『時雨蒼燕流はいつだって完全無欠最強無敵』……それは鬼滅の刃でも? 作:必殺遊び人
誤字報告をしてくださった展開郎様ありがとうございます。
なるべく少なくしていくように精進していきます。
それではどうぞ!
『狐一号君、それに二号君、俺が腕を斬ってやる。お前らのどちらかで首を落としてくれ』
それが、光哉が二人に言った言葉だった。
光哉の挑発を受けるように動き出した鬼の腕。
そしてそれに答えるように剣を振るった光哉。
勢いを増す二人の戦闘に、
『……ありえるのか』
あの小柄な、まだ十も言っていない――すなわち
戦い自体は
『なんか前より弱くなってね?』
『ふざけやがって!! お前は絶対食ってやる!!』
二人は知らぬことだが、光哉がこの鬼と対峙するのはこれが初めてではない。
光哉はこの鬼が多くのものを殺しているのを知っていた。
ではなぜこの鬼が生きているのか。
理由は明白。この鬼を斬れる存在が、今までいなかったから、それだけの理由だった。
『時雨金時』では鬼は殺せない。だが、光哉は『時雨金時』でなければ力を使えない。
それら事実が、この鬼を生き長らえさせている原因だったのだ。
光哉は自身、これ以上最終戦別にかかわっている時間はなかった。
だからこの時まで待ったのだ。
鱗滝の弟子の中でも突出して強いと言われる、
(まさか本当に折れるとはな。俺がいても原作通りに事が進むことをありがたく思うか忌むべきか……)
分裂し、結合し伸びてくる腕を切り落としながら、光哉は冷静に今回の事を考えていた。
『……俺は、あんたの事も助けたいと思っていたんだよ……』
『だったらここで俺に食われろ! クソガキがああああ!!』
『……、……期待薄、だったけどな』
戦闘中にしたその会話の意味は、二人以外には分からない。
だが、なにか悲しそうに剣を振るう光哉の顔を見れば、それの意味を理解できる者もいるかもしれないが……。
『
『……わかってる、がこの欠けた刀では……ッ』
義勇は
二人が悩んでいる間も、光哉は戦い続けていた。
このままいけば朝陽が昇りそうだが、鬼もそこまで馬鹿ではない。これまでも逃げる程度の事はやってきたのだ。
二人はこのまま助かるだろう。
しかし、それ以降は? 明日に誰かがこの鬼にくわれないと保証できるか? 今ここで鬼を逃がしていいのか?
そんな正義感が、二人をまだこの場に止めていた。
『先に狐二人を始末してやる!!』
鬼の手が二人へ伸びた。
『『――!』』
だが二人が刀を振るより先に、光哉の刀がそれを斬る。
『……何をやっているんだ?』
なぜ動かないと問うように、光哉が
『……、』
これが自分だと思うと情けなくて仕方がない。動かないのではなく動けないでいる自分を斬りそうなほどに怒りがわいているのがわかった。
『なるほどな』
光哉は迫る鬼の手を斬りながら、
義勇の方を見ても、同様に動けないのは明白だ。
半ば義勇の方は『柱』としての姿を知っているからか違和感がすごいが、子供の頃ではこんなものだろうと、納得の表情を光哉はみせる。
しかしそれでは困る。
ここで原作を変えてこそ光哉もこの先確信を持って動けるのだ。
何がなんでも二人には、ここでこいつを倒してもらう必要があった
『【お前が男なら……お前が男に生まれたなら――】』
だから光哉はそれを口にする。
『【――弱い、未熟そんなものは男ではない】………だったか』
光哉のその言葉に二人はギョッとしたように彼を見た。
(その言い回しは……)
義勇はその言い回しが
『【進め――】』
攻撃の嵐もやまぬ中、光哉は
『【男に生まれたなら進むべき以外の道などない!!】』
それだけを言って、光哉は再び鬼の元へと走って行った。
『ははは』
(まさか俺が
義勇も、先ほどまでの迷いがないほどの目には力が満ちていた。
(そうだ。俺は姉を殺した鬼を許さない――)
『
『義勇……』
二人は刀を構えて。
『『早い者勝ちだ』』
そして動いた。
(きたか……)
二人が動くのを見て、光哉は鬼へと向き直る。
鬼と光哉は、動くことなく睨み合っていた。光哉は義勇達を待ち、鬼は光哉相手に動けずにいたのだ。
『……なぁ鬼さん。あんた、本当に自分の名前覚えてないのか?』
ここでそんなことを質問ぢているのは、やはり原作知識を知っているからだろうか……。光哉と言う人間は、結局最後まで非情になりけれない普通の人間だったのだ。
『――っ! 覚えてるわけないだろ……ッ』
『そうか』
それだけ言って、光哉は静かに剣を構えた。
(まずいまずいまずいッ、この餓鬼今までと雰囲気が!! 俺はこれからも鱗滝の弟子たちを――)
『
その声を聴いて、鬼は自身の死を今まででより身近に感じた。
『篠突く雨』
次の瞬間鬼はすべての腕を斬り落とされていた。
『――なッ!?』
そして――
――水の呼吸・肆ノ型――。
――それが聞こえた時には、鬼は自分の首が飛んでいるのを理解した。
宙を回転する首は目の前で刀を振るった錆兎と、それと同時に後ろから刀を振った義勇を見て、驚愕以外の感情がうかばなかった。
錆兎は先ほど切れなかった首を今度は折れた刃で通し、折れたことで足りなかった分の刃に義勇は寸分狂わず合わせてきたのだ。
ゴトゴト、と首が地面へ落ちる。
錆兎と義勇は息を絶え絶えにしながらも、顔から笑みを絶やさなかった。
何故なら錆兎と義勇は超えたのだ、先ほどの自分を。
そして仇を討ったのだ。思わず叫びたくなるほどの衝動すら覚えているだろう。
『少年、斬った、ぞ……』
錆兎は光哉の方を見て、嬉しそうに告げるその言葉をきった。
――なぜなら。
……。
『行っておいで、お兄さんが待ってるから』
今まで外さなかったお面を外し、まるで鬼を死を憂うように胸へと面をつけていたのだ。
反対の手は鬼の顔に添えて、優しく微笑み。
そして何より――鬼の顔が泣いていたのだ。
この鬼は錆兎達にとって許すことのできない存在だ。
けど、そんな顔をされては――。
『はぁ甘すぎるよ全く……』
鬼が消えてからそれを口にした光哉は、まるで自分に言い聞かせているようで……。
錆兎達はそれから少しだけ話した。
戻ったらお礼をさせてくれと、名前はなんて言うのかと、その剣技は誰に教わったかなど。
光哉は、ニコニコしてそれを聞いていたが、それに答えることはなかった。
その代わり――。
『いつか俺を助けてくれよ、それで今夜の事はチャラにしよう。そうだな、取り合えず『柱』程度にはなっておいてほしいかな』
そう言って鬼の少年と義勇達は分かれた。
どうやらやることがあると、何かにいそいでいるようだった。流石にそれを引き留めることは二人にはできない。
険しい道だった。きっと無理だと思って馬鹿にしているのだろうと、二人は思っていた。
けど、錆兎と義勇はそれを約束して光哉と別れたのだ。
+++++
次の日――最終日にはさして変わったこともなかった。
刀を折った錆兎の代わりに義勇がおにの首を斬る。錆兎も負傷者の手当をしながらその日を過ごした。
そして七日間、二人は生き残った。
結果を見れば今回は選抜に参加した全員が生き残るという偉業を達成していた。
まぁ鬼ほとんどを錆兎と義勇が倒していたので、実力の方は疑わしいものだが、その場は誰も死ななかったことをみんなが喜んでいた。
『……そんな、ありえない』
『錆兎、まさかと思うけど……』
皆が喜びを分かち合う中、錆兎と義勇だけが何かに焦っているように狼狽えていた。
鬼のお面の少年の姿が見当たらない。
つまり、最終戦別のルール説明をしていた子供が全員を鬼殺隊への入隊説明をしてるその場に、いるべき人物がいなかった。
産屋敷光哉は、その場所には現れなかったのだ。
…………。
……。
「苺ってどっちかと言うと洋菓子に使われそうだろ? それを和と組み合わせようとした発想が結局一番だと思うんだよ。ゼロからいちを生み出す。それこそが本当に天才だと思うんだ。で、最近俺がはまってる店なんだけどそこが――」
義勇達は結局あの最終戦別で戻ってこなかった『鬼の少年』――光哉は最終日に死んでしまったのだと、生き残れなかったのだと結論付けた。
ただ約束だけでも守ろうと、義勇は今『柱』としてこの場にいるのだ。
だが、その亡くなったと思っていた光哉は目の前で、『お館様』の義弟としてこの場にいる。
『水柱』富岡義勇は、未だにペラペラと苺大福について語っている光哉へ聞いた。
「お前は……生きていたのか……?」
義勇のその一言で、その場の全員が声の方へ向いた。
『柱』達の間では、あまり話すイメージがない義勇が一番に光哉に話しかけたことを驚いていた。
光哉も義勇を見て口を閉じた。
「死んだのではなかったのか……」
いきなり何を言い出すんだと、全員の『柱』が思っただろう。少なくとも、『お館様』の実弟である光哉に言うべき言葉ではないからだ。
だが、そんな失礼極まりない言葉にも光哉は嫌な顔一つせず、むしろ嬉しそうな顔をして答えた。
「久しぶりだな。狐二号君、一号も元気か?」
事実嬉しいのだろう。義勇が自分を覚えていてくれていることが。
『柱』達は義勇と光哉の二人の関係を測ろうとしているようだった。
二人は知り合いなのか、どんな関係なのか。
そんな『柱』達の反応を見て、光哉は笑い「少し無駄話が過ぎたかな」と苦笑いを浮かべている。
我ながら情けないと思ったのだろう。漫画の主要キャラ勢ぞろいと言うこの空間に、彼自身興奮を抑えられなかったと言ったところか。
本来の目的を忘れる間抜け具合に、光哉は自分を恥じるほどだ。
「そろそろ本題に入ろうか……。あ、その前に疑問に答えよう」
まず光哉はそう言って。
「何故輝哉は俺とお前達で話をしろと言ったのか」
その言葉に
カナエだけはその光哉が気になっている苺大福のお店について興味があったが、『柱』である自分が今この場での対応を間違えるわけにはいかなかった。
「最初にお前らの認識を正そう。『柱』であるあんたたちが俺に対して首を垂れることはない。あんたらのそれは輝哉に向けるべきもので、弟であるからと俺にそれを向ける必要はない」
その言葉に『柱』達
「あの光哉様――」
代表するように『風柱』である
「実弟であるとはいえ『お館様』はこの鬼殺隊の頂点です。呼び捨てにすべきではないと思われますが……」
「……」
光哉はそれを聞いて、なるほどと理解する。先ほどからちょくちょく『柱』たちが反応していたのはこれの事かと分かったからだ。
けどそんな不死川の鋭い視線に物怖じすることなく、光哉は答える。
「だからそれが勘違いだ。そもそも俺は鬼殺隊の一員じゃない。七年前に家を出ているからな。まぁ旅みたいなものだったが、俺はもう産屋敷家を継ぐこともないだろうし、鬼殺隊に対する命令権もない」
「――なッ」
「今ここにいるのは、輝……兄さんのご厚意って感じだ。まぁ呼びかたはあれだな、あんたらと違って俺はあくまで兄弟と接しているし、それ以上でもそれ以下でもないからだ」
その事実に、『柱』達は驚いて言葉が出なかった。
なぜなら、まだ生まれて五年そこそこ
この時代。本来そう言った家へ生まれた場合にお役目を放棄するなどありえない。もしそうなった場合、勘当は当たり前、勿論家に入れるなどあるはずがないのだから。
とは言え、産屋敷家の役目とは鬼無辻無惨の妥当、および鬼から人に対する被害をなくすことだ。
光哉もあくまでそれらのために動いており、輝哉もそれを認めての処置なのは、言うまでもない。
ただ、今この場で取り繕っても仕方がない。
結局、光哉は輝哉に許されているにすぎず、『柱』達の至った考えも間違えではないのだから。
「と、言うわけでだ。それでも俺の話を聞いてくれる奴だけ残ってくれ」
『柱』達はどう動くべきか迷っているようだった。
義勇ですらどうすればいいか選択できずにいる。
そんな様子でいる彼らを見て――。
「実は俺、鬼無辻無惨に太陽の下を歩けるように協力するべきじゃないかと思ってるんだけどどう思う」
ニコリと笑い告げるそれに、今度こそ『柱』が動いた。
今の光哉には三つの刀が向いていた。その中の一つは首に添えられているのすらある。
『風柱』『花柱』『音柱』が次の一手で光哉を殺せるように構えたのだ。
そんな絶望的な状況に光哉は表情を変えず、ただ一言――。
「まぁ……知ってた」
なにかに納得したように、そう小さく呟いた。
この作品が現在から過去の話をしているのは理由があります。
メタ的ではありますが、鬼滅の刃は未だ伏線が多く、後に多くの設定が出てくる場合があります。
その時に、過去から話を進めるより、その設定を見てから話を作れる過去編システムを用いました。
まぁ思ったより早く筆が進んであまり意味のない行為になってしまいましたが……。
読みずらいところが多々あるかと思います。意見がありましたらなるべく改良をしていきたいと思いますのでご意見があればお願いします。
***
感想にて時雨金時で鬼を殺せるのか? と言う質問をいただきました。
結論から言えば出来ません。
勿論死ぬ気の炎でもできません。
あくまで殺せるのは日輪刀だけです(主人公は日輪刀では力を使えませんが……)
時雨金時では鬼を殺せない。それ自体にどのような意味があるのか、これからの話を楽しんでいただければ幸いです。