鉄の意志を5ミリくらいは引き継げればいいなっていう男の話 作:藤涙
その後数十人の生徒を拾いついたグラウンドで、ハウンドドッグ先生と合流した。怪我をしてない子がいないか確認。幸いにもここのグラウンドに集まった生徒の中には擦り傷以上の怪我を負った生徒はいなかった。その後に無線で雄英に侵入してきたのがマスコミだと知り、ほっとするとともに眉を顰める。
「マスコミぃ?? セキュリティゲートどう通ったって言うねん」
「ヴ〜〜〜〜……(嫌な気配がする…、臭うぞアント)」
「………」
ちりちりと首筋が痛む。無線の連絡で警察の到着とともにマスコミは撤退したと聞き、とりあえずは安心する。
かつてないことに怯えを見せる生徒達に大丈夫だよ、と微笑み、教室に戻すために移動させる。全ての引率はエクトプラズム先生がやってくれることになった。
「すんません、頼みます」
「イイ。オ前ハ、現場ニ急ゲ」
腕に抱えていた声響も降ろして、通形に「この子、クラス送ってって」と頼んだ。神妙に頷く通形と、未だ不安げな声響にそっと微笑みかけ頭を撫でる。
その場はエクトプラズム先生におまかせして、ハウンドドッグ先生と現場に急ぐ。
「ああ、アント先生。ハウンドドッグ先生も。生徒達をありがとう」
「グルル…(校長…)」
「いえ…」
なんと表現すればいいのだろう。そこには粉々に砕かれたコンクリート片がそこらじゅうに散らばっていた。雄英のセキュリティゲートだ。4枚の鉄筋コンクリートで閉ざされた守りの防壁。それがこの有様だ。
茶ノ丸が膝をついて破片に触れると、破片は崩れて粉状になり風に吹かれて消えていく。
「…今となっては、相手がただのマスコミでよかったっちゅーことやな」
「ちょっと、茶ノ丸くん…!」
「ちょっと大袈裟な避難訓練いうところやろ。改善点めっっちゃ見つかったな。やっぱ人間その場には弱いでほんま」
眉間に皺を寄せたまま、せせら笑うような口調でそう言う茶ノ丸にミッドナイトが窘めるように言った。
皮肉を叩きながら悔しそうに破片を握った茶ノ丸に、ミッドナイトはため息を吐く。
「
「…
「こら、そろそろやめなさい二人とも。そそのかしたものがいるね…」
今いるこの場の人間全員が苛立っている。数にして500人弱、そしてこの学校に勤務するスタッフや教師達。彼ら彼女らの平穏が、一度に侵されたのだ。
ヒーローとして、大人として、教師として。憤らない人間などこの場にはいない。
「センセンフコク言うことやろ。“自分らはいつだってこの学校の人間ぶっ殺し放題です〜”言う。ふざけとるわ」
白手袋に皺が寄る。
血が滲むほど握りこんだその手を、ミッドナイトは強引に解かせた。
なにすんねん、と視線を向ければ、手は大事でしょうあなた、と返ってくる。ぐうの音も出なかった。
「…セメントス先生は急いで補強を、ハウンドドッグ先生とアント先生は警備システムの録画映像の確認。ほかの先生方は生徒達のケアを」
「「「はい」」」
警備室に向かいながら、茶ノ丸はチリチリと痛む首筋撫でる。
先程から警鐘のように痛むそれが鬱陶しかった。
◆◆◆
「大丈夫でした?」
「ああ。そっちは?」
「なんとか……。ああ、委員決めしてるんですね。
やはりというか、お昼時だった故に食堂は相当な混乱だったらしい。セキュリティに厳しい雄英高校に侵入者、と聞くとほぼ確実にヴィランを連想する。混乱が混乱だけに怪我人も多かったよう。
今日のHRはB組のほうに来ている。クラス委員長は拳藤一佳。物理を選択してくれている生徒だ。見ている限り姉御肌で頼りがいがあり、からりとした性格なので上手くまとめてくれるだろう。
脇にどいたブラドと茶ノ丸は、それを眺めながら話し合う。
「監視カメラはどうだったんだ」
「あーーダメっした。ぜーーんぶ死角。俺の蟻から見てもなんか、黒い靄みたいなのが覆ってて見えなくて…」
「…計画的だな」
「警察の調査次第っすね。マスコミ共、こういう時ばかりは素直にゲロってほしいです」
気付かぬ間に眉間に皺が寄っていて、いけないいけないと揉みこんで解く。生徒の前でこんな顔をしていてはだめだ。生徒のほうが何倍も不安なのだから。
「ちょっと明日のUSJでの訓練が心配になります。あそこちょっと離れてるんで」
「何もないといいが…」
「ちょっとブラド先生、そういうのフラグ言うんですよ、フラグ」
「?」
せめてこの暗鬱とした思いを晴らしたくて、ふはっと笑ってみる。
HRが終わり、職員室に向けて歩いていると、ポッケに入れていたスマホが振動した。この感じはメールだろう。通知をタップしてメール画面を開くと、学生時代から懇意にしてくれていたとある博士からだった。
『今日、来れるか?』
内容はこれだけ。まあSNSに限らず、世俗に弱く人付き合いもほとんどない素っ気ない人なので茶ノ丸は気にしない。
『ちょっと今日難しいです〜、打ち合わせがあるんで』
と返して、メールアプリを閉じようとすれば再度震えるスマホ。返信はっっや…と思いながらこちらも返信する。
『なら明日は?』
『明日なら夜ならへーきですよ』
『じゃあ夜で』
そこでメールが止む。
なんの用だろう…実験かな…やだなあと思いつつ、スマホをポッケにしまい込んだ。
戦闘シーン書くのに何万文字かかるんだ…??