僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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夏休み編
始まる夏休み


合宿が終わって数日後

明久達は、普通に下校していた

なお、覗き部隊はもれなく全員一週間の停学となった

更に、前科持ちだったFクラス男子達はペナルティが課せられた

その内容は、卒業までのボランティア

並びに食堂の使用禁止である

文月学園の食堂は券売機方式なのだが、食券を買うには生徒手帳を翳す必要がある

つまり、その券売機のデータベースのFクラス男子達のデータをブラックリスト入りすれば、食券が買えなくなるのだ

なお、生徒手帳の貸与は禁止されている

もし無くした場合は、速やかに教師に申し出るように通達されている

そして、最も処分が重かったのは清水と島田の二人である

島田は一ヶ月の停学と留年が決定

清水は無期限停学、実質の留年だった

なお、清水の復学の時期は決まっていない

 

「もうすぐ、夏休みかあ」

 

「だな……リシアンサス殿下?」

 

明久が視線を向けた先では、シアが酷く落ち込んでいた

 

「シアちゃん……夏休み補習みたいです」

 

とリンが言うと、シアは無言で定期試験の結果が書かれた紙を見せた

確かに、下部の補足の部分に

 

《夏期補講決定》

 

という文章が書かれていた

なおメンバーは、何時ものメンバープラスFクラスから、雄二、康太、麻弓=タイム、秀吉だ

そして、麻弓はもはや燃え尽きている

理由は、言わずもがな

夏期補講である

しかも、六割も

夏休みとは、一体……

すると、明久が

 

「リシアンサス殿下……お母様方から、厳しい授業を受けたのでは?」

 

「英語だけは、全員ダメなの……」

 

明久の問い掛けに、シアは落ち込んだ様子でそう言った

確かに、英語の点数が一際酷い

 

「他のは、ケアレスミスとかでダメだったみたい……うぅ……お父さんになんて言えばいいの……」

 

シアがそう言うと、リンも頷いた

ユーストマとフォーベシィは夏休みを楽しみにしており、家族旅行を計画していた

下手したら、学校に乗り込みかねない

親バカは怖いのだ

 

「それこそ、お母様方に頼めば大丈夫ですよ。サイネリア様辺りが無難ですよ」

 

「それだ!」

 

明久の提案を聞いて、シアはビシッと明久を指差した

サイネリア

ユーストマの妻の一人なのだが、その昔は《雷の女帝》と呼ばれた女傑だったのだ

その戦闘技法は近接格闘戦闘で、拳で魔法すら弾くことが出来る手練れなのだ

実を言うと、以前にユーストマは記念日を忘れていてサイネリアを怒らせてしまい、土下座外交を敢行するしかなかったのだ

サイネリアの一撃は、ユーストマですら恐れているのだ

だから何か起きれば、サイネリアを呼ぶようにすれば万事解決である

拳で

実際明久は、ユーストマが暴走した時にサイネリアを呼ぶようにしている

その時明久は、神王家の前でユーストマとフォーベシィが雑談しているのを見つけた

 

「あ、お父さん」

 

「御父様も居ますね」

 

とシアとリンが言うと、向こうも気付いたらしい

手を振ってきた

 

「やあ、お帰り皆」

 

「おう、お帰り」

 

「ただいまー」

 

「ただいま帰りました」

 

親子でそれぞれ挨拶すると、ユーストマが

 

「シア、テストの結果はどうだった?」

 

と聞いた

その質問に、シアはビクッと震えた

余りにも、タイムリーだったからだ

少しすると、シアは諦めたように紙を差し出した

ユーストマはそれを読むと、震えだして

 

「よし! 特殊部隊を呼べ! これは我が家に対する宣戦布告とみた!」

 

と声を上げた

余りにも予想通り過ぎた

シアは家に駆け込むと

 

「サイネリアお母さーん!!」

 

とサイネリアを呼んだ

そして少しすると、中からは赤髪の魔族の女性が現れて

 

「コークスクリュー!!」

 

「ごふっ!?」

 

その拳の一撃で、ユーストマを沈黙させた

サイネリアは手をパンパンと鳴らすと、稟達に笑顔で

 

「お騒がせして、ごめんなさいね」

 

と言って、ユーストマの襟首を掴んで引きずっていった

それから、数日後

夏休みに入って、三日目

 

「来たな、マー坊」

 

「そうだね、神ちゃん」

 

「とうとう来たな」

 

「来ちゃったね、神ちゃん」

 

「ようやく来たな!」

 

「そうだよ、神ちゃん! さあ、一緒に!」

 

そこまで言うと、二人は呼吸を合わせて

 

「うーみー!!」

 

と叫んで、海に駆けていった

すると、一緒に来ていた時雨亜沙が

 

「あの二人の荷物、少し離しておこうか」

 

と提案し、全員が頷いた

理由は至極単純

恥ずかしいからだ

なお、魔界と神界に海は存在しない

在るとしたら、とてつもなく広い湖である

だから、ユーストマとフォーベシィの二人はずっと海に来たがっていたのだ

そして、念願の海に来てテンションが天元突破してしまったのだ

すると、シアが

 

「お父さん! お母さん達がスイカ割りしようだって!」

 

と呼ぶと、ユーストマは駆け戻り

 

「おうよ! 幾らでも、粉砕してやらぁ!」

 

と声を上げた

スイカ割りとは粉砕するのではない

なぜ、拳を握り締める

と稟達は内心で突っ込みをしていた

すると、一人になったフォーベシィは

 

「ふむ、では私は……そこらの女性の品定めでも」

 

と呟いた

だが

 

「1、2、3!」

 

という掛け声を聞いて、顔を蒼白にした

すると、どこからかメイド服を着た女性

フォーベシィの奥さん

セージが現れて

 

「スピニング・サンダー……キーック!!」

 

とフォーベシィを蹴り飛ばした

 

「アガポっ!?」

 

蹴られたフォーベシィは、砂浜に頭から埋まった

セージはそんなフォーベシィを肩に担ぐと、何処かに去っていった

すると、リンが

 

「では、私は御父様の面倒を見てきますね」

 

と言って去った

こうして、騒がしい夏休みが始まった


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