僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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近衛の本気

明久達がジェットコースターに乗っている時、稟と楓の二人は昼食を終えて、次のアトラクションへと向かっていた

 

しかしそんな二人を、着ぐるみを筆頭にした数人の係員

 

島田と残ったFクラス男子達が追い掛けていた

 

もちろんのこと、こいつらの目的は稟への攻撃である

 

稟と楓は気づかずに、マップを見ながら次のアトラクションへと向かっていた

 

そして、距離が残り数メートルになった時だった

 

先頭を走っていた島田が突如として、何かにぶつかった、ゴンという音を立てて倒れた

 

その異様な光景を見て、Fクラス男子達は足を止めた

 

すると、頭を抱えて悶絶していた島田が、着ぐるみの頭を投げ捨てながら立ち上がって

 

「もう! なんなのよ、これは!」

 

と苛立った様子で叫びながら、目の前に向かって拳を繰り出した

 

すると、再びゴンっという音が響いた

 

その音の鈍さから、かなり分厚い壁だと思われる

 

すると、一人の男子が恐る恐ると島田が叩いている辺りに手を伸ばした

 

そして分かったのは、そこに透明な壁のような物が有るということだった

 

「まさか、結界……? 空間隔絶系の結界だってのか!?」

 

「なんだと!?」

 

「マジかよ!」

 

一人の叫びを聞いて、他の男子達は次々と結界を叩き始めたが、結界はビクともしない

 

「ふざけんな! ここから出せよ!」

 

「俺達は土見を倒さないといけないんだよ!」

 

「出さないとヒドいわよ!」

 

男子達や島田が口々に叫ぶが、もちろんのこと開くわけがない

 

そして、彼らが無防備だと思っていた稟は、もちろん護衛が居る

 

明久以外に、常に一個小隊、三十人が周囲で息を殺して警護している

 

事実を述べると、ほとんどの場合は明久だけで事足りる

 

だが、幾ら明久と言えど、常に守れる訳ではない

 

今日みたいに休暇の時や、何かしらの用事の際には離れる

 

そういう時に彼らが守っており、最大で一個大隊

 

約三百人が展開される

 

そしてそれだけ居れば、大概の魔法は発動出来る

 

今使っている空間隔絶系結界や、大規模殲滅魔法、儀式魔法などがそれだ

 

彼らは個にして全であり、全にして個である

 

明久を頂点にしながらも、ある程度ならば、各個人判断による行動も許されている

 

故に、一見無秩序のようでありながら、実際は非常に統率が取られており、まるで無人の広野を駆けるように戦場を駆け巡り、牙を剥く襲撃者達を一切の呵責もなく狩る

 

故に、一部からは狩人とも呼ばれている

 

だが、全員が現神王と魔王、明久に忠誠を誓っており、その命令が無いと基本は動かない

 

そして一度動き出したら、命令内容を完遂するまで決して止まらない

 

そして、任務を完遂するためならば、手段を問わない

 

そして今回の命令内容は、《稟の安全の確保》だ

 

そのために、瑠璃とフリージアは魔王に申請して、とある場所を空けてもらった

 

そこは通称で《魔界のアルカトラズ》と呼ばれている監獄である

 

島田とFクラス男子達は、日付が変わるまで、その監獄の一室で過ごすことになる

 

「総員、準備はいいですね?」

 

瑠璃が通信越しに隊員達に問い掛けると

 

『第一小隊、準備よし』

 

『第二小隊、同じく』

 

『第三小隊、準備完了しました』

 

と各小隊から返答がきた

 

瑠璃は各小隊の返答を聞いてから、札を取り出して

 

「では、飛ばします。各自、準備を」

 

と命令を下した

 

『承知!』

 

瑠璃の命令を聞いて、隊員達から斉唱が帰ってきた

 

この時、島田やFクラス男子達は気付いていなかったが、結界の内側

 

彼らの足下には、円形に札が配置されており、それが薄く発光していた

 

そして数秒後、瑠璃は札を持った腕を高々と掲げて

 

「転送!」

 

と叫んだ

 

その直後、島田とFクラス男子達の姿は結界内部から消えた

 

そして、誰も残ってないのを確認すると

 

「第四から第六小隊、結界を解いてください。第七から第九小隊、稟殿達に異常は?」

 

『了解、解きます!』

 

『異常ありません!』

 

瑠璃は報告を聞くと、数瞬考えてから

 

「第七から第九小隊は引き続き護衛を、第一から第三小隊は先ほど要請があった、修復に向かってください。他は散開し警戒態勢を維持。稟殿達が帰るまで、一切気を抜かないように」

 

『承知!』

 

瑠璃は隊員達の斉唱を聞くと、立ち上がって

 

「これで、当面は大丈夫ですね……」

 

と呟くと、胸元で両手を軽く握りあわせた

 

すると、背後にフリージアが現れて

 

「隊長が気になる?」

 

と問い掛けた

 

すると、瑠璃はビクッと震えてから

 

「い、いきなり何を!?」

 

と狼狽えるが、フリージアはフフッと微笑んでから

 

「皆気付いてるわよ、あなたが隊長を好きなことを」

 

と言ったら、瑠璃はビキッと固まって

 

「な、な、な……」

 

と顔を真っ赤にした

 

そんな瑠璃を見て、フリージアは

 

「少しは素直にならないと、出遅れるわよ」

 

と忠告して、何処かへと消えたのだった

 

その後、瑠璃はしばらく固まっていたが、しばらくするとへたり込んで

 

「気付かれてたんですか……」

 

と両手を突いたのだった


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