ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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聖火の女神 ウェスタ

ヘスティアは嘘を付いた

 

そんなことあり得るのか?そんな善のある彼女がするはずもない。ただでさえ俺に対しても嘘をつかない。俺の主神だった

 

でも

 

 

結局彼女は嘘を付いた。

 

 

まったくもって予想通りだった。彼女が犠牲になるしかないと悟ったのか、俺には何も言ってくれなかった。何がそこまで彼女はそれをなんとかしたいと自身を犠牲にするのかそれは理解できない

 

方法ならいくらでもあるはずだった。なぜ相談しなかったとか彼女を恨んだ

 

 

「まったく、俺に嘘を付いた代償は重いぞヘスティア。大神殿に行くぞ!ヘスティアが俺の約束を破って自身を犠牲に賭けた!彼女はあそこに居る!行くぞ!」

 

 

「くそ!なんでそんなことをしたんだよ!」

 

「冗談じゃないんですか!?」

 

「どうしてヘスティア様が!?」

 

「とにかく急ぎましょう!皆さん!」

 

『その道を選びますか、ヘスティア様!』

 

『約束を違える神とは思いませんでした!』

 

 

「ジークさん!?」

 

「ジーク!?」

 

 

そう言って、俺はヴェルフ達を連れて大神殿へと向かう。

 

こうなった以上はもう、条件通りに行動するしかない。条件した通り無理矢理止めるしかない。もうこれしか方法がない。

 

保険のために条件を作ったが、例え条件通りにやろうとすると彼女は拒むだろう

 

 

だとしても、こんなやり方間違いだ

 

 

ああ、こんな矛盾なことを俺が考える日が来るとは思わなかった

 

すると

 

 

「そこまでだ!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「っ!オリンピアの兵士!」

 

 

突然、大神殿へ向かおうとした俺たちだが、その前にオリンピア兵士の数名が俺たちの前に立ち塞がり止められる

 

どうしてそんなことをされるかなど、もう理解している

 

 

「エトンの指示で俺たちを止めに来たか、いや・・・・・・・・殺しに来たのか?」

 

 

「その通り!エトン様の指示によりあなた方を消すことを指示を出された!ここでお前たちを排除する!」

 

 

「あの『老害』なら有り得そうだな、レア!これがお前らのやり方なのか?」

 

 

「そんな!?待ってくださいどうして彼らが!?」

 

 

「申し訳ありませんが、これは神託なのです!全員構え!」

 

 

「神託!?そんな・・・・・・」

 

 

残念ながら、エトンはこの儀式を俺たちが邪魔することを勘づいていた彼は、こんなこともあろうかと、オリンピアの兵士を俺たちの壁となって立ち塞ごうとした

 

もちろん、神の碑にあれを刻んでいるのもあいつだろう

 

ま、なんにせよ今はこいつらを倒すべきだと、優先を変える

 

 

「分かった。なら反撃させて貰う。ヴェルフ!お前たちは先に行け!ここは俺が抑える!」

 

「だけど!」

 

「いいから行け!後で俺も行く!ベルの気配がする!大神殿の方だ!あいつはもう行ってる!さあ行け!」

 

「く!悪い!」

 

「あとで!」

 

「ああ!」

 

 

そう言って、先に俺の仲間たちを大神殿に向かわせる。これくらいなら俺が一人でやれる

 

のだが

 

 

『主!お一人で無茶はダメです!』

 

『ええ、私たちが居ることをお忘れなく!』

 

「加勢します!ジークさん!貴方はそんな体になっているんです!無茶はダメです!」

 

「ここまで来たら、暴れるのは手伝うよ?」

 

「お前たちも助かる。アスフィ!急いでヘルメスとヘファイストスをオリンピアの外へ行け!ここは危険だ!早く!」

 

「わかりました!さあ行きますよ!」

 

 

立ち塞がるオリンピアの兵士を俺一人で相手にするつもりだったのだが、黒竜の侵食された俺を無茶をさせるわけにはいかないと、ウンディーネとノームとリューとアイシャが加勢する

 

アスフィにもうここは安全ではないと、ヘルメスとヘファイストスを連れて、タラリアを使って空を飛んで逃げる。

 

それと

 

 

「おいレア。決めろ」

 

 

「え?」

 

 

「神託は絶対と聞いた。ならお前はどうする?敵になるなら好きにすればいい。だがそんなことをしても娘のためにならないからな」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

最後にレアはこうなったらどうするのかと選択を迫る。神託は絶対ならそうしても構わないと決めさせる

 

でも、俺は一応言っておく、そんなことをしても娘のためにならないと

 

娘を想う母の気持ちなんて、俺も同じ気持ちになれるが、だからと言って娘の前で正しいことができないのは恥でしかないと思う

 

侮辱でも騙そうしているわけじゃない。これも助言だ。俺だって妹が心配だから恥じるような行動はできない。ウィーネと、メイジと、ヘスティアを想うように

 

レアも、俺の気持ちがわかると言うのなら、正しい道を選べ、娘のためにと助言をする

 

 

「来い!殺される覚悟を持ってかかって来い!」

 

 

「オリンピアのために!かかれ!!」

 

「「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」」

 

 

「来るぞ!」

 

 

そうしてオリンピアの兵士たちが俺たちの方へ、剣を持って襲いかかってくる。

 

かなり多い、だが倒せない敵じゃない。さっさと倒して終わらせると、ウンディーネたちより先に俺が前衛に出る

 

 

 

「炎よ!!!」

 

 

「「「「な!?ぐわあああああ!!!」」」」

 

 

「「『『っ!?』』」」

 

「これは・・・・レア!」

 

 

「はあ・・・・はあ・・・娘のため・・なら」

 

 

なんと言うことだろうか、レアが俺たちを守るために、兵士に炎を放った。

 

まさか俺の言葉を聞いて、まさか俺たちの見方になってくれるとは思ってもみなかった。本当に味方になってくれたのか確認する

 

 

「レア!言っておくが俺は侮辱したつもりはないぞ!母親なら娘のために正しいことをしろと言っただけで侮辱したつもりはない。それは確かな決意の選びか?」

 

「ええ!私も貴方にそんなことを言われると!母親として今までしてきたことを恥じるんですよ!シオンやシアテの母として恥じぬすべき事を!」

 

「母親としてガッツがあるな。『俺の母さん』のようだ」

 

「え?」

 

「なんでもない。すまないが加勢を頼む。もう少しで炎人も来るわけだしな。もう夜だ」

 

「ええ、そうですね。ここは私に任せてジークさんも行ってください」

 

「いいのか?」

 

「彼らに詳しい私なら問題ありません」

 

「助かる」

 

 

まさかのレアが俺たちの味方になってくれた。それはとても助かるには助かるがそれでも、敵が厄介なのは変わりない。なにせ天の炎に力を貰っている兵士でもある。レアが加勢に付いても勝てるかどうか、でもヘスティアのところへ俺もいかないとならない

 

おまけに

 

 

『アアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

どうやら『夜』になったから炎人も街の方からやってきた。

 

もちろんこの戦いは耐久戦になる。少しでも隙を見せたら逃げるしかないと、もうここには居られないと悟る。先ほどからヘスティアの力が地面から感じる

 

何かあるとしか思えない

 

 

「レア。この街に抜け出す隠し道はあるか?」

 

「ええ、あります。それが何か?」

 

「少し戦ったら、この街を出るんだ」

 

「え!?しかし!」

 

「ここに居続けるのは危険だ。ヘスティアもおそらく・・・・・とにかく、ある程度でいいからリューたちを連れて出るんだ。いいな?」

 

「わ、わかりました!」

 

「頼むぞ!ウンディーネもノームもそのあとはレアに付いていけ!分かったな!」

 

『『はい!』』

 

 

「レア様!?どうして!?」

 

 

「裏切り者でもなんでも呼びなさい!彼らを消すだなんて、エトン様の指示だからと言っても聞けません!」

 

 

その場はレアの言う通りにして、俺はヴェルフの後を追うようにして、大神殿へと向かった

 

エトンが兵士を送り込んだとなれば、だとするなら今はあいつも神殿に居るはずだと、駆け足で俺は急ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大神殿に向かっている途中、幾度も邪魔をする兵士を斬りながら、神の力の気配がすると思われる。天の炎の間に向かう。そこにヘスティアだけでなく、ベルやヴェルフたち、あのイリアとか言う女も居るのだろうとそこへ向かう

 

その場所へ向かう最中でも、ヘスティアの力が神殿全域に伝わっているのがわかる。もしかしなくても彼女がしようとしているのは、おそらく俺の予想が的中することかもしれないと思っている

 

まさかそんなことをして天の炎を食い止めるのかと思うと、確かに自身の体を犠牲にする理由もわかる

 

ヘルメスもヘファイストスも何も言わずに。これをヘスティアにさせるのであれば、あれがどれだけ今危機にあるのかわかるんだろう

 

だからもう、あの二人は諦めている。

 

残すは

 

 

 

 

 

 

 

俺たち以外ない

 

 

「ベル!ヴェルフたちも!」

 

 

「ジークさん!」

 

「待ってたぜ!」

 

「ジーク様!」

 

「辿り着けたんですね!」

 

「間に合ったんですね!」

 

「ジーク・フリード!?」

 

 

「全員無事だな・・・・・そして・・・やってくれたなエトン」

 

 

「やはり・・・・・兵士ではお前の相手は務まらんな、流石は『黒竜殺しのヘラクレス』だ」

 

 

最奥部でもある大神殿の中心地、天の炎の間では、ボロボロになっているベルとヴェルフたち、そしてイリアと

 

その目の前に、やっと本性を表したと思われるエトンの姿があった。敬語で喋っていない限り。俺たちを殺すよう兵士たちに命じてから、もうお行儀よくすることなく、俺たちに本性を出して立ち塞がっている

 

そして天の炎があったとされる穴から、炎の柱が溢れ出し、その中に炎の球体

 

 

おそらく、あそこにヘスティアが居る

 

 

だが、今は敵を排除しなくてはならないと、ベルたちの前に立って守り、エトンと改めて対面する

 

 

「どうやらこれが目的で、俺たちをここに呼び寄せたようだな、まあお前が一番胡散臭い男だとは思っていたがな」

 

 

「そこの小僧どもと違って、やはり察しはいいな。流石は英雄ヘラクレスでもあり、あの『ニーベルング族』でもあるな」

 

 

「俺の一族の名前を知っていると言うことは、やはりお前があの『愚物の英雄』だったか」

 

「え?愚物の英雄?」

 

「ベル。驚く話かもしれないが、こいつはエトンと言う名前ではない。まさかとは思っていたが、実在していたとはな・・・・・」

 

 

ベルと春姫が、もしこの男が敵でなければサインは貰ってはいただろう、少なくともこの男は『エトン』と言う名前でもなければ、エピメテウスの子孫でもない、俺の一族の名前を知っているとするなら、巫女たちよりも天の炎の力は強く、そしてあの『炎鷹の嘴』を使うのであれば

 

この男の本名はこれしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が『英雄エピメテウス』か」

 

 

「「「え!?」」」

 

「英雄エピメテウス!?」

 

「エトンさんが!?」

 

「ジーク・フリード!?貴方知っていたの!?」

 

「いや・・・・だが、俺の『フルネーム』を知っているのは、今の人間では千年前の者しか居ない。その名を知るとなれば・・・・・エピメテウスだと、理由はそれだけだと確信もないことを言ったが・・・・・・正解のようだな」

 

 

「まさか・・・・・あの一族にまだ子孫が居たのか、そして俺の正体も俺が言う前にわかったのであれば、やはり黒竜を倒した英雄だけのことはあったか・・・・・」

 

 

エトンと言う神議長は、エピメテウスの子孫ではなく

 

正真正銘、英雄エピメテウスだと言うことがわかった

 

だが三千前の男だ。この時代まで生きられるはずがない。そこまでの寿命はないと思うが、エピメテウスは天の炎の力を最初に授けられた男、その絶大な力を巫女よりも多く授けられたのか、長い寿命を得ているようだ。でなきゃ三百年もレアたちが生き残っているわけではない

 

最初から謎のある男だとは思っていたが、確信もないことを本気で言って正解だったとなると、もうこいつも俺と同じ愚物になったわけか

 

 

「先ほど兵士たちが、お前の指示により殺せとの命令を聞いた。ここに来るまでの途中で神の碑には確かに『俺たちを殺せ』との命令もピエログリフに書かれていた。そしてプロメテウスの神器も無くなっていた。あれは全部お前の仕業だな?」

 

 

「正解だ。英雄ヘラクレス。いや、ジーク・フリード。あの一族の子孫にして。推測や判断も正しい。血統なだけあってやはり賢いな」

 

 

「わかりやすかったさ。兵士の話を聞く限りお前が怪しいと、それに俺にやけに警戒していたところもあったからな。お前が黒幕だと全て理解していた」

 

 

こいつがピエログリフをあの神の碑に書いたことも、そこにプロメテウスの神器である『炎鷹の嘴』が無くなっているのも、こいつの仕業だとすぐにわかった

 

だが、こいつが今になってこんな反旗を翻すようなことをするのか、なぜ俺たちを攻撃するのか、なぜヘスティアにこのようなことをさせるのか、改めて正体を知った上で聞く

 

 

「聞こうエピメテウス。何故主神が不在なる今、お前はこのような愚かな行動をして争いを起こす?それとも英雄譚通り、人に非難を受けたからと、今になって復讐を果たそうとするか?所詮下等生物はあのような本質を持っていることは承知のはずだと思ったのだが、お前はそれでもこんなくだらんことに俺たちを巻き込んだと言うわけか?本当に愚かな男だ」

 

 

「ふん、目的としてはその通りだ。こうも見抜いておきながら、何もせず俺の計画通りにしてあの主神を見殺しにするとは。愚かは貴様も同じだろう」

 

 

「確かに止めることはしなかった。それは事実だ。だがヘスティアが無事にこの事件を終わらせてくると信じたまでだ。だが・・・・彼女は嘘をついた。どうしてその道を選ぼうとするかはわからない。だが・・・・・おそらくあの女が関わりあることはわかった」

 

 

「っ!?」

 

 

ヘスティアが俺たちに嘘をついてまで、このような道を選択する理由はまだわからないが、少なくともあのイリアとか言う女が、あの地下祭壇に向かう前に何かヘスティアに取引らしいことをしたのではないのかと疑う

 

でなければ、俺とヘスティアの存在がオラリオに居ることを知るはずもない。警戒深い女ではあるが、その姿のままいつまでも誤魔化せると思っているのだろうか、俺にはもう見抜いていて、彼女がこのようなことをしているのは、おそらくあのイリアが関わっている。

 

だがエピメウスが反旗を翻しているのは、イリアは関係ない。これは完全にエピメテウス本人の原因。イリアとか言う女は俺たちの味方でいいと思うが、エピメテウスは完全に敵だと判断していいことだろう

 

 

だが、未だにヘスティアがこの道を選んだ理由の神意を聞きたい

 

 

「お前はおそらくヘスティアを利用する気でこの計画を実行しようと思っているようだが、それは『彼女本人』に聞いてみようか」

 

 

「なに?・・・・・っ!?」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「炎の柱にある球体から、誰か出てくる!?」

 

 

エピメテウスの目的は、間違いなく天の炎を操ることもできるヘスティアから、その力と一体化して彼女を利用して、世界に復讐するのが目的

 

だが、少なくとも彼女がそんなことのためにわざわざ俺に嘘を付くとは思えない、おそらく彼女は彼女なりの目的でこの道を選んでいる

 

その答えを

 

 

今、天の炎の中にある球体から、人らしき姿が現れる

 

 

それは女神だった

 

 

長い紅色の髪、蒼い瞳、赤い羽衣、そして両手から天の炎、白い北西のドレスに宝石の首輪。その姿をした

 

 

ヘスティアが現れた

 

 

 

「我が名はウェスタ。悠久の聖火にして、久遠の守り火。邪を祓い、正を守護する、祭炎の神なり」

 

 

「天の炎と一体化したか、ヘスティア。これが彼女の望みだったと言うわけか」

 

「どういうことですか!?ジークさん!?」

 

「あれは本当にヘスティア様か!?」

 

「ああ。神威も天の炎になっている。あの衣が天の炎で作り上げたものであるなら、間違いなくヘスティアだ。天の炎を完全に物にして聖火の化身となった」

 

「ヘスティア様で間違いないとは思いますけど・・」

 

「確かにジーク様の言う通り・・・」

 

「姿は同じなのに、何か違う!」

 

 

俺たちの前に、姿と神威も喋り方も違うヘスティアが現れた。間違いなく、彼女ではあるのだが、天の炎を物にしたせいで、人格や力までも天の炎の神としての器となってしまい。今の彼女はヘスティアであって、ヘスティアではないのだろう

 

だが、完全にヘスティアではないのか、しっかりと目的を聞く

 

 

「聞かせてもらう!お前の目的はなんだ!俺たちに嘘を付いてまで、このような道を選ぶのはどういう目的だ!」

 

 

「無論決まっている。ここオリンピア・・・・いや・・・『パンドラ』と呼ぶこの都市を含め、下界をあるべき姿に戻す、それだけのこと。天がもたらし負の遺産は私が浄化する。これは『調律』する」

 

 

「なるほど、己の命を犠牲にして、天の炎がばら撒いた負の力を全て吸収し、自分の体ごと消滅することで、あの天の炎を浄化するためか」

 

「「「「「え!?」」」」

 

「そ、そんな!?じゃあ神様のすることは!?」

 

「完全に自己犠牲だろうな、俺と同じ道を選ぶか」

 

 

彼女のすることは、己の命を犠牲にして、天の炎の穢れと共に消え去ること

 

彼女がこの炎と一体化しない限り、ヘスティアはこれをなんとかする方法はなかった。だから己の体を器にした。まさか本気でこの道を選ぶとは思いもしなかった。

 

だが、どうしてこの道を選んだのか、動機はまだ聞いていない

 

 

「何故そのような道を選ぶ?神一人が死んだくらいで、全てを救えると思っているのか?」

 

 

「私は神だ。神は全知全能であり、これは神がすべきこと。英雄も眷属も必要ない。これは神である私のすべきこと、半神よ。お前は神の全てを知ったかのように言うが、貴様のようなたかが神々より先に知っている程度の賢さだけでは、とおく及ばない」

 

 

「そうか、お前は天の炎を身につければお前はなんでも救えると思ったか?神であるならばこの事態もなんとかなると、そう言いたいのか?」

 

 

「そうである以外なかろう。私は悠久の聖火だ。この地を浄化することは可能だとも」

 

 

「そんなくだらない道を選ぶか、そんなことをしても変わらんと言うのに」

 

 

「なに?」

 

 

「天の炎はもう『劣化』したと言っているんだ」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

浄化を果たされても、おそらくこの穢れはなんともできない。ヘスティアが下界を調律しても、おそらくこれはもう止まらない。

 

人の負を吸いすぎたからだろう

 

 

「天の炎を見る限り間違いなく、もはや浄化するだけでは止められない状態になっている。あれは人の負を吸いすぎた。おそらく天の炎は人の救済をする機能があったんじゃなくて、『人の負を吸収し、その負を炎に変えて散らばっている』じゃないのか?」

 

 

「・・・・なるほど、お前らしい推測だな」

 

 

「だから今街で彷徨っている『炎人』や今空に飛んでいる『炎鳥』もおそらく、記憶を元にあの姿を再現しているのであれば、天の炎が今まで救ってきた分の、天の炎の負債そのもの。つまりは救えなかった者達の執念。今言ったことに合ってはいるか?」

 

 

「・・・・・・・賢いな。ジーク・フリード」

 

 

やはり俺の推測は当たっていた

 

おそらくもう天の炎は人を救済する力はない。いや、その力さえも最初からなかった。おそらく天の炎は人の救済を重ねては、その負担になる代価が合ったに違いない。天の炎は人間に炎を与えて救済する力はあっても、それと同時に暴走する力もあったと言うわけだ

 

それすら己の器にして変えようと代価を払おうとしているのがヘスティアだ

 

聖火の女神でもある彼女だけがこれを扱えるのだから

 

 

「どうあっても、お前のやることは無意味になる。人の手に収まる炎でもなければ、この穢れ切った炎を神ではどうにもならん。このエピメテウスでこれだ。人間の愚かさが原因で汚れた炎だ。お前一人犠牲になったところでなにも救えん。浄化してもまた人の悪意なりなんなり吸って穢れるだけだ、俺ならもっと救済する方法はある」

 

 

「それは・・・・なんだ?」

 

 

「天の炎を俺自らで破壊する」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「お前ならわかるだろ?これは神の力でもある。俺なら・・・・・破壊できる」

 

 

「ジーク・フリード!?貴様!?」

 

「天の炎を破壊ですって!?そんなことをできるはずが・・・」

 

 

「いや・・・・・可能であろうな、お前なら」

 

 

天の炎が全てが原因なら、この炎を破壊するべきだ

 

これは人の力になるべきないもの。破壊して己だけの力で生きていく他、この事態の方法はないと思っている。これがあるせいで、あの炎人も、今空を飛んでいる火の鳥のモンスターも、天の炎が原因で過去の記憶を元に出現しているのであれば、間違いなくとも

 

破壊が有効だと言う

 

 

「だが、破壊すればこのオリンピアはどうなる?このままでは滅んでしまうぞ?下界も含めてな」

 

 

「実際に滅んでいると言うのにか?もうこの街の有様を見てはきたが、あれが永久の神域か?馬鹿を言うな、あれはただの廃墟だ。都市の形もない地獄そのものだ。天の炎を頼りに過ぎるから自らの手で滅ぶんだ。もう救いようがない事態まで進んでいると言うのに、これ以上の救いなど、ありはしない。もう滅んでいるのだからな」

 

「じゃあ・・・・この街は」

 

「そうだベル。あの綺麗な街は嘘だったんだ」

 

「全部レア様のカモフラージュでした」

 

「そんな!?」

 

「下界に関してもだ。天の炎を頼りにこれからも生きなくてはならないと言うのなら、もう滅んでいるも同然、それなら俺たちはもう生きていない。不要だ。そんな炎は、それを頼りに生きて行けぬのであれば、我々はいつも通り無力で死ぬだけだ。大昔のようにな」

 

 

「・・・・・・・・・いよ」

 

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ジーク君はずるいよ!!!」

 

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

ヘスティアが、初めて自分の言葉を発した

 

さっきまで自身の意思とは関係ない喋り方をしていると言うのに、初めて俺に対してだけ、俺たちの知るヘスティアらしい言葉で、俺に文句を言った

 

初めてだ。彼女に文句を言われるのは

 

 

「君は・・・・・その下界のために自分の命を二度も投げ出したじゃないか、なのになんで僕はダメなのさ!」

 

 

「お前の代わりは居ないからだ。俺たちの主神はお前ただ一人、俺は違う。俺が居なくとも代わりはいくらでも居る。だからお前が犠牲になる必要ない。価値観の違いだ」

 

 

「価値観!?なにが違うのさ!君と僕が何が違うの!?君は何度も死にかけた。もうこれ以上君に死んで欲しくないのに!」

 

 

「・・・・・・・・そうか、君はそのためにその代価を払おうと言うのか」

 

 

ヘスティアの神意をやっと聞けた

 

もうこれは自分でなんとかしなければ、また自分の愛する眷属にも降りかかると、己を盾にすることを選んだ

 

俺と同じだったんだ

 

俺もそうだった。救う方法なんていくらでもあるかもしれない。でもどう考えたって救えるとは思えないと、最善の方法しか選ばない

 

それが自己犠牲

 

彼女も同じだっんだろう。自分を捧げれば全部救えると思っている。俺は代わりが居るから自己犠牲をしても構わない。もう黒竜もいないんだ。世界の脅威が消えた今なら死んで構わないと思っている。

 

でも彼女は違う。彼女の代わりは居ない。俺たちの主神は彼女だけ

 

だから

 

 

「だとしても、お前の言う言葉を聞くつもりはない。お前のすることを止めさせて貰う。これは俺の決めたことだ。お前達は?」

 

「・・・・・・ジークさんの言う言葉はわかりませんけど、僕も反対です!」

 

「ヘスティア様!止めさせていただきますよ!」

 

「俺たちの主神は貴方だけです!」

 

「ヘスティア様!止めさせていただきます!」

 

「こんな結末は認めません!」

 

 

そうして俺たちは武器を取る

 

ヘスティアがそこまで自分のすることを曲げぬと言うのなら、なら無理やりでもその炎から連れ出すまで、どうあってもヘスティアの犠牲は認めない。それに条件にもなっている。もしもヘスティアが良からぬことをしたら主神の命令を無視してでも止めると、条件通りに動く

 

これが俺たちの選択だ

 

 

「そうか・・・・・なら・・・・・反逆の芽も潰すまで」

 

 

「っ!」

 

 

ヘスティアは俺たちに儀式の邪魔をさせないと、突然俺たちに手を翳した

 

その瞬間

 

 

ビュン!!!

 

 

彼女の手から小さな光が発光し、その瞬間

 

 

「な!?か、体が!!」

 

「お、重い!?」

 

「な、なんで急に!?」

 

「どうして武器が・・・こんな重く!?」

 

「な、一体何を!?」

 

「く!ヘスティア!まさか!」

 

 

 

「ああ、ジーク・フリードと同じく、恩恵を封印した」

 

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「まさか・・・・ベル達にも恩恵を封じるとは・・」

 

 

ヘスティアがベル達に放ったのは

 

 

恩恵の封印だった

 

 

これで体はステイタスの数値関係なく、人間同様の重みになり、魔法も放つこともなければ、スキルも発動しない。これでレベル1よりも弱く、ほぼ一般人と代わりない無力となった

 

 

「そ、そんな・・・・ファイアボルト!ファイアボルト!!ファイアボルト!!!」

 

「ベルの魔法が発動しねえ!?」

 

「無駄だ。恩恵を封印されては何もできない」

 

「どうしてジーク様はもう封印されているのです!?」

 

「皆には言わなかったが、俺は黒竜の侵食が早まるからと、ダンジョンに行かせないように、ヘスティアが二週間前に俺だけ恩恵を封印した」

 

「な!?だから船の上では、何かいつもよりも動きが変でしたんですね!」

 

 

ここに来る途中の船の上でも、俺はその時からもう恩恵を封じられていて、いつものような動きはできない上に魔法も発動もできないから船の上では普通に何も壊さずに済んだ

 

本当の理由は皆よりも早く恩恵を封じられていたから、事はすぐに済むと言うから、ヘスティアには必要ないと言われ恩恵は封印されたままだった

 

 

「まさか他の者達まで恩恵を封じるとは、そこまでお前はその儀式をすると言うのか、ヘスティア!」

 

 

「この物語に英雄も眷属も要らぬ、これは『神の決着たる物語』である、お前たちは不要だ」

 

 

「神様!!・・・・・な!?」

 

「ヘスティア様の周りにある炎が襲ってくる!?」

 

 

「ふはははは!!愚かな主神に力を剥奪されるとは!愚かで他ならない!悠久の女神よ。今後は我をお使いください。貴方様のために足として働きましょう」

 

 

「エピメテウス。お前・・・・・」

 

 

眷属はもう使えないからと

 

この隙にエピメテウスは、彼女を利用しようと、自分が眷属の代わりに働く名乗り出た。彼女の力を利用しているのが目で見てもわかる

 

だからなのか

 

 

「近づくな糞餓鬼。貴様ごときの力など不要。復讐などと、そんな小賢しい真似しかできぬ愚かな古き英雄などに用などない」

 

 

「っ!?」

 

 

「貴様も去れ、我が神殿の儀式に誰一人として不要だ、ふん!」

 

 

「く!ぐわああああああああ!!!」

 

 

「エピメテウス様!?」

 

 

ヘスティアは誰一人として、この儀式には誰も借りずに、全て自分一人でやり遂げると告げ、エピメテウスですらも、この神殿の外へと、炎の波で追い出した

 

 

「ヘスティア!お前はそうまでしてそれを望むか!」

 

 

「いかにも、誰一人として邪魔はさせぬ!」

 

 

「く!!」

 

 

今度は俺たちにもヘスティアは炎の波を流れさせ、全員この場から離れて貰おうと、全員に火を放つ。神殿に誰一人として近づかせないため、儀式を一人で成功させるために

 

 

「さらばだ。我が愛する眷族たちよ、これは私がすべき事なのだ」

 

 

「「「「ヘスティア様!!」」」」

 

「ヘスティア様!」

 

「神様!」

 

「ヘスティア!」

 

 

ヘスティアの決意は変わらず、俺たちに火炎を放った、イリアを含め、全員が神殿の外へと追い出されてゆく。

 

ヘスティアの思うがまま、神殿にはヘスティア以外誰一人として居なくなった

 

残された彼女は

 

 

「許してくれ眷族達、これが・・・・・私の望みなんだ。プロメテウス。これが私の選択だ」

 

 

誰もいないこの間で、彼女は誠の言葉を口にして、儀式の準備に取り移る

 

誰一人として、彼女のすることを止めることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ!」

 

 

「「「「「「ぐう!!」」」」」」

 

 

全員ヘスティアの火炎に吹き飛ばされ、全身燃えることなくオリンピアの外壁の外まで飛ばされていた。

 

全員無事ではあるが、恩恵を封じられたからなのか、まだ体に重みがあるのか、イリア以外今までのようにすぐに立ち上がれずに、ゆっくりと立ち上がる

 

 

「全員無事か?」

 

「ああ!なんとか!」

 

「でも!体が重く・・・・」

 

「恩恵を封じられているだけで・・・ここまで」

 

「ステイタスが無くなるだけで・・・ここまで体が重いなんて」

 

「ベル!大丈夫!?」

 

「なんとか・・・っ!神様は!」

 

「あそこだろうな」

 

 

全員無事であることは確認取れた、だが、恩恵を封じられているだけで、感じたことのない重さに身動きがあまりに慣れず、これが本来の重力であるのに、ヴェルフ達は慣れない

 

それでもベルは、ヘスティアが心配で神殿の方を見つめる

 

 

「今から戻って・・・っ!?」

 

「なんだ!?」

 

「っ!ヘスティアが結界を貼った!」

 

 

ベルは一刻も早く、ヘスティアを連れ戻そうとあの神殿へと戻ろうとするが、その前にオリンピアの外壁まで、炎の結界を貼った

 

しかもそれだけではない

 

 

「なんだあの塔は!?」

 

「神殿合った場所の周りから三つの塔に変わった!?」

 

「まさか・・・・・ヘスティアの神殿か?」

 

「ヘスティア様の神殿!?」

 

「天の炎で天界にある彼女の神殿を再現したんだ。彼女はこの土地全てを変えることができるようだ」

 

「そんな・・・確かあれは神の力と同じなんですよね!?」

 

「ああ。俺たちじゃあ無理だろうな、彼女は儀式を始める準備にかかっている」

 

 

方法は無いわけでは無いが、今乗り込んだにしても、何もできないまま、また追い出されるだろう。ヴェルフ達があまりにも恩恵を封じられたことに重みを感じて、普段の動きが出せていない

 

そんな中でも、ベルは

 

 

「でも!あの中に神様が!」

 

「やめろベル。今のお前では何もできない」

 

「ですけど!」

 

「恩恵を封じられたお前に・・・何ができる?」

 

「っ!?それは・・・・」

 

「今乗り込んでも、また外に出されるだけだ。おまけに中には炎人や炎鳥も居る。恩恵を封じられている俺たちでは太刀打ちはできない」

 

「くそ!どうしてなんですか!・・・神様!・・・・・・僕は・・・・なんでこんなにも弱いんだ!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

今のベルを見て思う、昔の俺と同じだ

 

フレイを亡くした時と同じ痛み、主神が犠牲になろうとしているのに、俺たち人間は何もできずに居る。結局俺たちはいつも無力、人間には所詮限界があると

 

認める他ない

 

この現状を受け入れる他

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて、諦めるものか

 

 

「おい、いつまで見ているんだ。いい加減、力を貸せ。老いぼれの神」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「え?」

 

 

こうなるだろうと思って、俺は助っ人を呼んだ。どうせヘスティアはこの道を選ぶだろうと、力になれる人物を俺が呼んだ

 

そしてその神とは

 

 

 

「まったく、お前さんはあの男に似て、変に鋭いな」

 

 

現れたのは、古い羽織りをしてフードをしている。ディアンケヒトよりも体格の大きい白い髭の生えたご老人。俺はここにたどり着いた時には、今まで俺たちの行動を遠くで見ていたようだが

 

俺たちの近くに来たのか、やっと助けてくれるようだ

 

そしてこの人物はベルが知る人物

 

 

「お、お祖父ちゃん?」

 

「「「「「え!?ベル(様)(殿)の祖父!?」」」」」

 

「こんなにもなって、ワシが居なくなっても元気にやっとたか?」

 

「嘘、なんでここに、どうして生きて・・・・」

 

 

そう、この人物こそベルの祖父

 

まさかここで鉢合わせするなど、ベルからにしても思いもしなかったことだろう

 

彼がどうしてここに居るのかと言うと、その理由は

 

 

「俺が呼んだ、力を貸して貰おうとな、名前は?」

 

「キュロスと呼んでくれ」

 

「キュロスか、わかった。力を貸して貰えるか?見ての通り、彼女にやられた」

 

 

まだ終わりじゃない。この男を呼んで助太刀を頼んだのはこのため

 

ヘスティアが何かしらの計画を企てている口ぶりを察して、俺は彼を予め爺さんに頼んで探し連絡をして、ここへと来させた

 

ヘスティアの思惑通りにはさせない

 

 

ここからは俺たちが変える

 

 

 

これは神の決着たる物語じゃない

 

 

 

神に抗い全てを変える物語




次回

聖火の心火編
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