鉄の意志を5ミリくらいは引き継げればいいなっていう男の話   作:藤涙

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text20:全部ヴィランが悪い

 

「じゃあ、3年担当はアントくん、13号さん、スナイプ先生、パワーローダー先生、ハウンドドッグ先生で」

 

ニコニコとそれはそれは美しい微笑みを浮かべるミッドナイトに、各々は頷いた。横の席で頭を抱える先輩もいるけれど、茶ノ丸はニコニコと無視をした。とばっちりが怖い。

相澤と茶ノ丸は普通に怪我人、会場見回りをさせるにしても審判を任すにしても、少し不安がある。ということで、相澤がマイクとともに1年生の実況解説。茶ノ丸がハウンドドッグ先生と3年生の実況解説と相成った。

 

喋るのは得意だしサボれ……ではない、腹の傷はまだ痛いので、ゆっくり座ってられるのは上々だ。とにかく相澤が解説なのが愉快でニコニコしている。記録映像はしっかり見よう。

 

「楽しみにしてますネ!! センパイっ!!」

「……」

「へっへーん手が使えないからアイアンクローできないやろ……痛っ!? 痛いッ!! ちょッ足ふまんといてや!!!」

 

だんだんだんと割と強めな足への攻撃に茶ノ丸は涙目になりながらも逃げ出した。悪意70パーセントの応援とはいえ大人気なくない…?

ちなみに茶ノ丸のもう一方の横の椅子には13号が座っており、これまた微笑ましそうにニコニコしていた。

 

役割的には茶ノ丸&ハウンド・ドッグ先生が実況解説、13号が審判、パワーローダー先生が舞台の修復と作成、スナイプ先生が警備責任者だ。ここに前年よりも5倍に増やされたプロヒーローが警備と見回りに参加してくれる。

 

ヴィランに侵入されて約2日。ここで雄英高校が体育祭開催に踏み切ったのはちゃんと理由がある。逆に開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示すらしい。それに対しての批判ももちろんあるが、批判があるということは注目度がそれだけ高いということ。巣立ちを控える3年生、実力を高めている2年生、そして受精卵たち1年生と、この機会を逃す訳にはいかない。

 

(クソ)共ごときで中止していい催しではない、が教師達の総意。まあ各ステージに教師はバラけているとは言え、強化された警備雇われヒーローの他にも、観戦目的で来ているプロヒーロー達もいる。その中で仕掛けてくる阿呆はいないだろう。

 

日本に於いてかつてのオリンピックに代わるとされるのが雄英高校体育祭。テレビ局が放送権を争い、日本国民が熱狂する祭典だ。

 

まあ茶ノ丸は個性を使わない競技、大好きだが。やるならバスケが好きで、観るならサッカーが好き。

 

「茶ノ丸くん」

「はいー?」

「これ、当日のプログラム予定。第2種目についてはパワーローダー先生と相談して、あなたの思うがままにしていいわ」

「えっ、ええの? やるよ? やるで?」

 

ミッドナイトの言葉に、パワーローダー先生と顔を見合わせながら眉を上げる。

 

「3年生の競技はもちろん、1年や2年よりも難易度高くなくちゃ。文字通りの()()で振い落しなさいな、できるでしょう?」

「まあ、パワーローダー先生おったらな。できるやろうけど…」

「くけけ、任せろ茶ノ丸。お前の嫌がらせ、思いついたまま言ってみろ。全部再現してやる」

「わーー頼もし」

 

なんなんだ地獄だの、嫌がらせだの。

人がいつもそういうことやってるみたいに!

 

まあそれはともかく、だいたいの打ち合わせは終わった。続々と退出していく教師達のなか、ミッドナイトと茶ノ丸だけ残る。

 

「…あの子、どうするのかしら」

「声響?」

「ええ…」

 

長机に頬杖をついて、ミッドナイトが息をつく。溜息というか、案じるような吐息だ。机の上で手を組んでいた茶ノ丸は指を動かす。

 

「一昨年も去年も、障害物競走時点で棄権してたんやっけ?」

「そうね。というか、学校行事に関しては基本そう。やっぱり4年前のことがあって、“人と関わること”を避けてる」

 

紫陽花色の少女のことを思う。夕焼け空の光の中で、髪の1本1本がその光を受けて輝いている。夢という繭に守られた、誰よりも美しくも残酷な声を持つ少女のことを。

 

「最後だし、楽しんでほしいという思いはあるわ。でも無理はしてほしくない。…矛盾かしら?」

「いいや、矛盾ではないやろ。無理をしない程度に楽しんでほしいわけやから」

 

声響あのねは───4年前、つまりは中学3年生の頃に起こした事件から身体も精神も、個性さえ不安定として雄英預かりになった生徒だ。たとえどんな事があっても教師のほぼ全員が元・現プロヒーローという環境なら、止めることができるだろうと。

 

「4年前だって、あの子が悪いわけじゃないわ。そうでしょう? 明確な影響があったんだって、決まったわけじゃ……」

「でも声響がどう感じるかはわかるやろ。あの子は優しい、他人を慮ってる。自分の個性が他人にどう影響を与えるかなんて、苦しいほどわかってる。時間やカウンセリングでゆっくり…って思っとったけど、難しいなあ…」

 

人間の数だけ苦しみがあって、個性の数だけ悩みがある。声響のような悩みや苦しみを持つ人間だってきっとこの世に何人もいるのだ。

 

「そうね、でも、うん。今年は楽しんでみたら? って言ってみるわ。私から」

「おン。よろしく」

 

ミッドナイトの指がツ…と机の上を撫でた。まるで赤ん坊の頬に触れるかのような優しい手つきで。

短く息を漏らしたミッドナイトも、会議室から出ていく。

 

さて、明日は数学の中間テスト出題問題のお手伝いと───そろそろ受け持ち部活の子達見に行くか、と遠目になる。

選択科目担当なのに忙しすぎでは?? もうちょっと分担してもらいたい。




今日はずっと家に籠って映画見たり本を読んだり音楽聴いたりして過ごしています。風が強くて音が怖い…! 皆様お気をつけを…!

今回は職員会議なので短め、次の話は学校ぽく部活動の話です。原作では部活動あるのかな? なさそう。
ビックスリーが雄英体育祭3年の上位3名から、というのはオリジナルです。原作でそういう描写はなかったはず…! あったらごめんなさい()
相澤先生のセリフ的に毎年3人ずついるっぽいので、おそらく体育祭かな…って書いてます。明確な実力の上位が出てくるのは体育祭だし…

通形くんは力学、波動ちゃんはそのまま波動、この二人はものすごく物理。通形くんの「予測しやすいがされやすい」というのは、彼の個性的に「落下時間や諸々の計算をすれば、浮上速度と浮上地点が計算によって割り出される(されてしまう)のでは?」というものです。インテリ系に弱い、それを鑑みると彼のインターン先がサー・ナイトアイって凄いな…堀越先生すごい…ってなります。

そういう物理学的なお話をして、しっかり計算して考えて使う個性だと、耳郎ちゃんすごく強そう。
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