僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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失われた時

島田とFクラス男子達が捕まって、数分後

 

稟と楓はファンタジー系の乗り物に乗っていた

 

「うわぁ……凄いですね、稟くん!」

 

「ああ……」

 

楓が目を輝かせながら言うと、稟は同意した

 

上には妖精の人形が飛び交い、近くの岩を模したモニュメントの上にはカバの形をしたロボットが居た

 

それらを見て、楓は年相応の少女のように喜んでいる

 

稟は楓が心の底から笑っているのを、数年振りに見た

 

母親である紅葉が亡くなり、明久が行方不明になり、全ての真実を知った後、楓はまるで人形のようだった

 

なんとか稟がコミュニケーションを試みたが、それでもあまり効果は無かった

 

桜や皇夫妻が手伝ってはくれたが、それでも微々たるものだった

 

数年掛かって何とか笑顔を見せるようになったが、それでもどこか陰があった

 

だから、楓が心の底から笑っているのを見て、稟は嬉しかった

 

だが、完璧には戻っていない

 

後は、明久の記憶が完全に戻るだけなのだ

 

だが、それが何時になるのか分からない

 

しかし、必ず戻してみせる

 

「それが……俺達の役割だ……明久に押し付けちまった俺達のな……」

 

稟がそう呟くと、楓が不思議そうな表情をしながら

 

「なにか言いました、稟くん?」

 

と稟に問い掛けた

 

すると、稟はハッと我に帰って

 

「いや、独り言だ」

 

と言った

 

そうこうしている間に、どうやら終わったらしい

 

稟達が乗っていたゴンドラは、ゆっくりと速度を落として固定された

 

「どうぞ、隙間に気をつけてください」

 

係員はそう言いながら、出口を指し示した

 

稟と楓の二人は、係員の誘導に従って出口から外に出た

 

そして、次のアトラクションをマップで見ながら決めていた

 

「次はどうすっかな……」

 

「コーヒーカップなんてどうですか?」

 

楓が指差したアトラクションを見て、稟は少し考えてから

 

「よし、そこに行くか」

 

と頷いて歩き出した

 

場所は変わって、明久達

 

明久達はジェットコースターから降りると、稟達と同じようにマップを見ながら

 

「次はどこに行こうか」

 

「ふむ……そうだな……」

 

と話し合っていた

 

そして、しばらく悩んでから

 

「それじゃあ、ここに行こうよ」

 

と桜はマップの一カ所を指差した

 

明久はそこを見ると、少ししてから

 

「分かった。そこに行こう」

 

と同意した

 

そして、向かった先は……

 

「あ、明久」

 

「明久くん」

 

「む、稟と楓か」

 

「わあ、偶然だね」

 

稟達と同じコーヒーカップだった

 

そこで四人は出会うと、会話を始めた

 

「へぇー! 楓ちゃんと稟くんも来てたんだ!」

 

「はい! お父さんがチケットを暮れたので、一緒に来たんです」

 

楓と桜はキャイキャイと話し合っていたが、稟と明久は

 

「え? あの警備員達の騒ぎは、Fクラスの連中だったのか?」

 

「ああ……そちらは大丈夫だったようで、安心したよ」

 

とFクラスの騒ぎに関して話し合っていた

 

そして明久は、少し意識を広げて

 

(ふむ……第七から第九小隊か……瑠璃の采配かな?)

 

と付近に近衛部隊が展開しているのを察知した

 

(休暇が終わったら、隠密系の指導をするか……距離20で気付かれるなど、まだ甘いな)

 

明久はそう思うと、前が空いたことに気づいて

 

「空いたようだ。入ろう」

 

と促した

 

明久に促されて、稟達はアトラクションに入った

 

そして、幼なじみ四人は同じコーヒーカップに乗って回る

 

クルクルと

 

幼いころに、四人で手を繋いでたように

 

四人で草原に寝転がったように

 

それらは、今は失われた記憶

 

何時かは取り戻したい時

 

だから、幼なじみ達は決意する

 

何時か、明久の記憶という時を取り戻すと

 

そして今度は、決して一人にしないと

 

それが、今の自分達に出来ることだから……


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