ありふれちゃいけない職業で世界最強   作:キャッチ&リリース

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清水くんの行く末アンケートの中間発表その1です。

助けるが31
助けないが66
寧ろ最凶化が14
ラーメンを食べたい人たちが67

意外とラーメン食べたい人って多いんですね〜。


第5.5話クラスメイトside 失意と決意、香織の手にした小さな希望

時は少し遡る。

 

大迷宮にて総司とハジメを失ったクラスメイト達は失意の底に沈んでいた。

そして雫は、愛する人を失い、悲痛な表情を浮かべながら眠る親友を見守りながら自らもまた涙を流していた。

 

あの日、迷宮で死闘と喪失を味わった日から既に5日も過ぎている。

 

あの後、宿場町ホルアドで一泊して、翌日には、高速馬車に乗って一行は王都へと戻った。とても、迷宮での実践訓練が続行出来る雰囲気では無かったし、無能扱いされていたとはいえ、勇者の同胞を失ってしまった以上、国王にも教会にも報告が必要だった。

 

それに、厳しい言い方をすれば、こんな所で折れてもらっては困るのだ。致命的な障害が起こる前に、勇者一行のケアが必要だという判断もあった。

 

雫は、王国に帰って来てからの事を思い出し、香織に早く目覚めて欲しいと思いながらも、同時に眠ったままで良かったと思っていた。

 

帰還を果たし総司とハジメの死亡が伝えられた時、王国側の人間は誰しもが愕然としたものの、それが"無能"と言われていた総司達だと知ると、安堵の吐息を漏らしたものだ。

 

国王やイシュタルでさえも同じだった。本来、強い力を持っている勇者とその同胞が死んでしまう事はあってはならない事だった。

故に、"無能"である総司とハジメの死亡は大した損害にはならず、寧ろ邪魔者が消えた位の事としか考えていなかった。

 

しかし、総司達に対して罵詈雑言を吐き捨てる者達に食ってかかった人物がいた。

 

「お待ち下さい!確かにあの2人はステータスこそ低かった、それは事実です。けれど、我々が王都に帰還出来たのは彼らの尽力があったからこそです!」

 

「されど、大した力を持たない者がそんな事をした所で肉壁にしかなるまい?」

 

「しかし彼等は、ベヒモスを…………そしてその更に上を行く化物をたった2人で仕留めて見せました!我々が一切手を貸す事もなく!己の力だけで…………!」

 

『なっ!?』

 

この時、総司達を無能と罵っていた者達は失ったものの大きさに漸く気づくことが出来た。しかしそれは、あまりにも遅すぎた。

 

その後、総司達が奈落へと落ちる原因となった追尾性の魔法は誰が放ったのか、という事を調べようとしたメルドだったが、イシュタルに止められてしまい行動する事が出来なかった。

しかし、犯人が誰かという事は殆ど分かりきっていた事でもあったので、生徒達だけで話し合いをした。

 

しかし、犯人である檜山は事故だと言い張り、光輝がそれを認め、勝手に許してしまった。その時、雫は光輝達を見限り、香織に対して心の中で謝罪し続けた。

 

「香織、貴方がこの事を知ったら怒るのでしょうね。けれど私は、それを甘んじて受け入れるわ。だって、見殺しにしてしまった事には変わりないんだもの…………」

 

その時、握り締めていた香織の手が少し動いた。雫はそれと同時に香織の顔を覗き込み、安堵の表情と、涙を流した。

 

「………雫ちゃん?此処は……それに…………私達は迷宮へ遠征に……っ!!雫ちゃん!総ちゃんは!?南雲くんは!?無事なんだよね!?一緒に帰ってきたんだよね!?」

 

「落ち着いて香織。朝田くんと南雲くんは、帰って来てはいないわ。けれど、朝田くんから伝言を預かっているの」

 

「っ?!………総ちゃんは何て言っていたの?」

 

「彼は、『愛する人を置いて死ぬ事はあり得ない。もしも居なくなったとしても必ず君の元へ帰るから』と、言っていたそうよ」

 

「それは、誰から聞いたの?」

 

「メルドさんよ。直接本人から聞いたから間違いは無いって」

 

「………………そっか。なら、何時までもくよくよしていちゃダメだね。ありがとう、雫ちゃん!」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

2人は顔を近付け微笑みを浮かべた。しかし、タイミングの悪い所で乱入者達が現れる。

 

「雫、香織は起きたか………い………。?!す、すまない、邪魔をした!」

 

「うお!?」

 

光輝達から見ると香織と雫がキスをしている様に見えていたらしく、そういった事をしている途中なんじゃ無いかと、邪魔をしてしまったと思い込み直ぐにドアを閉めた。

 

雫は、疑問符を浮かべている香織に今迄起きた事を説明した。その中には総司達に対して罵詈雑言を言い続けていた者達の事や、総司達が奈落へと落ちる原因を作った檜山に対する光輝の対応なども含まれていた。

 

香織は当然激怒した。それもそうだ、総司は幼い頃からずっと一緒にいて、交際し、将来を誓い合うような、香織にとって必要不可欠な存在だ。

それに、ハジメもとても親しく、かつ総司の親友で、あの夜守ってみせると約束していたのだ。

 

その2人に対しての罵詈雑言に、2人と離れる原因を作った檜山、そして、その檜山を勝手に許した光輝に、怒りなど生ぬるい、憎悪の感情すら抱いてしまう程の敵意を持ってしまった。

 

そんな事になっているとは露知らず、光輝はドアをノックして部屋の中に入ってきた。

 

「もう大丈夫なのか、香織?」

 

「何の用かな、天ノ河くん?私は心配して欲しいなんて言って無いんだけど」

 

「えっ?いや、だから、俺は香織が心配で………」

 

「必要無いって言っているの。もう話しかけてこないで」

 

「だ、だが…………グハッ!?」

 

「出て行って………」

 

香織は、光輝の心配に対して絶対零度の視線を浴びせながら冷たくあしらい、それでも尚声をかけてくる光輝を殴って追い出した。

憎悪すら抱いている相手に対して、これだけで済ませたのは香織の生来から来る優しさの所為だろう。

 

されど、その事に文句を言う事は出来なかった。

 

何故なら、香織は既に光輝に対する興味が無くなっているという事が誰の目からも明らかだったからだ。

 

「良かったの?」

 

「うん、正直もう関わりたくも無いしね。それに…………」

 

この日、香織は小さな希望を見つけた。そして、それを掴むべく必死に努力しようという決意をした。

 

「こんな所で寄り道していないで総ちゃんを探して、また一緒に居られるようにするんだから。雫ちゃんも手伝ってくれる?」

 

「当然よ。ただ、貴方から朝田くんを奪う事になるかもしれないけどね」

 

「っ!?ふふっ、望むところだよ雫ちゃん!」

 

クラスメイトが失意に沈むなか、2人の恋する乙女達はその目に決意の光を宿らせる。

 

 

 

「クソ!なんで、なんであいつが!!!」

 

そう、物語はまだ始まったばかりである。

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