準備
「なに? 魔王神王反対派に不穏な動きだと?」
彼、吉井明久は部下の一人からの報告を聞いて眉をひそめた
「はい……詳しくは未だに掴めてませんが、この人物と積極的に接触しているようです」
神族の部下の一人が、そう言って一枚の写真を出した
そこに写っているのは、メガネを掛けた白髪の男だった
「こいつは……竹原教頭……」
その人物は、文月学園の竹原教頭だった
「その男は、かなりの金額を受け取っているみたいです」
部下からの報告を聞いて、明久は顎に手を当てて数秒間黙考すると
「こいつと反派の奴らの監視、厳しく頼む。そのためのフォローも回す」
「はっ!」
明久の指示を聞いて、部下は敬礼すると部屋から退出した
そして、一人になった明久は険しい表情を浮かべて
「何をするのか分からないが……させんよ」
と言った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、Aクラス教室
「……という訳で、我々はFクラスと共同で模擬店を出します」
「「「「「はい!」」」」」
翔子の言葉を聞いて、Aクラスの生徒達は素直に頷いたが
「ちくしょう……」
翔子の隣に居た雄二は、うなだれていた
なぜ、雄二がうなだれているのか
理由として語るならば
1、翔子が雄二に合同出店を提案
2、雄二は興味ないからと拒否
3、翔子は先日の勝利による命令権を発動
4、雄二は命令なんか無効だと反論
5、翔子は、一回だけとは言ってないと明言
6、高橋女史が肯定し、合同出店するしかないと説明した
ということである
確かに、思い出してみれば、翔子は雄二に命令した時に回数は明言していなかった
今回の合同出店は、そこを突く形での決定である
ちなみに、Fクラスの男子達はAクラスとの合同出店に大喜びであった
理由としてはまず、Aクラスの女子達と交流できるからなのと、文化祭の模擬店にて得た収入で教室設備の改善が許可されたからである
Fクラスに置ける男女比率は、男子がほとんどである
そして、教室の設備ははっきり言ってヒドい
壁と窓はひび割れ、畳は半分以上が腐っており、机として使っているちゃぶ台は穴が空いていたりしていた
施設は学校側に報告すれば、直してもらえるだろう
だが、設備に関しては元々学校側の取り決めであるので変更はしてもらえない
しかし、文化祭で得た収入での設備の向上は許可されていたのだ
ゆえに、Fクラス男子達としては願ってもない提案《命令》だったのだ
なお、合同出店の内容は執事&メイド喫茶である
そして、雄二と翔子は合同出店の許可を得るために学園長室へと向かった
その間、明久達は料理が得意なメンバーを集めてどんなメニューにしようか話し合っていた
「やっぱり、加熱時間が短いのにしたほうがいいよね……」
「そうなりますと、あまり手が掛かる料理は控えるべきですね」
「だったら、ピラフなんてどうかな?」
「……最適だな」
といったように、明久達は議論した
ちなみに、稟としては康太が料理上手なことに驚いた
そのことを聞いたら、康太曰わく
『……この程度、一般常識』
とのことだった
しかし、稟は
(絶対に、エロが関わってるよなぁ……)
と、内心で溜め息を吐いた
土屋康太という男は、エロが関わると不可能を可能にするのだ
そして、明久達が議論を展開させていたら、雄二と翔子が帰ってきた
「……許可は貰えた」
翔子がVサインと共に報告し、雄二はうなだれ気味で
「施設に関しては、交換条件で直してもらえることになった」
と、告げた
その交換条件というのが、文化祭にて行われる試験召喚獣大会に於ける優勝である
しかも、組むのはFクラスの生徒のみとのこと
そこで雄二は相棒に康太を指名し、康太も快諾した
そして、明久達の議論の甲斐もあって出す料理は決まり、内装は専門の業者と話し合って決めた
問題だった執事服とメイド服は何を思ったのか、魔王が人数分提供
動作に関しては、魔王の奥さんであるセージさんと執事のバーグさん
そして、明久がギリギリまで指導した
こうして、準備期間はあっという間に過ぎ去り、文化祭こと清涼祭当日となった
こうして、波乱塗れの清涼祭が始まるのであった