化け物の俺は彼女たちと人間になりたい   作:ゼルクニル

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ようやく色々落ち着いてきた…。お待たせしました…。
書きたいこと書いてたらちょっと長くなりました…。




第41話 なりたい自分の姿

「しかし…まさかお前に会えるとは思っていなかった」

「それは俺も同じだ。近藤」

 

 

 本名 近藤克典(かつのり)、かつては森田と同じ幹部。そして俺に近接戦についての知識と経験を与えてくれた男だ

 前にヌンチャクを使用した事があったが、ヌンチャクも近藤に教わったのだ

 

 

「出会うのが病室とか、相変わらずのようだな!」

「俺だって好きで暴れてる訳じゃない」

「そんなに言うなら今まで何してたか聞かせてもらおうじゃないか」

「だったらそっちも聞かせろ」

 

 

 そこから先はただ、今まで何をしていたか。何があったのかを昔のように話した

 どうやら近藤は紛争で生き抜いたその実力を活かす為、今では警備員の職についたそうだ。元々サラリーマンだったが、近藤には性に合ったらしく、今では有名人からの指名も数多く寄せられているらしい…

 

 俺は今までの話。ガールズバンドである彼女たちとの出会い、女子校への特別入校、そして巻き込まれた事件の数々について、そしてどうして今こうなっているのかを話した

 

 

 

「マジでか…お前…色々あったんだな…」

 

「というかやっぱりあれお前が関わってたのか」

「やっぱりって…じゃあ薄々気づいてたのか?」

「当然だろ?俺だけじゃない、他の奴らもだ」

「他の奴ら…他のメンバー(あいつら)か?」

 

「おう。最近は会わないがな」

 

 

 

 あの後…空港を最後に俺は誰とも会っていない。近藤は森田たちと何度か会っていたそうだが、最近は会わないようだ

 近藤の話通りなら皆、家族と共に元気にやっているそうだ

 

 

 

「連絡はとってないのか?」

「どいつもこいつも忙しいんだと」

「ま、それもそうか…」

 

 

 そのあともお互いに話したい事を話し続けた。全てを知っている人物との久しぶりの会話は、懐かしさを思い出した

 

 だが話しの途中で急に話が途切れた…

 

「…」

 

「どうした近藤。急に黙るなよ」

 

「なぁリー、いや、零」

 

「なんだ?」

 

「今…楽しいか?」

 

 

 その質問をする近藤の顔は、心配そうな表情だった

 

 

 今の俺は彼女達に色々と教わり始めた、確かに大変だし血を流す事もあった。

 それでも、彼女達との時間は充実している

 

 

「…ああ。楽しくやってる」

 

 

 長々と語る必要は無い。ただそれだけが言いたかった

 

「…そうか。ならいいんだ!」

 

 

 近藤の顔が明るくなった。馴染めているか心配だったのだろうか?

 だがそろそろ、仕事の話をしなければいけない

 

 

「近藤、世間話はこのくらいにするべきだ」

「そうだな。まず何処から話す?」

「慌てるな。まずは彼女達の所へ行くとしよう。何処にいるか分かるか?」

「会議室だ」

「行くとしよう」

「待て、零」

「なんだよ?」

「俺たちの関係は隠してるんだろ?そこはどうするんだ?」

 

 

 そうだった…ここで知り合いだった。なんて言える訳ない

 

 

「だったら、俺たちは初対面だという設定にする」

「分かった」

「リーダーとか言うなよ?」

「そんなヘマはしない!…多分」

 

 

 本当に大丈夫なのかと不安を覚えながら、俺は近藤と会議室に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議室に行くと、パスパレのメンバー5人と社長が座っていた。俺と近藤が席に着いた後、改めてどういう状況なのかを一通り説明して貰い、話を進めることにした

 話す事は色々あるが…まずは聞かなければいけない事がある

 

 

「それで?スタッフ達はどの様な理由があったんですか?」

 

「それはだな…」

 

 

 ここから先の話が長かったので簡単に縮小すると、スタッフ達はあの銃を持った男に脅され慌てて逃げた、その際に無線機を捨ててしてしまったのだという…

 まぁ…しょうが無い話だ。俺は銃や脅しに慣れているがスタッフ達はただの一般人、銃を突きつけられて恐怖を感じないはずが無い…だからといって許すつもりは無いが…

 

 

「まぁ…しょうが無いですね」

「零!?たったそれだけなの!?」

「それだけだ」

「私は納得いかないわ!貴方…1歩間違っていたら死んでたのよ!?何でそんなに楽観的なの!?」

「千聖…」

 

 

 確かに千聖の主張も正しい。もし俺が間に合わなかったら此処に居る5人のうち誰かが死んでいた。

 だが、今さらこの事で揉めている暇は無い。現に俺は多少撃たれても死なないからな。

 

 

「今は別に話があるんだ…今は飲み込んでくれないか?」

「…分かったわ」

 

 

 不満そうな顔をしながらも、千聖は何とか落ち着いてくれた

 

 

「さて…ハッキリ言って状況は最悪です」

「君…それは何故だ?」

 

 

 俺の発言に続き、近藤が俺に他人を装い質問した

 なんとかなっているじゃないか…そう思いながら、俺は皆にさっきの発言の続きを説明した。

 

 

「相手が誰だか分からない上に…向こうは銃を所持してましたからね…」

「銃の種類とかは…分からないのか?」

 

 

 

 俺は目を閉じて撃たれたときの景色を思い出した

 あの男が所持していたのは…リボルバーだ。撃ち込まれた弾薬は9ミリ弾…

 9ミリ弾でリボルバー、そして日本人が所持していたということは…

 

 

「恐らく…ニューナンブM60だと思います」

「何?確かなのか?」

「分かりません…ですがその可能性が高いかと」

「嘘だろ…」

 

 

 俺と近藤はその銃を所持している時点で、厄介だとすぐに理解した

 

 ニューナンブM60、記憶が正しければ1960年に日本の警察用として調達され、1990年代に生産が終了されてもなお現在でも運用されている回転式拳銃だ

 

 何故銃器について詳しいのか、説明しなくても分かるはず。叩き込まれた知識の1つだからだ。

 

 だが問題は所持している銃の種類だ

 もし…警察に内通者が居たとしたら、この1件は一筋縄ではいかない。下手をすれば警察を相手にする事になるからな。

 

 どういう意味なのか理解していない俺と近藤以外の6人にこの事を説明した

 だが話をした後の6人の様子がおかしい…やはり何か知っている。そのことに気づいた近藤は俺の代わりに質問をした

 

 

「そろそろ教えてもらえないだろうか?」

 

『教えるとは…一体何のことかな?』

 

「あくまでも白を切るつもりか?君たちもだ」

 

「「「「「…」」」」」

 

 

 だが答えない。恐らく俺と同じように言えない事情があるのかもしれない。そう思った俺は近藤に【もう止めておけ】とサインを送った

 近藤はサインの意味を理解し、質問を中断した

 

 

「まぁいい…することは変らないからな。それで?君には何か考えがあるのか?」

 

「………あるにはあります。ですが…おすすめは出来ません」

 

「…なるほど。だいたい分かった」

 

「零?どんな策があるの?」

 

「……この策は、みんなにも協力してもらうことになる。そのうえ、かなり危険だ。だからあくまでも提案として聞いて欲しい」

 

「「「「「…」」」」

 

 

 戸惑いながらも聞く姿勢をとった5人に、俺は策を言った

 

 

「まどろっこしい説明は抜き、早い話が……おとり作戦だ」

 

「「「「「おとり…」」」」」

 

『作戦!?正気か!?神鷹君!』

 

「ま、妥当な判断だ。相手が誰だか分からない、警察にも頼れない、だったらこの場に居る人間で片づけるしかないしな」

 

 

 だがこんな策は言いたくは無かった。俺の策は言い換えれば、自分たちから火の海に飛び込んでこいと言っているようなもの。危険から遠ざけるために危険を冒させるという皮肉な策でしかない

 そのうえ、おとりは俺や近藤では無く彼女たち5人のうちの誰かだ。自分1人でどうにかできるはずが無い…

 

 

「あくまでも提案、無理だというなら無理でもいい」

 

「断りにくくするようなことを言うが、現時点でこれ以外に策は無いと思うぞ」

 

「「「「「……」」」」」

 

 

 当然すぐに答えが出るはずも無く、一端話を中断することにした

 

 

「何度も言うが、あくまでも提案だ。意見がまとまったら言いに来てくれ」

 

「何処に行くんだ?」

 

「…病室に戻る」

 

 

 この場に俺がいたら決めれることも決められなくなるだろうと判断し、一度席を外すことにした

 後は貧血故に、血を作るための休息も兼ねてだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病室に戻り、軽く食事をした俺は彼女たちの返事を待っている。病室には何も無い…せめてテレビでも置いてくれたらいいのだが…贅沢は言えない。

 ふと見た時計は1時を指し、窓からは昼の暖かな日の光が差し込む。

 

 

「このまま来ない…あり得るな」

 

 

 待ってはいるものの来る気配は一向に無く、扉の外は人が通る音がしない。せめて話し声だけでも聞こえてくればいいのだが…これは贅沢では無いよな?

 

 

 もういっそのことこちらから聞きに行こうとした時だった。病室の外から足音が聞こえ、扉が開いた。

 そして入ってきたのは…

 

「彩…だけか?」

「うん」

 

 

 いつも以上に緊張している彩ただ1人だった

 

 

「まぁいいや。それで…意見はまとまったか?」

「…」

「彩?どうした?」

「ゴメン!れいくん!」

「な、何がだ?」

「私たち…ずっと隠してたことがあるの…」

 

 

 やはりか…だが何故今になって?いや、今だからこそなのかもしれないな

 

 

「…それで?何を隠してるんだ?」

「それは……ええっと…」

「先に椅子に座ったらどうだ」

「ええっ!?あ、うん…」

 

 

 落ち着かせるためにも彩を椅子に座らせたが…言いにくそうだな…何か事情があるのだろうな

 

 

「彩。言いにくい事なら無理に言わなくても良いぞ」

「…それじゃダメ。ちゃんと言わなきゃいけないことなの!」

「…分かった。落ち着いてゆっくりで良いからな?」

「…実は…ね」

 

 

 そこから先の話は…とても重く、彼女たちにとっては思い出したくも無いものだっただろう

 

 

「アテフリか」

「うん…」

 

 

 来客数1万の前でのアテフリ、機材トラブルでその事実が公になり一時期はバッシング。

 なるほどな、だからこの前のリハーサルの時に浮かない顔をしていたのか。初の失敗の事を思い出してしまったのか…

 

 だが確信を持てた、主犯はその1件でパスパレに何かしらの恨みを持った人間だ

 

 

「その時…責任を取れっていろんな人が辞めちゃって…」

「その中にマネージャーは?」

「…いたよ」

 

 

 これでだいたい主犯は確定した。だが此処で大きな疑問が残る。そもそも練習はしていたにもかかわらず、何故普通に演奏をしなかったんだ?彼女たちの練習をしっかりしておけば、初お披露目も無事に終わっていた可能性だってあったはずだ。

 だいたいスタッフもスタッフだ。何故そこまで考えないんだ。意味が分からない。

 

 

 無性に腹が立つ、結局自分以外の事以外考えていないのでは無いのだろうか…

 一体彼女たちを何だと思っているのだろうか。

 

 

「クソッタレ…」

 

 

 つい口に出してしまった言葉。だが我慢も良い加減できない状態だ…

 誰にだってそんな時はあるだろ?今がその時だったのかもしれない

 

 

「……さい」

 

「彩?」

 

「ごめん…なさい…」ボロボロ

 

 

 俺の言葉を聞いてしまったのか、彩は泣きながら俺に謝った。あまりも突然な出来事に俺は戸惑ってしまった

 

 

「どうした!?俺傷つけるけるようなこと言ってしまったか!?」

 

「言ってないよ…でもっ…怒らないで…」

 

「彩?別に俺は怒ってないぞ?」

 

「でもっ…私が悪いのっ!」

 

「…何でだ?」

 

「私が…出たいって言ったから…れいくんが傷ついちゃったんだよ…私はっ…また誰かを傷つけちゃった…」

 

「誰かとは…前のマネージャーの事か?」

 

 

 そう聞いてみるが…彩は泣いていて答えられる状態ではない。

 どうすればいいんだ…

 

 

 

「ホントにダメだね…私。結局…誰かを傷つけてばっかり…どうしてこうなっちゃうんだろう…」

 

 

 …いつも笑顔で明るい彩はそこに居なかった

 俺と同じ過去に苦しめられる人…だったらどうしたらいいのか。俺は自分なりの言葉にして伝えようとした。

 

 

「だったら…どうしたい?」

「…えっ?」

 

 彩が座る椅子の前にもう一つ椅子を置き、彩の正面に座り目を見て話を続けた

 

 

「彩。今彩には2つの選択肢がある」

「過去と戦うか、逃げるかだ」

 

「どういう…こと?」

 

「戦うということは、俺の作戦を実行し主犯を捕まえるということ」

「逃げるということは、脅迫状通りパスパレを解散するということ」

 

「どっちを取る?」

 

 

 意地悪など何を呑気な事を言っている場合では無い。これは人生の選択だ、リスクを背負わずしてなせるものなどない

 

 

「彩からしたら嫌な事を聞いているかもしれないが、これは彩が決めなければならない事だから選ぶんだ。どんな答えでもいい」

 

 

 悪いな…彩。俺はこんな事しか言えない。

 

 だが…ここで答えを出せるならきっと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(どっちを取ればいいんだろう…)」

 

 

 今の彼は今まで…1番厳しい表情をしていた…いつもより真剣で、怖い顔だった

 

 

「(そんな選択…どっちも選べないよ…)」

 

 

 私はアイドルを夢見て今まで頑張ってきた。時には厳しい事も言われた、けど夢を諦めたくなかったから頑張ってきた

 

 

「(でも…今の私はアイドルなのかな…)」

 

 

 今の自分は夢見ていた姿をしているのか分からない…でも答えは出さなくちゃいけない。けど分からない。どう答えればいいのか分からない。何が正しい答えなのか分からない

 

 

 

「分かんないよ…」

 

 

 考えようとして頭に乗せた手で髪が乱れるまで悩んで、悩んで…考えに考えた答えは、分からないの一言だけ…

 選べないから選ばないという子どもみたいな理由、通用するはずがないただのワガママ…

 

 正面に居る彼からどんな答えが返ってくるのか…怖い。また怒鳴られるのかな…

 

 

「彩」

 

 

 また怒られると思うと怖くって、目線を下に逸らして目を瞑った…

 

 

 

 

 

 

 

「それでいい。よく言えたな」

 

「……え?」

 

 

 怒鳴られるどころか…褒められたことに驚いてしまった

 

 

「なんで?…私どっちも選んでないよ?」

 

「どんな答えでもいいって言っただろ?答えが分からないなら、分からないでいいんだ」

 

 

 彼は私の乱れた髪を、慰めるように手で優しく解いてくれた。

 

 

「悪かった。こんなに髪を乱すまで悩ませて…」

 

 

 彼の手つきは…慣れていない感じがしてちょっと荒っぽい。けど彼なりに整えようしてくれているのが伝わってくる

 

 

「前は…これでいいか。後ろ向け」

 

 

 そんなにしなくても自分で出来る。そう言おうとしたけど…言う前に体が勝手に後ろを向いた

 

 

「今更だが…痛くないか?」

 

「痛くないよ」

 

 

 痛くない…むしろ気持ちいい。お母さんにしてもらったときと同じくらい気持ちいい。くすぐったいけど…ずっとこうして欲しいと思ってしまう

 

 

「安心した」

 

 

 髪を整えながら、後ろの彼は私にそう言った

 

 

「彩はちゃんと向き合ってるな」

 

「そんなこと…ないよ…」

 

「ある。本当に向き合ってるからここまで悩めるんだ」

 

 

「向き合ってなかったらとっくに逃げてる。でも彩は頭抱えてしっかり悩んだ。そして自分なりの答えを、【分かんない】と答えた」

 

 

「彩は…俺より凄い」

 

「なんで?私は…れいくんより弱いよ…」

 

 

 自分で言ったけど…弱い。その言葉が心に刺さる、自分1人では何も出来ないという無力さが悔しい…辛い…

 

「終わった。こっちを向いてくれ」

 

 

 手を止めた彼の言うとおりに、私は彼の方を向いた

 

 

「そんなことない」

 

 

 突然彼は…私の肩を掴んで今までより優しい声で、私の目を見てそう言った

 

 

「俺が凄いのは単純な力だけ。でも彩は違う、自分の夢に向かって進んでる。だから他の4人も一緒に居てくれるんじゃないか?彩の前向きな所。夢の為にここまで悩める所は…安い言葉だが、凄いと思う。カッコイイと思う」

 

 

 彼の後ろの窓から入ってきた温かい風が私と彼の髪を揺らす。彼の言葉は風のように温かくって…

 

 

「彩。確かに彩は失敗ばっかりだ。歌うとき音は外す、アドリブに弱い、おまけに…あの決めポーズ?みたいなものは…良いとは言えないが、彩は努力してる。変ろうと頑張ってる。だったら誇っても良いじゃないか

 誰かを傷つけた?だったら償う方法を考えれば良い。変りたい?だったら変わる方法を探せば良い

 俺はマネージャーだ。変わる方法ならいくらでも考えてやる。いくらでも支えてやる

 だがら自信を持て。今まで多くの挫折を味わった俺の質問に答えられたのなら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「丸山彩。お前は自分がアイドルであると誇っていい」

 

 

 私の心は髪のように小さく揺れた…口を開くと震えて…弱々しい声しか出せなかった

 

 

「私…自分がなりたかったアイドルに…なれたのか分かんない…」

 

「ならなればいい。彩が胸を張ってアイドルって言える彩に」

 

「手伝って…くれる?」

 

「どんなことでも手伝う。俺は彩をアイドルにする」

 

「絶…対?」

 

「彩が頑張るのなら、絶対だ」

 

 

 強く言った彼の言葉は揺れた私の心を大きく揺らした。

 

 

「うっ…ううっ…」

 

「彩?」

 

 

 

「うわあぁ~ん」ボロボロ

 

 

 我慢してた涙と声が…止まらない

 

 

「やはり我慢してたのか…」

 

 

 そう言って彼は私を正面から抱き寄せた。右手で頭の後ろを撫でて、左手で背中をさすってくれている

 

 

「苦しかっただろ…辛かっただろ…」

 

「うんっ…うんっ…」ボロボロ

 

 

 私は彼の背中に両腕を回して彼に抱きついた…彼の肩に顔を埋めて泣いた、息が止まるほどギュッと抱きしめた

 

 

「今は泣け、溜まってるもの全部出せ。出し終わるまでずっとこうしておく」

 

「ごめんなざいっ~わた、わだじのぜいで~」ボロボロ

 

「もう気にすんなよ。前を向け。彩」

 

「うわあああぁぁ~ん」ボロボロ

 

 

 謝って…泣いて…また謝って。彼は受け止めてくれた。言うこと全部優しく返してくれた…

 その後も…私は彼の肩に顔を埋めて泣き続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん!ありがとう!れいくん!」

 

 

 切り替わりが早い…ついさっきまで泣いていたのだろうか疑ってしまう程の変わり様だ。だが顔から不安が消え満

 面の笑みを浮かべている…

 

 

「服…濡らしちゃったね…」

 

 

 彩が顔を埋めていた場所は彩の涙で濡れている。だが別に気にするほどのことじゃないので別にこのままでもいいんだがな

 

 

「これくらい気にするな」

 

 

 そう言って彩の頭を撫でる

 

 

「っ…///」

 

「ん?どうかしたか?」

 

 

 頭を撫でた途端に、彩の顔は真っ赤になり湯気が出ているようにも見えた

 

 

「う、ううん!なんでも…ない///」

 

 

 前から気になっていたことがあるのだが…ここでまた少し気になった。

 撫でて赤くなるのなら…抱きしめたらどうなるのだろうか。赤くなった顔は元に戻るのだろか?

 

 

「彩。動くな」

 

 

 興味が湧いた俺は、彩を抱きしめた。

 

 

「ひゃうっ…」

 

 

「…彩?」

 

 

「……ふにゅう///」

 

 

「…彩?」

 

 

 落ち着くのかと思ったが抱きしめた瞬間に変な声を出し、空気が抜けるかのような声を出した後気絶してしまった

 

「…………すまない」

 

 聞こえるはずのない謝罪をしたあと、俺は寝ていたベットに彩を寝かせ一端会議室に戻ることにした。

 起きたら謝るとしよう。ただなんと謝ればいいのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……あれ?」

 

 

 目が覚めると、私はベットで寝ていた。窓は閉まっていて時間はさっきの時間から10分たってた

 

 

「なんで…寝てたんだっけ?」

 

 

 起きたばかりの頭を動かして何があったのかを思いだした

 

 

「………っ~~!!///」

 

 

 全部を思い出した時、全身が熱くなった。

 

 彼の事を思い出すと心臓がうるさい、顔が赤くなるのが分かる…

 

 思い出した途端に彼の事しか考えられない

 

 

「……えへへ///」

 

 抱きしめられた時の事を思い出すと自然とニヤけてしまう…

 温かくって、全部受け止めてくれたあの包まれた感覚。優しくて気持ちがよかったあの時間が忘れられない

 

 

「あそこまでされたら……」

 

 

 チョロいと言われるかもしれない。けど今のこの気持ちは…きっとそう。私は…彼を、年下の彼を…

 

 

「好きになっちゃうよ///」

 

 

 自分で言ってて恥ずかしいけど…この気持ちが止まらない。

 

 顔…見れるかな…多分恥ずかしくって無理だと思う

 枕に顔を埋めながら、ああ…///と悶える。

 

 

「あれ?待って?」

 

 

 急に冷静になって考え出す。ここは…彼の病室。

 

 つまり…このベットは…

 

 

「れいくんの…ベット…」

 

 

 一瞬…思考が止まった、だったらどうするのか。そう考える前に私は枕にボフッと音を立てて顔を埋めた

 スンスンと枕の匂いを嗅ぐ、少し汗の匂いがしたけど同時に彼のいい香りもして嗅ぐのを止められない

 

 

「何してるんだろう…私…」

 

 

 おかしな事をしてると分かってるけど止められない。彼の香りをずっと嗅いでいたいという犬みたいな考えが頭から離れない。

 

 

「私…おかしくなっちゃった?」

 

 

 口ではそう言うけど…内心はおかしいと思ってない。もっと、もっとと求めてしまう…

 

 

 彼の香りがする毛布を羽織ってベットで横になり、全身を彼の香りでいっぱいにした後、枕の香りを嗅ぐ。分かってはいるけど、とてもアイドルの姿じゃない

 それにアイドルは恋愛厳禁。だけど…ムリ。この思いは止められない

 

 いつもクールで、こういう時には優しい人。惚れるなと言われてもムリって答えられるくらい、今…私の中で彼は…カッコよかった

 

 

「今だけ…今だけは……いい…よね?///」

 

 

 一瞬だけ……彼のワンコもありかもって思っちゃったけど、流石にダメだと思う…

 

 最初で最後…彼にだけ夢中になるために…

 私は1人の恋するただの女子高生(女の子)になった。心と頭が満たされるまで…私は彼の残り香を嗅ぎ続けた

 

 

続く…

 




なんか…書きたくなったワンコっぽい彩。
こんなのもありでしょ?
何か違うだって?人の好みはそれぞれということですよ…

しばらくは安定した投稿が出来るかもです(出来るとは言っていない)
最初の深夜テンションで書いた話の編集しないといけないので…

ではまた。気長にお待ちください!

【改めて】次回のシリアスは?

  • afterglow
  • ハローハッピーワールド

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