんことしたせいで、またも俺は英雄扱いされる英雄譚を作られて世界に通達される
その英雄譚の名は『黒竜殺しのヘラクレス』
兄であるフレイの復讐のために、遠い北の彼方で、ゼウスとヘラのファミリアが倒せなかった黒竜を殺したと、また英雄譚にして世界に通達された。
皆の知らずの事とはいえど、これで『三大クエスト』と言う冒険者が為すべき最大依頼を全て終えた。残るはダンジョンの謎だけ、黒竜の存在はもう消えてなくなった。エルフが信仰するフレイを犠牲にした事で、冒険者の目的は一つとなった
それでも俺たちは旅はまだこれから
これでもまだこれからだ、今度は何が来るのか分からない。他の派閥か、それともイヴィルスか、イレギュラーなモンスターか
俺たちが生きている限り、強さを求めて、平和を求めて前へ進むのみ
そう、
それだけ
それだけでいい。今は
俺は今後黒竜に浸食された部分を、少し俺が故郷から持ってきた辞書などで勉強し、ここに居続けるウンディーネとノームと共に、この力をコントロールできるように修行に入る。
ベルは、次の戦いに備えて、ダンジョンで強くなろうと励む。彼には『アステリオス』と言う。初めて彼にライバルができたのだ。その彼に再び挑むために上へと目指した
ヴェルフは、今回ガレス戦で、これでもまだ魔剣は砕けてしまうと、ダンジョンに潜る以外は鍛冶部屋に引き篭もって砕けない魔剣を制作を続ける。
リリルカも、もっとサポーターとして上手くやれないのかと、最近になってミアハ・ファミリアのダフネとカサンドラに色々教えて貰っている。彼女も力になりたいと、彼女も強くなろうとしている
命は、桜花やあの椿に、刀の捌きをより上手くなろうと二人を相手に修行する事が多くある。今回ガレスに彼女は敗北しかけた。レベルでも勝てないとわかっていても、それでも彼を倒せるくらいの力が欲しいと、今までの修行よりもさらに過酷にして前へと進む
春姫は、ウチデノコヅチを更に複数の人にできるようにアイシャたちに、ヘルメス・ファミリアからたくさん魔道士に必要な魔道書を貰ったり、それができるか彼女の力を借りて強くなろうとしている
ヘスティアもやっと主神らしくなったのか、俺の代わりにエイナに報告書を出しに行ったり、ゼノスたちが問題ないか、随時報告や情報収集など、彼女も成長しているのか、ファミリアのためにも働いてる。バイト先に関しては店主がまだ俺の味方で居るようで、幸いにもバイトは継続している
こう言った感じで、俺たちも一歩前進だ
そう、生きると言うのはこういうこと。これでいいはずだ
今は
絶望の黒竜編 END
食事を終えて、風呂に入浴後、俺は自室に戻る事なく、団長室で書類仕事・・・ではなく、本を読んでいる
もちろん俺は眠れない。あれだけ黒竜使ったせいで、また睡眠が取れなくなっている。全然眠れないと言うわけではないため、睡眠が取れるかもしれないため、寝落ちができるか試すために、わざわざベットではなくソファーの上で、横になって本を読む
すると
「ジークさん?いいですか?」
「ベルか?珍しいな?お前がこんな遅くに来るなんて?」
「はい。やはり眠れませんか?」
「まあな、それでどうかしたのか?」
「あの・・・・・こんな夜更けにこんなことを相談するのはアレかもしれませんけど・・・・僕はジークさんの役に立ってますか?」
「急な質問だな、副団長として不甲斐なさを感じたのか?」
「副団長としてではなく・・・・僕自身として・・・」
「そうか、生憎こんな厳しいことをしか伝えられない、お前はまだ子供だ。不甲斐なさがあって当然だ」
「っ!す、すみません」
「謝るな。それは恥じる事ではない。常に誰にでもあるものだ」
「そう・・・・ですか」
「ベル。これから何が起きても諦めるな。今お前が自分に不甲斐なさがあると思うのなら、まずはどんなことにも対象できる我慢強さが必要だ」
「我慢強さ?」
「悪いことに屈することなく、希望を諦めないで追いかけろ、今お前に必要なのはそれだ」
「希望を諦めないで・・・追いかける」
「いずれその言葉の意味がわかる。もう寝ろ。明日もお前達はダンジョンへ行くんだ。寝不足で油断を作ったら話にならないからな。行け」
「は、はい!ありがとうございました!」
ベルにそれだけを伝えて自室に戻らせた
あいつも男だ。まだ14歳にしても、強くあろうと弱さを克服しようとしている。英雄になるための道が物凄く残酷に険しいと、今回で知ったあの子は、それでも英雄を目指す
だが、現実の前ではそれが難しく、険しいと知った途端、彼は道筋を揺らぐことに思い始めた
「確かに・・・・・・『お前の孫』とは思えない程まだ弱い。だが・・・・・・・あいつは『お前』でも驚かせるぞ。全ての結末に抗おうと、『お前の空』を駆け登ろうとする。そう、まだ小さな英雄だ」
と、今俺が読んでいる本の、今この場に居ない作者に、俺はベルの凄さを心の中で呟く
お前がベルの祖父だと?とんだ笑い話だ
つくづく『お前の孫』や『お前の妹が残した子』は俺に関わりを入れてくる
と、運命なのかと疑う愚痴を俺は心に収めておく
来年一月投稿予定
オリンピア編
来年もよろしくお願いします