僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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一つの終止符

新たに聞こえた声に、全員の視線が声のした方向に向けられた

 

そこには、何時もの服装の魔王と神王が居た

 

「神王陛下、魔王陛下……」

 

二人の姿を見て、明久が驚いていると二人は笑顔を浮かべて

 

「やあ、明久君。見事な勝利だったよ」

 

「おうよ。さすがは、初代合同近衛部隊隊長だな」

 

と言いながら、フィールドに入ってきた

 

「もったいなきお言葉です……」

 

二人の言葉を聞いた明久は、深々と頭を下げた

 

そして、フィールドに上がった二人は一回稟達を見回してから姫路に視線を向けると

 

「さて、君が姫路瑞希ちゃんだよね?」

 

「おめぇさんに、ちょいとばかし話があるんだ。付いて来てくれるか?」

 

二人が声を掛けると、姫路は無言でうなだれた

 

「君の気持ちは立派だがね、やり方を間違えたんだよ」

 

「おめぇさんのやった事は、到底許されることじゃねぇんだ」

 

二人のその言葉の直後、ドアから数人の全身黒装備の一団が入ってきた

 

シアとネリネは、その黒装備部隊を知っていた

 

通称、黒の宣告部隊(トリアージ・ブラックラベル)

 

この部隊に捕まった者は、二度と太陽の光を浴びることは無いとすら言われている

 

別名は処刑部隊(エクスキューショナーズ)とすら呼ばれている

 

すると、明久が片膝を突き頭を下げて

 

「魔王陛下、神王陛下。頼みがあります」

 

と言い出した

 

明久の言葉を聞いて、二人は視線を向けた

 

「なんだい?」

 

「言ってみな」

 

二人が許可すると、明久は右拳を地面に突いて

 

「彼女に対しての処罰の減刑を、伏して願います」

 

と言った

 

明久の言葉を聞いて、稟達と魔王と神王の二人は目を見開いた

 

まさか、被害者の明久がそう言うとは思ってなかったからだ

 

「理由を聞いてもいいかな?」

 

魔王が問い掛けると、明久は視線を魔王に向けて

 

「確かに、彼女はやり方を間違えたかもしれません……ですが、誰かの為にという気持ちに、嘘偽りは無かった筈です……」

 

明久がそう言うと、稟達は心中で

 

(ああ、明久らしいな……)

 

と思った

 

明久は例え自身が傷ついても、相手を笑顔で許した

 

一部の記憶は戻ったが、まだ記憶の大半は失われている

 

それでも、明久の本質は変わっていなかった

 

それが、稟達には嬉しかった

 

明久の言葉を聞いて、魔王と神王は嘆息して

 

「まったく……明久君は本当に優しいね」

 

「だな。だが、それが明久の一番の宝だ」

 

二人はそう言うと、一人の黒装備隊員を呼び寄せて何かを耳打ちした

 

聞き終わった黒装備隊員は、無言で頷いた

 

すると、二人は明久に視線を向けて

 

「明久の嘆願。確かに聞き受けた」

 

「だけど、彼女がこの学園に戻ることは二度とないだろうね」

 

二人はそう言うと、黒装備部隊を伴って姫路を連れていった

 

その後、戦後対談が進みFクラスの設備はダンボールと御座に変わった

 

そして、各々の命令権の話だが

 

優子 秀吉に部活を週一回休んでの勉強を命令(優子監督のもと)

 

佐藤美穂 別に無いので保留

 

ムッツリーニ 佐藤美穂と同じく、保留

 

そして明久だが、明久の命令相手である姫路が居なくなったので、明久は命令権を翔子に譲渡

 

その結果

 

翔子 雄二に対して、自身の命令に逆らわないことを命令

 

その直後、雄二を引きずってデート(雄二の手足に鎖付き手錠を付けて)へと向かった

 

そして、Fクラスは西村による平日毎日三時間の補習が課せられた

 

そして、数十分後、稟達は下校していた

 

その時だった

 

「ああ、そうだ…………稟、楓ちゃん、桜ちゃん、興兄、智姉」

 

明久が突如、稟達をそう呼んだ

 

今明久が呼んだ呼び方は、昔の明久の呼び方である

 

その呼び方を聞いて、稟達は勢い良く振り向いた

 

シアとネリネも驚いている

 

そんな全員の様子に、明久は苦笑いを浮かべて頬を掻いて

 

「まだ完全じゃないが、少し思い出したって言ったでしょ?」

 

「明久、お前……」

 

「アキくん……」

 

明久の言葉を聞いて、稟達は目を見開いて驚いていた

 

そして、明久は一回深呼吸すると全員を見据えて

 

「五年も待たせてすまない……だから、これだけは言わせて……」

 

明久はそこで一旦区切ると、はにかんだ笑みを浮かべて

 

「ただいま、皆……」

 

明久がそう言うと、全員は感極まったように涙を浮かべて

 

「「「「「お帰り(なさい)! 明久(アキくん)!!」」」」」

 

と言いながら、抱き着いた

 

 

こうして、一人の少年が背負った悲しみの連鎖は止まった

 

だが、まだ全てが戻ったわけではない

 

全てを取り戻して、自身の幸せを掴むのはいつになるのか

 

それは、まさしく神のみぞ知る(神王じゃないよ?)


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