ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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聖火の英雄編
神に抗うための恩恵


 

偽物の黒竜ファフニールを倒してから数時間後

 

ファフニールを倒したのは良いが、奴の起こした『闇嵐』によって、甚大な被害を受け、集落は崩壊し、テントを設置して別の拠点を制作する。

 

どの道、この場は捨てることは変わりないが、ここ程安全な場所はもう無い。流石のアミリア達も再びここを襲ってくることはないだろう。何せもう奴にやられて、ここの森の光景もない荒地。しかもあの黒竜までも天の炎で再現された。これ以上変な強大なモンスターの巻き添いも受けないためにも、おそらくもうエピメテウスと合流して決戦に控えている頃だろう。それでも警備は痴取らないようにしている。アルテミスとアフロディーテとアポロンの眷属達で

 

黒竜ファフニールの再来により、被害は甚大ではあるが、それでも、俺たちは神都オリンピアの侵攻をする準備を始めている

 

幸い、武器やアイテムなどは無事、あっても食材や建物が全て無駄になっただけ、もう後には引けない状態になっている。まあ、どの道もう時間はない

 

 

ヘスティアが黒竜ファフニールの再現をしたとなると、それ以外にも原初の炎が勝手に強大なモンスターを再現する可能性が高い

 

 

どの道、これ以上原初の炎を生かせば、この下界が崩壊するのも、ヘスティアの犠牲が無駄でしかないことも、神以外の下界の人間達は理解した

 

 

その証拠が黒竜ファフニールの再現

 

 

そんな、もうこの世に居ないモンスターですら、人の記憶を通じて再現されて召喚される。危険にも程がある。これ以上原初の炎を生かせば、人の記憶を調べてベヒーモスやリヴァイアサンまでも再現される可能性が高い

 

 

原初の炎が人間の手に負えない危険な物であると、ゼウスの言っていたことが実現した

 

 

イリアもレアも、今度こそ理解したであろう。あれは浄化すれば良いと言うものではない。もう人の悪意を取り込んだあの炎は腐っていた。浄化すら効かない程に、原初の炎は決して人の救済を働く物ではない。人の害を一旦吸収されるだけのこと、所詮武器にも害にもなるだけの災害にしかならん物だったと俺は推測する

 

 

 

その炎を破壊する力を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とベルは取り戻した

 

 

それは、恩恵だ

 

 

ベルはヘスティアの神意を打ち砕き、レベル4としての恩恵を取り戻した。それにより、もうベルはいつも通り戦える。魔法も使えるスキルも使える。彼は意志一つで、力を取り戻した

 

そして

 

 

俺もだ

 

 

俺も力を取り戻した。魔法もレアスキルもしっかりと使える。でなければとっくに俺はファフニールに殺されているだろう

 

しかし

 

 

 

俺はヘスティアの神意を打ち砕いたわけではない

 

 

 

神意を跳ね除けたわけではない俺が、どうして恩恵を発揮して、魔法やレアスキルが使えるのか、それにはもちろん理由がある

 

まあ、そればかりは、神でもどうなっているのか、理屈がわからないだろう。

 

 

なにせ、今の俺の恩恵は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはどうなっているんだ!?」

 

「でも、確かにフレイが天界に送還されたって、ヘルメスに聞いたわよ!?」

 

 

俺の恩恵を調べているアルテミスとアフロディーテが見ているのだが、衝撃のあまり驚いて、それしか言葉が出ない

 

神でも驚く。確かに二人が見ても何がどうなっているのか、理解ができない。俺のレアスキルの関係で、婚約者候補である彼女達にしか見せず、俺は神々にどうして恩恵を発揮しているのか問い詰めされ、初めはベルと同じくヘスティアの神意を跳ね除けたのかと思ったが、そうでないと俺は言い、調べたいのならその二人のみと断り、アルテミスとアフロディーテに調べてもらっている

 

そして、案の定、二人は驚いている

 

その理由は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「どうしてヘスティアの恩恵じゃなくて、『フレイの恩恵』なの!?」」

 

「さあ、どうしてだろうな・・・・」

 

 

俺の恩恵は『フレイの恩恵』になっていた

 

 

だから魔法やレアスキルも使える。理屈は俺でも理解できない。フレイ・リーベが原因ならそれまでは恩恵が封じられているからそんなことはないだろう。

 

 

もしくは。本当に俺の中で生きているフレイのおかげか

 

 

フレイが、直接俺に恩恵を宿したのか、送還されたあいつが、天に還ったあいつが、俺に力など貸すはずがない。俺の体に恩恵を残すはずがない。普通はそう思うだろう。

 

だが、なぜか今の俺は

 

 

「だが、フレイが常に俺を愛している。彼がこんな時まで俺に力を貸してくれている。こんな化け物になった俺をな」

 

「ジーク・・・」

 

「理屈はわからないけど・・・そうでしょうね。これを見てしまったら・・・・」

 

「そう言うことにしてくれ。そうでなければ。なんのために俺がこうして人間の姿に戻ったのか、わからんしな」

 

『主様、治療を終えました』

 

『これで自由に動けます』

 

「ああ、ありがとう。ウンディーネ。ノーム」

 

 

恩恵を調べている同時に、俺はウンディーネとノームに治療をして貰う。いくら恩恵を取り戻しても、傷が治っているわけではない。恩恵を取り戻してファフニールともう一度やるのは死に繋がる戦い。ノームとウンディーネに治療して貰わねば次の決戦に備えることはできない。

 

本物じゃないだけ、マシだったかも知れんがな

 

 

と、そんなことをしていると

 

 

「うむ、ジークの治療は終えたか?ワシにも見せてくれぬか?」

 

 

「キュロス!ジークの恩恵を見せるわけないだろ!」

 

「貴方が見たら、一体また何をしでかすか!」

 

 

キュロスがベルの恩恵を調べ終えたのか、今度は俺の恩恵を見せて欲しいと、俺達が居る部屋にやってきた

 

だが、アフロディーテとアルテミスが阻んだ。キュロスに見せるなど、今度こそ変なことをするのではないのかと、キュロスの正体を知る二人からすれば、危険視をする以外なかった

 

 

 

「いい。キュロスを通してくれ」

 

「っ!ジーク!」

 

「だけど・・・」

 

 

「いいんだ。『雷霆の大神』になら信用できる。いや・・・・・・『我ら人間の父』と、呼べばいいいのか?ヒューマンとして・・・」

 

 

「っ!?ジーク!?」

 

「やっぱり正体を知っているのね」

 

 

「まあな」

 

「ジーク。あまりそれは呼ばないで貰えるか?ワシは何もヒューマン全ての父と言うわけじゃあないんじゃぞ?」

 

「それは失礼した。では『ベルだけの爺さん』ってことにしておこう」

 

「その方がしっくりくる」

 

 

俺はキュロスなら見せてもいいと思っている

 

大神の奴なら見せても俺は構わないと思っている。確かに俺の恩恵は神々が軽々と見せるわけにはいかない印だ。でもこの男神なら見せても構わない。まあ、見たら冷や汗をかくだろうけどな

 

見せていい理由は、まあ『爺さんと同じ大神にして最高神』だからだ。俺の存在を恐れて言わない方が得であることを理解するからだ

 

 

「どれどれ・・・・ふむ・・・・こりゃあ確かにあの『眼帯』もヘスティアも、ジークの恩恵を他の神には見せられないのがよくわかる。と言うか・・・・・・・ワシらをいつでも殺せるのう」

 

「恐ろしさが身に染みているようで何よりだ。あんたでも俺を殺せるか?キュロス?」

 

「普通の武器じゃないと無理じゃろうな。とは言ってもお前さんの体は既に・・・・これ・・・・無理じゃね?ワシらが一斉にお前さんを殺そうと思っても勝ち目ないんじゃけど?お前さん何人神を殺した?」

 

「二年前からだから・・・・・三人だな、完全に殺した。『消滅』させた。送還ではなく・・・」

 

「なるほどな。アポロンもロキも、ヒューマンを甘く見るからこうなるじゃろうに、タナトスも、そして・・・・『彼奴』も、ヒューマンを嘗めるから、こんな『ワシらを殺せる者』が生まれるじゃろうに」

 

 

やはりキュロスでも、俺の存在がどんだけ危険かを理解すると同時に、俺を放っておくべきではないと、危機感を大神としても身に覚える

 

だが

 

 

 

いつかこうなるとはわかっていた

 

 

 

爺さんも、キュロスも、俺たちヒューマンを、『一番に理解できる』からこそ、大神は他の神と比べて、我ら下界の生き物の底力を信じている、だからこんな芸当もできると理解できる

 

 

そして、いつか神をも超える存在が、下界に現れることも

 

 

まあ、それが神の実子である理由も含まれていると思うが、なんにしても、俺と言う存在は神の天敵が生まれたことは、神において脅威でしかない

 

 

 

「じゃが、これで、原初の炎を壊すことはできる」

 

「ああ、確実にな」

 

 

「お前さんが今回の締めになりそうじゃな」

 

「終わらせるさ、この力は、大切な時に使うんだ」

 

「ふん、やはりお前さんがその力を得るにはふさわしいな。お前さんなら・・・その力はワシらのためにもなる」

 

「ああ、それで私が救われているのだから」

 

「そうね、じゃなきゃ・・・・アルテミスは死んでいるでしょうね」

 

 

この力で、原初の炎を壊せる

 

 

つまりは、ベルだけでなく、俺も今回の事件に必要な鍵でもある。この『神話破壊』はこのためにある。確かに神をも殺せる。神の力を破壊無効もできる。

 

だが

 

デミ・アルカナムでもある。原初の炎を壊すこともできる

 

あれは半分ではあるが、神の力でもある。なら壊せる。神の力であるなら、このレアスキルはアルテミスをも救った。決して神だけを殺せる力でもない。

 

キュロスも理解したのだ

 

俺のレアスキルで、この事件は終わらせることはできる。エピメテウスの邪魔を退ければ、原初の炎をこの下界の災害から消すことができることも

 

つまりは

 

全て、俺の計画である、原初の炎の救済を知っていたのだ

 

ヘスティアが依頼を受ける時から

 

 

「お前さんがワシを依頼した時から、どうせそんなことだろうと思ったのじゃが・・・・まさか、こんなに計画を練っていたとはな」

 

「エピメテウスの存在は衝撃ではあったが、原初の炎については、この依頼をされる前に、事前に調べておいた。あれが神の半分の力であるなら・・・・可能だと思ってな」

 

「本当にあの男と同じく恐ろしい男じゃ。お前さんも父同様じゃ、お前さんの父のせいで、どれだけ『マキシム』達がズタボロにされたか・・」

 

「ああ、おふくろが言っていたが、お前の眷属も『俺の親父』に挑んだようだな?」

 

『ええ、その通りです。主』

 

『あのお方も、この大神様の眷属に勝負を挑まれました。ですが・・・・・一人残らず相手にはなりませんでした。あのお方に比べれば・・・』

 

「本当か?ノーム?」

 

「そんな話、聞いたことないわよ?トールからも・・・て言うか、キュロスはジークの父親に会ったことがあるの?」

 

「まあな、じゃが・・・・・・・」

 

「「ん?なんだ?」」

 

「話したくない。あの男が怖くてな・・・」

 

「「は?」」

 

 

「ああ、おふくろが言うには、俺の親父は『神をも恐れる』男だとか言っていたな」

 

 

キュロスは俺の父親を知っていた。そして父同様に恐ろしいと言い張る

 

父を知っているが故に、性格も俺に似ていると、戦法方法も俺と同じようなことを発言し、しかもその証拠である。ノームとウンディーネも、同時俺の親父がキュロスに会っているとのことを知っているようだ

 

十年前、アフロディーテはトールにはそんなことはなにも言わなかったようだ。まあ、言えない悲惨なことがあったに違いないと想像する

 

今、キュロスの顔を伺う限りは

 

 

「にしても、これだけの力を持っていると同時に、お前さんの考えはまるで・・・・『親』じゃな」

 

「何が言いたい?キュロス」

 

「なに、お前さんが良ければの話じゃがな」

 

 

キュロスは、あまりに俺が優れていると言いたいのか、まるで下界の子供の考えではないと言い出した。おそらくあまりに力が強すぎるが故にもあるだろう

 

だから、とんでもない提案を出される

 

 

「ジーク。お前さんを『神』にして、このまま天界へ連れて行きたいと思っている。『神ヘラクレス』としてな」

 

「「っ!?」」

 

『な!?本気ですかキュロス様!?』

 

『主を!?神として崇めさせるおつもりですか!?』

 

「ほう・・・・・・」

 

 

キュロスは、俺を『神』として迎えたいと言い出した

 

つまりは人間をやめて、神として天界へ迎えたいと言い出している。つまりは『神格化』と言うことになる。一応俺は半神半人と言う、神と人間の間の子供。半分であっても、神の力は俺の中にある。俺自身のアルカナムが

 

それだけでも神になれる。つまりは死後か。今か。この事件を終えた後にどうだと言う

 

だが

 

 

「無論、答えは言わなくてもわかるだろう?」

 

「じゃろうな、『断る』じゃな」

 

「俺は人間として生きたい。神として生きたら、いつまでも成長できない。神の欠点はそれだ。成長できない者はいつまでも落ちぶれる。俺はそんな存在になるつもりはない」

 

「賢いな、ワシらも成長は必要じゃぞ?」

 

「だとしても、人間を見守るつもりはない。俺は守る側に立ちたい。俺は戦うことしかできない男だからな」

 

「なんとも、お前さんの親父そっくりな発言じゃな」

 

「キュロス!それは流石にふざけ過ぎだ!」

 

「確かにジークは神にふさわしいかもしれないけど、それは私も困るわよ!」

 

「すまん、すまん、ジークが神になったら子供ができなくなる可能性もあるかもしれんしの」

 

「もしなったら、お前はこの二人と戦争だな」

 

「そうじゃろうな・・・・」

 

 

無論、その答えは『NO』のみ

 

俺は人間としてこれからも強く生きていく。人間でなければ味わえないものもある。それを味わったことで強くなれる

 

だから神などならない

 

 

『ですが、可能なんですか?人間が神になるなんて・・・・』

 

「ん?ああ、それはジークだけじゃ」

 

『主様だけ?』

 

「ジークは半神だから、半分は神、可能性の話じゃが、ジークの血を垂らせば、恩恵にもなるかもしれんからの。神にはなれるはずじゃ」

 

『『っ!?』』

 

「爺さんとおふくろとフレイが、それらしいことを言っていたな、『あまり人に血を浴びさせない』ようにと、あれはそう言う意味なのかもしれないな」

 

 

俺は半分は神、だから天界に行けば、神になれることも可能かもしれない

 

あくまで推測だが

 

だが、アルテミスとアフロディーテは否定する。もしも神になったら子供が作れなくなるからだ。彼女達の夢は俺と結婚して子供を宿すこと、人間の女と同じ夢を目標にしている以上、そんなことになったら困るのだ。もしそうなったらこの二人は大神と戦争になるだろう

 

それだけを答えて、俺は上着を着る。もうステイタスを見せる必要はない。それにこの場に居ないヘルメスとアポロンにも見せたくない。あいつらに見られたら大騒ぎされるだろうしな

 

俺のことはもう終わりにして、次の話をキュロスに出す

 

 

「キュロス、ベルの方はどうだった?」

 

「無論、ワシの自慢の孫じゃ。本当にヘスティアの神意を退け、元の恩恵に戻っておる」

 

「そうか、あいつの成長が見れて嬉しいだろう?」

 

「ああ、あのまだ小さくて泣き虫だったあの坊やが、よくここまで大きくなった。これもお前さんのおかげじゃな」

 

「勘違いするな、キュロス」

 

「む?」

 

 

「ベルは単に俺に憧れ、俺と同じく強くなろうとして、今まで困難な試練も努力で頑張ってきたまでだ。俺のおかげではない。あいつ自身で努力した力だ」

 

「・・・・・そうか、ベルもベルなりに力を出しているのじゃな」

 

 

俺は関係ない。あそこまではあいつ自身の力だ

 

俺は助言しただけ、だから俺は何もしていない。確かに一人だけの力ではないのだが、強くなったのは周りも含む。それでも自身で力を強くさせた結果である

 

だからキュロスに、俺は関係ないと、あいつ自身の力で強めたと言う

 

そこまで、あいつは小さくない。今でも必死に取り戻そうとする家族が居るのだから

 

 

「もう俺の恩恵を調べるのは終わりだ。そろそろみんなと合流するぞ。今後の進攻の打ち合えせをする」

 

 

俺の恩恵を調べるのを終えて、さっさと皆を集めて、今後の決戦の作戦の打ち合わせを始める

 

もう時間もない。ヘスティアの儀式を完成させる前に、こちらが進行を掛けないとならない

 

今一度、戦力を確認するために、全員を外へ集める

 

 

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