ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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諦めない炎光

 

 

 

 

そして俺たちは館に出ると、各場所から炎人達がここまで迫ってきている。もちろん全て冷静に対応する

 

 

「俺が前衛に出る!戦える者は武器を取って難民を守れ!アポロンの眷属は難民でも守っていろ!俺の指示に従うなんて反吐が出るだろう!ヒュアキントス!さっさと動け!!」

 

 

「貴様に言われなくても、わかっている!」

 

 

まずは現場対応の指示を戦える者だけに支持する。アルテミスとアフロディーテの眷属には指示はできるが、アポロンの眷属は当然俺の言うことなど聞かないから、アポロンの本来命令されていた仕事を優先に動かす。俺の言葉なんて聞きたくないだろうしな、俺もこいつらの聞く気はないが

 

 

「ふん!・・・・この穴、やはりあの炎で開けた穴か、まんまと誘導されて、この集落を攻め込むとはな、巫女とは思えない発想だ」

 

 

俺は前衛に出て、炎人達をグラムで蹴散らすと、俺は奴らが出てきた穴を確認する。もちろんその穴は奴らが開けた穴ではない。炎人にそんな知恵と知識はない。奴らは目の前にいる人物に襲いかかるしか脳がない

 

もちろん巫女達の仕業、オリンピアの巫女達の、となればだ

 

 

「おい、そこに居るのはわかっている。出てこい」

 

 

「我々の場所を簡単に・・・・」

 

「流石は黒竜殺しのヘラクレス」

 

 

「ミヌキア!?」

 

「アエミリア!?」

 

 

「残念です。巫女長、イリアまで、私たちを裏切るなんて・・・」

 

「これは私たちオリンピアのためだと言うのに・・・」

 

 

木の物陰から、ミヌキアとアエミリアの二人の巫女が現れる。

 

やはりここを誘導したのは教団の巫女、間違いないと思い、俺は姿を表せようと暴いた。そして俺たちの前に現れるが、間が悪かった。なぜなら俺の隣には難民を助けようとしたイリアとレアが居るからだ

 

だが、巫女達からすれば都合がよかった

 

それは

 

 

「巫女長、イリアも、その英雄ヘラクレスとその他のウェスタ様の眷属を引き渡してください」

 

 

「「っ!?」」

 

「ほう、俺たちを人質にして、ウェスタの脅しを掛けて思い通りにするつもりだな?」

 

 

「っ!流石ですね。でしたら大人しく投降しなさい。そうすればあなた方の命も保証します」

 

 

「お前らは馬鹿だな。それでも巫女か?正しい道を歩めなくなると、そんな汚らしい存在になるんだな?」

 

 

「な、なんですって!」

 

 

「エピメウスやウェスタが、本気でお前らを助けると思っているのか?」

 

 

「「っ!?」」

 

 

「あの男の野望は、世界を壊すことだ。そこにはオリンピアを殺すことも含まれている。お前達は滅亡を自ら作っているのだぞ?それでもお前らはこんなことをするのか、だとするなら・・・お前らは巫女でもなく、ただの人殺しだな」

 

 

「っ!なにを!」

 

「巫女長もイリアも!この英雄に騙されているだけです!耳を貸してはいけません!もう一度私たちの所へ戻ってきてください!この英雄の耳を傾けてはいけません!」

 

 

「だそうだ。お前らはどうする?滅亡を自ら作るか?それとも今この災害を破壊して新しいオリンピアを築き上げるか?どっちだ?」

 

 

「「・・・・・・・・」」

 

 

レアとイリアは選択を迫られる

 

このままエピメテウスの所へ戻って野望のために手伝うか、俺たちと共にヘスティを止めて、エピメテウスの野望を打ち砕いて、一からオリンピアをやり直すか

 

その二人の答えは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌よ」

 

「ええ、私もお断ります」

 

 

「「な!?」」

 

 

「それがお前らの答えでいいんだな?」

 

「ええ!こんなの間違いよ!人を傷つけておいて、なにがオリンピアのためよ!」

 

「私もお断りします!私は今までどうかしていたんです!こんなのが娘のためになるはずがないって、どこかでわかっていた!だからもう、娘達の恥じない母親になるために、私はもう過ちを繰り返しません!」

 

 

イリアとレアは拒んだ

 

こんなつもりじゃない、これが望みではない。と、やっと自分達の過ちに気づき、今度はそれを正そうと、かつての仲間に反旗を翻す。

 

これが彼女の決意だ

 

 

「だけど、私たちが裏切ったことには変わりないから・・・」

 

「私たちを打ちなさい!!」

 

 

「な!?」

 

「なにを!?」

 

 

「私たちが裏切ったことは変わりない。ならその手で裏切り者を、私と巫女長を殺しなさい!」

 

「あなた達に揺るぎがないのなら、私は巫女長ではなく・・・シオンのシアテの母親として、罰を受けましょう!」

 

 

「「ぐ!?」」

 

 

「打ちなさい」

 

「射て」

 

 

「「撃ってみろ!!!」」

 

 

「「っ!?」」

 

 

「覚悟の決意は見られらた。もう十分だろうに」

 

 

俺の前に立ち、イリアとレアは両手を広げて、俺の盾となった。覚悟はもう決まっている。だが、仲間を裏切った罪もはある。だからその報いは、今ここで炎で撃ち殺せと、ミヌキアとアエミリアの前に立ち塞がる

 

その覚悟を目の前にした二人は、それを目の前にして、炎を打つことはできなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオン!!!』

 

 

「「っ!?」」

 

 

「なに!?今の!?」

 

「これは・・・・・竜の鳴き声!?」

 

 

「はあ・・・・・まったく」

 

 

突然、後方の方から竜の泣き声が聞こえた

 

おそらく、炎人たちが一つの炎に集まり、超大型級モンスターに変身したからであろう。原初の炎は人の記憶を盗み、かつて自身が戦った相手に変身できる能力もある

 

まあ、そこはいいのだが

 

 

俺はそれを聞いただけで、最悪だと思った

 

 

その竜は間違いなく、『俺の記憶』から出てきている

 

 

過去に俺はその竜を殺した。俺が最もこの世で一番に憎む存在、俺が必ず怒って殺しなくてはならない存在。居なくなって納得した竜。その竜に具現化されたことで、俺は更に怒りを増すような感情になる

 

今最も出てきて欲しくない存在。炎人たちが一つとなって具現化したモンスターは

 

 

 

 

 

 

 

 

「原初の炎め、俺の記憶から『隻眼の黒竜ファフニール』を出したな」

 

 

「「え!?」」

 

 

間違いなく、あの黒竜を、俺の記憶から読み取ったのだろう。まさか原初の炎が俺の記憶を読み取って、黒竜に具現化するとはな

 

その証拠に

 

 

『ウオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「「な!?」」

 

「出てきたな。俺の憎き黒竜め」

 

 

森の奥から、次々と大木を倒して、出てきたのは、一匹の全身黒い炎でできた黒竜

 

 

黒竜ファフニール

 

 

またも、俺の目の前で姿を表した。

 

ああ、イラつくよ。感情を抑えられているのに、顔には出ていないのに、お前の存在だけは憎い。一年前は、

 

 

そう思っていたのだがな

 

 

「こ、黒竜だと!?」

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「あれが・・・・フレイ様を殺した黒竜!?」

 

「嘘だろ!?ゼウスとヘラの眷属を滅ぼした黒竜が!?」

 

 

「まさか・・・・・マキシマム達が倒しきれん黒竜に変身するとは!ヘスティアの炎め!」

 

 

突然、あの黒竜の出現に全員は焦る。

 

無論、ヘルメス達神々は、まさかこんな所でレベル9でも勝てない世界最強の竜がまたも復活するなど、もはやもう手の打ちどころがない。しかもちゃんとしたデカイサイズで出てきた

 

それを一番に焦るのはキュロス。キュロスはかつてこの竜に痛い想いをされた。またもこんな状況で出てくるなんて、キュロスでもこの状況は危険だと察している

 

 

当然、その黒竜はそんな考えをさせる余裕もなく、攻撃を繰り出す

 

 

『ウオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「っ!あの技は!」

 

 

黒竜は右腕から黒い炎が集まり、奴は握り拳を作って地面に叩き出そうとする。

 

その技は俺が使っていることも含めて、あの技は俺も知っている。だとしたらこの集落は

 

 

 

 

崩壊する

 

 

 

「全員衝撃に備えろ!!スヴェルヘイム!!!」

 

 

『ウオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

黒竜が右拳を地面に叩くと、そこから黒い炎が渦巻いた。それも全方位に、俺もこれを使っているから、俺も一度受けたから、奴の技の全てを知っている

 

もちろんん完全に止められるわけではないが、少しでも奴の攻撃を、防御魔術で盾を展開して止める

 

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

『ウオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「「「「「うわあああああああああ!!」」」」」」

 

 

黒竜の黒い炎と俺の防御魔術がぶつかる。

 

黒い炎は止められても、衝撃波までは止めることはできず、その衝撃で全員が吹き飛び、集落に建てた建物も吹き飛ぶ

 

全員にダメージは防げても、奴の力は原初の炎で似せたとしても、力も完全にコピーしてある

 

つまりは本物である

 

 

「う、嘘・・だろ・・・・・」

 

「まさか・・・・黒竜までも・・・」

 

「具現化してくるなんて・・・・・」

 

「これが黒竜・・・・・なんて力だ・・・」

 

「これが・・・ゼウスとヘラが勝てなかった・・・怪物・・・・」

 

 

俺の防御魔術が無くなり、全員吹き飛んで再度立ち上がるが、黒竜を目の前に絶望する

 

あのレベル5と4の強さを持っていた。ヘクトルやヒュアキントスやアクタやカリスですら、敵わず

 

原初の炎が人の記憶から、過去に戦った怪物に似せて具現化されると聞くが、まさか一年前に俺が殺した。ゼウスとヘラの眷属が勝てなかった怪物になるなど、完全に予想外の事態

 

この最悪の事態に、流石にまずいと気づいたアエミリアとミヌキアも、他の兵士を連れて逃げ出す

 

まだ難民の避難も住んでない、このままでは全滅もあり得る

 

 

「く・・・このまま終わるなんて・・・・」

 

 

ベルが無理に立ち上がろうとする。

 

ここで終わるなんてできない。まだヘスティアを助けてもいない。そんな状態で、まだ救いきれてない人も居るというのに、ベルは諦めきれない

 

でも

 

 

足が震えていた

 

 

これが黒竜、これが世界最強のドラゴン、三代クエストの最後のモンスター、その強者を目の前にベルは足を震えていた。

 

これがアルバートを殺したドラゴン、オラリオ最強だったゼウスとヘラの眷属を壊滅させたドラゴン、そしてアイズの両親を殺したドラゴン

 

確かに、このドラゴンを目の前にして、誰も恐れる理由がベルには伝わる

 

一度は眼にしている。それは俺が変身した時、俺がこの姿になった時、その時は俺が味方だからよかった

 

だが

 

 

それが今度は敵として出てくるとなると、足が震えて動けない

 

 

奴の覇気がすごいのか、迫力や圧倒的な力を見せつけられたベルは、足が震えて動けない。あの強靭な体をしたドラゴンに、絶対になにもできないと痛感してしまう

 

今にも逃げ出したい。でも逃げ出したらみんなが死ぬ、でもこのままだと自分も死ぬ。奴の前に立っているのに、もう引き下がれない所まで来ているのに、怖い

 

 

「た、た、戦え・・・戦うんだ・・・・戦え・・・足なんか・・・震えるな!!」

 

 

『ウオオオオオオ!!!』

 

 

「ひ!・・・ああ・・・・あああ」

 

 

何度も自分の足に、戦え、戦えと声を掛けて震えを無くそうとする。だが次の瞬間、奴のハウルを聞いた瞬間、せっかく立ち上がったのに足を挫けてしまう

 

こんな所で挫けて倒れるなんて、自分が情けないと思う。でも怖くて、彼は涙が止まらない。死ぬのが怖い。ファフニールの能力である恐怖の力に、ベルは抗えない

 

 

そこへ

 

 

「あ!?」

 

 

『グウウ!?』

 

 

「下がれベル、俺が相手する」

 

 

そこへ、俺がベルの前に立って、ファフニールに向けてグラムを向ける

 

一度殺した竜、再度倒すと、俺は奴の迫力があろうと恐れずに、前に出る。フレイの力を扱う今の俺なら、またあの一年前のように倒せると、奴の力など恐れずに立ち向かおうとする

 

 

「ジ、ジークさん!」

 

「下がれベル。あとは俺がやる」

 

「で、でも!」

 

「無理するな、お前は十分頑張った。あとは俺がやろう。俺は奴を一度は殺した男だ。今更こいつがまた相手でも恐れない」

 

「ぼ、僕も!」

 

「下がれと言ったはずだ。今のお前ではこいつは倒せない。無理に死に急ぐな」

 

「そ、それでも・・・僕は!!」

 

 

「大丈夫だ。これが終わったら、みんなと一緒にヘスティアを連れ戻そう。お前は良い勇気を出した。あとは俺が繋ごう!」

 

「ジークさん!!」

 

 

そう言って、俺は一人で奴に立ち向かう。今の俺にはあの時同様の兄の力、それだけでまだ戦うには十分の力だった

 

 

「来いファフニール!!あの時同様、引導を渡してやる!!」

 

『ガアアアアアアア!!!』

 

 

そう言って、俺が先に奴を斬ろうと、戦闘を先に始める。俺が恐れずにあの黒竜ファフニールに立ち向かう姿を見て、ベルは

 

自分が情けなくなり、下を俯く

 

 

「どうして僕は・・・こんなにも・・・」

 

 

悔しいと同時に情けない

 

ヘスティアを助けたかったのに、今度はまた俺にも助けられて、英雄になりたかった自分が、今目の前に居る敵に敵わずに怯えて挑もうとしない自分をベルは憎む

 

こんなじゃあ英雄にはなれないと自分が一番わかっている。でも立ち上がれない。あの世界三大クエストの最後のモンスター、アイズが殺したかった竜にして、神フレイをも殺した竜

 

 

隻眼の黒竜を目の前に震えている

 

 

俺が未だに、奴の姿を見にしても、怯えることなく立ち向かっている。必死にも、恐れが無いからなのか、今もあの強敵を相手に恐れずに戦っている。あの姿を見て、勇敢だと思うと同時に

 

 

羨ましかった

 

 

どうして、俺に比べて自分は弱いと、ベルは自分を憎む。ここで立てばいい。奴を斬りに行けばいい。そんな簡単なことだった。

 

 

それができない。死ぬのが怖くて

 

 

立ち向かったのはいいが、立ち向かったとしても完全に殺されるのがオチ。見えているんだ。自分の今の力だけでは勝てないと、ゼウスとヘラの眷属を全滅した竜が、ここまで強大で敵わない存在だったなんて、思いもしれなかった。でもここで自分も一緒に俺と共に戦わなければならないと、英雄になるのならそうすべきだと、ベルだってわかっている

 

でも

 

 

 

怖い

 

 

怖くて震えている

 

 

自分だけじゃない。ヴェルフ達も震えている。これがレベル9でも勝てない竜。そんな姿を眼にした者は足が震えて動けない。怖いのだ。完全に死を招くだけ、わかっているのだ。みんなも、立ち向かっても殺されるだけだと

 

 

でも

 

 

ベルは

 

 

 

情けなさで、涙を流してしまう

 

 

ここで立って俺と共に戦うだけでいい。そんな簡単なことができない。死ぬのが怖いだけで動けない。戦えばいい。それだけなのに

 

 

そんな簡単なことができないだけで、悔しくて涙が出る

 

 

俺は恐れることなく立ち向かっている。そして勝っているのだ。黒竜を相手に、それも恩恵無しに、英雄ヘラクレスと、またも新しい名が追加されただけのことはある。でも、それじゃあ自分はなにもできないと、また足手纏いで終わっていると、悔しくて涙が出る。決して恐怖の涙ではない

 

 

いつも俺に助けれてばかりで強くなどなれていない

 

 

いつもベルは思う。今までいろんな戦いをしてきたが、それでも生き残れたのは俺のおかげでもあると、ベルが自分はなんの力にもなっていないと、わかっている。だからどうしてここで立てない。これじゃあヘスティアにも勝てないと、自分がわかっているはずのなのに

 

 

「僕は!・・・・・僕は!!!」

 

 

何度でも膝に地面を着けて動けず、両手で地面を叩く。立て、立て立て立て、戦え、戦え戦え戦え、と、自分の体に言い聞かせるように、心で叫んでいる。でも動けない。自分たちの団長が今も必死に一人で戦っていると言うのに、以前は俺が世界の敵になった。その時は助けに出た、でも今回は相手の強大さに圧倒され、動けない

 

ここでまた何もできないのか

 

 

ここで、ただ俺が戦っている姿を見ているのかと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから

 

 

「ベル・・・・・泣いてもいい」

 

 

「っ!・・・・・お爺ちゃん」

 

 

キュロスが横から入ってきて、ベルに近づく。

 

大神が。いや・・・・・・・ベルの祖父が、孫に勇気を出させるために、助言を出すために近づいた。勇気を重ねるために、大神は白き少年に英雄への道へと導く。

 

そう、今俺が自分の意志で立っているわけではない。英雄の道に

 

 

「ベル。ワシにはお前の父親を眷属にしていたのじゃが、お前さんの父親はワシに似て、臆病ではあるが、恐怖に立ち向かう有志を持った息子じゃ」

 

「え?僕のお父さんが?」

 

「ああ、お前さんは、まだ顔を見てはいないと思うが、お前さんに似て臆病ではあるが、最後まで粘る男であった。その理由は女のため、仲間や家族のため、いろんな者達のために、泣きながらでも立ち向かった」

 

「お父さんが・・・・」

 

「あの黒竜が相手でも、きっとお前の父は立ち向かったじゃろう。死ぬのが怖くてもな、なぜなら一番怖いものがあった。それは仲間を失うことじゃ」

 

「っ!?」

 

「自分が死ぬよりも怖い。その恐怖を実現しないために、ワシの眷属の中で一番弱いクセに、誰よりも先に立ち向かったのじゃ」

 

「お、お父さんが・・・」

 

 

「ベル。泣いてもいい。泣いて情けないことはない。誰でも死ぬのは怖いのじゃ。その恐怖は誰にでもある。泣いてもいいのじゃ。死ぬのが怖いのは誰でもあることじゃ」

 

「死ぬのは誰でも・・・・・」

 

「じゃがお前さんは・・・・・仲間を失っても怖くないか?」

 

「・・・・・・・」

 

 

キュロスは教えた言葉は、死ぬのは誰でも怖い。でも仲間を失っても怖くないのか、怖いのは誰でも同じだ。俺でも怖いものだってある。それが仲間の死だ。だから俺は怖がらずに立ち向かえる。仲間を死なせたくないから、だから俺は立ち向かう

 

 

なら、ベルはどうする

 

 

仲間がやられそうになっても、その恐怖を味わうか、怖いのは皆一緒だ。でもそれを克服してでも仲間を守らなければならない。以前ヘスティアを止められなかった。このままではヘスティアが死んでしまう

 

その恐怖を

 

 

味わうことになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルは

 

 

それだけは、嫌だった

 

 

だから

 

 

「ぬう!!うわあああああああああ!!!」

 

「っ!ベル!?」

 

 

震える足を、無理にでも動かすために

 

 

自ら自分の足に、ヘスティアナイフを刺した

 

 

仲間を失う恐怖を抱くくらいなら、自分の足に風穴を開けてでも動かそうとする。今祖父の言葉を聞いて、やはりこのまま怖気ついてはいけないと、自分も戦いに出ようと自らの足にナイフを突き刺す。痛みを与えれば震える足も少しはマシになると、ヤケを起こすように自身の足に恐怖ではなく痛みを走らせる。それも両方に

 

 

「怖いなんて言ってられない!僕が本当に今必要なのは強さなんかじゃない!」

 

 

英雄になるのに、力だけではなれるはずがない。今祖父の言葉を聞いて、ここで怯えている場合ではないと、今もハッキリ伝わる

 

ヘスティアが今ここに居なかろうと、そんなことは関係ない。ヘスティアが居なくても戦わなくては、もう俺もヘスティアも犠牲にならないためにも、もう二度と大事な家族を失わないためにも

 

今、自分が必要なのは『強さ』ではない

 

今自分に必要なのは・・・・・・

 

 

 

 

「あの黒竜に立ち向かう・・『勇気』だ!!!」

 

 

 

 

「ベル・・・・・・」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

今必要なのは勇気だ

 

アルバートがかつてオラリオを守るために食い止めた黒竜、自分では勝てないことくらいわかっている。自分だってまだ弱い。レベル4になっても

 

でも

 

 

だからと言って何もできないで終わりたくない

 

 

ベルは何度でも抗う道を選ぶ。ヘスティアが望んだことであろうとも、俺が言っていた『犠牲は付きもの』と天秤を出されても

 

 

 

その全てに抗おうと、彼は心を勇気で燃やした

 

 

 

だから

 

 

 

 

「ファイア・ボルトオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 

『グオ!?グウウウゥゥ!!』

 

 

「っ!ベル!」

 

「ベル。そう。それでいい・・・・・・それこそ・・・・・・ワシの自慢の孫じゃ!」

 

 

ベルが

 

 

『魔法を放った』

 

 

恩恵が封じられているのに、魔法なんて使えるはずがない。だが、確かに彼の右手から、彼が放つ得意魔法にして、たった一つの魔法。その炎を確かに彼は放った。その一撃にファフニールは怯む

 

だが、恩恵を封印されているのに、どうして魔法はが使えるのか

 

 

そんなことは常に一つであり、俺はわかっている

 

 

 

「そうか、やはりお前ならできると思った」

 

 

 

恩恵が封じられているのに、魔法が使える。ヘスティアは確かに俺たちに恩恵を封じるために『神意』を言い渡した。それは間違いない

 

だが、それで、なぜ魔法が使えるのか

 

 

その答えは一つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘスティアの神意を『心火を燃やして』打ち砕いたか!」

 

 

 

そう、ただの志で、ヘスティアの神意を打ち砕き、恩恵の封印を破壊したのだ。

 

俺と共に強敵に挑む勇気一つで、ヘスティアの神意を跳ね除けた。今の彼はレベル4の強さを取り戻したのだ

 

 

だが

 

 

それでも、レベル4だけの力では黒竜を倒すことはできない。相手はあのアルバートと言う大英雄ですら勝てない竜だ。そんな竜にどうやって勝つか

 

 

 

 

そんなことは、ベルにおいてはどうでもいい

 

 

今は勝つまで諦めないと言う気持ち一つのみ、作戦、勝機、力の差、そんなことは言われなくてもわかっている。無謀であることも

 

だが

 

だからと言って俺一人に戦わせて、自分が何もしないなどと、そんなことは我慢できない。英雄になりたいのに怯えてどうする。死ぬのが怖いのは英雄であってもある。それでもこの黒竜に勝ってヘスティアを助ける

 

それが

 

 

 

「勝つまで諦めない!それが僕のなりたい英雄だあああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

彼の体から白い光が発光する。

 

彼のレアスキルである。『英雄願望』が発動したのだ。想い一つで発動する力、その力はなんでも強敵を薙ぎ倒してきた。たかが想い一つで、絶対的な力を前にしてでも、その想いをそれに対抗する術にして、黒竜に立ち向かう

 

それを見た俺とキュロスは

 

 

「ベル。そうだ。望め。英雄になりたいその夢を!」

 

「それこそ、黒竜に立ち向かうことのできる。そしてあの男に立ち向かえる。『パンドラの希望』じゃ!!」

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

俺もキュロスも、必ずやり遂げると信じていた

 

ベルは優しい子ではある。だから色々甘いところがあると、悪い癖が多い子供だ。

 

だが

 

本気で守りたいものがあったら、『誰よりも先に』駆けつけて行く。

 

 

その姿を見たキュロスは、『あの父親』と同じ背中をしていることに気づいた。あの臆病だった『自分の息子』と『孫』が

 

重なるように、あの憎き黒竜の火影に挑む

 

 

「うおおおおお!!」

 

 

『グオ!ガアアアアアアア!!!』

 

 

「ぐ!!」

 

 

だが、やはりそれでも足りない

 

ベルがせっかくの勇気を出して、英雄願望を発動しても、まだ力負けがある。ファフニールのハウルで吹き飛ばされそうになる

 

相手は火影であろうと、黒竜ファフニール

 

ゼウスとヘラの眷属を全滅させた無敵の竜だ。そんな強敵に、英雄願望でも勝てない

 

だが

 

 

「ベル!俺に合わせろ!奴を一度倒している俺と共に!」

 

「あ!はい!」

 

 

「「うおおおおおお!!はあああああ!!」」

 

 

『ガアア!?』

 

 

俺と共に戦えば、奴の力に対抗できる

 

一度は俺が殺した竜だ。俺はもう奴の行動は学習済み、アルバートのように滅んだりすることはない。俺とベルの力が合わされば勝てない存在など居ない。今心に火を灯す俺たちなら

 

 

俺のフレイ・リーベとベルの英雄願望が

 

 

ファフニールのハウルを俺の剣とベルのナイフで刃を合わせて衝撃で吹き飛ばす

 

 

『グウウ!ガアアア!!』

 

 

「っ!ブレス!?」

 

「俺が盾になる!俺の背後に着き、奴の目玉の片方を抉れ!アルバートのように!」

 

「はい!」

 

 

もう黒竜の行動は学習済み、奴の耐性も全て、奴のブレスはカース付き、カースを含まれるブレスだ。喰らったら魔法が使えなくなる。だからカース無効のレアスキルを持つ俺が盾になれば良い

 

 

「はああああ!!今だ!!」

 

「はい!うおおおおおおおおおおおお!!でやあああああああ!!!」

 

 

『ガアア!!??』

 

 

その間にベルは隙を狙って奴の目玉にナイフを突き刺すなど

 

もはや、俺とベルは恐れることはない

 

二人一緒なら

 

 

「俺とお前で、アルバート達を超えるぞ!!」

 

「はい!!」

 

 

今から俺たちがゼウスとヘラの眷属やアルバートを超えて行くと、先陣を切る

 

相手が黒竜だろうと戦う以外道はない。勝てない相手が居ようと、ここを突破しなくてはヘスティアを助けることもできない。ならば死に物狂いで黒竜を倒すまでだと

 

俺とベルは奴に立ち向かう

 

 

 

 

 

 

そんな姿を見た、今も倒れるヘクトル達は

 

 

「アキレウス。あの黒竜を相手にあそこまで・・・」

 

「あの強大な力を相手に・・・・」

 

「あの黒竜を相手に恐れ知らずとは・・・」

 

「ジーク様も・・・・あの少年も・・」

 

「なんて力を持っているんだ・・・」

 

「私たちでさえ・・・今の攻撃を受けて・・・立ち上がるのが難しいと言うのに・・・」

 

「ジークさん・・・・フレイ様の力を受け継いで・・・・ここまで貴方は・・・・」

 

「一体・・・・何をしたって言うんだい」

 

「くそ・・・あのベル・クラネルも・・・・ジーク・フリードも・・・・ここまで私よりも・・・」

 

 

ヘクトル、カリス、アクタ、ベックリン、サンドロ、アスフィ、リュー、アイシャ、ヒュアキントス。

 

俺たちが戦う姿を見て圧巻していた。まだレベル9にもなっていない冒険者が、あのゼウスとヘラの眷属でさえ太刀打ちできなかった黒竜を相手に、俺とベルが

 

 

奴の力より、勝っている

 

 

たかがレアスキル持ち、そのレアスキルの力だけで、奴の闇を討ち払っている。たかが想いだ。想い一つで、それを力にして黒竜の闇を超えている。

 

そんな常識外れの力を吐き出すだけで、黒竜を打ち破ろうとする姿を見て、自分たちも動こうと思うが、先ほどの攻撃で怯んでいるため、中々に立ち上がれない。しかも奴は自分たちの武器や魔法も効かない究極の硬貨を持つ鱗の黒竜。俺とベル以外では勝てないと見極めている。自分たちは何もできないと理解しているのだ。ヒュアキントスでも勝てないことくらい理解しているから悔しい

 

 

しかし

 

 

 

「リリスケ!お前にこれだけの魔剣をやる!バリスタでジークとベルの援護だ!撃ちまくれ!俺は右で魔剣を降るから、お前は左だ!」

 

「はい!何がなんでもこっちに注意を逸らします!」

 

「命さま!こっちに大量のエリクサーを用意しています。臆することなく行ってください!援護するマジックアイテムはたくさんあります!」

 

「はい!竜の鱗が硬くても、眼や口までは硬くないはずです!眼を潰すなりにして、黒竜の身動きを止めます!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

だが、そんな中で俺とベルの団員である。ヴェルフ、リリルカ、春姫、命が、俺とベルに続いて援護をする

 

相手は黒竜だと言うのに、ヴェルフ達は俺とベルと違って、未だに恩恵は封印されている。それでも少しでも役に立てようと、援護なり支援なり、なんでもいいから勝機に繋がる術を見つけて、彼らも立ち向かう

 

 

そんな無謀な姿に、アスフィは血迷ったかと、ヴェルフ達に注意する

 

 

「何をしているんですか!?貴方たちは!?」

 

 

「あ?見てわかんないのか?援護だ!恩恵は封印されても魔剣は打てる!」

 

 

「ですが!相手はあの黒竜ですよ!?」

 

「あの二人に任せておけば・・・」

 

 

「だからと言って!あの二人に任せて見てるだけで終わりなんてできません!」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

「ええ!百も承知です!相手があの黒竜であることも!怖くて今にも逃げ出したいです!ですけど!」

 

「だからと言って!私たちの団長と副団長が必死に戦っているのに!それを見ているだけなんてできません!無謀でも結構!こんな所でつまづくなら、ヘスティア様のところへなんていけませんから!」

 

「そう言うこった!お前らは休んでていいぞ!これは俺たちの戦いだからな!行くぞ!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

「「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」

 

 

ヴェルフたちだって言われなくてもわかっている

 

自分たちでは勝てないことも、でもここで諦めたらヘスティアも助けられない。ここは何がなんでも足掻いて、ヘスティアを助けに行くために、無謀でも援護するべきだと。できることを全力で挑むまで

 

ヘクトル達よりも弱いと言うのに、そこまで自信を出した姿に悔しさを込み上げる

 

更に

 

 

『主がフレイ様の力を受け継いで、またもあの黒竜に挑んでいますよ。ノーム』

 

『ええ、主を守るのが我ら四大精霊のすべき事。相手が黒竜でも、恐れません!』

 

 

「ウンディーネ様!ノーム様!」

 

 

『どうしたのですか?皆様?リューさんまで』

 

『主やベルさんが戦っているのに、あなた方は逃げますか?逃げてもいいですよ。これは私たちの戦いですから!』

 

 

「「「「「「「「・・・」」」」」」」」

 

 

『行きますよ!ノーム!』

 

『はい!一年ぶりのあの憎き黒竜!本物でなくても!フレイ様の仇を取らせていただきます!』

 

 

そう言って精霊であるウンディーネとノームも俺とベルに続いて立ち向かう

 

彼女達二人に恐れはない。むしろフレイの仇を取ることで頭でいっぱい。体は原初の黒い炎で作られた偽装の黒竜であるが、力も本物。二人からすれば倒すにしては値する。それにウンディーネとノームは俺の従者。主である俺が立ち向かって従者である自分たちが立ち向かわないなどあり得ないと、二人も挑む

 

そしてそのウンディーネとノームに言われた発言により

 

ヘクトル達は

 

 

「あのアキレウスに、私はレベルを追いついて、この手で奴を叩くことを望んでいると言うのに、ここで黒竜を相手に恐るとは、私もまだまだだな!」

 

「カリス。私たちはレベル4になったばかりで、黒竜を倒せるとは思えませんが、数年前みたいに、今一度兵士として戻りませんか!」

 

「はい!なんのためにアルテミス様の眷属になったかわからなくなります!ですが、今は眷属を忘れて兵士に戻りましょう!あんなことを言われると、忘れたはずの故郷の兵士魂が疼いてきます!」

 

「ヘクトル様、まだジーク様に勝とうとしているのですね。ですけど!」

 

「俺たちもここで諦められるか!」

 

「アンドロメダ。私は行きます。私の本来の仕事はジーク様の護衛ですから、ウンディーネ様やノーム様までもが戦っているのに、私が戦わないなんてあり得ません。私も行きます!」

 

「私も行こうさね!あの黒竜に私の妹分が挑んでいるんだ。姉である私が挑まなくてどうするさね!さあ、どうする?ウチの団長?」

 

「あんなことは言われてはやるしかありませんね!それにこっちには一度黒竜を倒した。英雄ヘラクレスも居ます。勝機としては確かにあります!貴方はどうするんですか?」

 

「く!おのれ!ベル・クラネルめ!英雄気取りか!ジークフリードも!英雄になったからと言って図に乗るな!貴様達に負けるものかああああ!!」

 

「あの二人に続けえええええええええええ!!」

 

「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

ヘクトル達も、ウンディーネとノームにあんなことを言われてはヘクトル達も見てるだけで終われずに、相手が強敵の黒竜でも、倒して見せると立ち向かう

 

もちろん俺やベルを嫌っていたヒュアキントスでも、俺とベルには負けないと、自分も無謀にも敵に突っ込みを掛ける

 

それに続いてリッソスが全員に呼び掛けて、全員で挑むと、もう誰も黒龍に恐れる団員は、アポロンの眷属も、アフロディーテの眷属も、アルテミスの眷属にも、もう人間は黒竜に恐れない

 

その姿に、神々は

 

 

「ジーク君、ベル君、本当に英雄らしいじゃないか!」

 

「そんなこと言って、ヘルメス。そのつもりで仕組んだんじゃないの?」

 

「まさか!今回はこればかりは俺も驚いているんだよ!ヘファイストス。今回は本当に何もしてないって」

 

「今回ばかりはヘルメスの言う通りだろう」

 

「ああ、私も初めて見る。あれが黒竜か、それを相手にジークやベルもしっかりと戦っている。恐れることなく」

 

「ジークは英雄となり、あの坊やは英雄になりたい。その気持ちだけで、あの禍々しい竜を圧倒している。神々でも驚いて当然よ。ジークは当然すごいけど、あの坊やもそれくらいすごいわ!」

 

 

ヘルメス達でも驚かずにはいられない

 

俺とベルが皆の心を動かした。相手が絶対に勝てない敵、そんなことは言わなくても皆わかっている。だが、今ここで戦わなければ、全員終わる。そんな結末にならないためにも、俺とベルは戦う

 

その姿に誰もが、俺たちと共に戦おうとする人間達が居る。その姿に英雄らしいとベルと俺の凄さを神々は驚く

 

 

「お前さん達でも、驚いているようじゃの」

 

 

「「「「っ!?」」」」

 

「キュロス!?」

 

 

「あれでいいんじゃ。ジークも、ワシの孫も、あの男の息子に惹かれたのだ。最強の英雄とそれを追いかける英雄願望者。あの憎き黒竜でもあの二人には勝てぬようじゃな」

 

 

「これも・・・また貴方が?」

 

 

「違うのじゃ。ヘルメス。人間と言うのは『底が知れん』のじゃ。ワシらのように知ったかでなんでも見極めようとする者達じゃない。なんでも冒険し、その時に今まで味わったことのない知らない高揚感が人間達を強くする。それがジークとベルの力の源である『想い』じゃ。これは紛れもなく、ワシがただ助言を与えただけの、『人間だけの力』じゃ」

 

 

「キュロス・・・」

 

 

「さあ!見せてくれ!ジーク!ベル!お前さん達の物語を!ワシが叶わなかった物語を・・・・・・ワシに見せてくれ!!」

 

 

これは大神が仕組んだ奇跡ではない

 

ただそれを導いた。それだけ、そしてそれを俺たち人間が答えた。決して神々の想像通りになったシナリオじゃない。これは人間だけが起こした『奇跡』。絶対最強の竜を倒す。かつての英雄達では紡げなかった物語を書き換えた奇跡

 

ゼウスとヘラの眷属や大英雄達でも勝てなかった。あの隻眼の黒竜に、

 

 

 

大英雄にも及ばない、たった二人の黒い青年と白い少年が

 

 

 

黒竜に勝っている

 

 

 

想い一つで

 

 

 

想いだけで、なぜ勝てる?なぜそこまで這い上がれる?相手は黒竜だぞ?世界最強の竜だぞ?

 

だからどうした?

 

 

 

その程度では俺とベルの心は折れない。

 

 

 

信念や愛、こんな絶望の中で希望として輝こうとする。その光を出し続ける源は想い、誰も勝つことができない人間の最強の力。どうしてそこまで戦い続けるのか、どうしてそこまであの最強の竜に勝てるのか

 

その理由は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

助けたい家族が居るから

 

 

 

 

 

「「うおおおおおおおおおお!!!」」

 

 

『グガア!!』

 

 

そんな中でも俺とベルは自分の持つ武器で黒竜を斬り続ける。さっきより黒竜の勢いが無くなってきている。このまま奴を切り裂くのも時間の問題だろう

 

そう、気づいた黒竜が

 

 

『ガア!!』

 

 

「っ!両腕から黒い霧が!?」

 

「奴の衝撃波だ!俺と一緒に抑えるぞ!」

 

「はい!!」

 

 

黒竜は闇を纏った両腕でそのまま地面に衝撃を与えて、俺たちを吹き飛ばそうとする

 

一度倒した相手の行動は全て俺が学習済み、何が来るかなどすぐに対処できる

 

だが

 

 

ドガアアアアアアン!!!!

 

 

『ガアア!?』

 

 

「っ!」

 

「今のは・・・魔剣!」

 

 

「おい!俺たちのことも忘れるなよ!」

 

「リリ達が注意を逸らします!そのまま追撃してください!」

 

 

「ヴェルフ!リリ!」

 

「そうか、俺たちに惹かれたか。二人とも、それだけじゃないみたいだがな」

 

「え?」

 

 

「ボサとるな!小僧!倒し切るまで戦い続けろ!」

 

 

「ヒュアキントスさん!」

 

 

「アキレウス!これで私に出し抜かれたと思うな!」

 

 

「ふん、だったら足掻け!全部に!!」

 

 

「「「「「俺たちも」」」」

 

「「「「「私たちも」」」」

 

 

「「「「「「「忘れるなああ!!!」」」」」

 

 

「みんな!」

 

「立ち上がったか」

 

 

突然横かから魔剣の火炎が飛んできたため、黒竜は一旦怯み、横を見ると

 

ヴェルフが居た

 

こんな状況でも諦めなかった。彼は全力で俺たちにサポートをしようと、少しでも注意を逸らすために魔剣を放った。もちろんヴェルフだけではない

 

その反対側にはリリルカ、そして後ろにヘクトルやヒュアキントス。その他の仲間達まで

 

もうここに居るのは、死ぬ覚悟をして最後まで諦めないと、決して黒竜に背を向けない

 

 

人間達だ

 

 

 

「奴の鱗はオリハルコンより硬い!奴を殺せるのは俺とベルだけだ!全員で少しでも奴の動きを封じろ!なんでもいい!とにかく俺たち人間の力をあの黒竜に思い知らせ!!!」

 

 

「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」

 

 

 

『グオオオオオオ!!!』

 

 

全員で畳み掛けるように、あの黒竜に全員が立ち向かう

 

ゼウスとヘラの眷属程の力は俺たちには確かにない。英雄でもない。俺たちはただの人間だ。やっていることはただの無謀だ。

 

それでも勝つ

 

この心に宿る心の火と言う『心火』が、

 

 

奴を倒して『ヘスティアを助けろ』と心が燃えた

 

 

彼女を助けるまでは俺とベルは諦めない

 

そして黒竜に立ち向かうそれ以外の人間も、勝てない最強に挑んで、勝って生きて見せると、相手が最強の竜でも恐れない

 

 

勝つまで、諦めない

 

 

『ガアア!!』

 

 

「ぬん!」

 

「どうしたヘクトル!腰が沈んでいるぞ!まさかこの少しデカイ竜に押し負けているのか?」

 

「バカを言うな!このくらい・・・吹き飛ばして見せる!」

 

 

「貴様如きに遅れは取らせんぞ!」

 

「僕だってそのつもりです!あの黒竜に勝って見せる!」

 

 

『ガアア!?』

 

 

俺とヘクトルは奴の左腕、ベルとヒュアキントスは奴の右腕を武器で抑え込んだ。再び地面に拳を叩き込ませないために。力を押し込んで跳ね返す

 

 

『グウウ!ガアア!・・・・っ!ガアアア!?』

 

 

「余所見をするんじゃねえ!!」

 

「貴方はこっちです!」

 

 

『ここで動きを封じます!ノーム!』

 

『はい!主!魔法を使わせていただきます!』

 

 

「ウンディーネ!ノーム!」

 

 

押し返された黒竜は、再度ブレスを吐こうとするが、ヴェルフとリリルカの魔剣が邪魔をして吐き出すことはできなった

 

それに続いて、ウンディーネとノームが魔法を放つ

 

 

『アクアウエーブ!!』

 

『メテオスォーム!!』

 

 

『ガ!?ガアアアアアアア!!!』

 

 

「すげえ!?」

 

「これが精霊魔法!?」

 

「流石はウンディーネ様!ノーム様!」

 

 

「ベル!今だ!俺の刃を!」

 

「はい!」

 

 

ウンディーネとノームが魔法を追尾したおかげで、奴は怯んで攻撃が出せない。その隙に俺とベルがダメージを与える。

 

だが

 

 

『ガアア!!!』

 

 

『な!?』

 

『私たちの魔法でも!?』

 

 

精霊二人でも黒竜は傷が付かない

 

流石は隻眼の黒竜、ゼウスとヘラの眷属が困った理由はこれだろう。

 

何一つ攻撃が通らない

 

だからウンディーネの波にも動じず、ノームの落とした隕石も、隕石で捻り潰したつもりが、腕で隕石を持ち上げて退けた

 

奴の強靭的な体だからなのか、どう足掻いても奴を殺すことはできなかった。これもゼウスとヘラの全滅敗因

 

しかし

 

今俺はフレイの神の力を帯びている。その力を吐き出すグラムの刃には桜色の炎が、ベルは自分のナイフに擦り付ける

 

ベルのナイフにも桜色の炎が纏う

 

 

「放て!!」

 

「はあ!!」

 

 

ブオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

『ガアアアア!?』

 

 

「な!?桜色の斬撃波!?」

 

「黒竜の胸に大きな斬り傷が!?」

 

「これだけの攻撃をして効かなかった黒竜に、あの二人の攻撃だけは通った!?」

 

 

ウンディーネとノームの魔法はしっかりと黒竜に直撃しているにも関わらず、波やメテオでさえも黒竜の体に傷は入らない。流石はゼウスのヘラの眷属が勝てないのもわかる。聖霊の魔法ですら奴のからを傷つけることはできない

 

しかし

 

 

俺とベルの攻撃だけは通った

 

 

間違いなくレアスキルのおかげだろうと思うが、なぜオリハルコンですら、魔法ですら効かない黒竜に、なぜ俺とベルだけは倒せるのか

 

 

「どうなっているの!?どうしてあの二人だけに!?」

 

「なぜ黒竜に傷を!?」

 

「皆が攻撃している技もあの精霊二人が魔法でも傷が付かないと言うのに!」

 

 

なぜ黒竜の体を俺たちにしか傷つけられないのか、レアスキルが主な理由だ。でも今はそんなことはどうでもいい

 

俺とベルだけが奴に立ち向かえる

 

と言うことは

 

 

 

 

 

俺とベルだけが奴を倒せると言う勝機が見えた瞬間である

 

 

「皆さん!黒竜の注意をこちらに引き付けてください!あの二人に攻撃を任せれば!確実に勝てます!」

 

「「「「「おお!!」」」」

 

 

アスフィは俺とベルだけが攻撃が通ることを見抜いて、俺とベルに攻撃を集中させれば勝てると、全員こちらに注意を逸らすように呼びかける

 

勝機が見えたのならと、アイシャとカリスとアクタが追撃する

 

 

「それなら全力で潰すね!」

 

「追尾攻撃です!」

 

「なんとしてでも!あの黒竜の動きを封じます!全員攻撃を止めないでください!」

 

 

とにかく、攻撃を続けて、怯ませて黒竜の反撃を阻止する。

 

それであとは俺とベルに攻撃を続ければ、確実に黒竜を倒すことはできる

 

 

 

 

がしかし

 

 

『グウ!ガアアアアアアアア!!!』

 

 

「っ!?なんだあれ!?」

 

「っ!奴の体から黒い霧が!」

 

 

「まずい!あれは!」

 

 

突然黒竜が全身の体から黒い霧

 

闇を吹き出す

 

その行動を取っただけで、奴が何をしようとしているのか、俺にはすぐにわかった

 

だから、俺は全員に告げる

 

 

 

「全員伏せろ!!奴の『闇嵐』だ!!全員吹き飛ばされるぞ!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

『っ!岩よ!』

 

『水よ!』

 

 

奴が起こそうとしているのは『嵐』

 

黒竜は嵐を起こすことも可能である。周りにある敵を一斉に蹴散らす技、半径約9キロもの闇の竜巻を起こすことができる

 

奴は学んだ。このままだと俺たちにやられると、それならいっそ全てを吹き飛ばそうと、闇嵐を吹き出す。その備えとしてウンディーネとノームは地面から岩山と波の壁を作る

 

 

『ガア!ガアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

「「「「「「「ぐわあああああああああ!!!」」」」」」

 

『ダメです!』

 

『壁は持ち堪えられない!!』

 

 

「く!」

 

「ぐああああ!!」

 

 

黒竜の一斉に両翼を広げて、団扇を覆うように振り払った

 

その瞬間大きな突風と竜巻を巻き起こし。全員が吹き飛ばされた。ウンディーネとノームの貼った壁ですら壊されて突破された

 

 

奴の起こした闇嵐は全てを吹き飛ばされた

 

森も、地面も、空も、人も、神も、全て吹き飛ばされた。何一つ吹き飛ばされていないものはいない。これが黒竜。これが黒竜の力。誰にも抗うことのない漆黒の竜。闇を司る。天空を汚した竜

 

ゼウスとヘラの眷属を滅ぼした竜の力

 

 

「く・・・・・あ!?みんな!」

 

「相変わらずだな・・・・・・奴の威力は」

 

 

嵐は数分で止んだ

 

止んだ後は、もうアルテミスとアポロンが築き上げた集落の後はなく。森の木も一つ残らず吹き飛ばされた荒地となっていた

 

その中で所々に仲間達が倒れている。神々も含め

 

 

『ガアア!!』

 

 

「っ!来る!」

 

「そのまま俺たちを倒すつもりか!」

 

 

ファフニールは嵐が去った後で、俺とベルを集中攻撃しようと、最初から俺とベル狙いで目前で立ち塞がっていた、それ以外は邪魔で嵐を吹き飛ばされ追撃できない、これで身動きは取られ、今度はファフニールが攻撃してくる

 

すぐに対象しようと、俺たちがすぐに立ち上がって応戦する

 

 

 

『ガアア!!』

 

 

「っ!なに!」

 

「は!?ジークさん!?」

 

 

突然、黒竜は俺に向けて右手を伸ばした

 

 

その瞬間、俺の体に闇が取り憑かれる。

 

 

まさかとは思うが、俺が危険だと察したファフニールは『ファフナードゥンゲル』で俺を闇の空間へと飛ばすつもりだった。俺はその闇に囚われたまま、なにもできずに、闇を纏われたまま空へと浮かされる

 

 

「く!」

 

 

「ジークさん!!」

 

「そんな!ジークさん!!」

 

『主!』

 

『まずい!あの技は!』

 

 

「いかん!ジークが飲み込まれる!!」

 

「「「っ!?」」」

 

「ジーク!」

 

「ジーク!」

 

 

俺が闇に飲み込まれそうな瞬間を、ベル、リュー、ウンディーネ、ノームは空に浮かんだ俺を助けようとするが、先ほどの嵐でダメージを受けて動けない

 

キュロスも、一度その技を見ている。だからこれが使われたらまずいと言うことを、大神でも知っている。これは英雄を殺した禁忌の技だからだ

 

だが

 

もう空の彼方まで浮かされては届かない。奴が開いた右手を閉じようとする。俺が闇に飲み込まれる姿を、ベル、アルテミス、アフロディーテ、キュロス、そしてその他も目撃してしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄ヘラクレスが闇に呑まれる姿を

 

 

『ガアアアアアアアア!!!』

 

 

「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!・・・・・・・・・」

 

 

「ジークさああああああん!!!」

 

 

俺は空の彼方で、俺の胸の前にできた闇の球体に飲み込まれ、闇の空間へと飛ばされて姿を無くした

 

 

 

『ガアアアアアアアアア!!!』

 

 

 

ファフニールは、やっと危険な男を殺せて喜んだのか、雄叫びを仕出した。

 

これでやっと全てを壊せると、大きな口を広げて翼を広げて、この世界をもう一度壊すと、威嚇を再び起こす

 

英雄ヘラクレスが消えた、そんな絶望の中で彼らは

 

 

「そんな・・・・ジーク・フリードが・・・」

 

「一番の頼み綱が・・・・」

 

「嘘だろう。ジーク!」

 

「こんなの!」

 

「ジーク殿が闇に・・・」

 

「英雄ヘラクレスが飲み込まれるなんて・・・」

 

『主様・・・・』

 

『そんな・・・・主様あああ!!』

 

 

「そんな彼が!」

 

「一度は倒しているのに、ジーク君!く!」

 

「彼が負けるなんて!」

 

「そんな!・・・ジーク!」

 

「嘘だ・・・・こんなの嘘だ!」

 

「く!こうなっては・・・どうしようもならん!」

 

 

俺が消えた

 

それだけで皆絶望した。俺だけが希望だった。奴に一度倒した男、奴に唯一傷を入れた男、なのに、

 

そんな男が負けた

 

闇の中に呑まれて消えたのだ。

 

こうなってはどうしようもならんと、ヘルメス達やキュロスでも、敗北を認めるしかないと思っている。アルテミスとアフロディーテは、まさかの俺が消えてなくなるなど想像にも無かったらしく、泣き出した膝を地面に付けた

 

絶望しているのは神々だけでない

 

黒竜に先ほど勇気を出して立ち向かった眷属達も絶望した。

 

彼だけだった。黒竜に立ち向かえる者は、しかも彼がこの中で最上級のレベルだった。それが消えて亡くなった

 

 

こんな絶望誰でも受け入れるしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、

 

 

「ジークさんは帰ってくる!!!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

だが、ベルは絶望していない。必ず俺は帰ってくると言った

 

この絶望の中でも、彼は白く輝いていた。

 

皆が落胆している中。黒竜を目の前にしてでも、彼の体が発光する白い光は消えていない。しっかりと立って、奴の前に立って、ナイフを握り締めて戦おうとする

 

 

「なにを言っている!貴様!ジーク・フリードは死んだんだぞ!!」

 

 

「死んでない!!!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」

 

 

ヒュアキントスが隣で倒れながら、ベルの世迷言に文句を言う。だが、それでも大きな声で、俺はまだ死んでないと発言する

 

その理由は

 

 

「あの人は英雄なんだ!!この程度では絶対に倒れない!僕らと一緒にヘスティア様を助けるまで!」

 

「ベル・・・・・・」

 

 

「ジークさんは今も・・・僕たちと戦っているんだあああああああああああ!!!」

 

 

そう言って、無謀ながら一人でベルは黒竜へと走り出し、奴を倒そうと走り出した

 

 

「無茶だ!ベル!」

 

「一人でなんて!」

 

「ベル!ダメええええええええ!!」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

『ガアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

ベルは誰がなんと言おうと、黒竜に向かって走り出すのをやめない

 

俺は絶対に死んでないと、奴がブレスをベルに向けて吐き出そうとしている。それを目の前にしても、今イリアがダメだと叫んでもやめない

 

そしてその時

 

 

ゴン!ゴン!!ゴン!!!

 

 

「っ!これは!」

 

「鐘の音!」

 

「ベルからだ!」

 

 

「ベル君・・・」

 

「ベル・クラネルの体から光が・・・」

 

「増している!?ベル・クラネルの体から・・・武器からも・・・・光が!」

 

 

「そうか・・・・・お前は信じるのじゃな・・・・それでも・・ベル」

 

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 

俺は決して死んでないと、姿はもう無いと言うのに、それでも信じてベルは走った

 

絶対にファフニールに勝って、ヘスティアを取り戻すんだと、今も俺と一緒に戦っていると、彼は走り出した

 

そして

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアン!!!』

 

 

ブワアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

「「ベル様!」」

 

「ベル殿!」

 

「ベル!」

 

 

「ベル!」

 

「逃げて!!ベルウウウウウウウウウ!!」

 

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

 

皆がベルに叫ぶ中、ファフニールはベルにブレスを吐いた。迫りくるブレスを、ベルは避けることなく、そのまま真っ直ぐ走る。

 

ベルがファフニールのブレスを喰らえば、跡形もなく燃えて尽きる。

 

それでもベルは走る。遅れることなく、なぜそんな無謀なことをするのか

 

 

彼は本気で俺が帰ってくれることを信じ、今自分が殺されそうになっている今も、俺が必ず助けに来ることを信じているから、今突っ込める。

 

今突っ込まないと、ファフニールは倒せないとベルは見抜いた

 

今この場に居ない俺を信じて

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジークさああああああああん!!!」

 

 

大きな声で、彼は俺の名前を叫んだ

 

もう俺はこの場に居ないと言うのに、それでも渾身の叫びで、俺の名を呼んだ

 

それが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺に届く

 

 

 

「ああ!!わかっている!!!」

 

 

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

「え!?ジーク!?」

 

「今の・・・・確かにジークの声が!?」

 

 

突然、この場に居ないはずの俺から、どこからかわからない場所から声が発した

 

一体どこから、俺の声が発したのかはわからないが、確かに俺の声がした。

 

なぜベルが今ファフニールのブレスで燃やされそうな瞬間に、聞こえるかはわからないが

 

アルテミスとアフロディーテの耳には、確かに俺の聞こえた。間違いなく俺はまだ生きていると、二人は確信する

 

その声がした数秒後に

 

 

ブウン!!!

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」

 

「なんだ!?」

 

「あの黒い球体は!?」

 

 

突然ベルの後ろから、黒い球体が出現する。

 

周りに居る者達は、初めは誰かが発動させた魔法だと思っていた。いや、違う。魔法陣もない宙に浮いた黒い球体。ちょうど人間一人分は入れる大きな球体

 

そしてその黒い球体から

 

 

 

「ルーンブレイク発動!!ヴォルスング・サガアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

「「「「ジーク!?」」」」

 

「ジーク!?」

 

「やっぱり生きていたのか!」

 

 

雷を帯びた俺が出てきた

 

そして真っ先にベルの前に飛び込んで、ベルを守るように、ファフニールのブレスを、グラムに帯びた『ヴォルスング・サガ(突きVer)』でブレスを突き刺して弾く

 

 

『ガア!?』

 

 

「これで終わりだあああああああああ!!!」

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

 

と、ブレスをグラムの刃が弾いて、そのままファフニールの口へ、グラムを突き刺す

 

 

ザシュ!!!!

 

 

『ガアアアアアアアア!!??』

 

 

「今だ!ベル!」

 

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 

俺はそのまま奴の顎下をグラムで突き刺した。奴の顎下を突き刺したため、痛みで足掻くが、グラムに突き刺された刃から雷を起こし、奴の体の神経を痺れさせて動けなくした

 

これで後はベルが心臓を差すだけ

 

 

そして

 

 

 

「今度こそ終わりだあああああああああ!!!」

 

 

そのまま、真っ直ぐに、奴の胸へと飛んだ。そして右手に必死に握るヘスティアナイフで

 

 

 

ザシュ!!!!!

 

 

 

ファフニールの胸を突き刺した

 

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

 

ファフニールの胸には、しっかりとベルのナイフが突き刺されていた。強靭な奴の硬い体を。ベルのナイフがしっかりと突き刺してある。ナイフを突き刺した瞬間、そのナイフの先から、一本線の光が放出し、奴の背中まで貫いた

 

その貫いた光が、ファフニールの胸に風穴を開けえる。その痛みで、ファフニールは悲鳴を上げる

 

そして

 

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・』

 

 

 

悲鳴がみるみると小さくなり、炎で出来上がった体が灰となって消えた

 

所詮は原初の炎で出来上がった贋作、本来なら心臓を繰り出して、俺が口にしないとダメなのだが、こいつはあくまで天の炎のコピー体。

 

別に心臓をくり抜く必要はなく、ただ体を武器で突き刺せば終わるようになっていた

 

 

ボワン!!!

 

 

「っ!うわ!?」

 

「大丈夫か?ベル?」

 

「ジークさん!帰ってくれると信じていました!」

 

「ああ。よく頑張った。これで俺とお前で黒竜を倒せた。偽物ではあるが、だが、また一段と強くなったな。俺が居なくてもよく頑張った」

 

「はい!!!」

 

 

ベルがとどめを刺したおかげで、ファフニールは灰となって消えた

 

灰となり、ベルが地面に落ちそうになったが、俺が先に地面に着地して、落ちてくるベルを受け止める

 

しっかりとベルがとどめを刺せた。つまりはもう彼がゼウスの眷属を超えたと言ってもいい。彼がまた一段と強くなったことを、今頃天に居るゼウスの眷族達は喜ぶだろう

 

なぜなら

 

 

 

彼が実質、両親の仇を取ったのだから

 

 

 

黒竜ファフニールを倒せたことを、皆がしっかりと確認を取ると、

 

全員で勝ち鬨をあげる。まずはヴェルフから

 

 

「ジークとベルが黒竜ファフニールを倒しやがったぞ!!!!!」

 

 

「「「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」」

 

 

全眷属達が、勝ち鬨を上げて、持っていた武器を空へと掲げた

 

まさか本当に俺とベルが倒せるとは思いもしなかった

 

相手はあの黒竜ファフ二ール。世界三大クエストの最後のモンスターでゼウスとヘラの眷属が勝てなかった古代のモンスター

 

それを

 

 

たかが、想いを力にした俺とベルが勝ったのだ

 

 

喜ばないはずがない。しかもトドメはベルが刺しんたんだ。これをすごいと言わないでなんと言うか、まだベルは英雄にもなっていないと言うのに、俺の助けを借りてでも、見事、あの黒竜ファフニールにトドメを刺せた

 

そんな光景を見て、神々は

 

 

「すごい!あの黒竜を・・・・本当に倒した!!」

 

「まさか本当に・・・・偽物ではあるけど・・・・やってくれわ!ねえヘファイストス!!」

 

「ええ!!しっかりと見ていたわよ!すごいわ!あの黒竜をまだレベルが低いヘスティアの子供がやるなんて!!」

 

「最高だ!!FOOOOOOOO!ジークきゅん!ベルきゅん!」

 

 

「すごい。確かにジーク君が俺たちの知らない間に黒竜を倒したのも納得できる。そしてベル君も、彼もゼウスの眷属とヘラの眷属を超えた。そう思わないか?・・・・・キュロス!!!」

 

 

「ああ。絶対にやれると思った。見ているか?マキシム?ザルド?アルフィア?アリア?アルバート?お前さん達を超えた子供が二人も現れたぞ。それも・・・・・・・・お前さん達の息子とライバルの子だ。流石はワシの自慢の孫じゃ!!!」

 

 

神々も歓喜

 

あの世界の悲願でもあった。黒竜の討伐を、偽物ではあるが、しっかりと奴を倒せた瞬間、神々六人は見た。俺が知らぬ間に奴を倒したことも、しっかりと証明が付いた

 

歓喜なのはそれだけではない

 

 

あのベルが黒竜にトドメを刺したのだ

 

 

これまでは奴に怯えて動けなかった。奴の恐怖に圧倒されて動けなかった臆病な少年が、勇気を出して戦ったことで倒せたのだ。世界最強の竜を相手に

 

これにはヘルメスもキュロスも喜ぶ

 

なにより、これでゼウスとヘラの眷属が報われる。確実な討伐姿を見て、歓喜し、

 

 

キュロスは、フード越しではあるが涙を流した

 

 

 

 

そして、ファフニールを無事に倒し、皆、俺とベルの所へやってくる

 

 

「ジーク!無事だったのね!」

 

「ああ。問題ない!心配かけたな。アルテミス、アフロディーテ」

 

「本当だ!私はもう死んだのかと思ったぞ!」

 

「でも・・・どうして戻ってこれたんですか?」

 

『そうですよ。主は確かにファフニールに闇に呑まれました。それなのに・・・どうして?』

 

 

「簡単だ。俺も『ファフナー・ドゥンゲル』を使った。あれは闇の空間に呑み込む技。俺も奴の心臓を喰らった者、奴の力は、俺も使える」

 

 

確かに俺は奴の闇に呑み込まれた

 

それは嘘ではない。確かに俺は奴にやられた。アルバート同様に、闇に呑まれた人間は現世に帰ってこれない。闇の中で命が徐々に尽きるまで死んでゆくだけ

 

しかし

 

 

それは俺も使える

 

 

俺は本体である、ファフニールの心臓をこの身で食らっている。それだけで奴の力もこちらで使える。だから奴の使ったファフナー・ドゥンゲルも俺も使い、空間を開けてここへ戻ってきた

 

 

「ベルのことだから、俺の帰りを待って、奴に立ち向かうタイミングを測って、あの瞬間に出てきた。だが、ベル。お前?俺がそんなことをできるとは知らずに、絶対に俺は帰ってくると直感で奴に挑もうとしただろ?」

 

「あはははは、正解ですジークさん。直感頼りでジークさんが帰ってくると思い込みで、絶対に帰ってくると思ってあの瞬間に走れば絶対に僕を助けてくれると信じてましたから」

 

「まったく、そういう戦法は俺は教えてないと言うのに・・・・」

 

 

「でも・・・・・信じてましたから」

 

「ふう・・・・・まあ、それがお前の強さの証だからな」

 

 

つくづく、こいつの強さには別の驚きがある。きっと『ザルドのおっさん』も『アルフィアの姉さん』も、その他の眷属も、全部ベルに期待していたのだと思う

 

いつの日か、黒竜を倒してくれる日を待っていたことだろう。

 

まあ、本体は俺が倒してしまったが、実質コピー体でも、奴そのものだった。あの二人の願いは叶ったさ

 

 

ひとまずの希望は紡ぎ出せたさ

 

 

「おい、全員安心するのも喜ぶのも早いぞ」

 

「ええ、あとは・・・・・・神様だけです」

 

「ああ、あとはヘスティア様だけだ」

 

「ヘスティア様も驚くでしょうね。神意を二人は打ち破いたんですから」

 

「黒竜も倒せたのなると、これから先の敵も怖くありません!」

 

「はい!皆さんでヘスティア様を取り戻しにい行きしょう!」

 

「ああ。まだヘスティアが残っている。今良い流れをこちらが掴んでいる。俺たちの目的はまだ果たせていない。この調子で、ヘスティアをも取り戻すぞ!」

 

 

「「「「「はい!!(おう!)」」」」

 

 

良い流れを掴んでいるのは間違いない。

 

この調子でヘスティアも助けに行くと、こんな困難な状況でも勇気を出して踏み出すと、仲間に告げる

 

黒竜のコピー体を倒せたのは中々に状況としては上々の偉業だ。ヘスティアが仕組んだのかどうかはわからないが、少なくとも俺たちの試練はこれくらいがいい。絶望の壁を越えるような強さを得なくては

 

まあ、でも今は準備を進めて、少し休憩も取らねば、黒竜の闇嵐のせいで集落は崩壊した。オリンピアの難民はアポロンとアフロディーテの眷属が海路へ避難させた

 

あとは俺たちの戦う準備を進めるだけ

 

 

 

ヘスティア。

 

悪いが、お前の思惑通りにはならない。これは英雄でも眷属の物語ではないと言った。これは『神の決着たる物語』だと、いや、これはそんな物語ではない

 

 

 

これは『神に逆らい、神が出し得ない救済を創る物語』だ

 

 

 

つまりは

 

 

 

 

これは君と俺たちの物語だと

 

 

 

 

今この場に居ないヘスティアに心で伝え、一度俺はアフロディーテとアルテミスに治療して貰うためにテントを設置する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ヘスティアは

 

 

「なぜだ・・・どうしてなんだ・・・・ジーク君・・・・ベル君・・・・」

 

 

ヘスティアは神殿の中で、密かに恩恵を通じて、俺たちが先ほど、ファフニールのコピー体を見事に倒し切った光景を確認した。やはり彼女が俺の記憶を通じてファフニールを作り出したようだ

 

ファフニールのコピー体を作り出したのは、それだけの強大な敵を用意して、敵わずにここオリンピアを出て貰う算段らしい

 

だが、その算段を俺とベルが破った。コピー体でも、力は本体と変わりない程だった。それを俺たちは倒した

 

このままでは、結界を壊してここへ来るのも時間の問題だと思った

 

 

ここまでして、遠ざけたのが無駄となった。ヘスティアはこう愚痴る

 

 

「これは神が背負うものだ・・・君たちが背負ってはならないものなのに・・・どうしてだ・・・」

 

 

ヘスティアが必死にこの抱えた炎を、誰にも寄せ付けぬようにしていると言うのに、必死に災害にならないように、両手で抑えていると言うのに、それをどうして邪魔するのか、彼女には理解できなかった

 

 

「ああ・・・・わかっているさ、だって君たちは・・・・僕の子供だから・・・・なのに・・・・それでも・・・・・」

 

 

彼女が呟く言葉は、ウェスタとは似合わない。それもヘスティアの我がままを通り越した言葉の神意

 

 

それは

 

 

 

「僕を君たちのためにさせてはくれないんだね。ジーク君。君は特にだよ。僕に言える立場じゃ無い癖に・・・・・本当に・・・・・酷いよ・・・・・そして・・・・どうしてなんだ・・・ベル君・・・・僕のなにが・・・間違っているって言うんだ」

 

 

 

これだけ代価を払っているのに、それを実行させてくれない。この場に居ない俺たちに文句を言う

 

特に、俺とベルには

 




次回 聖火の英雄編
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