転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

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Part.1 いまだ星なき世界の転生者
1.転生したら柱の女だった件


 ヤバい死ぬ。

 

 この世界の真実を知ってしまったわたしが最初に思ったのはそれだった。

 間違いない、確実に死ぬ。コーラを飲んだらゲップが出るくらいには確実ッ。

 

 なんでって?

 

 そんなの!

 

 今わたしをあやしてる妖しげな色気漂うイケメンが!

 

 ()()()()()()()()()!!

 

 

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 なんてことはない。よくある……いやそんなよくあっても困るんだけど、ともあれ二十一世紀も四半世紀近く経った昨今の日本ではよくある、死んで生まれ変わって、という話だ。

 わたしの場合は、ちょっと友達のために身体張ったんですよ。なんか薬キメちゃってるみたいな半目で、ガソリン振りまいてるやつからかばう感じで。クッソ熱かったですファイヤー。

 

 で、まあもちろん死にましたね。死なないはずがない。ところが気づいたら暗いところで赤ん坊になってて。

 

 ピーン! と来たよね。いわゆる転生ものだ! って。

 

 こいつぁ主人公来ちまったんじゃあねーの、ってワクワクしたりしちゃったんですよ。切った張ったの痛いのは好きじゃあないけど、かといってあからさまに転生ものムーブキメちゃったとなれば、一オタクとしてはそれなりに期待しちゃうのは仕方ないじゃあないか。

 

 でね。まあね、最初は異世界転生ものだと思ってたんですよ。なんかあんまり文明的な暮らししてないし、そもそも両親はおろか周りにいる人が全員頭にツノ生やしてたからね。少なくとも地球じゃあないなって、思ってたんですよ。

 だから異世界の人外転生系かー、なんてのんきしてたんですよ。

 ちょっと赤ん坊の期間長くない? とか、やけに暗いわりにやたら見えることない? とか、なんかまったく眠くならないし寝なくても平気っぽいぞ? とか、思ってはいたけど。とりあえず異世界なんだろうなーって思ってたの。

 

 ところがどっこい。ついさっき、カーズ様が石仮面片手にご機嫌で現れたものだから、一気に世界の真実を知ってしまったよね。

 

 うん。

 

 ここ、ジョジョの世界だ。しかも一巡する前の。

 

 それの何が問題かって、今が最低でも原作第一部の一万年……いや、ワムウとサンタナがまだいないから一万二千年は前ってことで、わたしが柱の男の一族ってことよ。

 

 二部を読んだことのある人ならここで察してもらえると思うんだけど、彼らは皆殺しの憂き目に遭ってる。

 主犯は何を隠そうカーズ様。自分の思想を理解しない仲間を全員殺しちゃうの。そこに痺れる憧れるゥ。

 

 いや痺れも憧れもしないからこそ、思わず泣いてしまったわけなんだけど。そこで何を思ったか、カーズ様が優しげにわたしをあやしてくれてるところです。

 

 さてどうしたものか。

 わたし、女に生まれてるから少なくともワムウやサンタナじゃないのよね。だからカーズ様が皆殺しを敢行する前には、ある程度成長するのはほぼ間違いない。はず。

 だってあの皆殺しを生き残ったのは、当時赤ん坊だったワムウとサンタナだけだったわけだし。となれば、殺されるのもほぼ間違いないわけで……。

 

 かといって、せっかく転生できたんだからすぐにまた死ぬのは嫌だなぁ。それにもし今が二十一世紀から見て万年単位の過去なら、知りたいことがたくさんある。

 柱の男……いや、闇の一族と言うべきか。いずれ絶滅する彼らの生態とか文化とか知りたいし、二十一世紀に至るまでの世界の歴史の、謎になってるところとか特に知りたい! 万年単位を平気で生きるうえに、知能も記憶力もいい闇の一族の身体なら、そういう埋もれた歴史も記録できずとも記憶できるはずだし!

 元歴史学専攻の大学院生としては、やっぱりそこはとっても気になるの! 猫型ロボットのひみつ道具で一番欲しいのはタイムテレビですって即答するくらいだしね!

 

 じゃあどうするか?

 

 となれば、なんとかしてカーズ様に取り入るしかないよねっていう。今可愛がってくれてる両親や仲間にはとても申し訳ないけど、しょせん黄金の精神を持たないわたしには自分の命が一番かわいいのだ。

 ……親を直接この手にかけたくはないから、もうあと数百年程度でカーズ様動いてくれないかな、なんて後ろ向きに考えながら。

 どうしたらカーズ様に仲間認定されるか、わたしはとにかくそれだけを考えることにした。

 

 

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 はい、というわけで大体五百年が経ちました。

 

 すごい。びっくりするくらいなんともない。普通に生きてる。わかってはいたけどさすが闇の一族、やたら長寿。

 この間に、わたしは赤ん坊から幼女に無事成長した。外見年齢で言えば、人間の三歳児くらいかな。

 ただ中身が大人だから、他の同年代よりは明らかに精神が成熟してて、色んなことに首を突っ込んでは怒られたり呆れられたり、なんやかんやで可愛がられたりしてる。いや、同年代二人しかいないんだけどね。

 

 この五百年ほどでわたしが何をしていたかといえば、積極的に昼間に外に出て日光を浴びていた。

 もちろん太陽の光に極端に弱い闇の一族にとって、それは自殺行為。普通に何度も死にかけた。

 親はもちろん一族総出で止められたし、なんならわたしもそんな泳げないのに海に潜るような真似はあんまりしたくなかったんだけど、将来のためには必要だったから仕方ないじゃあないか。

 

 だって、カーズ様が仲間を皆殺しにしたその根っこのところには、「太陽を克服したい」という願望が特に大きかったはずだから。

 カーズ様はそのあとに何ものをも支配したいとは思わないのかとも言ってたけど、それはそれとして、カーズ様にとって何よりまず太陽を克服して昼の大地に打って出ることが直近の目的なのだ。

 

 そんなカーズ様が、好奇心たっぷりに太陽の下に行こうと繰り返す子供を見たらどう思うだろうか? 少なくとも、興味くらいは持ってくれるだろう。

 そしてその子供がある程度成長したあと、弟子にして欲しいとか言ったらきっと信じてくれるんじゃないかなって。

 

 以上がわたしの考えた生き残る方策だ。

 

 もちろん、一族最高の頭脳を誇るカーズ様には見抜かれる可能性が高いけど、それはそれとして太陽を克服したいというのはわたしの偽らざる本音でもある。わたしは本気で昼の外に出たいし、日光であっさり死にたくはないのだ。

 だから、最終目標はさておき今は全面的にカーズ様の味方というのは本当なのよ。なので信じてくださいお願いします。

 

 なおそのカーズ様は、この五百年ほどの間に仲間のエシディシと一緒に石仮面をかぶって、ある程度の日光耐性を獲得している。日光を浴びても死なずに石化だけで済む程度の耐性だ。

 同時にこれではいかんとますます研究に打ち込みつつも、どれほどの変化が自身に起きたのかを調べるために並行して試行錯誤した結果、見事に光の流法(モード)輝彩滑刀(きさいかっとう)に目覚めておられた。早い。さすが天才。なおエシディシはまだな模様。

 

 彼らの生命体としてヤバすぎる体質とか能力は、半端とは言え石仮面の力で引き出されたものだったんだなぁ。確かに、二部の回想シーンで輝彩滑刀を振るうカーズ様と戦ってた闇の一族は、普通の剣とかを使ってた。そういう意味では、闇の一族におけるカーズ様は人間で言うところのDIO様みたいなポジションなのかもしれない。

 

 とかなんとか思って二人を見てたんだけど、たぶんこれも石仮面の効果なんだろう。二人は石仮面をかぶったその日を境に急に燃費が悪くなって、めっちゃ食事の量が増えて周りから白い目で見られてる。闇の一族、大人しすぎて名前負けがすぎる。このままだと、二人が一族から完全に孤立するのもそう遠くはなさそうだ。

 とくれば、これは結構近い将来にエックスデーは来そうだなぁ、と今から戦々恐々なわたしです。

 

 

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 てなわけで、またしてもおよそ五百年が経過。早い。月日早い。

 約千歳になったわたしは、推定六歳児程度の幼女に成長した。

 

 ……同年代の子を見る限り、どうにもわたしの身体の生育はすこぶる遅いらしい。

 どう考えても、毎日日光を浴びてるせいですねわかります。あんな身体が灰になるような劇物を毎日浴びてたら、そりゃあ生育にも悪影響が出るってものだ。

 

 でもこれも生き残るため。我慢しよう。身長もスリーサイズもグンバツな美女に育つ代わりに理不尽な最期を迎えるくらいなら、わたしは合法ロリになってでも生き延びたい。死ぬよりはマシだ。

 

 それはさておき、わたしは無事カーズ様に弟子入りすることに成功した。太陽を克服したいという熱意を伝えて、実際に少しとは言えそれを成したカーズ様に熱烈なラブコールを送ってどうにか庇護下に転がり込んだのである。

 渋い顔で「子供の面倒など見切れん」とうめくカーズ様と、カラカラと笑いながら「いいじゃあねーか少しくらい。息抜きだと思えよ」と彼の肩を叩くエシディシの対比がなかなか面白かった。

 

 で、最初はそんな感じで渋ったカーズ様だったけど、子供にしてはなかなかに聡明ということで、最近はちょこちょこ手伝いに駆り出される。彼が内心でどう思ってるかはわからないけど、とりあえずそれなりに構ってもらってる感じだ。

 

 なんなら石仮面作りを手伝ったりもしてるぞ。おかげで石仮面のほとんどを一人で作れるようにもなったけど、肝心要の骨針の仕組みは触らせてもらえてない。あそこはやっぱり、カーズ様的にも下手に他人に知られたくはないみたい。

 でもせっかくならそこらへんは知っておきたい。理論がわかってる人が目の前にいるのに、それを教えてもらえないのは理不尽だと思うの!

 わたし! 気になります!!

 

 というわけで、カーズ様が教えてもいいと思ってくれるように、色々小細工を考えるのが最近の日課。

 直近だと、石仮面を他の生き物に使ったらどうなるの? って無邪気して聞いて、実験してみろと言われてそっちがメインって感じだ。

 

 とりあえず近場のところで、ほ乳類を中心に片っ端から石仮面をかぶせて吸血鬼化して経過を観察、その様子を余すことなく記憶してる。

 本当なら彼らの素の生態を見てみたいんだけど。だってまだダイアウルフ(推定)とかいるんだよこの世界! 気になるに決まってるじゃん絶滅種だよ!?

 

 ……こほん、閑話休題。

 

 このとき、メモはしない。何せ闇の一族は人間と違って知能と記憶力が段違いに飛びぬけてるから、メモなんて取らなくても全部覚えてられる。思い出そうとすれば前世のことだって克明に思い出せるから、原作の時代に突入してもすっかり忘れてるなんてことはなさそうでちょっと安心してる。この辺は、人外に転生した特典みたいなもんだね。

 

 ただ、石仮面で吸血鬼化した生き物はその大半が凶暴化して、こっちに襲い掛かってくるからメモしてる余裕なんてないとも言う。

 幼児とはいえ、一応わたしも闇の一族。小動物が吸血鬼化したくらいじゃ負けやしないけど、負けないからといって怪我しないわけじゃないから……。痛いものは痛い。

 

 あ、ちなみにわたし、石仮面はまだかぶってない。だからかわからないけど、肌から他の物質を取り込んで即消化、なんて芸当はできない。できたらそこまで怪我も気にせず観察とかできるんだろうけど、精神に影響出そうだなぁとか、生育に悪そうだなぁとか、色々思うところがあって。

 

 カーズ様はさっさとわたしにかぶせてサンプルを増やそうと考えてるっぽいけど、そこはもうちょっと待ってほしい。

 ありがとうエシディシおじさん、あなたがカーズ様のストッパーです。まああの人も「やるときはやるッ!」んだけど。

 

 この状態が、一体どれだけ持つことやら。

 既にカーズ様たちの食費がかさみすぎてて、闇の一族全体のエンゲル係数がヤバいことになってるのはなんとなくわかってる。

 このまま行くと、近い将来原作通りに皆殺しが起こりそうなんだよなぁ……。

 

 

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 そしてまた五百年ほど。時間の価値ってなんだろうね。

 

 というか、近い将来って思ってたのに何普通に五百年経過させてるの? いくらなんでも闇の一族気が長すぎない?

 

 で、まあわたしも約千五百歳になって、無事に外見年齢九歳児くらいになった。ここまで来れば、さすがに幼女は卒業だと思う。いまだに百三十センチあるかないかってとこで、ぺったんこの寸胴体型のイカ腹だけど。受け入れてるからいいんだけどね、うん。

 

 で、まあこの歳になってようやくというか、ついにわたしも石仮面をかぶった。

 最初は後頭部に野太い骨の針が刺さるのが怖くてハラハラしてたけど、やってみれば特に痛みもなくってあっさりしたものだった。しっかり麻酔して抜く親不知って感じ。

 

 危惧してた精神への変調は今のところ感じてない。……と思う。変わってはいない、と思うんだけど、自分で自分を客観視できない以上本当に変わってないのかどうかはわかんない。

 

 まあそれはそれとして、肌からものを取り込めるようになったり日光に耐性がついたり、明確な変化もしっかりあったよ。ちゃんとね。

 カーズ様やエシディシとの違いとして、わたしは二人よりもさらに日光耐性が強い。二人が石化するレベルの日光でも、最終的には石化するにしてもするまでにかかる時間が倍以上違ったのだ。

 

 これはあれかな? まだよちよち歩きのころから日光を毎日浴びてて耐性が既にできてたからかな?

 おかげでカーズ様からは見事にモルモット扱いで、最近は色々と身体を調べられることが多い。

 

 それは別に嫌じゃないんだよ? ただ触診のとき、たまに「ウィンウィンウィンウィン」とか言いながら肌を撫でてくるのがなければなぁ……。傍目から見たら完全にただのやべーロリコン野郎ですよ……。

 いやカーズ様、将来グラマラスな美女(リサリサ)に対しても同じことやるからたぶん彼なりのジョークなんだと思うけど。ちょっとそっちのセンスは足りてないんじゃあないかなぁ。

 

 まあそれがなければ、昼でも明け方や日暮れくらいなら普通に外で活動できるようになったから、最近は独自に色々調べものをして古代ライフをエンジョイしてる。

 二十一世紀だと絶滅した生き物もいるから、普通に超楽しい。できればそうやって、学者みたいな生活をずっとしていたいんだけど……。

 

「よぉし、いいぞ。どこからでもかかってこいッ」

「とあーっ!」

「ほいっと」

「むきゅー!」

 

 最近、カーズ様の命令で昼は主に戦闘訓練を受けている。エシディシから。受けさせられている、が正しいんだけど。

 

 このロリ体型で、身長二メートルはありそうなエシディシとまともに戦えるわけがないんだよなぁ! 今とかメダカ師匠のお家芸みたいになってるぞ! くそう、ぐるぐるパンチをくらえ! くらわないけど!

 とはいえ、こうやって手加減をしてくれるのは最初の数分だけ。そこから先は情け無用のスパルタ教育で、普通にボッコボコにされる。おかげでそうなるまいと必死にくらいついてるけど、正直永遠に勝てる気がしない。これに競り勝ったジョセフの頭どうなってるんだ。

 

 ただなぁ。

 

 いきなりカーズ様が備えろ、って言って戦いも覚えろって言ってきたのは、今度こそ近い将来同族を皆殺しにすることになるからなんだろうなぁ。予期してるんだろうなぁ。だってカーズ様、天才だもの。

 そして戦闘訓練を受けさせられてるってことは、わたしは一応カーズ様から身内認定を受けてるんだろう。そりゃ確かに、ここ千年ほどですっかり両親始め仲間とは疎遠になってるけど。

 それでも、彼らを殺せって言われたらわたしは躊躇するんだろうなぁ……。

 

 

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 そしてさらに約五百年。わたしおよそ二千歳になって、遂にそのときが……。

 

 ……来なかった。来たのはわたしの休眠期。

 そういえば、闇の一族って二千年周期で眠りに就く種族でしたね! 二千年間一睡もしなかったから普通に意識してなかったけど!

 

 というわけで、おやすみなさい。

 わたし、これから二千年ほど石になります。

 

 寝てる間にイベントが進まないことを祈るよ……!




主人公の名前は次の話で。
スタンドも出るよ。もうちょっとあとだけど。

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