崖を越えて、俺たちは神殿と思われる大きな柱のある建物へと辿り着いた。古い文字が描かれた天井と柱がある。
更に奥から、『神の力』と思われる源を感じる。
そしてその原因こそ
「これが『天の炎』です」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「ほう、これがか」
「はい。この天の炎が、我々が祀る心臓でもあります」
エトスに案内された場所
『天の炎の間』と言う。地下に奉納された天の炎がしっかりある。彼らの拠点、オリンピアの中心と言ってもいいだろう。建造物の中で一番古いと言ってもいいだろう
そしてその燃え上がる天の炎から紫色の陽気を放っている。穢れているのは間違いないだろう。これがレアの言っていた汚れ、これをなんとかするのは止め難しく神でもなんともできないものだろう
でも、この力は間違いなくヘスティアに有効だ
「エトン、この穢れがどういう理由でこうなったかはともかく、これが原因で何か影響があったりするか?」
「確かにこの汚れに影響はあります。この炎には大きな力があります。ですが、その力が穢れにより蝕み、今その滲みが大きく広がり、この地へと侵食し始めています」
「なるほど、つまりはこの穢れを放っておくと世界中にその滲みが大きく広がり、異形や地殻変動、人々を侵す瘴気が起きてしまうという事か」
「「「「「え!?」」」」」
『それでは最近オラリオで上級冒険者がクエストでオラリオに居ないのは・・・』
『その数々の異常が起こったからですか!?この天の炎だけで!?』
「最近ロキ達だけではなく、フレイヤ達も不在。それも総員で、なるほど、確かにギルドから多くのクエストが発注しているのを聞いたが、これが原因なのかもしれないな。この原初の炎なら」
「っ!?」
都市外から最近オラリオでクエストの発注があった。それも数多く、しかもミッションだった。ほとんどの上級冒険者達が今オラリオを出てそのクエストを解決している。
そのクエストの原因である異常が、全てこの天の炎の穢れの影響で間違いないだろう
俺でも実際に眼で見て、これが今危険な状態であると、禍々しい力を感じる。これが神の力の一部とは思えない
そして少し俺が知識があることに、エトンは更に俺が気になるかのような顔を歪める
『主さま。ですが本当なのですか?』
『私達精霊も大昔から生存はしては居ますが、これが『デミ・アルカナム』とは思えません。フレイ様やオーディン様でも聞かされてもいません』
「爺さんやフレイだって言えるわけがないだろう。これは神々がしでかした事だからな」
『神々がしでかした事?』
『どう言う事ですか?』
「この炎は『プロメテウス』が天界から持ってきた『天界の炎』だからな」
「「「「「「は!?」」」」」」
『ど、どういうことですか!?』
『天界から神プロメテウスが持ち込んだ!?どういうことです!?』
「ジーク君。すごくまた物知りな事を言うけど」
「もしかしてオーディン?」
「またオーディンから教えてもらったの?」
「いや、これはお袋からだ」
「お話の途中で申し訳ありませんが、最近人気のあなたの英雄譚を私も確認したのですが、ジーク殿は、本当に神と人間の間の子供なのですか?」
「そうだ。信じられないなら信じなくてもいい。エトン。お袋もその事について詳しいから、その話を俺から話そう」
エトンから天の炎の経緯について、神議長として説明を受けるのが当然なのだが
この国の住まいでもない俺が、天の炎について知り尽くしていると言う疑問から、俺から天の炎の経緯について説明した方がいいと思う
ただでさえ、天の炎が『天界の物』である事を、神でもない人間である俺が知り尽くしている事について、疑問を思う神のヘスティア達にも納得させるよう
俺から説明をする
今から数千年前、それはまだ神々がこの下界に降りる前の話
当時下界は、ダンジョンと言う魔窟からモンスターが出現し、我々人間はそのモンスターに蹂躙されていた。
そのモンスターに立ち向かうも、数万や無限に等しい数に、下界はただ敗北するのみで、モンスターの餌となった国々がほとんどで、下界の危機が訪れ、人類がモンスターに食い尽くされる時代だった
その酷さを、天界から見た『プロメテウス』と言う神は、そのモンスターに食い尽くされている人間達を助けようと、天界からある物を持ち出して、下界に落とそうとして、人間達を守ろうとした
それが天の炎と言う『ウェスタの炎』
その炎は誰にも司ることができる。言うなら『デミ・アルカナム』と言う半分の神の力である。ステイタスを極めるよりも強く。その炎はなんでも操れる。結界、砲撃、豊作など、様々に人間を守る武器ともなり、文明や技術などの多くの恩恵を受けることができる。言うなら神の力を人間が宿す事になる
だからこそ
天の炎は人間に与えるにしては強大すぎる力、これを与えるとなると、人間達が暴走するか悪用してしまうのを恐れ、この天の炎を管理していた、『雷の大神ゼウス』は、これを下界に与えてはならないと、誰にも持ち出せないようにしたのだが、彼が隙を見せたところを、プロメテウスはその隙を突いて、天の炎を持ち出し、オリンピアへと投げた
プロメテウスのした行為は完全に神々においてルール違反、ゼウスはプロメテウスのやった行いに大激怒、今にも天から雷が落ちる程の怒りだった。ゼウスはプロメテウスを捕まえ、山の山頂に磔にし、巨大な鷹に肝臓をついばまれると言う罰をしようとした
ところが
ゼウスはどうしてもプロメテウスを罰することができなかった
理由は神々は知らなかったが、別の罰にして、プロメテウスの別の罰を受けることとなった
それはオリンピアを永劫を管理すること、オリンピアに天の炎を落とした落とし前として、彼女がそこに住む人間達を導くように、天の炎の扱いを教育した。誰も悪用しないように、そしてその天の炎のおかげでモンスターを退け、天の炎のおかげで一時的な平和を手にした。
「と言うことだが、これで少しでも間違いはあるか?ヘスティア?レア?」
「ううん、全て事実だよ」
「私もです。まさかジーク・フリード殿がそこまでオリンピアを知り尽くしているとは・・・」
「トールは口が緩いからな」
「愛する息子になんでも教えちゃったのね。私たちの事を全部」
全てお袋に聞かされた事、嘘を言った覚えは一つもない。しかもそのプロメテウスがやった行いは神々なら誰でも知る事らしい。
だが
「そういえばお袋が言っていた事なのだが、プロメテウスは中々に警戒心が強く、深い考えをする神として、お前達に姿を見せたことがないのは本当か?」
「ああ。それは本当だよジーク君。僕でも見たことがない。ヘルメスやヘファイストスでもね」
「ああ。それは俺も知らない。名前しか知らないんだ」
「ゼウスしか見たことがないって噂らしいわよ。知っているのは、神々の中で数人しか知らない。『最高神』級の神しか知らないとか」
プロメテウスと言う神は、神々において誰も見たことがない。お袋曰く、警戒心の強い神であり、誰一人その神の姿を見たものはいない。
と言うが
「実がお袋がプロメテウスの姿を見たらしく、それが原因でゼウスはプロメテウスを罰しなかったみたいだぞ?おふくろも現場に居たみたいだしな」
「「え??」」
「ジーク君!?もしかしてプロメテウスを罰しなかった理由を知っているの!?僕もゼウスからプロメテウスは地上に落としたって聞いただけで!?罰しなかった理由は知らないんだよ!?」
「そうなのか?その理由がとてもアホなんだけどな・・」
「「「とてもアホ?」」」
実は知っている。俺があのオラリオの最強のファミリアの片方の主神であるゼウスが、なぜプロメテウスを罰しなかったのか、なぜ鷹に食い尽くされなかったのか
ヘスティア達他の神は知らないらしい。その理由は俺でも『アホな理由』だと思う
それは
「プロメテウスが『美くしい女神』だったからと、『女好きのゼウス』はプロメテウスの美しさに免じて許してしまったと聞かされた」
「「「は!?」」」
「「「「「「嘘!?」」」」」
「美しさに免じて・・・許す・・・」
言うなら美女を甘やかしたゼウスの甘さ
その結果、オリンピアに天の炎を落とした国に、永遠に天の炎を上手く扱えるように、プロメテウスを下界へと降りさせた。別の罰になった理由はこれだと。
こんな理由を目撃したおふくろも、流石は『マジの変態ジジイ』だと呆れていたのを聞かされた
「ゼウスの甘さが原因!?」
「ゼウスって、本当に女たらしね。もはや女の敵だわ」
「あはははは、あのゼウスならあり得そう・・・」
もちろんそれを聞いたヘスティア達も呆れた。
それはそうだ。美しい女神だからと、罰を軽くするなど、そのルールにした大神自らが罰を変更するなど、呆れてモノが言えないと言うのはまさしくこのこと
でもゼウスの性格を知っているヘスティア達だからこそ、あり得そうと更に何も言えない
そのほかは
「あのオラリオの伝説のファミリアの主神が女たらし?」
「有り得ないですね」
「そんな理由で罰を甘くしますか・・・」
「でも人間のためにはなったわけですしね」
「女神に魅了されて罰を軽くしますか・・・」
「大神とは思えませんね・・・」
「もはや私たちの知っているイメージは壊れたさね」
ヴェルフ達人間からしても呆れていた
俺たちにとっては、十五年前のオラリオでは最強の双方の人柱でもある派閥の主神だった。さぞかし有望な神に違いないと想像していた。
が
まさかそれが女たらしとなると、流石に、俺たちのゼウスのイメージが完全に壊れてしまった
「・・・・・・・」
「どうしたベル?ゼウスに何か心あたりでも?」
「いや・・・・・なんだか話だけ聞くと、ウチのおじいちゃんみたいだなと思いまして」
「お前の祖父が?」
「はい。僕のお爺ちゃんもそういうところがありますから、なんか似ているなって、あはははは」
「・・・・・・・」
『名前を知らないのでしょうか?』
『ベルさんの祖父って確か、あのお方ですよね?』
「ああ。そういうことだろうな」
俺が先ほどゼウスの話をしていると、ベルだけが驚くことなく、なぜか短かな人だなと。なぜか呆れることなく慣れていると感じる
ウンディーネもノームも、ベルの祖父を知っているのだが、ベル自身は祖父の名前自体は知らないようだ。
ま、そうだろうなと、俺は驚きはしない
「経緯はもう話した。エトン、炎の剣であるプロメテウスが与えた神創武器『炎鷹の嘴』はどこにある?まだこの国にあるはずだろ?」
「っ!?本当にお詳しいですね?」
「まあな、確か俺の調べによると、そいつが初めて天の炎の力を身に宿したと言われる・・」
「それって!?英雄エピメテウスの剣!?」
「確かオリンピアを守った剣士!?」
英雄エピメテウス。
オリンピアを守り続けた英雄。プロメテウスに炎の剣を授かり、モンスターを蹴散らしたとか、ベルと春姫は知っている有名人。数千年前の英雄だが、それに記された英雄譚はオラリオでも残されている。知らない英雄ではない
「お見せします。そのついでにプロメテウス様が記された『神の碑』もありますので、こちらへ」
エトンが、エピメテウスの剣とプロメテウスが随時指示を書き残す神の碑もそこにあると、その場所へ案内される
にしても同様し過ぎだ
俺が少し『詳しい内容』を知っているくらいで同様するとは、こいつらは隠す気があるのかと、疑わしい人間からすれば即バレるのがすぐ見てわかる
エトンと言う男も、少しはポーカーフェイスでもできないかと思った
そして俺たちは天の炎の間を出て、すぐ近くにある隣のルームにある『祭壇』へと進んだ。そこに確かに前方に壁にピエログリフに描かれた神の碑と、その下にエピメテウスが扱ったとされる『炎鷹の嘴』もある
「これか・・・」
「これがエピメテウスの炎の剣!?」
「なんと神々しい剣なんでしょう!?」
「ベル君と春姫君。大喜びだね?」
「英雄が持っていた剣だ。無理もないだろう。ヴェルフはどう思う?」
「どう思うも何も、流石は神創武器だぜ。並みの剣とは比べ物にならないって、すぐわかるぜ」
その場所へ案内された。目の前にエピメテウスの剣を見かけた瞬間、ベルと春姫がすぐさまその剣の近くに近づき眺めている。英雄譚好きの二人には当然の行動だ
俺から見ても、やはり強度の剣。流石は神創武器、大剣に近い剣だが、赤い炎の形を描写にしたような剣。これに勝るとしたら同じ武器しかないだろうと想像が付く
それと
「確かにピエログリフに書かれているな。『女神ヘスティアに天の炎を見せ、救世へと導け』と、プロメテウスの言葉で間違い無いだろう」
「だから言ったでしょう!プロメテウス様に神の碑で指示を送られているって!」
「・・・・・・・・」
「な、何?」
「いや、ただ疑ってすまなかった。一応聞くが、お前達はこの指示された言葉に今まで行動をしていたと言うわけだな?レア?」
「はい。これがいつ書かれるのかはタイミングは分かりませんが、必ず朝の時にこの碑に毎回指示を書かれては、私たち教団はその通りに動いています」
「そうか、だそうだヘスティア」
「会った事もないと言うのに、指名を出すなんて、勝手だなプロメテウスは・・・」
間違いはなく、プロメテウスの指示は神の碑とやらに確かにピエログリフに書かれていた。嘘ではないのは確実、レア達も毎朝書かれているのは知っているも、どのタイミングで書かれるのかはわからないらしい
そんな謎のようなことを追求して探らないこいつらも謎だが
でも
今回の依頼内容は全て理解した
「さて、オリンピアの事情は全て把握した。俺の眼で見ても、あれを放っておけばオラリオの被害にもなるのは明白、今まで彼女達が抑えていたのがやっとだろう。ああなってしまってはもはやなんとしてでも止めねばならない」
確かに天の炎を状況を見る限り、あれを一刻も抑えねばならないだろう。むしろあれを抑えるのはもう無理に等しい。清めるのもほぼ不可能だろう
それができるのはヘスティアのみ、
だが
「ヘスティア。君から見てもあれは君だけでなんとかできるのか?」
「うん。あれは僕がなんとかできる代物だよ。だから僕に任せて」
「ちなみにその方法は?詳しく聞かせて貰う。でなきゃ賛成できないぞ?」
「え?それは・・・・・・」
「おかしいとは思うんだ。天界のルールでアルカナムの使用を禁じられている。それで君に何ができる?」
「それは・・・その・・・・」
「まあジーク君、そこは詳しく聞かないで、ヘスティアがしたい事だからさ・・・」
「お前は黙っていろヘルメス。俺の主神でもない奴が俺に指図するな」
「ひえ、ご、ごめんなさい・・・・やっぱジーク君怖い」
「ま、ジーク・フリードの言う通りだしね。詳細も聞かないで、『はい、実行なんて』、団長として許可もできない。詳細を聞くのが当然の義務だと思うわ。でなきゃ納得しないで当然よ」
「あなたさっきからヘスティア様に対して失礼よ!眷属なら黙って主神の言う通りに・・・」
「お前も黙れイリア。俺のファミリアの団員でもない奴が指図するなら、お前を殺すぞ。この中で一番に気に食わないのはお前だ。お前を見ていると反吐が出る!」
「へ、反吐!?」
「あの・・・・・彼?一応英雄なんですよね?アスフィさん?」
「肩書きはそうなっているのですが、一ヶ月前に少し荒れた事件が起こりまして、それ以来ファミリアの団員や友人以外は信用しない人なんですよ。英雄と言う肩書も自ら捨てたいくらいで」
俺に指図するなとイリアとヘルメスを黙らせる
ヘルメスはともかく、あのイリアとか言う女が見て憎い。『中身を知っている』からなのか、自然と憎い気持ちを抱いてしまい黒竜の浸食をしていない右目までも自然と『竜眼』になってしまう
レアが俺の評判差と実際の違さに、アスフィに説明を求め、俺が英雄の肩書を自ら捨てたいと教えた。
だが、どうでもいい。よりにもよって、今度はこいつらのために
ヘスティアが『こんなこと』をしなければならないと
呆れる以上に納得がいかない
「確かにここまで来て、うだうだ言うのはワガママかもしれないが、何も『君が』そんなことをしなくてもいいんじゃないのか?俺は納得がいかない」
「大丈夫だよ!僕のことなら・・・・」
「お前もそういうことを言うのか、そう言ってフレイもお袋も殺された」
「「「「「「「っ!?」」」」」」
『『主・・・・・・』』
「ジーク君・・・・」
どうして優しい奴はそんなことを言うのか、確かに現場に来てまでこんなことを言うのはおかしいと言うか、今更かもしれないが
まさか俺の主神であるヘスティアまでも、そんなふざけた言葉を出すのか
俺には納得もいかなければ、そんな言葉は聞きたくなかった
「俺に優しい奴はみんなそう言って死んだ。確かに天の炎はなんとかしなきゃいけないのは当然だ。だが正直こいつらがお前にさせようとしているのは完全にお前の身が安全とは思えないことだ」
「「っ!?」」
「俺はもう家族を失いたくない。よりにもよってこんなことで死ぬのではないのかと、気が気でならない。しかも俺に詳細を教えてくれないと言うことはそう言うことなんだろ?」
「っ!?そ、それは違うよ・・・・・・」
「本当か?まさか君が嘘を俺に言うわけじゃあないだろうな?況してや俺やベル達に?」
「本当だよ・・・・・・これは僕のしたいことだよ」
「・・・・・・そうか、わかった。俺は了承する。あとはベル達に許可を聞け、俺たちのファミリアは家族だ。況してや上司部下の上下関係じゃないんだ、しっかりとみんなに聞くんだ」
「う、うん、ごめんね。無理言って」
「もう仕方ない。君のしたいことならな。俺はあくまで確認のためにもう一度聞いただけだ」
こうなってはもう俺に何もできない
ヘスティアのすべき事をさせてあげるしかできない。もっと他の方法があるかもしれないが、それでもそこまで硬く意志を見せたヘスティアのする事を受け入れるしかなかった
ヘスティアが嘘を付いているのが『わかる』
だが、それでも決めた事なら仕方あるまいと、俺はもうこれ以上は言わない。
この前勝手に死んだ俺が言うのも、矛盾していると思って
「みんなはどうかな?」
「リリも、ジーク様の言う通りとは思いますけど、ヘスティア様がそう言うのなら、信じて受け入れます」
「俺もだな。確かにその方法を詳しく教えないのはどうも怪しいと俺も思うが、そこまで言うならヘスティア様を信じます」
「自分もこのまま天の炎を放っておけないのも事実ですので、本当にヘスティア様が大丈夫だと思うなら、自分も受け入れます」
「私も、あれだけジーク様が警戒ばかりな事を言うのは、余程なのではないかと思いますが、ヘスティア様の眷属として信じます」
「ありがとう。ベル君は?」
「あ、ああ・・・・・・僕はその・・・・できるなら・・・・反対です」
「「「「「っ!?」」」」」
「・・・・・・・」
ベルが初めて反対を出した
俺の現実味のある言葉を出したからなのか、いい加減人を疑う事を覚えたからなのか、今の話だけを聞いて、あまりにヘスティアが無事で居られるとは思えないのか、流石に反対の言葉を出した
「ベル君、大丈夫だよ。こんな仕事は僕にとってはとても・・・」
「そう言ってジークさんは死んだんですよ!ジークさんの言うことは間違ってないと思います」
「そんなことないよ!僕だってそんな命を自ら捨てて自己犠牲なんてしないよ!」
「でも・・・・・」
それでもベルは反対する
初めてかも、ここまで頑固になって受け入れずに否定するのは、いつもなら何も疑わずに信じ込むベルが、しかも相手は自分の主神に、初めて疑いをかけたのだ
ベルも俺と同じ気持ちだった。本当に生きて帰れるような方法なのか、なんだかここで死ぬのではないのかと、天の炎を清める方法がタダですまないと、今回ばかりは心配している
この作戦にどうしても賛成できないとベルは頑固に通さない
なら
「ならこうしよう。ベル」
「え?」
「そこまで納得がいかないのなら、条件を付けさせて貰う。それでどうだ?」
「その条件とは?」
ここまで来て、今更依頼を断るなんてできない。疑わしい話ばかりを聞いて、それでも納得がいかないのであれば、条件を出すしか話が進まないと、俺が話を切り出す
「もしヘスティアが自己犠牲な真似をした場合、俺たちは無理矢理でも君のする事に邪魔をする。無論その時の主神の命令は聞かない。例え俺たちに無力化してようとも。それでどうだ二人とも?」
「わかった。僕はそれで構わない」
「よし、主神はこう受けた。ベルは?」
「わかり・・・ました・・・・・そう言うことであるなら」
「これで決まりだ。ウンディーネとノームは構わないな?」
『『はい、主の命であれば』』
ベルも渋々了承した
これでなんとか、この依頼を引き受けることに関して全員了承した。
これでヘスティア・ファミリアはオリンピアの依頼を正式に引き受けることになった。ただし条件付きではあるが
それでも請け負う理由は、天の炎をなんとかしなくてはならない。どの道ここまで来たからにはやるしかなかった
「エトン、全員依頼を改めて引き受けることが決まった」
「ありがとうございます。我が国のために」
「仕方あるまい、ウチの主神がこう言うのだからな。それで今日実行するのか?」
「いいえ、流石に準備もありますので、三日後に実行しようと思います」
「そうか、それまで俺たちがここで観光をしても構わないわけだな?」
「ええ、お部屋も用意してあります。明日にでも街を見回ってはいかがでしょうか?」
「そうだな。そうさせて貰う。それを楽しみにしている二人も居るわけだしな」
「はい!見てみたいです!」
「それはそれでです!」
原初の炎を清めるのまだ三日後
それまではこの街を観光できる。まあ調べるにはちょうどいいかもしれない。それに英雄譚好きの二人が是非とも神話の都が見たいと、観光を一番に楽しみにしていると、ベルと春姫が期待の顔をしている
「それではお部屋は私たちで案内します。皆さんこちらへ」
「だってさ!みんな!行こう!もちろん僕はベル君と同じ部屋にしてね?」
「どさくさに紛れてベル様と一緒に部屋をすることなんて、許しませんよヘスティア様!!」
「あ!?何をするんだサポーター君!?僕はベル君と一緒だぞ!」
「待ってください皆様、この国での宿泊について注意事項があります」
「「「「「「「?」」」」」」」
「どういう注意だ。エトン?」
レア達に宿泊するための部屋が用意されているのだが、その前に宿泊する際に注意事項があると、エトンは俺たちを止める
「オリンピアでは夜の外出だけだはどんな理由があっても禁じています。それを守ってください」
「夜の外出?なぜだ?」
「炎の汚染の影響で、夜になると街中に瘴気を立ち込めるのです、昼は問題なく過ごせるのですが、瘴気を体の内に取り込むと体に悪影響を及ぼします。ですからくぐれも外出を控えてください。屋内は問題ありませんので」
「わかった。まああの原初の炎のことだからな。もしかしたら『燃やされる』かもしれないからな」
「え、ええ。必ずお守りください。夕日が出てきたときには屋内に居るようお願いします」
「ああ。この国に居る時は守るようにしよう、皆もいいな?」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
こうしてエトンの依頼は引き受け
エトンの注意事項を守りながら、俺たちはレア達に案内される部屋へと移動する。今は旅の疲れを癒すとして部屋で大人しくする
その前に
「おいエトン」
「なんでしょうか?」
「今日の夜は俺も部屋に居る。お前は俺に興味がありそうだから、何か聞きたいなら部屋に来い。話せる分は話すぞ。長く生きすぎた老人よ」
「っ!?いいえ・・・・私は今日も仕事がありますので・・・」
「そうか、『大変』だな・・・・」
「ええ、これも神議長ですから」
一応、俺から誘いを出したのだが、断られてしまった。これ以上正体を知られたくないからなのか、もしそんな事を考えていたのなら、もう手遅れだと言うのに
『老人』も大変だなと、もう裏がわかっている俺にはそんな事を言わなくてもわかると言うのに
レア達に部屋を案内をされた。なぜか男女共同で、風呂とトイレだけが別々になっている。それ以外は共同になっていた
「うわああ!なんて綺麗な部屋なんだ!」
「あの大船とは大違いです!」
「すげえ!酒もあるぜ!」
「流石はオリンピア!」
「はい!まさか部屋までも豪華だとは!」
「・・・・・・・確かに豪華だな」
レア達が部屋に案内してくれた。その部屋はかなり豪華で、お酒もいくつも棚に用意されていた。ベットは人数分は用意されている。風呂もウチのファミリアみたいに広く。確かに豪華とも言える
だが、いくつか質問をした
「レア。少しいいか?」
「な、なんでしょうか?」
「屋内は安全だと言ったな?じゃあこの部屋だけに留まる必要はなく、建物の中に居ればいいんだな?」
「え、ええ。ですが他の建物に行くと言うのはやめてくださいね?」
「わかった。そういうことにしておこう」
「それでは皆様、ごゆっくりお休みください。あとでお食事もお持ちしますので」
そう言ってレア達は、俺達に部屋を案内させて、レアたちは自分の仕事がまだ残っているようで、俺たちに案内を済ませて、別の仕事へ行く。
のだが
「ジーク・フリード殿。少しよろしいでしょうか?」
「なんだ?俺だけか?」
「はい。私個人的なお話があります。すぐ終わりますので、来てもらえないでしょうか?」
部屋を去ろうとしたレア達が、なぜかレアだけが俺と話をしたいと、俺を呼び出される。おそらくもうある程度の事情を把握した俺を口封じにするためなのか、聞いてみようと、俺は一度部屋を出て、部屋から少し離れた廊下でレアと話をする
「巫女長?どうしたのですか?」
「あなた達はいいから、行ってください」
「はあ、わかりました」
なぜかレアは部下全員を下がらせて、なぜか俺と二人で話す。二人で話す限り口封じではなさそうだ。
とりあえず話をする
「それで、なんだ?」
「申し訳ありません。今回のことで無茶を言う事を」
「ん?なんだ?てっきり変に探るなと言うのかと思ったが?」
「なんとなく貴方が私たちの全てを見通しているのを、発言からしてわかりましたから」
「ではなぜ口封じしない?」
「その・・・・・・・家族を心配している貴方の気持ちを同情してしまって」
「ほう・・・・・お前にも大切な家族が居るのか?」
「え、ええ、娘が二人・・・・・・・ヘスティア様を想う貴方の気持ちが・・・・なんとなく理解できるのです」
レアは、今回の件で無理難題な依頼をさせている事を理解しているのか、口封じではなく謝罪がやってきた。
「謝罪は必要ない。ウチの主神の望みだからな。どんな結末であろうと解決する他ない。だから謝罪は要らない」
「そうですか、少しでも文句を言っていいんですよ?」
「家族を危険に伴わせているからか?優しい母親だな」
「え?」
「優しいさ、普通は心配なんてかけないものだ。俺たちは何せ冒険者だ。死ぬ覚悟をしていなければ我々は剣など持ってない上に、ここまで来ていない。だから救われる事を祈っていろ」
「あ、ありがとうございます」
「ただ、文句を言うわけではないが、一つだけ言わせてもらいたい」
「なんでしょうか?」
文句を言っていいなら、それなら別な事を言わせて欲しいと、俺は彼女に近づく、なぜか俺が近づいた瞬間、レアはなぜか顔が真っ赤になる。どうして真っ赤になるかは知らないが
そして告げる言葉は
「どんなことがあろうとも、母親として娘に恥じない行動をしろ。そうでもしなければ娘たちのためにならないぞ?」
「っ!え、ええ。そのつもりです」
「そうか、もう言うことはない。部屋に戻る」
「あ、おやすみなさい」
そう言って、レアは自身の仕事へ向かうために、別の場所へと向かった。
どうして俺を気にかけたのかは知らないが、少なくともあの中でもまともな女が居たのだと、少しばかり今回の相手は、まともな戦いができそうな
理屈のある戦いができると予想した
ま、今までにおいての一番難易度の高い依頼ではあるがな