『時雨蒼燕流はいつだって完全無欠最強無敵』……それは鬼滅の刃でも? 作:必殺遊び人
その際、『ご都合主義満載』ですのでそこのところご了承いただきたく思います。
オリジナルキャラを出しました。タグも追加します。
意味のないキャラではありません。それを少しずつ数話かけて書いていければと思っていますので、受け入れてもらえると助かります。
最後に今話はすごく長いです。
分けたほうが良いというご意見がありましたら分けようと思いますのでよろしくお願いします。
「昔々あるところに、光哉という馬鹿な人間がいました」
そんなふざけた冒頭から語り始めたのは、光哉に蹴りをくらわした少女――
ショートの髪を金髪にして、すこし洋風な顔立ちにしているのは、光哉が適当に言った女性の好みににしている結果だった。
全く持って鬼とは便利な存在である。
「ねぇそれで光哉さんが馬鹿だって話し続けてよ」
そう言って腕の裾を引っ張るのは、累が『十二鬼月』の際、母親の役をやらせていた少女だ。
今は本来の姿である黒髪に、小柄な容姿をしており、鬼になった時にできた顔のラインが何ともチャーミングである。
それに加えて彼女は特別だった。
彼女は、最近半年間眠り続けるという――いうならば
最近になって目が覚めた彼女は、人を食べたいという衝動がおこらなくなっていた。
さらに、人を食べなくてもここ一ヶ月飢餓状態になる事もない。
食べろと言われれば人でも食べるが、好んで食べようとは思わないという、なんとも言えない状態が彼女なのだ。
「えーでも私もお兄ちゃんとの馴れ初めなんて恥ずかしいよー」
クネクネと照れ隠しなのかなんなのかしている彼女に、累の母親であった少女――ヒカリはこの姉も相当馬鹿なのだと思い出した。
「馴れ初めって……別に光哉さんとお姉ちゃんは……」
「だまらっしゃい! 私とお兄ちゃんはいずれ結婚するから別にいいのです!」
「え、結婚!? え、え……だって光哉さんは人間だし……」
「大丈夫よ! だって無惨様だって人間の人と家庭を作ってるってお兄ちゃんが言ってたわ。なら私だって問題ないはずよ!」
金髪の髪を揺らし、和服ではなく洋風の白いワンピースを着る彼女は、無い胸を前面に出しながら馬鹿を露見させていた。
「じゃあなんで妹なの?」
「それはあれよ! あれ? なんでだっけ……なんかこう引っかかる感じだわ。多分人間の頃の記憶が関係してるのね。私、累見たく全部を思い出してるわけじゃないからきっとそれね。まぁ禁断の愛って萌えるから私好きだわ!」
「フーン、でお話の続きしてよ」
「あなた、結構ひどわね。累に頭やられてたのかしら……まぁ良いわ。じゃあ最初からね」
――昔々あるところに……。
……。
…………。
光哉が産屋敷の外に出て二年を過ぎた頃だった。
義勇と錆兎の最終戦別試験もすでに半年前。
光哉はいつも通り喋るカラスと言う謎生物から鬼の情報を手に入れ、その場所へと駆け付けていた。鬼の強さによっては付近の隊士を呼び、実力が未知数ならそれに見合った隊士を呼ぶ。
これは光哉が家を出る前に輝哉に提案したことであり、この行為はあくまで隊員がかけつくまで光哉ならば足止めできることを前提で作られた行為だった。
『時雨蒼燕流』関係なしに、空を飛べて高速移動できる光哉だからこそだろう。
ぶっちゃけ、光哉ならば殺すことはできたかもしれない。時間を稼いで朝日が昇るまでの戦闘も彼なら可能だっただろう。
しかし、光哉の原作知識がその行為の邪魔をした。
人間の頃の記憶さえ取り戻せさせれば、もしかしたら……。
なまじ、珠世と言う成功例がいたのも問題だった。
周りの人間に被害が出ない。強力な転生特典『時雨金時』が、足かせになっている数少ない例だっただろう。
そんな中、ある森、ある夜で、彼は助けを呼ぶ声を聞いた。
『誰か……、助けてください! お願いします……お願いします……!』
その場所はすぐ近くだった。
声の場所へたどり着いた光哉は、木に背をついて蹲っている少女と、刀を向けている若い男の姿が目に入る。
『散々逃げ回りやがって、追い詰めたぞ……ッ』
『お願いします……お願いします……もう悪い事しませんから……っ』
その光景を見て、光哉は
――なぁんだ、鬼だったのか、と。
つまるところその光景とは、鬼の少女を鬼殺隊が追い詰めているところだったのだ。
見たところ、若い男はそこそこ腕が立つようで、鬼とは言えあの少女に負ける要素はない。
しかし万が一がある。光哉は彼らに近づこうとして――。
(――!? 何考えてるんだ……俺は……ッ!)
――その足を止めた。
産屋敷光哉と言う人間は転生者だ。
彼はそうしてこの世界にいる理由を助けられなかった人たちを、イレギュラーである自分が助けるためと思っている。
勿論、そんな事は妄想の類でしかないだろう。しかし、彼は自身がそうありたいと思っていた。
光哉が助けたいと考えていた者の中に、当初は鬼の存在も含まれていた。
なまじ原作を知っていたからだろう。
この世界の鬼に悪感情を抱かなかったのは、外からその存在を知っていたが大きいと言わざるおえない。
とは言え、実際にそれをしようとした時、光哉のそれは絶望へと変わった。
最初はあの『手鬼』だったろうか……。その鬼の過去を少しばかりか知り、主人公である竈門炭治郎との最後を知っていることもあるだろう……手始めになんて軽い気持ちで『手鬼』に近づいたのだ。
結果は言うまでもないだろう。
話合うことすらできなかった。最後まで彼は『手鬼』の名前すら聞きだせなかったのだ。
『手鬼』だけではない、他の鬼も同様だった。
ほとんどの鬼は人を食べるしか考えられない。産屋敷家に生まれたこともあり知りたくもない胸糞悪い情報をまで光哉には届いていた。
時には騙されて襲われ――光哉は助けるという行為がいかに無謀かを、それほど時間がかからなく理解したのだ。
光哉が自身のてで鬼を倒さず鬼殺隊に任せるのは、もう鬼に悪感情を抱きたくないと、そんな事も理由の一つだったのだろう。
(ふざけろよ……手を指し伸ばして掴んでくれなかったから諦めました? なめるのも大概にしろよ産屋敷光哉!!)
目の前に泣いている女の子がいる。
ごめんなさいと、お願いしますと、そう涙ながらに懇願している子がそこにいる。
それを見て、思ったことが鬼だからよかった? 演技かもしれないから様子を見よう?
『自分の勝手さに泣けてくるな……』
光哉は走りだした。
鬼だなんだは後回しだと。
まずはやるべきことをなしてからだと。
光哉はその鬼を助けることに決めたのだ。
『こらぁあああ女の子相手に刀を向けるとは何事だぁあああああああ!!』
ギョッとしたように光哉を見る鬼である少女と鬼殺隊の少年。
少年は人が現れたことに焦り、少女はポカンと状況を把握できていないようだった。
『……バカッ! こっちへ来るな、こいつは鬼だぞ!?』
『……助けてください。いきなりこの人が追いかけてきたんです!!』
光哉を何も知らない一般人だと判断した二人の反応がこれだった。
『―ッ』
これを聞いて、すでに光哉はその鬼が自分を利用しようとしてるのを理解した。
先ほど決意したばかりだというのに、その心が揺れているのを自分で感じる。
――それでも。
慌てている鬼殺隊の横を潜り抜け、光哉はしゃがんでいた鬼の少女を抱えて走った。
それを見て、慌てて追ってくる鬼殺隊の少年。
光哉は自身の揺れた心を打ち消すように――刀を握り技を放った。
『守式二の型・逆巻く雨』
と。
+++++
誰もいない空き家へ逃げ込んだ『鬼の少女』は、鬼殺隊から助けた男――光哉に抱きしめられるように抱え込まれていた。要するに抱っこ状態である。
光哉は息を絶え絶えにしながら壁に背をつけており、鬼殺隊を撒いたあの刀は地面に置くといういわゆる無防備状態。
それを確認したその鬼の少女は。
――ラッキー、と。
(お腹がすいたわね。多分鬼狩りも撒けてると思うしこの男を殺しても大丈夫よね?)
鬼の少女にとって問題は、目の前の男が騒いで鬼狩りに見つかる事、ただそれだけだった。
確かに、少女はあの時――鬼狩りに襲われたとき、助けてほしいと懇願した。
実際に死ぬことは怖かったし、死を覚悟したとき流れた涙も真実だった。
けど、そんな話はもうどうでもよかった。
もうじき朝日が昇りそうだが、幸いこの空き家は日を通さないつくりのようだ。
鬼の少女は抱えられたまま、まずは心臓でも食べようと、男の胸へと腕を突きだしたのだ。
けれど――。
『……あ、れ?』
少女の拳は体に傷一つつけられなかった。
何度も何度も。拳を振るっても人間の子供程度の力しか出せていない。
これでは攻撃ではなくて腕の中から出ようとしている子供と変わらない。
『やめとけ、お前じゃ俺には勝てないし、ましてや食べることもできないよ』
『……ッ!?』
鬼の少女は目の前の男が何を言っているのカ理解できなかった。
(私を鬼だと認識、してる……ッ! それに力が……ッ!)
少女はずっと彼に
『あ、あなた私が鬼だと知って……ッ』
『安心しろよ、俺は別に鬼狩りじゃない……まぁ完全に違うかと言われればあれだが、
『ふざけないでよ! 離しなさい! 人間の分際で、このッ・・・・・・』
ジタバタと暴れてはいるが、それが意味をなさないことは少女が一番理解していた。
『日が昇るまでは悪いけどこのままな、逃げられたら流石に困るし』
『……こいつッ』
最悪だと鬼の少女は思った。
この男はわかっていてすべてを行動したのだ。
あの時助けたのも、この場所を選んだのも、日が昇るギリギリまで逃げていたのも、全部知ってて行ったことなのだと。
『まぁ何はともあれ助けてやったんだから恩人の言う事は聞けよ』
『何を言って……』
『人は食うな』
鬼の少女は自身の何かが切れたのを自覚した
『ふざけんなあぁぁあああああああ!!』
そんな怒り狂う鬼の少女を見ても、男はニコニコしながら頭を撫でていた。
『触らないでよ!』
『ハハハ、やめてほしかったら『血鬼術』でも覚えて反抗するんだな』
『あんたは絶対私が殺す!!』
目を血走らせる少女に対して、男は笑ったままだった。
……。
……。
半年間。鬼の少女はその男――光哉と一緒に時を過ごした。
男は少女が鬼であることを考慮し、基本的には夜しか行動を起こさない。
昼間、男は基本睡眠をとる。しかし、日が出ている間は少女は動けなかった――逃げられない。
鈍器でもって殺そうと試みるが、近くにいる犬や燕に邪魔された。畜生にすら――痛い痛い、と涙する自分が情けなくて仕方なかった。
ちなみにその動物立ちは次郎と小次郎と言う名前らしい。そんなことを笑顔で告げられた少女は、さらなる殺意を男へと向けた。
男は
多くの街を回ったため、少女は地理に詳しくなっていた。
男を殺してもこれなら鬼狩りから逃げられるかもと、そこだけは男に感謝した。
『お腹がすいたわ……食べさせて……』
ぶっきらぼうに告げられた少女の言葉に、男は自身の腕を差し出した。
勿論、腕を食わせるなど頭のおかしいことはしない。
男は腕へと刀を差し、溢れ出る血を彼女へ飲ませているのだ。
『なぁ、鬼ってそんなに頻繁に食わなくてもいいはずなんだけど? これ痛いしくらくらするしできれば俺の事も考慮してほしいなー的な?』
『じゃあ肉も食べさせてよ。私あなたぐらいの大人になってない子供の肉がこのみなの』
鬼の少女は男が傷ついてるだけで気分がよかった。
何やら――「我慢させているんだから俺も痛いのは我慢するよ」と、何を言っているのか少女には分からなかったが、彼女は嫌がらせでよく食事を要求していた。
『俺ぐらいの? 何、大人じゃダメなのはやっぱり肉が固いから? だとしたら女性の方が良いよな? やっぱり同性は食べずらい?』
『……、』
男は、嫌がらせで言った少女の言葉に、気分を悪くする様子もなく、平然と言葉を返してくる。
それが余計に少女を苛立だたせた。
……。
……。
ある日。男――光哉はある薬を少女へと差し出した。
――楽になる。
と言う男の言葉だったが、それを飲んでから確かに楽になった。
お腹が空かない。人間を見ても食欲意欲がわかない。
鬼の少女的にはこれが嬉しい事かと言われればそうではなかった。だが、男と一緒にいる限り人間が食べられないのだから、我慢しなくていいというのはそれだけでよかった。
『お腹空いたわ……』
『ははーん。さてはお前、嫌がらせで言ってるな?』
どうやらやっと男は気づいたようだが、ちゃんと血は飲ませてくれた。
少女は男――光哉が何を考えているか本当に分からなかった。
……。
……。
『見つけた』
――と、光哉が呟いた。
鬼の少女は男の後ろを歩いていただけなので彼が何を探していたのかは知らなかった。
しかし――。
『……ここは――ッ』
少女は思わず息を呑んだ。
目の前に立つのは一つの民家だった。
どうやら空き家らしい、ボロボロで今にもつぶれそうな感じだ。
取り壊されていないのは、その労力がそれと見合わなかったからだろうか。残っているのが奇跡の様なものだった。
『入るか?』
その時、初めて男は少女へと意見を聞いてきた。
今まで引っ張りまわすだけだったのにかかわらず、その時だけ少女へと聞いたのだ。
『……』
少女は答えない。しかしその足は自然と民家へとむかって歩いていた。
民家の間取りは大きくはなかった。
家具も多くないし、何より汚れていて埃臭い。
だというのに、少女は一部屋一部屋、ゆっくりと回っている。
ただ見ているだけだった。物と手にする様子もなく、何か言うわけでもない。
気づけば光哉は少女の側にいなかった。
少女がそのことに気付いた時――逃げられる、と正直思った。
『……何、なのよ……』
けれど少女は黙って、民家の外へと足を向けた。
光哉は民家の前で少女を待っているようだった。
それを見て、ひどくほっとした。それでもそれを顔に出さなかったのは、それを認めたくないからかもしれない。
『どうだった?』
いつものおちゃらけた馬鹿な姿はそこにはなかった。
むしろ少し不安そうにしているその顔を見て、少女の方が不安を覚えたほどだった。
『分からないわ。わかない……けど、なんか……』
『座って話そうか』
光哉は縁側を指さすと、自身もそこへ腰を下ろした。
そして――光哉は少女が抱いている疑問を語り始めた。
『この家に住んでいた人は、5年前に亡くなったらしい。どうやら殺人らしくてな、はっきりとしないのはそこん死体がなかったからだと言っていた。まぁ十中八九鬼の仕業だろう。住んでたものは綺麗に食われたんだろうさ。肉片すら見つからなかったらしいからな』
光哉はそれに怒りを抱いている様子はない。
ただ淡々と事実を述べているようだった。
『もう少し昔の話をするとな、ここには一組の夫婦が住んでいたらしい。仲が良く、いつも笑顔を絶やさないそんな夫婦だったと、近隣の人は言っていた。今でも覚えてるってことは相当なんだろうな。……けど、どうやらその夫婦には悩みがあったんだ、どうやら子供に恵まれなかったっぽい』
――まぁやることはやっていたらしいが、と言葉を濁したのは少女の見た目が十代前半程度にしか見えないからだろうか。
鬼の自分に精神年齢など関係ないと言いたかったがそんなことで話を止める必要もない。
『夫婦は養子をとることを決意したらしい。その子供は
『……』
『仲良く四人で暮らしてる光景は今でも覚えているといっていたかな。その両親は本当に子供を可愛いがっていたと、近隣でも有名なほどだった。だが、今の通りそれはおわりを迎えた。最初は八年前だった……』
そう言って、光哉は少し言葉を止めた。
自分で語っていて、それを言いたくなさそうにするなど、本当に情けない男だった。
ただ、その時少女は、少しそう思ってくれたことに喜びを感じていた。
『はやり病にご夫婦がかかってな、半年もせずに亡くなってしまったんだ。突然の事だった。子供たちひどく混乱しただろう。恐らくまだお互いに十歳前後だっただろうに……。。そこから二人は、兄妹で暮らすことを余儀なくされた。けど勿論それも楽じゃない。最初こそ身の回りの物を売って生活していたが、それもいずれ尽きる』
『……』
『兄は働きだした。でも、妹を守ろうと無理したのかもしれないな。一年もせず体に悪くしてしまったんだ。両親を亡くし、兄も寝床から動けない。そんな中、妹は動くしかなかった。必死に働いていたらしい。そのお金は兄の病状のためとほとんど薬へと変わったらしいが、それに不満はなかったようだと、当時を知っている人は言っていたな』
『そ、それで……』
鬼の少女はつづきを求めた。
『ああ、おかげで兄は体調を戻していった。少女の努力が報われた瞬間だな。けど、どうやらハッピーエンドでは終わらなかった。今度は妹が倒れてしまったらしい。完全な栄養不足だが、一年以上動けなかった兄には妹をどうすることもできなかった』
周りの人も不憫に思っただろう。
泣きながら戸を叩く兄の姿を、今でも覚えてると彼らは言っていた。
もう少し自分たちに余裕があれば……いや、なくてもすこしぐらいながらと、後悔している人も少なくない。
『ここからは俺の予想だが――』
そう言って、光哉は少女へと顔を向けた。
『妹は鬼になったんじゃないかと思う』
『――ッ』
――ドクン、と。心臓が高鳴るのを少女は感じた。
『つ、つまり私がお兄ちゃんを……』
そう言葉にして、「お兄ちゃん」と自然に口にしていることに気づく。
頭が割れそうに痛かった。忘れていたものを思い出そうと、脳みそをかき回されているようだった。
『はぁ……はぁ――『落ち着け』……ぇ?』
『……まだ話は終わってない』
思わず叫び出そうとする少女を、光哉は抱き寄せた。
『確かに、鬼になった妹はお前だろう。そして、鬼になった時お前は兄を食った。けどな……それだけが真実じゃない』
『どういう……』
『当時の人がな、怪しい男と話している兄を見たと言っていた。当時はそいつが殺人犯だと、騒ぎも起きたぐらいだから確実だ』
『それがどうしたのよ。そんなの関係ないじゃ――『つまり』……』
光哉はことばを遮り。
『つまりさ、妹を鬼にしたのはお前の兄さんだってことだ』
『――ッ!?』
言っている意味が分からなかった。そもそも鬼を作れるのは無惨のみだろうと。
そんな少女の疑問に答えるように光哉は続けた。
『怪しい男とは恐らく無惨だろう。そもそも、妹だけ鬼にする必要はない、あいつなら恐らく二人とも鬼にする。けどしなかった。なんでだと思う?』
『……、』
『きっと妹は助からないと、兄は知っていたんだろうな。無惨にお願いしたのは妹を鬼にしてでも助けること、そして、自分も鬼にならなかったことを考えると……まぁそうだな、有力なのは自分を食べさせるためだろう』
『――!!』
『まぁ無惨が人間のその願いを受け入れるかどうかは疑問だが、事実こうなったのなら、何かしらの思わくがあって、兄を鬼にしなかったんだろうな。単純に妹に食われる兄を見たかったのかもしれないし……』
言葉が出なかった。推論にしても馬鹿馬鹿しい。自分を食べさせる人間なんているはずがない。ましてや妹をなん――ッ。
そこまで思考して、少女は気づいた。
『まさか――ッ、そんな……!』
『恐らく、兄は鬼と言う者を聞いたんだろうな。人を食べる、食べなければ生きられない生き物だと。妹を治すためとは言え、兄は葛藤したはずだ。だから選んだ。最初に起きる飢餓状態、その時に
つまり信じていた。
妹は人の心を取り戻せるはずだと。
それでも自分も鬼にならなかったのは、最悪、妹に罪をさせたくないと、そんな思いからだったのかもしれない。
『どこまで知って――『馬鹿じゃない』……』
少女は言った。
『鬼は人を食べないと生きていけないのよ? 人の心を戻したところでなんだっていうのよ!! 結局生きられないじゃない。それに妹に兄を殺させるなんて……そ、そんなの……うっ……うッ――』
ぐっと、少女は光哉の服を引っ張って、
『うわああああああああああああああああああああああああん!! ごめんなさああい!! お兄ちゃん、ごめんなさああああい!!』
我慢していたものがふきだしたように、少女は声を上げて泣いていた。
――ずっと。
――ずっと。
少女は記憶を思い出したわけではなかった。
ただ、止まらないのだ。止められないのだ。
心の叫びが、目から零れ落ちるそれが、我慢することができなかった。
光哉は何も言わなかった。
だからただ――。
ただ黙って、少女が泣きやむまでその場を動かなかった。
……。
……。
泣きやんだ少女は、光哉に向かって初めに言った。
『もう人は食べたくないわ』
『……』
光哉はそれを聞いて困惑以外の感情がうかばなかった。
『そ、その……一応お礼は言っておくわ。記憶、お兄ちゃんのこと思い出させてくれて……』
俯いて言うその姿を見て、いったい誰だよとツッコミを入れたくなった。
今まで一言目には「死ね」やら「殺す」といい、食事をもらうときぐらいしか言葉をかわさなかった者のセリフとは思えなかったからだ。
それでも、光哉はむしろ自分が感謝したいぐらいだと、心の中で思った。
光哉にとってもここが最後の砦だったのだ。
鬼が変われるのか変われないのか――その不安は、言葉では表せることはないだろう。
『で、どうする? 流石にほおっておくことはできないし、したくないんだが?』
『……何が言いたいの?』
『あーだからさ、一応俺も鬼狩り協力者だから、放置は難しいと言いますか』
『はぁ? そんなの当たり前じゃない。今までと同じでしょ? いまさら何言ってんのよ……』
光哉は頭をガシガシとかいて、少女の前に膝をついた。
『……?』
『俺は、お前に感謝してるんだ。だから、お前の自由を縛ることになるのは非常に申し訳ないと思ってる』
『ちょっ急に何を……!』
光哉は、少女の手をとって――。
『俺にお前を守らせてくれないか? 兄の代わりに、今度は俺がお前を守ろう。傷に一つだってつけさせやしないと誓うから』
『――!?』
少女は困惑した。
この馬鹿はいったい何を言い出しているのだろうと。
『と、とととと当然でしょ!? 私鬼狩りとなんて戦えないし、ちゃ、ちゃんと守ってくれないと!?』
慌てふためく少女のそれに、光哉はただ笑顔を向けて、
『わかった。任せろ』
そう断言して見せた。
光哉は、ふと何かを思い出したような顔をして。
『そう言えば名前、夢亜っていうらしいな。今度からは名前で呼ぶけどいいか?』
『い、いいけど……!?』
『確かお前の兄さんの名前が――『それはいいわ』……?』
少女は「いいのか?」と聞く光哉の顔を真っすぐに見て答えた。
『それは自分で思い出したいの、それに、い、今はあなたが……その……』
『――?』
『だ、だって……光哉がお兄ちゃんになってくれるって言ったじゃない!』
『……は?』
――え? どゆこと? と頭に疑問を浮かべる光哉を置いてけぼりにするように少女―夢亜は続けた。
『お兄ちゃんの代わりになってくれるって……え、違うの?』
目を潤ませながらそう聞いてくる夢亜に対して、光哉は違うよとは答えられなかった。
しかし光哉も見た目は年下とは言え、中身年上のお姉さんに「お兄ちゃん」と呼ばせるのはいかがなものかと……。
『まぁいいか』
そう言って歩き出す光哉に、夢亜は笑顔を見せてた。
結局、今まで光哉がやってきたことはおままごと以下の何かだったのだろう。
努力をしない。すぐに諦める。そんな事ではやはり救えないに違いなかった。
今回初めて本気になって、真剣に考えた。
錆兎の件で原作を変えられると浮かれていたあの頃の自分ではないのだ。
(けど、まだ足りないな……)
それでも、助けられたのは隣にいる一人の鬼だけ。こんな事で理想を語るなど片腹痛い。
少女の鬼としての罪だって、まだ消えてすらいないのだから。
だから、これからはもっと――。
『お兄ちゃん!』
『なんだよ……』
『呼んだだけよっ』
光哉の後ろへ、イヤイヤついていく少女の姿はそこになかった。
意味のない会話をして、無意識に笑顔を振りまいて――。
二人は肩を寄せながら――。
それは本当の兄弟のように、手を握りながら歩いていた。
+++++
光哉が竈門禰豆子が他の鬼にはない、特別な鬼である理由を想像するならば、竈門炭治郎がいたかいないかだと思っている。
それはつまり、その鬼に対して、
禰豆子の鬼としての進化を見てみると、
勿論、これが全く的外れで、もっと他の要因があったのかもしれない。光哉が知らないだけでこれから原作で語られる可能性は十分にあった。
それでも光哉がそうであったらいいなと思ったのは、それが綺麗だったからなのだ。
兄の必死な思いに、禰豆子の人間の心が鬼に勝ってそれにこたえる。
もし、そんな兄妹愛が、絆が、人の心を取り戻した要因なのだとしたら――
――それはきっと、美しいに違いない、と。
だから、まずはこっから始めよう。
産屋敷光哉が鬼が人に戻れると心底信じよう。
それだけでは足りないなら、もっと考えて行動しよう。
妄想だと断じられてもいい、行ないを否定されることもあるだろう。
それでも――。
信じ続けるとは可能のはずだ。
光哉のその勝手な思いに、その行動に、答えてくれる鬼――夢亜がいた。
だからまずは、彼女の手を離さないように、
今日も一歩進んでいこうと。
感想欄にて、禰豆子が特別な鬼である理由が、無惨からの大量の血プラスヒノカミカグラの言えの子だから、それ以外の鬼が特別な鬼になるのはおかしいのでは、と言う意見をいただきました。
その意見に関して言えば、推論でしかなく、私と解釈が違うので、この作品では受け入れてほしいと思っています。
ただ、私としてはその推論であってほしくないと思っています。
何故なら、それだと竈門炭治郎がいようがいまいが、禰豆子は結局太陽を克服しませんかそれでは?
竈門炭治郎の禰豆子への思いなど関係ありません。道中の旅も関係ありません。
その二つさえあれば禰豆子は勝手に人間の心を取り戻して太陽を克服することになりますよ? ほっといても禰豆子は特別の鬼になるでしょう。
感動も思いも何にもない、システムによって禰豆子は特別なのだと、私はそうあってほしくないと思っています。
まぁ願望ですけどね笑
太陽を克服する資質。と言う見方もありますが、このような根拠のないことをいくら言っても読者である私たちには想像は超えませんからね。
私は本作品を成立させるために、そう言ったのはあえて切り捨てました(笑)
受け入れてもらえると助かります。
本分ではこれから後数話先かな? で書いてありますが、禰豆子が太陽を克服した理由は人間でありたいという想いなのでは、と。主人公が想像する書き方をしてあります。(想像でそう思ってるだけ)
珠世が人の心を取り戻して、進化をやめたのは鬼として人を殺してしまったがために人だと認められない故に。
愈史郎は珠世を守るためにむしろ鬼でありたいと思ってそうだから。
二人はそれ以上にはならなかったのではと思考しました。
浅草で鬼にされた人も、禰豆子の血で作った薬もあるのでしょうが、妻の思いも影響しているのでは……というかそうあってほしいなと思います。
要は願望。気持ちの強さが、鬼を進化させる要因なのではと考えて作ってます。
なんかその方がジャンプっぽいし。
二次創作では作者の解釈で物語が進んでいきます。だからこそ私は、その根拠をしっかり描いていきたいと考えています。
ですから本当に! 本当にそれを書くまで待って下さい!!
これでは伏線も書けません。
一話一話で疑問があるのもわかりますが、『伏線』や『思わせぶりな発言』に毎回疑問を提示されたら物語が書けません。
お願いですから待ってください。
一話の伏線を十何話で回収するなども平気でします。
独自解釈の根拠を、物語のイベントごと数話かけて書いていくことも絶対にあります。
読者の皆様には申し訳ないのですがもう少し時間をいただけると幸いです。
どうかご理解のほどよろしくお願いします。