鉄の意志を5ミリくらいは引き継げればいいなっていう男の話   作:藤涙

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ここだけの話、関西弁のキャラクターって紳士なんですよ(大嘘)


text6:やりがいのあって、笑顔の絶えない職場です(2)

その後、諸連絡もつつがなく終わり、B組の生徒への挨拶──麗日茶ノ丸でっす! アント先生って呼んでネ! 物理教科担任です! 君達の副担任になります! よろしくネ──という内容を約5分間喋り続け、微妙な顔をしたブラド先生に優しく、それはもう優しく頭を揺すられて止まった。

 

その後三年の物理履修生の波動通形天喰に捕まり、なぜか掛け持ちして顧問担当している軽音部と文芸部と写真部とダンス部の面々に捕まり、もろもろの仕事を終えて職員室に帰ってきたのは午後3時頃。

 

「あーー!! やっと帰ってきた〜!!」

「疲れた…なんで職員室に行くまでに2時間かかるん…?」

 

行く先々で生徒に捕まり、騒いだおかげで生徒が集まり、わちゃわちゃにもみくちゃにされた挙句になぜかバスケしていた。茶ノ丸も20代後半なのだから勘弁してほしい。

職員室には茶ノ丸のソファに、数人の先生が集まっている。イレイザーヘッドこと相澤消太、ミッドナイトこと香山睡、ブラドキングこと菅赤慈郎、スペースヒーローこと13号、プレゼント・マイクこと山田……おっとこれ以上言うと拗ねられるのでやめておこう。

 

茶ノ丸の3人がけソファの左側、肘掛けにもたれかかりながらミッドナイトがひらひらと手を振る。右側にいるのは相澤だ。

なんかテーブルを囲む全員、麩菓子をもぐもぐしている───

 

「ってそれ俺の〜!! ソファも全部俺の〜!!」

「いいじゃない、減るもんじゃないし」

「減っとる! 現在進行形で減っとる!! 俺の駄菓子〜」

 

正直ヘトヘトなのでソファの背もたれにもたれかかる。二人が左右を陣取ってるので入れず、そのまま背もたれを乗り越えて座った。自分のソファなのになんでこんなに…!!!

 

「ほら、いい大人が鳴かない鳴かない。お茶は飲む?」

「あれ…漢字が…おかしい気が…? 飲みますけど…」

 

残った麩菓子をやけ食いしながら座り込む。

 

「さて、では揃ったところで始めましょうか!」

 

ミッドナイトが仮面で隠された顔でニコリと笑う。茶ノ丸は袋に残った麩菓子の最後の1本を食べきった。

 

「相澤くんと茶ノ丸くんが今日の時点で誰の首も飛ばしてないっていうことは、今年の1年は期待大ってところかしら」

「……オールマイトさんもそうやけど、俺とこの人一緒にせんでほしいわ。別に誰の首も飛ばした覚えないんやけどな」

「ほら、あなた達、根っこの部分で価値観が同じだから相棒やれてるんでしょう? 気が合うのよ、同じ穴の狢ってやつかしら」

「う、嬉しくない…!」

 

ミッドナイトの言葉に頭を抱える。

というか同じ穴の狢って悪い意味では? わざとか。わだとだな…。

 

「いやあ懐かしいぜー!! 二人の河原での熱い青春Endless&battle!!」

「やめろバカお前!!!」

「えっなにそれ詳しく!!」

「OK!! あれは10年前の二学期初めのこと───!!!」

 

駄菓子が入った缶の中から素早く綿菓子(ぱちぱちするやつ)を取り出し封を開けプレゼントマイクの口の中に突っ込んだ。食感が楽しい駄菓子だが一気に食べると結構痛いんだよなこれ。

案の定「いっってーー! でも甘ェーー!」と叫ぶプレゼントマイクに親指を下に向け、つまらなさそうに口をすぼめるミッドナイトにはべーっと舌を突き出した。

 

「それくらい話してくれてもいいのに、減るものじゃないでしょ?」

「減るの! 俺の! 心が! すり減る!」

 

短時間で叫びすぎて疲れた。相澤は助けてくれないので2対1で孤軍奮闘である。帰りたい。

このままだと埒が明かないので、話題を変えた。

 

「今年もするんですよね、レスキュー訓練。USJで、A組とB組は別ですか?」

「そうだな、そうなる。同行は頼めるか」

「ええ、もちろんですよー。B組、まだ話してない子ばっかなんで、楽しみですー」

「A組ともほとんど話してないだろ」

 

「え? A組に妹ちゃんいなかったっけ?」

 

なぜか一番避けたかった話題に着地して一瞬瞑目する。どこに行っても地雷原だ、逃げ場がない。

 

「麗日お茶子、だったかしら。ちょっと見に行ったけど、よく似てるわね顔」

「は?! 見に行ったん?! お茶子の教育に悪いので見に行かないでくださ…痛い痛い!!」

「…ああ、10年間会えてない妹か。聞いたな」

「待って、痛い! ブラド先生誰に聞いたん?!」

「プレゼントマイクからだ」

「てめぇ山田ァ!!!」

 

プレゼントマイクの服の襟をガクガク揺らしつつ、ミッドナイトに頬を抓られ、全力で叫ぶ茶ノ丸。座っているソファがギシギシと揺れて相澤は迷惑そうだ。

塞ぐべき口が三つくらいあるので本当に手が足りない。

 

「で、どうなんだ? 妹とは話せたのか?」

「……………………………………………」

「は? 嘘だろ?」

「目は、あったし………………」

「口下手過ぎませんか…?」

 

ソファに深く沈み込んで手で顔を覆う。茶ノ丸は雄英の教師の中では一番若く、雄英高校の教師は元々雄英高校出身者が多いのでまじで頭が上がらない。ぶっちゃけると一番立場がアレなのである。未だ日本で根強い年功序列、はんたーい…

 

「連絡先は?」

「交換してるわけないやん…!」

「家は? あんたこの近くに一軒家持ってたでしょう?」

「確か下宿や、住所は知っとるけど…」

「ええ、おま、ええ…」

「兄妹と言えどもいちおー教師と生徒やで!? 私情持ち込んで甘えさせるわけにもいかんやろ。なあセンパイ」

「…まあな」

 

必死の形相の茶ノ丸から目を逸らしながら、相澤はとりあえず頷いた。そもそも身内がいると気が緩むから、今年は茶ノ丸を副担任から外そうという話は出ていたのだ。結局こうなったが。

 

「ほら、やっぱりヒーロー科ですし、厳しい訓練も試練もありますわ。学校ではちゃんと教師と生徒しますよ」

「あら、わかんないわよ? あなた、甘いから」

「……」

「むくれないむくれない。とりあえず明日、連絡先ぐらいは聞いてみたら? “先生が生徒の連絡先を把握する”のは、別に間違ったことじゃないわ」

「……香山センパイが、そういうなら」

 

机に顎を乗せながらむくれる後輩に、ミッドナイトは声を上げて笑った。

 

「そんなんじゃ妹さんに彼氏でもできた日には大変じゃない?」

「……………………は? なんで。彼氏?」

「い、いつかの話よ? ほら、年頃だし」

 

その途端ばっと顔を跳ね上げて、信じられないような顔でミッドナイトを見つめる茶ノ丸。おっと、これは地雷か? とその場の全ての教師が遠くを見た。

 

「………いやいやいや、まだ早いやろ。15やで? 恋だの愛だのまだまだ早いし………」

「そう? …今日男の子と一緒に帰ってるの見たけどな」

「は? 誰。」

「怖いからその獲物を見つけた肉食獣みたいな顔で殺気を出すのやめましょうか」

 

カレシ、ソイツ、ユルサン、コロス。みたいな心の声が聞こえてきそうな茶ノ丸。瞳孔が開いていて姿勢が前のめりだ。

これまで静観していた13号が「過保護……じゃない、大事にしていらっしゃるんですね」とのほほんと言った。

 

「彼氏とかあかん。お茶子に近づく悪い虫はみーんな俺が殺虫剤で…!!! お茶子と付き合いたいなら俺を倒してからにしろー! いうやつや」

「自分もまだ話せてないのに偉そうに…」

「センパイひどい!! これから話すの!! なんとか!!」

 

職員室から賑やかな声が、誰もいなくなった学校でこだまのように響いている。

 

 

さて、時は少しばかり遡り────

 

「ああ、やはりお兄さんだったのか。顔がよく似ている」

「えへへ、ありがと…」

 

入学式を含んでいた雄英高校での学校生活の一日が終わり、生徒たちは帰宅の途に着いていた。

1年A組の麗日お茶子、飯田天哉、緑谷出久もそんな中の一人だ。

 

駅までの帰り道、話のネタは関西弁の陽気な副担任のことで。

飯田の言葉に少し照れくさそうに、だが少し眉を下げたお茶子に、出久は首を傾げる。

 

「どうしたの?」

「え? えーと、あはは…」

 

そんな問いかけに笑って誤魔化そうとしたお茶子は2人の視線に観念したように話し始めた。

 

「そうか、茶ノ丸先生と麗日くんは10年間会えてなかったんだな…。その時間が災いして上手く接せられない、と…」

「うん…。私が3歳の時に雄英通うために出てって、高校卒業したらそれっきり。今日久しぶりに話せるかな、って思ってたんやけど…難しいね…」

 

イレイザーヘッド&アントマンのバディは、そのスタイルから表舞台には出てきていない。それだけ危険な任務や表には出せない仕事があったのでは……と出久は邪推するが、お茶子の前で言うことでもないと口を閉じる。

 

「なんというか、気まずいんだよね…目はちょこちょこあっとるような気もするんやけど、逸らされちゃうし。もしかしたら……」

 

嫌われとるんかな。その後の言葉はなんとなく察せられた。

飯田と出久は顔を見合わせる。あえて言うのなら彼らは若かった。しょんぼりと俯く少女に、気休めの優しい言葉をかけてあげられるほど大人ではなかったのだ。

 

「麗日くん、上手くは言えないのだが、そんなことを考える前に行動するべきだと思う。君のそれも想像だ、事実ではないのだから」

「…そっか、そうや、うん! ありがとう、二人とも!」

 

出久は赤べこのように首を縦に降っていただけだが、お茶子は泣き笑いのような顔で微笑んだ。

 

「うん、家族の絆って、そう簡単にはちぎれないと思うし。聞いた限りではお互いに少しだけ、10年の間に変わってしまったものがあるのかもって、踏み出せないでいるだけな気がする。僕も上手く言えないや…」

「ありがとうデクくん! うん、うん! まず最初は、連絡先聞くとこから始めんと…!」

 

えいえいおー! と帰り道に元気な声が響く。

 

春うららの陽気は、新入生達を柔らかく照らしていた。

 

 




アメコミってとても面白いのでオススメですよ(丸投げ)

それはともかく“アントマン”というヒーローはMARVELが出版するアメコミに出演するヒーローで、映画もやってます。これはもうオススメ、2作出てます。アベンジャーズシリーズだったら4作かなあ。ハリウッドで実写化された映画のアントマンは、2代目のスコット・ラングというちょっとダメなパパが主人公です。ミリの世界での戦闘の描写、ひたむきに娘を守ろうとする父親の情、作品の中にあるアメリカンなユーモア、どれをとっても好きです。いや、これは実際に見て笑ってほしいんですけどアントマンのサイドキック(?)のルイスくん、めちゃくちゃ面白くて可愛いので笑ってあげてください。
MCUの中では爆笑できる映画なんじゃないかな…あとはGOG。これオタク仲間に言うと結構な頻度で見てくれるんですけどGOGの主人公スターロードの声、山ちゃんなんですよ。おすすめですよ(二度目)


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