化け物の俺は彼女たちと人間になりたい   作:ゼルクニル

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皆さんお待たせ!
遅い?……風邪引いてた(現在進行形)
今後は風邪は関係なしで投稿が遅れます…気長に待って!

風邪で頭回ってない日々が続く中書いたものなので、おかしな所多いかもです…
おかしくても許してください…


第37話 似たもの同士

「貴方は本当に何者なの?」

 

 

毎度毎度言われるこの言葉、もう聞き飽きたな…

あと何でそこまで過去について知りたがる?

 

 

「言わないと駄目なのか?」

「…ええ」

「何でだ?」

「貴方のことを信用したいからよ」

「信用してないのか?」

「そんなことは無いわ…けどそろそろ教えてくれても…」

 

「素性を言わない人間に私達の命を預けられないってところか?」

 

「っ!?」

 

 

そう断言したとき、千聖は驚きを隠せていなかった

 

 

「俺の過去については言えない」

 

 

千聖に嘘は通用しないだろう…どうしたものか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素性を言わない人間に私達の命を預けられない

 ってところか?」

 

「っ!?」

 

 

嘘…何故私の考えが分かるの!?

 

 

「俺の過去については言えない」

 

 

零…やはり貴方を…信じたくても信じられないわ

確かに貴方は…私とイヴちゃんを助けくれた

けど貴方は…『普通じゃない』

スタッフよりも冷静かつ行動力がある

そして人知を超えた身体能力を持つ人間

そんな貴方を完全に信用するのは…やはり難しいわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のこと、信用できないか?」

「…ええ」

 

 

まぁ無理もない、俺も同じ立場に立たされたらそう思うだろうからな…

だが信用してもらわないと…後々の指示が出来なくなる…

 

 

「貴方は命の恩人よ。だけれど…」

「どうしたら…信用してくれるんだ?」

「貴方が今隠している事、それを教えて」

「…」

「今この部屋には私と貴方しかいない。それでも…難しいかしら?」

 

 

今後の指示のためにも信用はして貰いたい…

かといって俺の過去を話す訳にもいかない…

だがいずれ話す時が来るのでは?彼女たちにいつまでも隠して行けるとは流石に思っていない。

だが…全てを知った時…今までのようには接してもらえなくなるのは目に見えている

どうすればいい…どうすれば…

 

 

「(いや…待てよ…)」

 

「なぁ千聖。隠していることなら何でも良いんだな?」

「えっ?え、ええ…貴方に大きく関わることなら…」

「だったら…約束できるか?」

「約束?何かしら?」

「…絶対に俺を信用しこの事は誰にも言わない、と」

「…それはどうして?」

「できるかできないか聞いてるんだ。どっちだ?」

「…できるわ。約束する」

「本当だな?」

「約束するわ。絶対よ」

「…分かった」

「本当?」

「だが始めに言っておく、話すことはできない」

「えっ?」

「だが…()()()()()事はできる」

「見えてもらう?どういうことかしら?」

 

「まぁ見てろ」

 

 

そう言って俺は…テーブルの上に置いてあった

ウエットティッシュを手に取り…

『左頬』を拭き始めた…

 

 

「零?何をしているの?」

 

「千聖…悪いが過去については詳しく言えない

 だが…過去に関わる物。それを見せれば良いんだろ?

 だったら俺が悩んだあげく見せるのは…コレだ」

 

 

ウエットティッシュが肌色になったのを確かめた後…

俺は…『メイクを落とした左頬』を見せた…

 

 

「っ!!??」

 

「これが…今お前だけに見せられる…俺の過去だ…」

 

これが…今できる最大限のことだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが…今お前だけに見せられる…俺の過去だ…」

 

私は…自分の目を疑った。

零がウエットティッシュで拭いた部分に…無数の傷跡が浮かび上がった…

理解が追いつかなかった、今まで彼が見せていた素顔は…偽り(メイク)だったの?

改めて彼の顔を見ると、所々肌の色が若干違う事に気づいた

まさか…左頬だけじゃ…無いの?

 

 

「貴方…何なのよ…その傷跡は…」

「やんちゃな時期があった。とだけ言っておく」

「……そう」

「これで信用するよな?」

「当然よ」

 

 

本当はもっと聞きたいことがある。けれど…

…もう聞けない。

 

 

貴方の素顔を見た途端…

冷や汗が止まらない…

部屋の温度が急激に下がったような感覚がする…

これ以上貴方の過去について踏み込んではいけない…

私の感がそう言っている…

 

それに…約束を守ってくれたのなら…信じるしかないわ

 

でも…どうしても聞きたい…

 

 

「零。1つだけ…聞いても良いかしら」

「何だ?」

「貴方は…どうして自分を偽るの?」

 

「その話…()()()()()()()と関係あるのか?」

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面…そう言った途端、千聖の表情は…()()になった

どういう意味か分からない?簡単に言えば、俺と似ているな…って感じだ

それでも分からない?…悪いがコレについては上手く例えられない…

要は『似たもの同士』って所だと思ってくれればいい

 

 

「そう…貴方には分かるのね」

「ああ。分かるとも」

「自信があるのね」

「当然だ」

「何故?」

 

 

「俺も千聖も似たもの同士だからな」

「似たもの同士?何も知らないくせによくそんなこと言えるわね」

 

「(明らかに声色が変わった。これが千聖の素か…)」

 

千聖の事を知らない。それは半間違い半正解だな

事務所(ここ)に勤めるようになってから大体の事は調べた

子役の白鷺千聖…それがお前の持つ()()()()だとしたら

名の無い化け物…それが俺の持つ()()()()

だからこそ…俺には分かる

 

 

「確かに俺は千聖の事を全然知らない」

「当然のことでしょう?」

「だが…分かる事だってある」

「嘘をつかないで…」

「嘘じゃない。分かる」

 

 

「…のよ」

「?」

 

 

「貴方に何が分かるって言うのよっ!!」

「…」

 

 

千聖は俺の発言に対して激怒、反論した

 

だがこの時、俺は確信した

千聖は俺と同じ、()()()()()()んだとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意味が分からない…何を言い出すのかと思ったら

分かる事だってあるですって?

ふざけないで…

 

 

「貴方に分かるはずがないでしょ!今まで…どれだけの事があったかなんて…貴方が気安く分かるなんて言わないで!」

 

 

そう…分かるはずがない…

幾ら貴方でも…そこまで分かるはずがない

そもそも貴方が言ってることは他の人達(大人)と同じ…

私に期待を押し付ける為の発言でしかない…

 

 

 

「口先だけならどうとでも言えるでしょ!そんな中身の無い言葉は聞き飽きたのよ!」

「口先だけじゃ無い」

「嘘よ!」

「嘘じゃない」

「…えっ?」

 

 

彼の放った一言は…私を静める程…

ハッキリと…中身があるように聞こえた…

 

 

そして彼の顔は…今まで以上に真剣で…

彼の目は、他の人達(大人)とは違う

嘘偽りの無い目をしていた

 

 

「俺だってそうだった。誰かに期待されてた…幼くても、やりたくなくても関係なかった。ずっと期待に応えないといけなかった…そうでもしないと生きていけなかったからだ」

 

 

「!!」

 

 

「…一緒だろ?俺も千聖も、だから言えるんだ」

 

 

彼は…私の目を見て堂々と言う

 

 

「俺はお前の辛さも分かる。どれだけの努力があって此処に居るのかもな。俺はお前の背負う辛さが分かる。だから辛いのなら辛いって言え、苦しいなら苦しいって言え。俺はどんなことでも受け入れるし受け止めてやる。絶対にだ」

 

 

「っ!!」

 

 

全てが初めてだった…

彼の顔も、目も、言葉さえも…他の人達(大人)と明らかに違った

偽りじゃ無い…演技でも無い…

私と同じ背負っていた人の…本物の中身がある言葉

 

 

彼の言葉を…聞いた時、私の中でヒビが入るような音がした気がする

 

 

 

「…ほら」

 

 

彼は私に近づき、ズボンのポケットからハンカチを取り出して私に差し出した

 

 

「…これで拭いとけ」

 

 

何を?と言おうとしたら、私の頬を温かいものが流れているのが分かった

私は…涙を流していた

けど私は…泣いてはいけない。

そう自分に言い聞かせてきた…

 

泣きたいのに…泣くことができない…

 

 

「今この部屋には俺と千聖しかいない

 それでも…難しいか?」

 

「零____っ!」

 

 

 

そう言って彼は、私の顔が彼の上半身に軽く埋まるように抱き寄せた

 

 

「今だけは泣けるように…誰にも見えないようにしておく」

 

 

彼は…本当に分かっている…

 

 

「ううっ…ぐすっ…」ボロボロ

 

「そうさ…それでいい…」

 

 

彼は抱き寄せたときに頭に乗せた片手で

私の頭をゆっくり撫でてくれた

 

 

彼の前なら…泣ける…

彼の前では自分を偽らなくてもいい…

 

だって彼は…初めて出会った…

 

似たもの同士(真の理解者)、なのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからどれだけの時間が過ぎたのだろうか…

千聖はまだ泣いている…

 

彼女が背負ってきたものはどれだけのものだったのか

一体どれだけの時間が、彼女を苦しめたのか

それは分からない…

 

だが俺も、部隊のメンバーとその家族や友人の命を背負って生きてきた

だからこそ、背負う辛さは誰よりも分かる

周りからの期待も苦痛に変わるときだってあった

 

だからこそ…その辛さが分かるからこそ

俺は少しでも千聖を楽にしてあげたい…

千聖には、素の千聖を受け止める人間が必要だから…

俺にも…いたからな…受け止めてくれた奴が…

 

 

「…零?」

「どうした?」

「ちょっとだけ…苦しい」

「えっ?ああ…悪い」

 

 

考えている間に、力が入りすぎていたようだ…

すぐに手を放し、抱きしめるのを止めた

 

 

「悪かった」

「いえ。いいのよ」

 

 

千聖の顔つきはさっきよりも落ち着いていて、楽になっているのが見て分かる程、穏やかだった

 

 

「ありがとう、零」

「いいさそのくらい…」

「そのくらいでも、私には十分よ」

「そうか。ならよかった」

 

 

そういえば…パスパレの練習をすることを忘れていた

消した左頬のメイクを戻し、扉に向かおうとした

 

「…待って」

 

千聖に止められた、服の袖をつままれていたのだ

 

「千聖?」

「…待って」

「でもそろそろ行かないと…」

「…嫌よ」

 

理由を聞こうと後ろを振り返るが…千聖は俺の腕を掴んで離そうとしないその上何故か顔が赤くなっている…

まぁ泣いた後だからだろうな…

そこまで辛かったのか…

 

「零。貴方は受け止めると言ったわよね?」

「ああ、言った」

「だったら…」

 

 

「もう少しだけ…私を受け止めて?」

「千聖…」

「お願い…零」

 

顔を赤め、弱々しい震えた声で俺にそう言う…

少し考え、また千聖を抱き寄せた

 

「分かった…でも少しだけだぞ?」

「…どれくらい?」

「うーん…5分?」

「10分」

「…「10分」…分かった」

「ありがとう」

 

 

 

結局20分ほど続いたため、待てなくなった日菜が部屋に入ってきてしまった

その結果、俺が千聖を泣かせたんだと日菜に叫ばれ、誤解を解くために一日かかってしまった…

何でそうなる…世の中はいつでも理不尽だな

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

私は家に帰り、自分の部屋のベットに倒れ込んだ

 

 

――受け止めてやる――

 

 

「…///」

 

目を閉じると彼の姿が見える

私を受け止めてくれた彼の言葉が聞こえる

 

 

「…零///」

 

 

彼は私の我儘に付き合ってくれた…

あの感覚は…忘れられない…

 

「(出会ったときから思っていたけど…貴方は面白い人ね

 私の事を理解してくれるなんて思ってもいなかった

 零…さっきはごめんなさいね。貴方を疑ってしまって…)」

  

「(確かに、貴方の過去については謎が多い…

  時には疑う時もあるかもしれない)」

 

「(けれど…私は貴方を信じるわ…)」

 

「(だって…私が初めて出会った似たもの同士(真の理解者)だから)」

 

けれど…

 

 

『千聖』

 

「っ!///」

 

 

彼の事が…頭から離れない…

今まで表に出さないようにしてきた感情が…

彼のおかげで出せるようになった…

 

「(…寂しいわ。零)」

 

少しだけ一緒にいただけなのに、とても心地の良い時間だった

彼の優しさが…近くに無いと苦しい…

彼に…もっと受け止めて欲しい

そんな感情が溢れて止まらない…

 

 

「…」

 

気を紛らわすために布団を丸めて、抱き枕のようにする

けれど…違う。明らかに違った…

温もりも…匂いも…

 

 

「(そういえば…彼のハンカチ、まだ返してないわね…)」

 

 

そう思いながら、彼のハンカチを手に取る

ハンカチからは、ほんのりだけど彼の匂いがした

彼の匂いだけで…落ち着くと同時に心臓の鼓動が早くなる

 

「零…」

 

 

「(私をこんなに変えてしまうなんて…貴方は罪な人ね。この責任は…ちゃんと取ってもらうわよ///)」

 

 

私はその後、彼のハンカチを枕の上にのせて顔を埋め

彼の事を考えながら悶え続けた…

 

 




どうですか?結構頑張った千聖さんです!
こういうのもありでしょ?…無し?そうですか…

☆10を付けて頂いた無敗のおっさんさん
☆9を付けて頂いたむにえるさん 
ありがとうございます!!

コメントはやっぱり嬉しい!モチベ上がります!
そしてお気に入り減ると未だにテンション下がります…

活動報告、また上げました。

【改めて】次回のシリアスは?

  • afterglow
  • ハローハッピーワールド

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