僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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眠い……
おやすみなさい……


Aクラス対Fクラス後編 剣神の実力

「では、これより準決勝を始めます。両クラスは、選手を出してください」

 

と高橋女史が促すと、雄二は

 

「姫路、行け」

 

Fクラスの切り札を投入した

 

「はい!」

 

指名された姫路は、キッと前を見ながら立ち上がって、フィールドに入った

 

「では、僕が……」

 

姫路の姿を見て、Aクラスからは試験時次席の久保がフィールドに上がろうとした

 

だが、それより先に

 

「吉井くん! 出てきてください!」

 

姫路は声高に、明久を指名した

 

指名された明久は、閉じていた目をゆっくりと開き

 

「やれやれ……ご指名とはな……」

 

億劫そうに呟くと、フィールドに上がった

 

すると、姫路は明久を睨み付けて

 

「吉井くん。あなたが居たら、楓ちゃんが笑わなくなるんです。ですから、あなたを倒して、この学園から追い出します!」

 

と指差しながら、断言した

 

姫路の言葉を聞いて、稟と興平は思わず立ち上がろうとした

 

だが

 

「二人とも、落ち着きなさい」

 

興平の隣に居た智代が、二人を制した

 

「しかし、智代!」

 

「あいつ、自分がやったことを棚に上げて!」

 

智代の制止に、二人が憤っていると

 

「今は、落ち着くのです……っ」

 

智代は、唇を噛んでいた

 

ふと気づけば、座っている車椅子の取っ手を潰さんばかりに握っている

 

「わかり、ました……」

 

「仕方ねぇ……」

 

二人は渋々といった様子で、床に座った

 

「それでは、教科を選択してください」

 

姫路の言葉を無視して、高橋女史は教科選択を促した

 

「そちらがどうぞ」

 

明久が促すと、姫路は憤慨した様子で

 

「どういうつもりですか……あなたが、私に勝てるとでも?」

 

と問い掛けた

 

すると明久は、肩を軽くすくめて

 

「君も、一つ勘違いしている。我々近衛には、負けは許されない。ゆえに、並大抵の努力はしていない」

 

と言った

 

その言葉を聞いて、姫路は顔を怒りで赤くして

 

「負けても、後悔しないでください! 高橋先生、総合科目でお願いします!」

 

姫路が教科を宣言すると、高橋女史は頷いて

 

「総合科目に設定しました。召喚してください」

 

と召喚を促した

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

二人は同時に、召喚のキーワードを唱えた

 

総合科目

 

Fクラス 姫路瑞希 4409点

 

表示された点数を見て、Aクラスには動揺が走った

 

「な!? あの点数は代表並だぞ!!」

 

「確か、彼女は次席だったはず……」

 

確かに、姫路瑞希は優等生である

 

それこそ、Aクラス入りは確実と言われていた程に

 

だが、表示されている点数は驚愕に値する点数だった

 

「どうですか? 吉井くん。あなたでは、絶対に取れない点数でしょうね」

 

姫路がそう言うと、明久はため息を吐いて

 

「やれやれ……見くびられたものだな」

 

と言った

 

その直後、明久の点数が表示された

 

総合科目

 

Aクラス 吉井明久 8850点

 

その点数を見て、その場に居たほぼ全員は驚愕した

 

「八千点超えだと!?」

 

「規格外過ぎる……」

 

「バカな……」

 

全員が呟くように言うなか、姫路は

 

「そんな点数ありえません! カンニングしたに違いありません! 高橋先生、吉井くんの反則です!」

 

と、高橋女史に直談判した

 

だが、高橋女史は首を振り

 

「カンニングはありえません。なにせ、彼は一人でテストを受けてますから」

 

と言った

 

すると、シアとネリネが立ち上がり

 

「明久くんのその点数は間違いなく、明久くんの実力っす」

 

「明久さんは、既に大学レベルまで履修してます」

 

と、驚愕的な事実を告げた

 

「大学レベルだと!?」

 

「なんで、そんな奴が高校に通ってるんだよ!」

 

「そんな奴に、勝てるわけねーだろ! こんな試合、無効だ!」

 

シアとネリネの説明を聞いて、Fクラスの男子達が喚くが

 

「やかましい、貴様ら! 吉井はリシアンサス、ネリネ両殿下の護衛として来ている! それに、吉井を指名したのは姫路だ!」

 

と、西村が一喝した

 

「あなた方に、想像出来ますか? 寝る間を惜しんで勉強して、血反吐を吐くほどに刃を振るい続けて、傷が無い場所を探すのが困難なほどに、私達をその身を盾にして守ってくれた明久さんを」

 

「明久くんには、普通の生活を送る権利だってあったはずっす……けど、明久くんは自ら、剣術を学び、魔法を学び、独学で勉強した……それこそ、自分を犠牲にしてまで……」

 

二人は、悲しそうに告げた

 

すると、明久が

 

「俺はただ、恩を返したいだけなんです……記憶喪失で身元不明だった俺を受け入れてくれて、一緒に生活してくれた陛下達に……ですから、恩を返すためならば、この身など、惜しくはない……」

 

明久はそう言うと、召喚獣の武器を抜かせた

 

その武器は、二本の刀だった

 

明久が刀を構えると、高橋女史は片手を上げて

 

「それでは、試合開始!」

 

試合のゴングを鳴らした

 

その直後

 

「素人には負けません!」

 

姫路はそう意気込みながら、大剣を構えて突撃した

 

明久はそれを冷静に見極めると、右手の刀をゆっくりとした動作で振り上げた

 

そして、姫路が大剣を振り下ろした直後

 

澄んだ金属音が響き、姫路の大剣は僅かにズレて地面にぶつかった

 

「神剣一刀流、防の型、流水陣……我が防御、簡単に破れると思うな」

 

明久のその言葉を聞いて、姫路は逆上したのか歯を食いしばって

 

「まだです!!」

 

至近距離で、右腕を押し付けた

 

その腕には、煌びやかな装飾が施された腕輪が存在していた

 

「発動!!」

 

姫路が叫ぶと同時に、明久の召喚獣の居た場所を極太の熱線が走った

 

「いくら点数が高くても、それを活かせなければ、ただの木偶の坊です!」

 

と、姫路が勝ち誇った直後

 

「遅いぞ、戯け」

 

という、明久の言葉が聞こえて

 

「神剣二刀流、壱の太刀……雪華」

 

一瞬にして、姫路の召喚獣は両手、両足、頭、胴体に切り裂かれた

 

総合科目

 

Fクラス 姫路瑞希 0点 LOSE

 

VS

 

Aクラス 吉井明久 8650点 WIN

 

僅か一瞬で、姫路は敗北した

 

「他愛無い。児戯だったな……」

 

明久はそう言うと、座り込んでいる姫路を見下ろした

 

こうして、Fクラスの敗北が決まったのだった


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