化け物の俺は彼女たちと人間になりたい   作:ゼルクニル

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前回(結構前)にお知らせしたとおり、Roseliaの再投稿です。
片っ端から修正していく内に(まだ終わっていない)、また一ヶ月過ぎていた…なので更新不定期を追加しました。タイトルも変えようかな、とか悩んでいる真っ最中です。


※話数のズレや話の食い違い等の問題は分かっているので、報告は不要です。


血塗れた手に青薔薇を
第21話 その時は、その時


 学校としての生活にも少しずつ慣れてきた俺は、CIRCLEでの仕事と両立してバンドの練習を見るための時間を取れるようになった。と言っても、俺は音楽に関しては完全に素人であり彼女たちに物を言えるような立場では無い筈なのだが…友希那曰く、「直感でも良いからアドバイスが欲しいの」とのこと。

 

 直感で言う指示が練習の役に立つのかは未だ不明だが、本人達が納得しているのであれば、俺も音楽に関する知識を身につける為に丁度良い機会だと思っている。あまり損得で考えたくは無いが…。

 

 それでも最近、なんとなくだが…前に比べて的確な意見を言えるようになったような【気』がする。あくまでも気がするだけなので大して誇れるようなことではない。そうだとしても、着々と音楽に関して分かるようになってきたのは…こうして彼女たちの演奏を間近で聴けるからこそなのだろう。

 

 

「そろそろ時間か。悪いが今日は帰らせてもらう」

「…そう。今日は随分と早いのね」

「今日はパスパレの仕事もあるからな」

 

 

 パスパレのマネージャー、元い練習補助として事務所に雇われたのは金銭的にも喜ばしい事だが、どうしても物事に対する時間は割かれる。況してやRoseliaとパスパレでは、曲のジャンルや今後の方針が根本的に違うので少々難しいところであるが…多少は慣れたので、そこに関しては経験を積み慣れていく他あるまい。

 

 

「あの…日菜がご迷惑をお掛けしてませんか?」

「人に振り回されるのは慣れている。気にする必要はない」

 

 

未だに日菜には慣れないがな。彼女は特に休憩時間になると、何が面白いのかすぐ腹を狙い突っ込んで来る。元気が良いのは良いが…あの奇行は未だに何なのか分からない。決して悪気があるようには見えないので軽く対応して終わらせている現状である。

 

 

「私たちは、私たちで練習を続けるわよ」

「「はい!」」「ええ」「オッケー☆」

「ではまた今度」

 

 

 

音楽面に関してはこうやって彼女たちと関わりながら身につけていけば良い。焦らず、然れど早く。そんなことを考えながら別れの挨拶をし、俺はスタジオを出て事務所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 零がパスパレに指導している頃、彼女たちは、零に与えられた課題を完遂し息を切らしていた。

 

 

「ふぅ…今日はここまで」

「皆さん、お疲れ様でした」

「お疲れ~」

「つかれた~」

「あこちゃん……おつかれ」

 

 

各々楽器を片付けながら息を整え、片付けが終わると椅子を引っ張り出して円状に並べて座ると、今後の予定を話し合った。

そして話し合いが終わると世間話へと変わり、いつの間にか話の話題は零についてへと変わっていた。素性、生い立ち、己について全くと言って良い程語らないものの、いつの間にか自分達の周りに溶け込んでいる今の零は、実質謎の少年。寧ろそうならない方がおかしいだろう。

 

そして今日、更なる謎を呼ぶ話題がリサの口から語られた。

それは前回の商店街での一件。商店街の人々が全員で探しても見つけることが出来なかった『純』と『紗南』を1人で見つけ出し、更にはその犯人を無力化したというものだった。

 

 

「うーん…。ねぇりんりん。零さんってそんなに強いの?」

「どうなのかな…。私には分からない…かな」

「…ただの噂なのでは?」

「そもそも、零が運動しているところを誰も見たことが無いのよ?証拠も無いのに、そんなこと言われても信じられないわ」

「やっぱり…みんなそう思う?」

 

 

無論それは紛れもない事実。だが当然、そんなアニメや映画の主人公のような話があるのだろうかと彼女たちは疑った。確かに彼は普通の人とは少し違う。だが幾ら人より多少は優れているからと言って、流石に嘘なのでは?と皆はこの話を偶然起きえたものだと決め、この話題についての討論は終わり、彼女たちは各々でライブハウスを後にすることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈み始め、夕日の温かな光を背に受ける帰り道で私は考えていた。

 

彼は私たちの成長に繋がると思ってスカウトした。その結果、確かに私たちの音色は少しずつ変わり始めている。特に紗夜の音は、最初とは比べものにならないものになり始めている。彼のおかげで、私たちは確実に成長している。

けれど…彼自身はどう思っているのかしら… 

私たちは彼に何もしていない。彼は今でも音楽面に関しては自信が無いと言っているのに…私たちは彼に頼りすぎているわね…。

 

そう考えていたときだった。

 

 

「湊友希那さん、ですね?」

 

 

いつの間にか目の前に立っていたスーツ姿の男性が話しかけてきた。

スーツ姿を目の前にした時点で、用件を聞かなくとも大体の予想は付いていた。それでも一応、用件を聞くことにした。

 

 

「そうですけれど。どちら様?」

「自分は、こういう者です」

 

 

予想通りの展開に、心の中で溜め息を付きながら差し出された名刺を受け取った。

受け取った名刺には目の前に立つ男性の名と、社名が書かれたごく普通の名刺。今まで何度も同じような物を渡されてきたので、またいつものようにこの場で断ろうとした。けれど、今渡された名刺は私の興味を引いた。

 

名刺に書かれた社名は『〇〇プロダクション』。その名は何度も雑誌で目にしたことがある。今活躍している名のあるアーティストの殆どがその会社に所属し、中には『FUTURE WORLD FES』に出場したアーティストも数多くいることから、【〇〇プロダクションに所属すれば『FUTURE WORLD FES』に必ず出られる】という噂も後を絶たない。

 

これまでのスカウトの中で、最も大きなチャンス。

 

けれど私は、Roseliaのボーカルとして、Roseliaの5人でFUTURE WORLD FES(そのステージ)に立つ。それは絶対に変えないと決めた。私だけのスカウトなら大手だろうと断るつもりでいた。

 

 

「誤解を招くかも知れないので説明させて頂くと、我が社がスカウトしたいのは貴方と、貴方が組んでいるバンドの皆様全員です」

「!」

「今すぐ答える必要はありません。数日待つので、決まれば電話でお知らせください。それでは」

 

 

けれど信じられないことに、今回のスカウトはRoseliaというバンドとしてのスカウト、願ってもない提案に私は動揺を隠せなかった。当然よ。今までのスカウトのほぼ全ては私だけのスカウトだったもの。

その後、男性は『数日待っている』と言って帰っていった。

 

 

「(…明日、彼に話すべきね)」

 

 

突然過ぎる大きなスカウトに戸惑いながらも、私は沈み掛けた夕日が照らす道を歩いて家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

学生は一日授業を受けるのは当然、それは分かってはいるものの…最近、分野によっては聞くだけ無駄な気がし始めていた。

 

国語や社会科はほぼ無知であるので必要だ。だが数学や科学は、作戦の立案や弾道の予測、医療品の調合等で必要になると幼少期から叩き込まれてきた。況してや英語など…某国に居続けた12年の内に知らずと習得している。

 

それでも受ける必要があるので、ただ黙って教科書を見ながら教師の話を一応聞く。それが現状の授業態度である。 

 

そして今日の数学も同じように受け、気づけばチャイムの響く音と共に教師が授業を締め一礼して午前は終わった。

 

授業が終わると今日のクラス、A組の生徒達は学食を食べに行く者や友人に会いに行く者が多く、瞬く間に教室はほぼ空。残ったのは先程出された宿題を終わらせようとしている俺と、机に開かれたノートをシャーペンでリズム良くトントンと叩きながら溜め息を吐く蘭の2人だけとなった。

 

 

「歌詞でも考えているのか?」

「うん。そっちは?」

「こちらは宿題を終わらせようと……いや、今終わった」

「…えっ?ホントに?」

 

 

席の横に開いた机を1つ挟んで始まった会話の中、宿題を終わらせたと告げると蘭は疑ったので俺は宿題を終わらせたノートのページを開けて蘭の方に向けると、『ホントだ…』と小さく驚きの声を溢した。

 

 

「零って何でも出来るよね」

「何でもでは無い。出来無いものは全く出来ないぞ」

「…例えば?」

「歴史分野と国語は全くと言って良い程理解できていない」

「そうなの?なんか意外」

 

 

一体俺はどんなイメージを持たれているのだろうか。そんなことを考えながら荷物を片づけていると、教室の入り口から俺を呼ぶ声がしたので入り口の方を確認した、其処にはいつもより真剣な目を向ける友希那が立っていた。

友希那が此処に来るのはかなり珍しいので、何かあったのだろうと予想した俺は無駄な話を省き『何か用か?』と聞くと、『ついてきて』とだけ言い残し廊下へと消えて行った。

 

 

「…何かあったの?」

「分からない。一先ず話を聞きに行く」

 

 

途中で終えていた片付けをすぐに終わらせ、俺はスマホをポケットに入れ友希那を追うため教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那の後について行くと屋上に辿り着いた。扉を閉め用件を聞くと何故か答えるよりも先に周囲を確認し、終えると友希那は余計な話を省きスカウトを受けたと語った。話を始める前に周囲を確認したのは、俺と友希那以外の誰かがいないことを確かめたのだろうか。

 

過去に、友希那だけスカウトされるところを目撃され揉めたことがあったと聞いた。思い違いや誤解を招くかも知れないという心配の上での行動だと考えるのが妥当だ。

 

 

「現状は?」

「今は返答を待って貰っているわ」

 

 

流石にやり慣れていると思わざるを得ない。今までどれだけのスカウトがあったのかは知らないが、それらを全て断っているだけあって冷静な判断だ。だが本人に言わずとも分かるだろうが、決めるのはリーダーである友希那だ。

 

俺は本音を言えば、彼女たちが誤った判断をして取り返しの付かないことにならなければそれでいいと思っている。Roseliaに限っては正確な判断が出来る面々が多いので、余程のことが無い限りは問題ない筈だが。

 

 

「現状については分かった。最も、今後の方針に関しては相談程度しか出来ないがな」

 

 

…大手からのスカウトか。

CIRCLEでの仕事中に聞いた噂だが…Roseliaを結成してから多くのスカウトや勧誘があったものの、友希那がそれらを全てを断った結果、音楽業界からはイマドキ珍しい期待の新星だという目で見られているという噂だ。

言わずとも友希那は理解しているだろうが、良くも悪くも目を付けられているという事になる。

 

 

「スカウトの話について、貴方はどう思っているのかしら?」

「…求めている答えかどうかは分からないが、他の4人と相談したうえで受けるというのならそれでも良いとは思う」

「そう…」

 

「……だが」

 

「?。何か言ったかしら?」

「何も言っていない」

 

 

話が終わりに近づいて来たと思ったその時、次の授業の予鈴が鳴り『この続きは次の練習の時に話しましょう』と言って友希那は先に教室へと戻っていった。

 

 

「(スカウト。か)」

 

 

Roseliaの目指す先、それは『頂点』だ。

この先…彼女たちが業界へと足を踏み入れた後、果たしてどうなるのだろうか。良くも悪くも上に行けば行くほど光は強く当たり、光が強く当たれば当たる程に影も濃くなる。この世の中に綺麗事だけで成り立つ事など無い…彼女たちは今後『演奏の技術』で勝負するだろうが、果たしてこれから先相手にする者達は、()()()()()()()()()()()()()を持つ者達だけなのだろうか…。

 

 

考え過ぎだというだけなら、それで構わない。何にせよ…大手からのスカウトとなれば、素人である俺の指導など必要なくなるだろう…。

 

 

万が一の場合その時は、その時だ…。

 




散々待たせておきながら短くて申し訳ありません…

次回は現在作成中なので待たせるようなことはない…筈です。

【改めて】次回のシリアスは?

  • afterglow
  • ハローハッピーワールド
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