僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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空気の重い昼休み

翌日、昼休み

 

場所 屋上

 

そこは、大変、空気が重かった

 

なお、その重い空気の中心は……

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

稟達Aクラス組と

 

「…………」

 

姫路だった

 

(ちょっと、緑葉くん! どういう状況よ!)

 

(そんなの、俺様が知りたいよ!)

 

(……空気が重すぎる!)

 

(稟達になにがあったのでしょうか……)

 

(うーん……わからないなぁ……でも、ただ事じゃないよね)

 

巻き込まれた形になった五人は、小声で話していた

 

話は数分前に遡る

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

昼休み直後

 

「くあぁぁ……ようやく、昼休みか」

 

昼休みのチャイムが鳴り、教師が出ていくと稟は背伸びした

 

すると、桜と楓が近づいてきて

 

「稟くん、お昼にしましょうか」

 

「一緒に食べよう!」

 

と言ってきた

 

稟はそれに頷くと、視線を樹に向けて

 

「樹! お前も一緒に食わないか?」

 

と声を掛けた

 

「OK、構わないよ。ついでだし、シアちゃん達も一緒でいいよね?」

 

と言った

 

既に、樹の背後にはシア、ネリネ、明久の姿があった

 

三人としては、拒否する理由がなかったので了承した

 

すると

 

「あ、私達もいいですか?」

 

「俺達も弁当だから、いいか?」

 

皇夫婦も提案してきた

 

なぜ夫婦なのかと言うと、まず智世は病弱なので入退院を繰り返した結果、現在二十歳

 

興平はそんな智世に付き合って、十八歳である

 

そして、文月学園に入ったと同時に入籍したのだ

 

ゆえに、公式的にも二人は夫婦である

 

閑話休題

 

「いいですよ。それじゃあ、いい天気だし。屋上で食べないか?」

 

と稟が問い掛けると、全員は頷いた

 

そして、屋上に到着すると、そこには

 

「おや、麻弓じゃないか」

 

「あら、緑葉くんに土見くん達」

 

麻弓=タイムを含めた、Fクラスの姿があった

 

話によると、姫路がお弁当を作り過ぎたらしく、ちょうどいいから屋上で食べようということになったらしい

 

それを聞いた樹は、一緒に食べることを提案

 

稟達も不承不承ながらも、その提案に従った

 

そして、冒頭に戻り

 

樹達が小声で話し合っていると、ドアが開きFクラス代表の坂本雄二と島田美波が現れた

 

なお、二人の腕の中にはFクラスの人数分のジュースがあった

 

どうやら、食堂で買ってきたらしい

 

「あ? 土見じゃねぇか。それに、転校生の三人も」

 

雄二は気付くと、片眉を上げた

 

そして、島田は

 

「あ! 土見! またあんたは、そんな女達と!」

 

稟に気付くと、缶を落として稟に近づいてきた

 

 

「それ以上、近づくな」

 

明久がいつの間にか抜いた魔力刀の切っ先を、喉元に突きつけていた

 

「な、なによ!」

 

「貴様からは、害意しか感じられない」

 

島田が睨みながら聞くと、明久は淡々と答えた

 

すると、雄二が島田の肩を掴んで

 

「島田、揉め事を起こすな」

 

と言った

 

「なんでよ! ウチはただ!」

 

雄二の言葉を聞いた島田は、雄二に反論するが、雄二は睨みを効かせて

 

「二度は言わないぞ?」

 

と言うと、島田は歯を食いしばって

 

「わかったわよ……」

 

稟を睨みながら下がり、姫路の隣に座った

 

それを確認すると、雄二は

 

「悪いな、土見。俺のクラスの奴が迷惑を掛けたな」

 

と謝ってきた

 

「別に構わない」

 

稟はそう簡潔に答えると、弁当を開いた

 

他のメンバーも各々、弁当を開いた

 

その中でも、一際眼を惹いたのは

 

「うわ、凄い綺麗……」

 

明久が置いた重箱式弁当だった

 

重箱の中には、バランスよくおかずが入っていて、おにぎりも綺麗に並んでいる

 

それを見た興平は

 

「なあ、この弁当って、明久が作ったのか?」

 

と聞くと、シアが頷いて

 

「うん。明久くんの腕前はね、お城のシェフも認める腕前なんだ」

 

「お父様も賞賛してました」

 

シアの言葉に続いてネリネがそう言うと、稟は

 

(そういえば、明久は昔から料理が得意だったな……)

 

と思い出した

 

すると、その光景を見ていた姫路が拳を震わせながら

 

「わ、私だって負けてません!」

 

と言って、自身の重箱を開けた

 

その重箱の中には、明久の物にも負けないほど美味しそうな料理が並んでいた

 

「おお!」

 

「これは、美味そうじゃのう」

 

「……これは中々」

 

重箱の中を見たFクラスのメンバーは、口々に賞賛していた

 

この時、ほとんどの人物は気付いてなかったが明久の鼻が僅かに動いていた

 

「そんじゃま、そろそろ食うか」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

雄二の音頭を聞いて、全員手を合わせながら言った

 

そして、自分の弁当を持ってきていた稟達は食べ始めた

 

が、Fクラスのほうは

 

「ふむ……それでは、ワシはこれを頂くかのう」

 

と言って、秀吉が手を伸ばした瞬間

 

「待った」

 

明久が、それを制止した

 

「どうしたのじゃ?」

 

「こちとら、腹がへってるんだが?」

 

秀吉と雄二がそう言うと、明久は軽く頭を下げて

 

「すまんな、すぐに終わる」

 

と言ってから、視線を姫路に向けて

 

「少し聞きたいのだが、君」

 

「……なんですか?」

 

明久が声を掛けると、姫路は不機嫌そうに顔を向けた

 

「微かにだが、これから異臭がする……何を入れた?」

 

明久が指差しながら聞くと、姫路は数秒間黙ってから

 

「隠し味として……硝酸を」

 

と答えた

 

その直後

 

ブチィ×3

 

何かが、盛大に切れる音がした

 

すると、シア、楓、桜の三人がユラリと立ち上がり

 

「硝酸を入れた……?」

 

「料理に?」

 

「科学薬品を……?」

 

お茶の間には、決して見せられない修羅のオーラを漂わせながら姫路に近づいた

 

「え、ええ……そうですけど……」

 

三人の雰囲気に、姫路も流石に恐怖したらしく、体を反らしている

 

「姫路さん……少し、向こうに行こうか」

 

「大丈夫です……O☆HA☆NA☆SHI☆はすぐに終わります……」

 

「だから、来て」

 

料理を作れる三人には、許し難い行為だった

 

「え? あの、ちょっと待ってください……お話のニュアンスが違……」

 

姫路が抗議するが、三人は無視してドアの向こうに消えた

 

そして、十数秒後

 

どこからともなく、聞き覚えのある悲鳴が聞こえた

 

この時、Fクラスのメンバーは心中で

 

(もし、文化祭とかで模擬店を出すなら、姫路だけは調理場に立たせないようにしよう……)

 

と誓っていた

 

なお、姫路が持ってきた弁当は、明久が極秘裏に処理した

 

そして、昼休みが終わる前

 

「うーむ……稟達に一体、なにがあったんだろう……」

 

「確かに、あの雰囲気は気になるのですよ」

 

「……ただ事ではない」

 

樹、麻弓、康太の三人は屋上手前の踊り場で話し合っていた

 

「手をこまねいているだけってのも、俺様の主義に反するからね……麻弓」

 

「わかってるのですよ、私も気になってきたし……土屋くん?」

 

樹が麻弓に顔を向けると、麻弓は答えてから康太に視線を向けた

 

「……俺も調べるが、条件がある」

 

「なによ……ムッツリ商会会長さん」

 

麻弓がそう問い掛けると、康太はデジタルカメラを取り出しながら

 

「……お前の写真を何枚か撮らせてくれ……お前の写真も、結構需要が高い……副会長」

 

と言った

 

ちなみに、ムッツリ商会と言うのは、彼土屋康太が開いた裏の店であり、会長の彼と副会長である麻弓が撮影した写真や彼らが作ったグッズなどを販売しているのである

 

補足ではあるが、名前の由来は土屋康太のあだ名のムッツリーニとムッツリスケベかららしい

 

そして凄いのは、ムッツリ商会が誇る情報網である

 

何でも、その気になれば、個人情報も洗いざらい曝されるとか

 

閑話休題

 

「まあ、そのくらいならいいけど……頼むわよ、会長さん」

 

「……心得た」

 

麻弓の言葉を聞いて、康太はどこかに消えた

 

「さてと、俺様も調べますかね……なにがあったのかを」

 

「私も調べるのですよ」

 

二人はそう言うと、自分のクラスへと戻っていった

 

なお、昼休み直後にFクラスはBクラスへと宣戦布告し、翌日の昼過ぎから開戦となった


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