僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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ちょっとばかり、残酷な描写があります


ローラー作戦

打ち上げが終わって二日後、稟達は魔王から文化祭中に来た少女

 

プリムラのことについて、説明を受けていた

 

だが、その部屋の中に明久の姿は無かった

 

そのことが気になり、桜が

 

「あの、アキくんは……?」

 

と問い掛けたら、魔王は朗らかな笑みを浮かべたまま

 

「今、明久くんを含めた近衛はローラー作戦の真っ最中でね。悪いんだけど、詳細は教えられないんだ」

 

と告げた

 

「ローラー作戦?」

 

稟達が首を傾げていると、魔王は頷いて

 

「そう。文化祭の時に、反神ちゃん、私派の連中が元教頭に内通して事件を起こしていたのが分かってね」

 

と語った

 

「反神王魔王派なんて居るんですか……」

 

魔王の説明を聞いて、楓が驚きで目を丸くしながら問い掛けた

 

「ああ……人族など、支配するべきだ。と考えている連中でね……和平路線の私達と対立している連中さ」

 

魔王はそこで一区切り付けると、プリムラの説明を再開させた

 

その後、芙蓉家でプリムラを受け入れる事が決まり、稟達は解散した

 

それから数時間後、明久達近衛部隊はとある大きな屋敷を包囲していた

 

「ここで最後だな?」

 

明久が問い掛けると、背後に居た瑠璃とフリージアの二人は頷き

 

「はい、間違いありません」

 

「ここが、奴らの最大級の拠点になります」

 

と報告した

 

二人の報告を聞いて、明久は頷き

 

「よし、第7と第8、第9小隊は遮音と遮断、人払いの結界を展開しろ。第1から第6各小隊は突入。今日で、光陽(この)町に居る反対派を殲滅するぞ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

明久の号令を聞いて、各小隊隊長は敬礼した

 

そして数分後、明久達近衛部隊はその屋敷へと突入した

 

小一時間程経つと、反対派の戦力は半壊

 

明久達はその屋敷の半分を制圧した

 

しかも、制圧速度は落ちることなく、反対派の戦力は分刻みで減っていった

 

その速度は、反対派にとっては、まさに悪夢のようだった

 

千人近く居た戦力が、僅か一時間足らずで半壊し、拠点も半分が制圧された

 

これを、悪夢と言わずに何と言うのか

 

「貴様らも神族と魔族だろ! なぜ、人族のガキなんかに従う!?」

 

「恥ずかしくないのか!?」

 

反対派の男達がそう言うと、近衛部隊の隊員達は一笑に付した

 

「我等近衛、陛下方と隊長に忠誠を誓った者」

 

「隊長が居てくれるからこそ、我等近衛は、今ここに居る!」

 

隊員達はそう言うと、反対派の戦闘員達を次々と無力化していった

 

その様子はもはや、一方的な蹂躙とも呼べる光景だった

 

反対派の攻撃は当たらず、近衛部隊は無人の荒野を駆けるが如き速度で次々と倒していく

 

だが、彼らは一般隊員に過ぎない

 

隊長格は、もはや神業と呼べる技を身に付けていた

 

ある神族の隊長は斬撃を飛ばし、ある魔族の隊長は壁の向こう側に居る相手を魔法で吹き飛ばす

 

またある隊長は、相手が放った魔法を魔力刀で切り裂いた

 

だが、そんな彼らも足下に及ばないのが、明久と瑠璃、そしてフリージアの三人である

 

明久は小銃の銃弾すら切り落とし、相手の認識外の速度で接近する

 

瑠璃は魔力刀による戦闘力に於いては、他の追随を許さず、隠密能力と合わせて、静かなる刃と呼ばれている

 

フリージアは魔法による戦闘は近衛随一で、魔法を遠隔発動し相手を無力化できる

 

そんなフリージアは、ソーサリー・エンプレスと呼ばれている

 

そんな三人率いる近衛部隊が突入してきた時点で、反対派は逃げるのが正解だったのだ

 

だが遮断の結界によって、逃走すら叶わない

 

もはや、反対派は絶望的な消耗戦を強いられていた

 

そして、近衛部隊が突入して二時間もしない内に九割が制圧されて、明久達は反対派を追い詰めた

 

「諦めろ……もはや、逆転は不可能だ」

 

明久がそう勧告すると、一人の魔族がギリッと歯軋りして明久を睨みつけて

 

「こうなったら……てめぇらも道連れだぁぁ!!」

 

とある物をその手に握った

 

「バカ、よせ!?」

 

そいつが持った物に気づいて、もう一人が止めようとしたが、時すでに遅く、そいつはソレを投げた

 

それは、六角形の宝石のような代物だった

 

明久はそれを見て、目を見開いた

 

「S級危険魔道具だと!?」

 

相手が投げたソレの名前は、ディメンジョン・イーター

 

次元喰らいの魔道具だった

 

なお、竹原が使おうとした魔道具はワームホール

 

次元に穴を開けて、どこかに飛ばすという代物である

 

系統としては、この二つは非常に近い

 

だが危険度としては、ディメンジョン・イーターのほうが段違いに高い

 

ディメンジョン・イーターの効果範囲は、半径数十メートル

 

その場に居る全員が、余裕で消え去ることになる

 

男が投げた次の瞬間、明久は駆け出していた

 

ディメンジョン・イーターは既に発動プロセスに入っており、斬るのも間に合わない

 

だから明久は、右手でそれを掴むと右手毎魔力で覆った

 

正直言えば、焼け石に水かもしれない

 

だが明久には、犠牲を無くすにはそれしか思い浮かばなかった

 

明久が掴んで魔力で覆ったその直後、ディメンジョン・イーターは膨大な光を放って、爆発が起きた

 

「隊長!?」

 

「総隊長!!」

 

隊員達の心配そうな声が響き、反対派の連中は爆発が起きた場所を指差しながら

 

「クハハハハ! あいつバカだぜ!」

 

「自分から死にやがった!」

 

と笑った

 

だが次の瞬間、その反対派の生き残りはフリージアと瑠璃によって全滅した

 

二人は反対派を無力化したことを確認すると、視線を爆発があった場所に向けて

 

「隊長!」

 

「返事をしてください。隊長!!」

 

と明久を呼んだ

 

「騒ぐな……無事だ……」

 

明久の声が聞こえ、爆煙の間に明久の姿を見て、二人は安堵した

 

だが、ビシャッという音を聞いて、二人は嫌な予感がした

 

まるで、大量の水分が一気に零れたような音だった

 

そして、爆煙の中から明久が姿を見せると二人は息を呑んだ

 

「隊長!!」

 

明久の右腕は、肘から無くなっていた

 

「大丈夫だ……」

 

明久はそう言うが、瑠璃とフリージアは顔を蒼白にしながら駆け寄り

 

「大丈夫なわけがありません!」

 

「今すぐ、医療班を呼びます!」

 

と声を上げた

 

「それよりも……反対派の連中はどうした……」

 

明久が問い掛けると、二人は明久を支えながら

 

「反対派ならば、先ほど全滅しました!」

 

「ですから、隊長は治療を受けてください!」

 

と言って、隊員達に拘束するように命じて、二人は明久を支えながら脱出した


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