僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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裏シア

デイジーが風邪で倒れた翌日

 

「デイジーちゃん、大丈夫だったの?」

 

とシアが明久に問い掛けた

その問い掛けに、明久は

 

「まあ、二三日休めば大丈夫かと」

 

と答えた

その直後

 

「んっ」

 

とシアが頭を押さえた

 

「殿下?」

 

「あ、だ、大丈夫っす……ちょっと、頭が痛くなっただけっす」

 

明久が心配そうに見ると、シアはそう言った

それを聞いて、明久は

 

「では、今日はお休みを」

 

と言った

今明久とシアは、二人で昼食を作っていたところだった

すると、シアは

 

「でも……」

 

と躊躇った様子だった

しかし、明久が

 

「無理して怪我したら、陛下が五月蝿くなり(心配し)ますので」

 

と忠告した

それを聞いて、シアは

 

「そうっすね……では、部屋で休みます」

 

と言って、キッチンから去った

その後、昼食時に

 

「シアはどうした?」

 

とユーストマが明久に問い掛けた

その問い掛けに対して

 

「具合が悪そうでしたから、御部屋にて休まれてるかと……」

 

と答えた

そして、明久は

 

「陛下、後程聞きたいことがあります」

 

と言った

声音は何時も通りだったが、その目は真剣そのものだった

それを見て、ユーストマは

 

「おう、わかった」

 

と頷いた

そして、昼食後

 

「それで、聞きたいことってのはなんだ?」

 

ユーストマの部屋に、明久が居た

その問い掛けに、明久は

 

「シア様の中に居る方についてです」

 

と言った

それを聞いて、ユーストマは明久を軽く睨み

 

「何時、気付いた?」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、明久は

 

「度々、シア様から普段とは違う魔力を感じていましたから……それに、時おり表に出てきて夜に徘徊していることがありますから」

 

と言った

それを聞いて、ユーストマは

 

「そうか……」

 

と言いながら、視線を落とした

そしてユーストマは、そのもう一人について語り出した

 

そもそもシアは、神族たるユーストマと魔族のサイネリアの間に産まれた子供である

本来ならば、神族と魔族の間に子供が産まれるのは天文学的確率らしい

そしてシアだが、本来だったら双子として産まれるはずだったらしい

しかし、何が起きたのかは分からないが一人娘として産まれた

それ自体はいい

しかし、シアの中にはもう一人の人格があった

その存在に、名前は無い

ユーストマ達の間では、裏シアと呼ばれている

シアが神族の面が強いのに対して、裏シアは魔族の面が強い

もしその存在が反現神王派に知られたら、シアに対する暗殺

もしくは、ユーストマに対するクーデターが起きかねない

だからユーストマは、その裏シアの存在を認めてこなかった

しかしそれは、ユーストマにとって苦肉の選択だった

本当だったら、認めたい

だが、認められない

そのジレンマに、苛まれてきていた

 

「なるほど……」

 

「俺は、どうすればいいんだ……」

 

裏シアが認められないのは、ユーストマ

神王の娘としてだ

すると、明久が

 

「なれば、養子という風にしてはいかがですか?」

 

と提案した

 

「なに?」

 

「直接の娘ではなく、そうですね……殿下によく似た捨て子を養子として受け入れる……という形です」

 

明久のその言葉を聞いて、ユーストマは

 

「確かに、それなら可能かもしれねぇが……問題は、どうやって裏シアの体を」

 

と言った

それに対して、明久が

 

「以前に、リコリス様をネリネ様に融合させたと聞きます……なれば、それの応用で行けるかと存じます。問題は消費する魔力が莫大だと思われますが、そこはプリムラ様に御協力してもらえば、充分行けるかと」

 

と言った

それを聞いて、ユーストマは

 

「そうか、その手があったか!!」

 

と声を上げた

どうやら、思い付かなかったらしい

そして明久は

 

「存在が認められないというのは、辛いですから」

 

と言って、部屋から出た

それを聞いて、ユーストマは

 

「そうだったな……おめえは、自身を悪役にしてたな……そして、生きてることを認められなかった……」

 

と呟いた

今の明久は、一度存在を否定された結果だ

裏シアの気持ちが分かるのだろう

そして、裏シアを解放する動きが始まる


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