目が覚めたら妖精さんになっていたけど母艦が加賀だから許せるし、めちゃくちゃ楽しそう   作:ROGOSS

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目が覚めると加賀の戦闘機の妖精さんになっていた件
俺の戦い


 転生が流行る現代社会。そんなご都合主義があるならば、この俺の自堕落な生活から抜け出させて欲しいものだ。とはいうものの、やはり現実は都合良く奇跡など起きるわけがない。そもそも論、奇跡は希に起きるからこそ奇跡なのであり、しょっちゅう地球上に存在する誰かに起きていたら神様が処理落ちしてしまうかもしれない。

 だから俺は今日も「奇跡など起きるわけがない」を口癖にしながら生きている。大学を卒業し、そこそこに名の知れた企業に就職したが、現実と理想のギャップに違和感を覚え、さらには人間関係にこじれてしまった俺は逃げるように退職をした。

 新しい仕事を探す気力もなく、減っていく通帳の残高と睨めっこをしながらギリギリの生活を続けていた。

 朝は規則正しく起きるも一日中モニターに向かう毎日。そんなことを繰り返していれば当然のことながら通帳に0(ゼロ)の数字が付き、ついには電気代を払うことが出来ずに止まってしまった。

 真夏のうだるような暑さの夜。明日こそは生きるためには仕事を探さなくては……と思いながら眠りについた。

 止まらない汗を拭いながら気がつくと体中が尋常じゃない程アツく感じ始める。エアコンをつけることもできず、立ち上がって窓を開ける元気もない。

 

「アツい……アツい……誰か……」

 

 助けを求める声は虚空に消えて行く。

 

「このまま……死ぬのか……?」

 

 死を感じ始める。やはり助けは来ない。このまま死んでしまうのだ。あぁ、神様。次はもっと全うに生きるので、どうか、どうか人間らしい人生を次こそ送らせてください。逃げることは止めます。目の前の現実から眼を背けることは二度としませんから、だからどうか……

 

「おい、おい! 大丈夫か? おい!」

 

 声が聞こえた。

 相変わらずのあつさが体中に残っているが、助けが来てくれたのかもしれない。

 奇跡は信じれば起きると誰かが言っていた気がする。その言葉のありがたみを実感した。

 手を握られ俺は起こされた。まぶたが鉛のように重いが俺は無理矢理こじあげた。目の前には妙に小さな3頭身くらいの姿の小人がいる。

 

「俺を起こしてくれたのか……?」

「はぁ? あぁ、もしかしてお前、魂が宿ったばかりの口か」

「何言ってるんだ?」

「そのうちしっかり説明してやるさ。それよりも五体満足だな?」

 

 そう言われ俺は手を握ったり開いたりと繰り返す。人間と同じ色と形をしているが、どこかやはり違和感を覚えるサイズの手足。目の前の小人と同じ目線ということは身長まで縮んでいるのだろう。

 

「なんてこった」

「は?」

「なんでもない」

「変な奴だな。まぁ、最初はこういうもんか。それよりも五体満足なんだな?」

「問題ないようだけども」

「だったら好都合だ」

 

 目の前の小人は走り出した。よくみるとどこか教科書やテレビで見たような格好をしている。あれはいったい何のための服装だっただろうか?

 

「とにかくついて行ってみないとなぁ……」

 

 軽い気持ちでついていく。辺りの様子はパイプがむき出しになっている無機質さがあり、各所に無線機のようなものが置いてある。狭い通路を抜けると突然光源が俺を襲った。どうやら日差しがさんさんと降り注いでいるらしい。明かりに目が慣れるとそこがどこなのかようやく理解することができた。

 

「嘘だろ……」

 

 思わず絶句する。

 目の前にはプロペラをつけた戦闘機が無数にいた。戦闘機には同じような小人が乗り込み、出撃しようとしているように見える。

 

「なにやってんだ! 早く来いよ!」

「あ、あぁ」

 

 声に導かれ俺は進んでいく。やがて一機の戦闘機の前で彼は立ち止まり、俺の方へ振り返った。

 

「こいつが俺達の愛機、九七式艦上攻撃機のミケだ」

「攻撃機……」

「俺が後ろで指示を出す。お前が操縦士だ。何安心しろ、体が勝手に覚えているから知識はいらねえ」

「え、え? 俺が操縦するのか?」

「早く乗れって!」

 

 尻を短い足で蹴られ、俺は逃げるように操縦席へと座る。

 後ろには彼が乗り込んできた気配がする。

 

「俺の名前は(はじめ)だ、よろしくな。お前は?」

宗二(そうじ)

「よろしくな宗二。本当は3人で乗る戦闘機なんだけどよ、なにせ人員不足が激しくてな。とはいっても二人でも充分動かせる。今回も生き残ってやろうぜ」

「生き残るって俺達は何と戦っているんだ?」

「深海棲艦だよ」

『全機離陸せよ。繰り返す、全機離陸せよ。幸運を』

 

 俺の返事は無線によってかき消される。

 肇の言うとおり知識はまったくないが体は何故か覚えているようだ。意思とは関係なしに体は動き出し、見事空母からの離陸を果たす。

 眼下には広大な海が広がっている。だが、少し先では爆発が起き続けているようだ。あそこが戦場だということは一目見ればわかった。

 

『これより作戦を通達する。我々航空打撃隊はこれより、本海域を航行している輸送艦を破壊する任についている。敵戦力は不明。報告には敵軽空母の影ありとのことから航空戦が予想される。間もなく第三戦隊及び第八戦隊所属の比叡、霧島、利根、筑摩より砲撃が加えられる。我々は何としても戦隊各船を護衛し、輸送艦を沈めなければいけない。以上だ』

 

 無線が再び沈黙する。

 

「これって本当の戦闘なのか?」

「本当の本当。マジだよ。さ、前を向け。来るぞ!」

 

 緑色に点灯しているスリムなボディの敵機が見えてくる。敵も同じく姿を確認したらしく、先制攻撃を始めた。

 

「ひぃッ!」

 

 口から弱音を吐きながらも操縦桿を握る手は的確に回避をしていく。大きく旋回し、撃ち出した敵機の真後ろへとつくことができた。敵機は左右に体を振りながら、射線をずらそうと試みている。

 

「任せなッ!」

 

 機銃が発射され、敵機が火を噴いていく。

 それからはあっという間だった。一機、また一機と敵がバタバタと落ちていく。友軍も優秀なようで、数では敵機が圧倒しているが練度で勝る俺達が制空権を制したように見える。

 

「これが戦闘……でも、俺は生きているッ! やったな!」

 

 返事がない。

 初めて会った奴と命を代償に戦いをした。こんな高揚感も緊張感も初めてだ。今の感情を分かち合いたかった。

 

「おい、どうしたんだ?」

「……」

 

 やはり返事はない。

 その時、俺は妙なことに気がついた。離陸したときよりも風を切る音が妙に大きく聞こえる。

 

「なぁ、どうしたんだよ、おい!」

 

 俺は後ろを振り向いた。

 その瞬間、どうしようもない吐き気がこみ上げてくる。

 俺は戦闘に熱中してしまっているあまりに気がつく事が出来なかった。

 パイロットを守っているはずのハッチに銃撃の痕がついている。後ろの席には脳みそをぶちまけた肇がいた。見ただけで息がないことがわかる。

 俺は盛大に吐き散らした。吐瀉物が足下に溜まっていく。胃の中身を全て吐き出したところで、今度は体の震えが止まらなくなっていた。 

 現実を見る。これはゲームじゃない。この世界はどこかに存在する俺の元いた世界とは違う場所なのかもしれない。ただ、ハッキリと一つだけ言えることがある。

 

「負けたら死ぬ……」

 

 地獄はまだ始まったばかりだった。

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