約一年ぶりの投稿でいろいろおかしなところがあるかもしれません…
零とリサがスカウトの件について意見を述べていた頃。友希那はとある場所へと足を運んでいた。そこは以前、スカウトの話を話していた光景をあこと燐子に目撃されらあの場所だった。友希那にとってもあまりいい記憶があるような場所ではない為、此処への足取りは重かった。
中に入り空いた席に座り、しばらくすると入り口の方から1人の男性が来た。スカウトの話を持ち掛けてきたスカウトマンだ。「お待たせしました」と一礼し友希那の向かい側に座るスカウトマンに対し「いえ」と返す友希那。
互いに顔を見るや否や、スカウトマンはすぐに話しを始めた。
『決めていただきましたか?』
「……いえ。まだ…」
『…何度も申し訳ありませんが、そろそろ決めていただけないでしょうか?』
今回のスカウトの内容は友希那にとっては申し分ない内容だった故に、断ろうかどうかと踏ん切りがつかない状態だった。友希那本人とて、目標であるFWSへの道のりは遠く険しいものだと分かっている。そのため、多少は苦労を減らしたいとは少なからず思ってはいたのだ。
友希那の実力と見る目は確か。だが所詮は社会を知らない学生故、今後どうしていけばいいかという目標や志はあるものの、これからどうしていけば良いのか具体的なことは綿密には決まっておらず手探りの状態。それでも自分個人では無く全体、即ちバンドとしてのスカウトは願ってもない話。
どうしようかと今の今まで悩み続けた友希那は、1つの質問をスカウトマンにした。
「1つ。聞いてもよろしいでしょうか?」
『何でしょうか?』
「……私の父親をどう思っていますか?」
今までスカウトの話を持ち掛けられ、そこそこ話が進むと友希那は必ずこの質問をした。彼女自身が音楽に興味を持ち始めたキッカケであり、今の彼女の心残りである友希那の父は名の知れたバンドマンだった。しかし友希那の父は【曲を強要】FWSのステージに立つことは無く、その後解散を発表した。
ステージにも立たずに解散を発表。当然ファンは事情など知らない、友希那の父とバンドメンバーを批判する者は多かった。
友希那にとって、それが自身のことのように腹立たしくてたまらなかった。
そして友希那は誓った。父親に代わり、必ずそこに立つと。
質問されたスカウトマンは目を見開くと、ハッキリとした声で答えだした。
『貴方の父親のバンドは素晴らしかった。技術で人を魅了し、その歌声は聞く人々の心を熱くしました。貴方が我々と共に結果を出せば、貴方の父親をもう一度ステージに立たせることが出来ると確信しています』
「!。……そうですか」
今までのスカウトでは皆が同じような返答をした。
『貴方は貴方の父親よりも…――――』と。
友希那にとってその返答は「父親なんか」と言われているような、その技術を認めていないと言っているような腹立たしさがあり、そこも含めスカウトを断り続けてきた。自身が誇る父親を認めないような者達と共に進んでいこうなど、意見の食い違いがいずれ起ると予想したからだ。
この質問は友希那にとって重要な質問であり、今この瞬間、友希那の中で曖昧だった考えが纏まった。
――この話は受けても良いのでは。と
「今回のスカウトについて、もう少し聞きたいのですが」
『でしたら明日、再び此処で、今度は皆様揃ってお話ししましょう。』
そして彼女は流れに乗っているのか、流されているのかが自身の中でも曖昧なまま話を進めた。
だがこの時、またとない機会を目の前に徐々に焦りを覚えてしまい、冷静さを失い始めていることに彼女自身は気づいていなかった。
蹲っていたリサの肩を揺らし声を掛けると会話をしていた時と比べると明らかに顔色が悪かったので、彼女の家路に付き添うことにした。
「本当に大丈夫なのか?」
「うん…。わざわざごめんね。鞄まで持たせちゃって…」
「俺のことより自分の身体に気を配った方が良い」
日が沈み、辺りが暗闇に包まれた歩道に街灯の光が照らす道を並んで歩く。少しでも負担を減らすため、俺はリサの鞄を持って歩いている。
薄々分かってはいたが、リサは事務所に所属することに対して思うところがあるようだ。それだけならまだ良かったが……リサは友希那のことを優先して考え過ぎている。幼馴染みの存在がどれだけ大きなものなのか、俺にはそれが分からない。それでもここまで悩んでしまうのは…良くも悪くも、リサの優しさが理由だろう。
面倒見が良いという性格の人物は、相手を尊重し自分を後回しにすることが多いと聞く。リサは特にその傾向が強く、さらに幼少期からの付き合いである友希那の話となればどちらを優先したくなるのかは、関わりを持って間もない俺でもすぐに分かってしまう。
「…少し寄り道しないか?」
「…そうだね。うん」
「行き先の希望は?」
「…零に任せるよ」
寄り道とは言ったものの、未だ土地勘がない俺は知っている道を行き来し続け、道中見つけた小さな公園を終着点とした。連れまわされたからか少し疲弊しているリサをベンチに座らせ、自販機でペットボトルの水を2本買い、ベンチに座るリサの元へと戻った。
「少しは気が紛れたか?」
「アタシの気のせいかな?…同じような道をグルグル回ってた気がするんだけど?」
「適当に道を歩いていたからな。それでも気晴らし程度にはなっただろ」
「それはそうだけど…。だからって女の子をここまで歩かせるのは感心しないな~?」
調子の戻ったように見えるリサは、先程までとは違い、僅かに明るさを取り戻した笑顔でそう答えた。だが感心しないと言う割には疲れているようには見えないが…部活でもやっているのだろう。
その後も何気ない話をした。カフェテリアでも似たようなことをしていたが、内容は先程よりも深い部分であろう人間関係について聞くことが出来き、その話の中には興味深い内容、友希那とリサの過去についても聞くことができた。何故リサが友希那の意見に強く反対することができないのかもその話で大体の予想がつく。
「リサ」
「ん?」
「改めて聞くが結局のところ、リサはどうしたいんだ?」
友希那に反論することができないと分かっても、何もせず黙っていられるとはとても思えない。どれだけ相談を受けようが、どれだけ解決策を見出そうが、結局リサが動かなければ変化は起きない。
「誰かの考えに対して反対意見を述べるのは簡単ではないのは分かる。友希那との関係が崩れるようなことになりたくないというのも理解はできる。だが、自分の意見を口にせず相手の意見を尊重しすぎるのは優しさとは言わない」
その言葉を聞いたリサの表情は再び沈み、手に持っているペットボトルは強く握られていた。
「でも、また前みたいになるって…考えちゃうんだよね」
「大きく変われとは言わない。だが本当に友希那のことを、隣で支え続けたいと心の底から思うのなら、時には先に行こうとする腕を掴んで強く反対することも、優しさの形だと俺は思う」
相談に乗るとは言ったが、今の俺がどれだけ語ろうと結局は気休め程度の発言しか出来ない。だが今は俺の方から話をして、恐怖から来る不安を紛らわせることくらいはできるはずだと思った。
関係の薄い俺には大したことはできない。ならばどうするか、俺は思考を巡らせ出した答えをすぐに実行に移した。
「スマホ、借りてもいいか?」
「?。いいけど…変なことしない?」
「俺がすると思うか?」
渋々取り出したものの、手渡されたスマホを借り、電話帳に俺のスマホの番号を入力した。スマホを返し、今度は俺のスマホにリサの番号を登録した。
「何かあれば俺が聞く。何でも答えられるわけではないが…それでも愚痴程度ならいつでも」
「……やっぱり零って変わってるよね」
「…嫌だったなら謝る」
「いいよ。心配してくれてるって分かったし」
やはり俺は変わっているのだろうか。苦笑いされたので誤った行動を取ってしまったのかと思ったが、本心か気を遣ってかは分からないものの、何とかリサの精神的逃げ道を築けた筈。恐らくこれから一番苦労するのはリサだ。これから各々で成長していく中で、リサは手助けをしようとすることはほぼ確実。そうなった際のリサの負担は減らせるように何かしらの準備をしておいたほうがいい
「後輩は先輩がいて成り立つ。逆も又然りだ。少なくともこの一件が終わるまでは好きなように
「なーんか言い方が気になるけど…。オッケー♪。困ったら頼りにするから、零も困った時はアタシに頼ってね?」
「そうさせて貰う」
リサとの連絡網を築いたから何かあれば連絡は来るはずだ。寧ろ来て貰わねば今連絡先を交換した意味が
……いや、相談を聞くことを目的とした連絡先交換なので、意味が無くなることは無いか。
現時点で考えるべきは、相手を疑うべきだろうかということだ。
ハッキリ言って疑いたくはない。疑心暗鬼になりながら生きていくような面倒な生き方はもう勘弁だ。だがこうも話が進んでいくものだろうか、大手の事務所とはいえ、不自然なくらい話の進み方が異常だと思うのは俺の無知故か、それとも本当に異常なのか。
どちらにせよ、友希那と話をする必要があることに変わりはない。
「一つお願いしてもいい?」
「何だ?」
「友希那の話を代わりに聞きに行って欲しい。……今のアタシじゃ、多分反対とか出来ないから…さ」
「…それが本音か?」
「…うん」
「分かった」
本当はリサが友希那に直接一言言えればいいのだが、今は仕方がない。俺一人で行くとしよう。
飲み終わったペットボトルをゴミ箱に投げ入れた後、鞄を肩に掛け、『何かあれば連絡する』と最後に付け足し、俺は目的の場所へと歩き出した。
「リサは?」
「リサは急用らしく、代理を頼まれた」
公園でリサを待っていた私はその言葉を聞いて驚いた。何かあって会えない時はいつも電話で聞いてくるのに、リサが代理を頼むなんて…。いつの間に仲が良くなったのか、そんな疑問が過ったけれど、重要なことは別にあるからとすぐに切り替え、スカウトの話について零に話した。
「少し待て」
「何かしら」
「…都合が良すぎるとは思わないのか?今の話だと明らかに怪しい。スカウトが数日前で1週間待つと言っておきながら、明日には今後についての打ち合わせをすると言っているんだぞ?」
何も焦ってなどいない。これから先で私たちが不利にならないようにするための提案だというのに、考えが甘いと言わんばかりに私の意見を批判する零に対して不満を募らせていた私の感情は爆発した。
「だいたい貴方に何が分かるの!? 私はこの機会を逃す訳にはいかない! 今度は以前のようには行かないわよ!」
感情的になった私の右腕は、彼の意見を振り払うかのように強く横に振っていた。後ろ髪が腕の勢いで揺れた感覚が背中を伝わり、どれだけ力強く振ったのかを実感した。
「分かっていないのは俺だけか?」
怒りを露わにした私とは裏腹に、彼は特に驚くこともなく冷静にそう答えた。
彼の目はいつもより冷たく、まるで鏡に写った過去の自分を見ているかのようで、私の感情はますます高まっていく。
「……なんですって?」
「決めるのは友希那だ。だが焦って決めるようならもう少し期間を置いてからでも遅くはないはずだ」
「……期限は迫っているの。このチャンスがどれだけ大きなものか貴方は分かってない!」
間違ったことなど言っていない。自分と気が合う事務所などこれから先、またスカウトされる機会が来るかどうかなど分からないし、ここまで好条件は滅多に無い。どのみち事務所には所属しなければならなくなるのだから早いほうがいいはず。
そう思ったから私は、零を説得するため強く言った。
零は黙り込み、目を閉じると静かに口を開いた。
「友希那の言うとおりだ。俺は音楽経験の無い素人であって、どれだけ俺が批判しようとも参考になどなるはずがない。マネージャーなどと言っているが、所詮は肩書きだけのハリボテだからな」
「貴方は、Roseliaに全てを賭ける覚悟はあるのかしら?」
「元よりあるつもりだ。…だが、面と向かって言ったことは無かったな」
「改めて言う。俺は全てを賭ける覚悟を持っている。文字通り、全てだ」
私の質問にすぐに答えた零は、嘘をついているとは思えない目をしていて、心なしか、全てが強調されて聞こえたような気がした。
けれど、音楽に対する覚悟の強さは私の方が上に決まっている。
絶対に譲るつもりはない。そう言おうとした時、私よりも先に零が口を開いた。
「分かった。俺も疑い過ぎたことは認める、謝罪もする。ただ諄いかも知れないがもう一度言う、今の友希那は見るべきものを見落としている」
それはどういう意味かしら。そう聞こうとした瞬間、零は私の元へ歩き出してそのまま横を通り過ぎて、私の後ろで話し始めた。
「自分で考えろ。深く考えずともすぐに分かる筈だ。それと、リサから伝言を預かっていた。伝えようかと思ったが、今の話で気が変わった。リサには悪いが、内容は直接聞け」
そう言うと零は再び歩き出した。伝言が何だったのかを今教えるように言うことは出来ず、闇夜へと消えていくその後姿を、私はただ眺めることしかできなかった。
気づけば、街灯に照らされた夜の公園で一人佇んで、さっきまでの会話を思い返していた。
全てを賭ける覚悟。
それは今まで何度も口にしてきた言葉であり、これから頂点へと昇り詰めていく私たちに必要なもの。
そしてその言葉は自分自身にも言ってきた言葉でもある。
一度は失敗したけれど私は、私たちは乗り越えた。例えこの選択が…もし誤った選択だったとしてもまた乗り越えてみせる、私にはその覚悟があるもの。
このチャンスを必ずものにしてみせる。その決意を胸に、私は家に帰った。
初期の話を書き換えたい(特に一番最初…)
次回は来月中に投稿を目指します。
それではまた、次回を気長にお待ちください…
【改めて】次回のシリアスは?
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afterglow
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ハローハッピーワールド