ありふれちゃいけない職業で世界最強 作:キャッチ&リリース
「断る」
総司の端的な言葉が静寂をもたらした。何を言われたのか分からない、といった表情のシア達は、ポカンと口を開けた間抜けな姿で総司をマジマジと見つめた。そして、総司達が話は終わったと魔力駆動車に乗ろうとしてようやく我を取り戻し、物凄い勢いで抗議の声を張り上げた。
「ちょ、ちょ、ちょっと!なんでよ!今の流れはどう考えても『何て可哀想なんだ!安心しろ!!俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むところよ!流石の私もコロっといっちゃうところよ!」
「何、いきなり美少女との出会いをフイにしているですか!って、あっ、無視して行こうとしないで下さい! 逃しませんよぉ!」
シア達の抗議の声をさらりと無視して出発しようとする総司達の脚に再びシアが飛びつく。さっきまでの真面目で静謐な感じは微塵もなく、形振り構わない残念ウサギが戻ってきた。
足を振っても微塵も離れる気配がないレナに、総司は溜息を吐きながらジロリと睨む。
「なら、お前達を助けて、俺達に何のメリットがあるんだよ」
「メ、メリット?」
「帝国から追われているわ、樹海から追放されているわ、お前さんは厄介のタネだわ、デメリットしかねぇじゃねぇか。仮に峡谷から脱出出来たとして、その後どうするんだよ?また帝国に捕まるのが関の山だろう。で、それ避けたきゃ、また俺達を頼るんだろ? 今度は、帝国兵から守りながら北の山脈地帯まで連れて行けってな」
「うっ、そ、それは……で、でも!」
「俺達にだって旅の目的はあるんだ。そんな厄介なもの抱えていられないんだよ」
「そんな……でも、守ってくれるって見えましたのに!」
「……さっきも言ってたな、それ。どういう意味だ?……お前の固有魔法と関係あるのか?」
一向に折れない総司に涙目で意味不明なことを口走るシア達。そう言えば、何故シア達が仲間と離れて単独行動をしていたのかという点も疑問である。その辺りのことも関係あるのかと総司は尋ねた。
「え?あ、はい。''未来視,,といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか?みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ!''未来視,,があれば危険とかも分かりやすいですし!少し前に見たんです!貴方が私達を助けてくれている姿が!実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」
シアの説明する''未来視,,は、彼女の説明通り、任意で発動する場合は、仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだ。これには莫大な魔力を消費する。一回で枯渇寸前になるほどである。また、自動で発動する場合もあり、これは直接・間接を問わず、シアにとって危険と思える状況が急迫している場合に発動する。これも多大な魔力を消費するが、任意発動程ではなく三分の一程消費するらしい。
どうやら、シア達は、元いた場所で、総司達がいる方へ行けばどうなるか? という仮定選択をし、結果、自分と家族を守る総司の姿が見えたようだ。そして、総司を探すために飛び出してきた。こんな危険な場所で単独行動とは、よほど興奮していたのだろう。
「そんなすごい固有魔法持ってて、何でバレたんだよ。危険を察知できるならフェアベルゲンの連中にもバレなかったんじゃないか?」
総司の指摘に「うっ」と唸った後、シアは目を泳がせてポツリと零した。
「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」
「バレた時、既に使った後だったと……何に使ったんだよ?」
「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」
「ただの出歯亀じゃねぇか!貴重な魔法何に使ってんだよ」
「うぅ~猛省しておりますぅ~」
「やっぱ、ダメだな。何がダメって、お前がダメだわ。この残念ウサギが」
呆れたようにそっぽを向く総司にシアが泣きながら縋り付く。総司が、いい加減引きずっても出発しようとすると、何とも意外な所からシア達の援護が来た。
「……総司、連れて行こう」
「総ちゃん………ダメ?」
「ユエ?香織?」
「!?最初から貴女達のこといい人だと思ってました!ペッタンコって言ってゴメンなッあふんっ!」
香織達の言葉に総司は訝しそうに、シア達は興奮して目をキラキラして調子のいい事を言う。次いでに余計な事も言い、ユエにビンタを食らって頬を抑えながら崩れ落ちた。
「……樹海の案内に丁度いい」
「あ~」
確かに、樹海は亜人族以外では必ず迷うと言われているため、兎人族の案内があれば心強い。樹海を迷わず進むための対策も一応考えていたのだが、若干、乱暴なやり方であるし確実ではない。最悪、現地で亜人族を捕虜にして道を聞き出そうと考えていたので、自ら進んで案内してくれる亜人がいるのは正直言って有り難い。ただ、シア達はあまりに多くの厄介事を抱えているため逡巡する総司。
そんな総司に、香織達は真っ直ぐな瞳を向けて逡巡を断ち切るように告げた。
「……大丈夫、私達は最強」
「私達は最強だよ?」
それは、奈落を出た時の総司の言葉。この世界に対して遠慮しない。互いに守り合えば最強であると。総司は自分の言った言葉を返されて苦笑いするしかない。
兎人族の協力があれば断然、樹海の探索は楽になるのだ。それを帝国兵や亜人達と揉めるかもしれないから避けるべき等と''舌の根も乾かぬうちに,,である。もちろん、好き好んで厄介事に首を突っ込むつもり等さらさらないが、ベストな道が目の前にあるのに敵の存在を理由に避けるなど有り得ない。道を阻む敵は叩き潰してでも進むと決めたのだ。
「そうだな。喜べ、残念ウサギ。お前達を樹海の案内に雇わせてもらう。報酬はお前等の命だ」
確かに言っていることは間違いではないが、セリフが完全にヤクザである。しかし、それでも、峡谷において強力な魔物を片手間に屠れる強者が生存を約束したことに変わりはなく、シア達は飛び上がらんばかりに喜びを表にした。
「あ、ありがとうございます!うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」
「おどゔさーん、おがぁざーん!」
ぐしぐしと嬉し泣きするシア達。しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。
「あ、あの、宜しくお願いするわ!」
「そ、それでお二人のことは何と呼べば……」
「ん?そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」
「……我……アヴローラ・フロレスティーナ」
「俺は朝田総司だ。なんとでも呼べ」
「……ユエ」
「白崎香織だよ。宜しくね」
「ハジメとアヴローラちゃんね」
「総司さんにユエちゃん、それに香織さんですね〜」
二人の名前を何度か反芻し覚えるシア達。しかし、ユエが不満顔でシアに抗議する。
「……さんを付けろ。残念ウサギ」
「ふぇ!?」
ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエの外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。どうもユエは、シアが気に食わないらしい。何故かは分からないが……。例え、ユエの視線がシアの体の一部を憎々しげに睨んでいたとしても、理由は定かではないのだ!
「ほれ、取り敢えず残念ウサギも後ろに乗れ」
「中入れシア」
総司達がユエの内心を華麗にスルーしながら残念ウサギ共に指示を出す。シア達は少し戸惑っているようだ。それも無理はない。なにせこの世界に魔力駆動車等と言う乗り物は存在しないのだ。しかし、取り敢えず何らかの乗り物である事はわかるので、レナは恐る恐るアヴローラの後ろに跨り、シアは空いているドアから車に乗り込んだ。
とある魔物の革を使ったタンデムシートだが、アヴローラが小柄なので十分に乗るスペースはある。レナは、シートの柔らかさに驚きつつ、前方のアヴローラに捕まった。その凶器を押し付けながら。
その感触にビクッとしたアヴローラは、おもむろに立ち上がると器用にハジメの前に潜り込む。アヴローラの小柄な体格は、問題なくハジメの腕の間にすっぽりと収まった。どうやら、背中に当たる凶器の感触に耐え切れなかったらしい。苦い表情で背後のハジメに体重を預けるアヴローラにハジメは事情を察して苦笑いする。
レナは「え?何で?」と何も分かっていない様子だったが、いそいそと前方にズレるとハジメの腰にしがみついた。ハジメは特に反応することもなく魔力駆動二輪に魔力を注ぎ込む。決して思わず反応してしまいそうになるのを堪えている訳ではない。ないったらない。
シアに関しては後部座席に乗っただけだが、ぷるん、と揺れるソレを見たユエは一瞬般若を覗かせた。香織に至っては助手席に乗りながらどうやってシアのソレをもぎ取るか考えていた。
シアが後部座席に乗り込んだのを確認した総司は、凶悪なまでのソレを視界に入れない様にして魔力駆動四輪を発進させた。
そんな総司と香織とユエの微妙な内心には微塵も気づかずに、シアは総司に後部座席から疑問をぶつける。
「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……この乗り物?何なのでしょう?それに、総司さんもユエさん、あと、ハジメさん魔法使いましたよね?ここでは使えないはずなのに……」
「あ~、それは道中でな」
そう言いながら、総司達は魔力駆動車を一気に加速させ出発した。悪路をものともせず爆走する乗り物に、レナがハジメの肩越しに「きゃぁああ~!」と悲鳴を上げた。地面も壁も流れるように後ろへ飛んでいく。
谷底では有り得ない速度に目を瞑ってギュッとハジメにしがみついていたレナも、しばらくして慣れてきたのか、次第に興奮して来たようだ。ハジメがカーブを曲がったり、大きめの岩を避けたりする度にきゃっきゃっと騒いでいる。
総司達は、道中、魔力駆動車の事や総司とユエが魔法を使える理由、ハジメの武器がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明した。すると、シア達は目を見開いて驚愕を表にした。
「え、それじゃあ、お三方も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」
「ああ、そうなるな」
「……ん」
しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様に運転席のシートの裏に顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。
「……いきなり何だ?騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」
「……手遅れ?」
「手遅れって何ですか!手遅れって!私は至って正常です!……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」
「「……」」
どうやら魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていたようだ。家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シア達のために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだ。それでも、いや、だからこそ、''他とは異なる自分,,に余計孤独を感じていたのかもしれない。
シアの言葉に、ユエ達は思うところがあるのか考え込むように押し黙ってしまった。いつもの無表情がより色を失っている様に見える。総司達には何となく、今ユエ達が感じているものが分かった。おそらく、ユエ達は自分とシア達の境遇を重ねているのではないだろうか。共に、魔力の直接操作や固有魔法という異質な力を持ち、その時代において''同胞,,というべき存在は居なかった。
だが、ユエ達とシア達では決定的な違いがある。ユエ達には愛してくれる家族が居なかったのに対して、シア達にはいるということだ。それがユエ達に、嫉妬とまではいかないまでも複雑な心情を抱かせているのだろう。しかも、シア達から見れば、結局、その''同胞,,とすら出会うことができたのだ。中々に恵まれた境遇とも言える。
そんなユエの頭を総司はポンポンと撫でた。日本という豊かな国で何の苦労もなく親の愛情をしっかり受けて育った総司には、''同胞,,がいないばかりか、特異な存在として女王という孤高の存在に祭り上げられたユエの孤独を、本当の意味では理解できない。それ故、かけるべき言葉も持ち合わせなかった。出来る事は、''今は,,一人でないことを示す事だけだ。
ハジメとてそれは同じだ。
すっかり変わってしまったハジメだが、身内にかける優しさはある。あるいは、アヴローラと出会っていなければ、それすら失っていたかもしれないが。アヴローラはハジメが外道に落ちるか否かの最後の防波堤と言える。アヴローラがいるからこそ、ハジメは人間性を保っていられるのだ。その証拠に、ハジメはシア達との約束も守る気だ。樹海を案内させたらハウリア族を狙う帝国兵への対策もする気である。
そんな総司達の気持ちが伝わったのか、ユエとアヴローラは、無意識に入っていた体の力を抜いて、アヴローラはより一層、まるで甘えるようにハジメに背中を預け、ユエは運転席にいる総司の膝の上に座り甘える様に頬擦りをした。
「あの~、私のこと忘れてませんか?ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは?私、コロっと堕ちゃいますよ?チョロインですよ?なのに、せっかくのチャンスをスルーして、何でいきなり二人の世界を作っているんですか!寂しいです!私も仲間に入れて下さい!大体、お二人は……」
「「黙れ残念ウサギ」」
「……はい……ぐすっ……」
「あ、あはは……」
泣きべそかいていたシアが、いきなり耳元で騒ぎ始めたので、思わず怒鳴り返す総司とユエ。しかし、泣いている女の子を放置して二人の世界を作っているのも十分ひどい話である。その上、逆ギレされて怒鳴られてと、何とも不憫なシアであった。その不憫さに香織は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。ただ、シアの売りはその打たれ強さ。内心では既に「まずは名前を呼ばせますよぉ~せっかく見つけたお仲間です。逃しませんからねぇ~!」と新たな目標に向けて闘志を燃やしていた。
尚、ハジメ達も同じ様なことになっていた。
「あの~、私のこと忘れてない?ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは?私、コロっと堕ちるわよ?チョロインよ?なのに、せっかくのチャンスをスルーして、何でいきなり二人の世界を作っているの!寂しい!寂しいわよ!私も仲間に入れて!大体、貴方達は……」
「「黙れ残念ウサギ」」
「……はい……ぐすっ……」
しばらく、シア達が騒いでハジメとアヴローラか総司とユエに怒鳴られるという事を繰り返していると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。どうやら相当な数の魔物が騒いでいるようだ。
「!総司さん!もう直ぐ皆がいる場所です!あの魔物の声……ち、近いです!父様達がいる場所に近いです!」
「はぁ〜、耳元で怒鳴るな!聞こえてる!飛ばすからしっかり掴まってろ!」
総司達は、魔力を更に注ぎ、魔力駆動車を一気に加速させた。壁や地面が物凄い勢いで後ろへ流れていく。
そうして走ること二分。ドリフトしながら最後の大岩を迂回した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達がいた。
最近忙しくて書く時間がないとです。
清水くんは助ける?
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助ける
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助けない
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寧ろ最凶化
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ラーメン食べたい