山のような課題の量でモチベなくなりながら地道に書き続けて、気付けば2か月たってました…
【今回はかなり重たい話です】
平日の夕方。この時間帯にカフェテリアを利用するのは、練習しようとCIRCLEに訪れた学生。後は散歩していたら寄りたくなった等の理由で何となく立ち寄った人々。客が多く訪れているように聞こえるが平日なので客入りは大して良くないのが最近、とある問題の原因となっている。
「…今日も余るな」
カフェテリアに客が来なければ何が問題となるのか、それは材料だ。
CIRCLEだけなのか、それとも他の店も同じなのかが分からないが此処のカフェテリアは作り置きをしない。衛生面の心配が理由だとオーナーが言っていたとまりなさんから聞いたが、ならば衛生上の心配をなくす設備を買うなりして対策を取れば良いだけだろうと思ったのは言うまでも無い。
無論その話はまりなさんにしたが、あの人曰く…『予算がそこまで回らないから無理なんだよ』と即答された。
見ただけでは分からないだろうが、CIRCLEは金銭的に余裕が無い現状らしい。そうでなければ、何処の生まれかも分からないような俺を受け入れる筈が無い。圧倒的な人手不足でも何とか商売として成り立っている、意外と赤字寸前で踏みとどまっている状態の店なのだ。
だったら何故、材料が余るのか。話を簡潔に纏めると『需要は少ないが、供給が止まらない』からだ。
特に一番余るのが牛乳だ。乳製品は日持ちが良くないのでどうにかして消費しなければ赤字は目に見えている…どうしたものか。
閉店のために店の中でカウンターをタオルで拭いていると、誰かの足音が近づいてきた。
「…すまないが、カフェテリアの営業は終わったぞ」
「あー…やっぱり?」
足音の正体は、ベースを背負ったリサだった。
そう言えば今日スタジオの予約を入れていたな…
「練習終わりか?」
「そうなんだ〜。結構張り切って練習したし、自分へのご褒美〜と思ったんだけどなー…」
…言っていることは残念がっているだけだが、言い終わると諦めて帰るどころか、苦笑いしながら腕を組み『どうにかならない?』と訴えかけるかのような
目線をチラッと何度も見せた。
「………注文したいなら普通に言え」
「あははー…ゴメンゴメン」
注文されたカフェオレとショートケーキを盆に乗せ、リサの座るテーブルへと持って行き、リサの座る反対側の席に腰掛けた。
なんだかんだ言いながらも特別営業で注文を受けているが、決して顔見知りだからと言うだけの話ではない。ようやく来たお客様相手に少しでも売り上げを出すためだ。
汚いと思うだろうが、それが商売というものだ。
「あ、このケーキ美味しい」
「そうか。それは何よりだ」
カフェテリアでも仕事をしている俺だが、正直言って料理の味に関して自身が無かった。
全く無かったというわけではない。まともな食品などあまり食せ無かった紛争の中で生きる為に必要な技術だった、現状一人暮らしなので多少なりとも出来る。
だがそれはあくまでも、俺が食べていくうえでの技術。普通の食事をして生きてきた人達の口に合うかどうか…まりなさん達からは好評だったものの、『お世辞だろう』と思っていた。
「追加でもう一個ケーキ、頼んで良い?」
「…タダではないぞ?」
「分かってるって♪」
だがこの時、その心配は無くなってた。
ガールズバンドの中でも特に、料理の腕で右に出る者がいないとまで言われているリサが追加の注文をした。彼女のお墨付きなら料理に関して問題は無いということだ。
リサが食し終わったケーキの皿を下げ、追加のショートケーキを再びテーブルに運んだ。
…満足そうな顔をし、美味そうに食べている。
「追加分は要るか?」
「うーん…そうしたいけど、持ち合わせが…」
「追加分は俺が奢る」
「…いいの?」
「ただしその分、話し相手になって貰う」
この機を逃す訳にはいかない。半ば強引になったが、スカウトの件について聞かせてもらうとしよう。
「だからこういうのは、なるべく調味料で誤魔化さないようにして~」
「なるほど…」
今、俺はカフェテリアのエプロンを身に纏いカウンター横に備え付けられたコンロで調理をしている。そして俺の横には、俺と同じエプロンを身に纏ったリサが俺に指導をしている。
何故そうなったのか。
最初はお互いにコーヒーや紅茶を片手に様々な話をしていた。バイトで面倒な客が来たことや、最近の授業が難しい等のリサの愚痴に対して俺が意見を発するという、言わば相談から始まり、そこから話が弾んだのか、リサは自身の私生活についての不満や不安も言い始めた。
そのことについては、誰であろうとそういった感情はあるだろうと思い、何とも思ってはいなかった。
寧ろ、そういったプライベートについての相談をするということはそれだけの信用を得ているという心境の現れ。実に喜ばしいことだ。
そんな話を続いている中、リサが切り出した話が現在の状況へと至った理由となった。
「そういえば、このケーキって零が作ってるの?」
「ああ、そうだが…口に合わなかっただろうか?」
「え?あ、いやいや違うって!ただちょっと意外だなーって」
「…どういう意味だ」
「いや…そういうことに興味ないと思ってたから」
意外だったと言いながらも、困惑するような表情を浮かべることなくケーキを食べ続けるリサに対し、『だったらどんなことなら興味があるように見えるんだ』と言ってみようかと考えたものの、口には出さず、自分で淹れたエスプレッソと共に飲み込んだ。
…今更思うのだが、俺がカフェテリアの仕事を請け負う前は誰がここを切り盛りしていたのだろうか。
やはりまりなさんだろうか。…いや、あの人が『私…その…料理とか出来ないんだよね、あはは…』と言っていたのを思い出した。
そういえばカフェテリアのカウンター下には売り上げを記録するための用紙がある、俺も仕事終わりには売り上げなどについて書き、保管用のトレーに保管しているがよくよく考えれば、俺が勤務し始める前の記録用紙も保管されていた筈だ。
すぐに確かめるため椅子方立ち上がり、カウンターへと向かった。
店の中に入り、カウンター下の保管用トレーを空け用紙を取り出す。新しい紙を表紙にホッチキスで留められている用紙にしゃがみながら目を通すと、予想通り俺が勤務し始める前の記録が残っていたものの、名前は書かれていなかった…。
「結局分からず終いか」
「何が分かんないの?」
用紙に向けていた目線を声がした方へ向けると、カウンターの店外側から身を乗り出しこちらの様子をうかがっていた。
用紙のケースだけを保管場所に戻し立ち上がると、右手を腰に当て『何も言わないでどっかに行くのは酷くない?』と怒りながら、左手に持った空のコップを俺の方に差し出すと『アイスティー、おかわり』と付け足した。
軽く謝罪し受け取ったコップにアイスティを入れ直していると、『うわ…』というリサの声がした。
目線を向けると、リサは俺が先程まで見ていた売れ高の記録用紙に目を通していた。『見ていて面白いようなものではないぞ』と言いながら入れ直したアイスティを手渡すと、リサは深刻そうな表情でこちらを見ながらアイスティを受け取った。
「赤字なんだ…」
「もともと客足は伸び悩んでいたそうだ。まりなさん曰く、ガールズバンドが練習に来るようになってから客足は伸びたらしい」
最近CIRCLEの知名度が上がったとまりなさんが言ってはいるが、売り上げを見ると正直そうは思えない。俺はこういった流行などに対しての知識は皆無だ。大体、未だにこの生活に慣れていない。
先に話したとおり、具体的な改善法が結局分からず終いのため、首の皮一枚繋がっている程度なのだ。
「ねぇ零。提案なんだけどさ…」
「何だ?」
「もしよかったら、アタシが料理について教えてあげる」
赤字を記録した用紙を見て何思ったのかは分からないが、リサの提案を受け現在に至る。
「零は思ってたより手際が良いねー☆」
「そうか?」
「これなら時間短縮にもなりそう♪」
再びカフェテリアのエプロンを纏いまな板で野菜を切る俺の横で、貸したエプロンを纏うリサが包丁の腕を褒める。
…あまりいい気はしない。食材を切り続けた結果として包丁の腕を上げたのではなく……人を殺める為に鍛えられた腕だからな。それが偶々、良い方向に転んだだけだ。
その後も何気ない会話が続いたが、彼女のある一言が空気を変えた。
「零は…スカウトのこと、どう思う?」
その言葉に先ほどまでの明るさはなく、声色から困惑と不安が感じ取れる。前向きな思考を持つリサでも、やはり迷っていた。
「リサはどうなんだ?」
「……いい話かなって思う。今まで聞いたスカウトは全部…友希那だけだったからさ…」
「今回は全員だから良い、と?」
「……誰かが抜けることを避けられるなら。またRoseliaが無くなるようなことにならないなら……良いと思ってる。こんなの、我儘なのは分かってるけどさ…」
「…そうか」
……リサはリサなりの考えがあった。だがそれは傍から聞けば我儘だ。
だが俺はそうとは思わなかった。身近にいた人物、それが幼少期から知っている幼馴染みなら、何処かに行かないようにしたいと思うだろう。
しかし事務所にRoseliaとして所属したとして、果たして誰も抜けずに続けられるのだろうか。
肩書きとはいえ俺はRoseliaのマネージャー、業界については色々と漁ってはいるが…何もかもが全く変わらずに続いているバンドは存在しない。
況してや、現時点で芸能界に目を付けられている
「……カナダの五つ子姉妹の話を知っているか?」
ただ俺の意見を話したところで効果は薄いと判断した俺は、炒め物をしていたコンロの火を切ったカチッという音の直後にそう質問した。
「…知らないけど?」
「リサは今、俺に料理について教えた。今度は俺がリサに教える」
「……何を?」
「…心理学について」
このようなことを教えるのは適切な判断では無いことは理解している。だが少なくとも、いずれは知らなければならない。思い知らされなければならないことだ。
本当にそれが正しい判断なのかと迷う自分にそう言い聞かせながら、出来上がった料理を皿に盛り付け、エプロン姿の俺とリサの2人で試食するためにテーブルへと運んだ。
カナダの五つ子姉妹は実在した人物達だ。
事実を掻い摘まんで説明すると、世界恐慌の最中で、奇跡と呼ばれる程の確立で産まれてきた5人の姉妹がいた。
しかし五つ子の両親は経済的に育てることが厳しくなることを予測し、頭を抱えた。
そこから五つ子の人生は狂った。
金銭のことを考えた結果、両親は「五つ子を万博の見世物にする代わりに契約金を受け取る」という書類にサインした。すると人道的見地から見過ごせないと州、即ち国が動いたものの、結局は金儲けのために両親を言いくるめ親権を剥奪し、更には五つ子を奪われないように
数年後に両親の元へと帰ることができたものの…我が子を思い、子供を返して欲しいと訴え続けた両親さえもが、五つ子を
「最終的には自由を手にしたものの、五つ子は其処まで辿り着くまで多くのものを失った。という話だ」
「…」
話が終わる頃には試食のため運んだ互いの料理の皿は空になり、再び注いだアイスティーの氷は溶けきった。タイミングを見計らい、少し味が薄くなったアイスティーを流し込み始めるとリサは口を開いた。
「何で今その話をしたの?」
不満げにリサが口にしたのは、もっともな意見だった。
このような話は不安を煽るだけの、決断を惑わせるような話だということは十分に理解しているつもりだ。だからだ、今だからこそこの話はするべきだろう。
「今の話を聞いてどう思った」
飲み干したコップをテーブルに置き、改めてリサの目を見てそう言った。
「リサ…俺は何も、スカウトを受けなるなとは言わない。俺の立場は所詮肩書き。今後の方針に沿って様々なことを決断するのはリサ達だだがな、今回の件については話が別だ」
「…どういうこと?」
「FWFに出場するのが目標だということは分かっている。Roseliaとして、5人揃って出場することが重要なのだと言うことも分かっている。その目的を果たすために事務所に入るのも納得がいく…だが俺は思う。何かを成す為には必ず、何かしらの組織に入らなければならないのだろうか?。事務所所属という肩書がなければいけないのだろうか?」
「それは……」
「……何故この話をしたか分かるか?。五つ子の話の本当に恐ろしい話、それは何だと思う」
「…それは……ゴメン、分かんない」
「この話の一番の恐ろしさは、五つ子の人生がどれだけ過酷且つ残酷な一生になるのかを、誰も予想しなかったということだ。五つ子を育てたのは、利用すれば金を稼げるという欲望に満たされ家畜のように扱う者、そして唯一救えるであろう者たちは、自分は良いことをした、五つ子を守ったんだというありもしない正義感に溺れた。結果として誰1人、五つ子のことを
「……問題の発端となるのは、人の欲。この世には目的を果たすためなら手段を選ばないというどうしようも無い連中が山ほどいる。事務所に所属するということは、そういった奴らの要求を呑まなければならないと言うことだぞ。例え…自分達が望まない、やりたくないことだったとしてもだ」
話し終えた頃、リサは完全に黙り込んでいた。今後のことで悩んでいた彼女にダメ押ししてしまっただろうかと思ってしまったが、焦りで物事を決め最悪の結末を迎えないようにするための忠告なったはずだ。
それでも言い過ぎたのではないかと思った俺は、「…もう一度、考え直すべきだと俺は思う」と付け足し、空になった2人分の皿を洗うため席を外した。
零が席を外したことで一人となったリサの頭の中では、先程の零の話の一部が響いていた。
『何かを成す為には必ず、何かしらの組織に入らなければならないのだろうか?』
『この世には目的を果たすためなら手段を選ばないというどうしようも無い連中が山ほどいる』
話を聞いていてリサが思ったこと、それはその言葉に重みがあったということだった。
何を聞けるのかと思っていざ聞いたのは、決していい話ではなく、想像もしたくないような残酷な話と、耳を塞ぎたいと思ってしまうほどのキツイ言葉。
それでもリサは聞くことを辞めなかった…否、正確に言えば辞めようと
「(言われなくても、分かってるよ…)」
何故ならリサの本心は…事務所に入ったからといって全て丸く収まるとは思っていない。いっそのこと事務所に入らず現状維持、何処にも所属せず今のように続けていきたいと思っていた。
自身の考えは間違っていると思い始めていたリサは、この考えは間違っていないという確信を持ちたかった。だから辛くても聞き続けた。零が同じことを考えているのならきっと助けてくれると思ったからだ。
だがリサは、その本心を零に言うことが出来なかった。誰しもが持つ感情が、彼女を縛っていたからだ。
「(でもっ!…また……前みたいにはなりたくないっ!)」
リサを縛っていたのは、恐怖。
時が経つ毎に離れていった幼馴染である友希那との関係を取り戻したい一心で今まで頑張っていた彼女にとって、友希那と意見で対立するということは、絶縁の可能性が生まれてしまう最も避けなければならない行動だと思ったからだ。
しかし本当にそれでいいのだろうかとリサはリサ自身に問いかけるものの、本心と恐怖のどちらかを選び、切り捨てることが出来るほど人は…リサの心は強くなかった。
考えるたびに頭痛が起こり、呼吸が荒くなる。もしも絶縁という最悪の言葉を口にされたら、もしもまた前のような関係になってしまったら…そんなあるかどうかも分からない不安と恐怖を抑えるように、リサは自身の肩を抱き、うずくまってしまった。
…リサは気付いていなかった。
テーブルに置かれた自分のスマホに、『大事な話があるからまた連絡するわ』と、友希那からのメッセージの着信が来ていたことに。
そして零はカウンター内の食器棚に皿を戻しながらその光景を見ていた。そして片づけ終えようと最後の皿を掴んだ時、カウンター内で小さな音が響いたことに零は気付かなかった。
音が響いたのは、リサがうずくまってしまった数秒後。
響いたのは、『ピキッ』っという
話の内容は考えているものの、書く暇がなくて更新できない悪循環から抜け出せず更新が遅れるかもしれませんが、失踪する気はないので気長に待っていただけると助かります…
それではまた、次回を気長にお待ちください…
【改めて】次回のシリアスは?
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afterglow
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ハローハッピーワールド