目が覚めたら妖精さんになっていたけど母艦が加賀だから許せるし、めちゃくちゃ楽しそう 作:ROGOSS
「五番機合流します」
『佐久間中尉に噛みついていた狂犬か』
「いったいどういう風に俺は見られているのでしょうか?」
『上官に噛みつくだなんて随分としつけがなっていないと言っているんだ。せいぜい空ではもっと暴れてくれよ』
「……了解」
『全機編隊にくわわったな。小隊を率いる
「まるで忍者だな」
「日本ぽくていいじゃないですか。もっとかっこいい横文字のを期待していましたけれどね」
「……横文字って少しは自分が何者だったのか記憶あるのか?」
「薄らとですけどね」
「ふーん……」
一樹は俺と違ってより鮮明で死ぬ前の事を覚えている。このクソみたいな世界で生きている年数が長いからだろうか? 理由は何にせよ、自分という存在をいつまでも思い出すことができないのは不快すぎる。長生きすれば己がわかるというならば、尚更長生きしてやろうじゃないか。
敵の編隊が目に入る。相変わらず、こちらが使うみすぼらしい機体とは違って金属で加工されているステルス機のような形をしている。事実、機体性能も深海棲艦の方が数段上だ。この時代にあるソナーはほとんど役に立つことはない。目視だけが敵を捕らえることが出来る最大の武器だ。しかし、深海棲艦にはないものがある。経験という名前の腕前だ。プログラムされたかのように同じ攻撃を繰り返すだけの奴らの予想を上回る攻撃をすることで撃墜数は稼ぐことができる。もちろん油断していれば数で圧倒され袋だたきにされるだろう。
「さぁ……佐久間に一泡吹かせてやるさ」
『全機攻撃開始』
二十ミリ機銃をすれ違い様にお見舞いする。躱すことが出来なかった哀れな敵機は爆炎を上げ水上へ叩きつけられた。
「敵、旋回してきます」
「了解! 堪えろよ!」
操縦桿を思いきり引く。強烈なGと共に機体はゆっくりと空中で旋回を始めた。旋回を終えると目の前にはこちらへと迫る敵機が見えた。敵の掃射が襲いかかる。だが当てずっぽうの攻撃に当たってあげるほどこちらは優しくはない。さらに操縦桿を引き、空中で一回転を成功させ、全ての攻撃を躱すと敵機の後ろを追いかける形で機体を固定した。左右へと揺さぶりをかけ狙いを定めさせないようにウロウロとするがもう遅い。
「お見舞いしてやるよ」
機銃が放たれる。エンジン部分に被弾したのか激しい爆発を伴いながら、敵機は爆発四散した。敵機の破片が機体へと降りかかってくるが幸いにも大した被害を出すことはなかった。
「11時の方向に陸上基地を発見!」
「あそこだな……甲賀5より隊長機へ、敵の陸上基地を発見した。滑走路の状況から見るに現在戦闘に出ている敵機はここから離陸していることが予想される」
『了解した。こちらはまだ戦闘中だ。戦闘を終えた機体は爆撃の準備に入れ』
『3番機了解』
『7番機了解いたしました』
無線の声の後、味方と合流をする。ゆっくりと高度をあげながら爆撃に最適な地点へと狙いを定めた。
深海棲艦の基地防衛部隊も気がついたようで追加の戦闘機の離陸と防衛のための機銃を空中へと発射し始めた。
「びびって漏らすなよ」
「安全運転でお願いしますね」
「善処するよ」
『全機、一斉爆撃で行くぞ』
機体の操縦桿を押し倒す。高度が一気に下がり始めた。空を切る音が嫌な風切り音と変わり、地上が急速に近付いてくる。
「安全装置を外します」
爆弾の安全装置が外された。
「タイミングは任せます」
「わかった」
我慢の時間が続く。地上からの銃撃が機体に命中し始める。先程の旋回よりも強烈なGが機体全体にかかり、悲鳴のようなきしむ音が響き渡っている。それでもまだ降下をやめることはできない。
「あと少し……」
この好機を逃すわけにはいかない。中途半端な高度で爆弾を投下すれば、爆弾を機銃で狙い撃ちされて空中で爆発してしまうかもしれない。ただでさえ、空母加賀の妖精さん達は無理難題な命令を受けているのだ。深海棲艦の陸上基地の完全無力化に成功するまで帰還が許されるわけがない。一度の失敗はさらなる危険へと仲間を巻き込む可能性しかない。
みせてくれよ。体は戦闘経験豊富なんだろ? 覚悟は出来ているんだ。お前の腕を試させてくれ。
自らの体に鼓舞をする。体は自然とやるべきことを最適なタイミングで出来るはずだ。あとは精神力という名前の自我をどこまで保つことができるかの勝負だ。
「今だッ!」
60kgの爆弾を投下すると操縦桿をさらに強い力で引き寄せる。一気に機体は上向きとなると高度を上げ始めた。
「着弾まで3……2……1……今!」
空の上にまで爆風が届いてくる。ふと下を見ると陸上基地の航空機格納庫が燃えていた。そのまま燃料タンクに引火したのかさらに連続した爆発が続く。発艦しようとしている敵機にまで引火すると、最後に巨大な爆炎を上げて陸上基地は完全に機能不全となっていた。
「さぁ……やったぜ相棒」
「はいッ!」
『5番機よくやった。一度加賀へ帰還しろ』
「了解」