サンタナ王国での後片付けを終えて、わたしたちは再びヨーロッパへ戻ることになった。今回はサンタナやジョセフも一緒だ。
さらに、スッピーも同行している。彼は伯爵と合流してもらってから、財団のヨーロッパ支部にサンタナを連れて行ってもらう予定になっている。秘密兵器の開発は、そこで合同でやってもらうつもりだ。
シュトロハイムたちは、一足先にドイツに戻った。戻り次第、原作同様に紫外線照射装置の小型化に勤しむみたいなので、その点に関してはルベルクラクも協力していけたらと思ってる。
……シュトロハイムが健在だから、さすがに彼はもう前線に来ることはないかな? 五体満足の人をあの不死身めいたサイボーグ状態にするのは、さすがのナチスも躊躇するだろうし。
……するよね? さすがにするよね? そこまでアレじゃあないよね?
ま、まあ、話は戻すけどさ……王国のゴタゴタについてなんだけど。
例の王様は強制退位・幽閉のコンボを決められた。親サンタナ派閥にクーデター起こされたんだよね。そこにわたしとサンタナは軽く巻き込まれたわけだよ。
まあわたしたちはカオスになってる現場に踏み込んで、一喝してまとめるっていう水戸黄門みたいな役をしただけなんだけどさ。復活した神様に従うことを良しとする一派がこれで勢いづかないはずがなく、またサンタナもそうするつもりだったみたいで、その後の流れはスムーズだった。
あとあと聞いた話では、彼らは元々サンタナが目覚めるタイミングで動こうとしてたみたいだ。あの王様の統治には不満が多かったようで、虎視眈々と狙ってたらしい。
後釜にはあの王様の義兄が入ったらしいけど、個人的には親サンタナ派閥の黒幕は信仰がどうこうというより、新王様を王位につけることが至上命題だったんじゃあないかって思う。元王様は太后の実子らしいけど、新しい王様は元王様が生まれる前に分家から養子として王家に入ってたって話だし。
南部家かな? わたしとしては、半吸血鬼でもお家騒動ってあるんだなって感じだけどさ。
なおこの即位の際、サンタナはいつの間にか下半身が復活していて、元王様は体調不良で式典欠席だったので、わたしは色々と察した。たぶん一、二年ほどしたら病死って発表されるんだろうなって……。
まあそんなこんなで、イギリスに戻ってきたわけだけど。
「大変ですアルフィー様! カーズたちが目覚めました!」
どうやらわたしは、年明け早々覚悟を決めなければならないらしい。
***
「は!? ストさ……んが吸血鬼にされたって!?」
順を追って話を聞いていると、わりと初っ端から寝耳に水な事態で草も生えない。
ストレイツォがドイツのどこかに監禁されてること自体は、わたしも知ってた。ただ行方を探すだけの時間がなかなか取れなかったし、結果として原作みたく暴走して吸血鬼化できる状況じゃあないと思って優先順位下げてたのに!
波紋の達人で、吸血鬼や柱の一族と渡り合える人をなんで吸血鬼にしてしまったの……その選択は間違いなく致命的なミスでしょ……。
聞けば研究者の暴走らしいけど……これだからマッドってやつは……。
「シーザー君がとめてくれたのか……彼には感謝しなくては」
「フン、あのキザヤローならそんくらいやってのけるだろーよ!」
ジョジョ二人のリアクションがいかにもな感じではあった。ジョセフの反応はいかにもなツンデレで個人的には微笑ましかったですね……。
「親父が……ワムウに……!?」
まあ、その数十秒後には特大の凶報で曇らざるを得なかったんだけどね……。
「……ジョージは……」
「ギリギリのところでロギンズ氏とメッシーナ氏が間に合ったとのことで、かろうじて助かりました。
「……ッ」
「そしてマリオ氏も……
「……なんてことだ」
いや本当、なんてことだだよ!
わたしはジョースター家三代とツェペリ家二代の揃い踏みを正面から見たかったのに! 原作では死んでる二人が生存してるから行けると思ってたのに! 持ち上げてから落とすのやめてぇ……!
いやまあ、死んではいないんだけど……それは不幸中の幸いではあるけど、戦力的な意味でも開戦前に二人が離脱するのはすごく痛い!
「あのワムウと戦って瀕死の重傷を負わせただけでなく、生還した……だと……!?」
そしてサンタナの驚愕ポイントはちょっとズレてる! それも間違いじゃあないけども!
「と……とりあえず、だ。僕たちは急ぎリサリサたちと合流しよう。アルフィー君の癒しの力を借りたいところだけど……ひとまず生きるか死ぬかわからないような状況でないのであれば、ジョージたちの優先順位は下げざるを得ないだろうから……アルフィー君はカーズを」
ジョナサンが、渋い表情ではあるけれども決意の色もにじませて、わたしに言う。
自分の息子のことだ。思うところはたくさんあるはず。
それでもわたしの力を回復ではなく、カーズ様を抑えるために使えという判断はさすがというかなんというか。周囲に波紋使いがいるならわたしがいなくてもある程度まではなんとかできるはずだから、彼の判断は正しいとわたしも思う。
何せ、
「既に人的被害は広がり始めています……二千年前のように街一つとかそういうのは今のところないようですが……」
というわけだよ。そりゃあ、目覚めて何するかって、食事だよね……。あとは、手駒用に吸血鬼も増やしてるんだろうな……。
何が怖いって、そこらへんの正確な数字が、優秀すぎる諜報網を持つルベルクラクをもってしてもはっきりとはわからないってことだよ。それだけカーズ様やエシディシは鮮やかに、かつ正確無比に、証拠を残さずに行動しているのだ。
「……ッ」
そこはわたしだけでなく、もちろんジョセフだってわかってる。彼はジョナサンの判断に何か言いたそうな顔をしてはいたけど、理性はちゃんと働いている。普段は多弁な彼が黙したまま、静かに目を燃やしていた。
「そ、そうだね! わたしも大急ぎでカーズ様と合流するよ!」
「動向の誘導、よろしく頼むよ。気をつけてくれ、アルフィー君」
「うん! そっちも気をつけてね、突然のエンカウントとかに!」
「ああ!」
というわけで、わたしは大急ぎで伯爵と連絡を取って、カーズ様を追いかけることになったのだった。
ああもう、本当にうまくいかないなぁ……!
***
「なんと!? 奴らが!?」
任務を終えて故国ドイツに戻ったシュトロハイムを待っていたのは、柱の男たちの復活ととある部隊の全滅という特大の凶報であった。
サンタナ王国での報告を終えるや否や呼び出された彼は、恐怖を覚えながらもそれを飲み干し、上官の前で直立不動を貫く。
「うむ……例の
「敵わなかった、と……」
「そうだ。王国で貴官が得たこれらの情報があれば、私ももっと強く反対できたのだが……いや、それは言っても仕方ないことか」
上官の渋い表情に、シュトロハイムも同じ表情で応じる。
全滅した部隊は、まさに選び抜かれた精鋭たちだった。誇り高く、何よりこの世界で最も優れた肉体を持つ者たちだった。
それが失われた。軍事的、政治的にはもちろん、感情的にも受け入れがたい。
「……それで、今後はいかように?」
「当面は、ルベルクラクと水面下で手を取る。だがこちらから手を出すことはしない、ということでまとまっている。あれは波紋戦士たちに当面は任せると」
「それが良いでしょう」
そう答えて、しかしシュトロハイムは違和感を覚えて眉をひそめた。
「……当面は?」
「そうだ。部隊の全滅を受けて、目下急ピッチでアレの改良を行っている。それが完了次第、我々も動く予定だ」
「……正気ですか准将殿!?」
「案ずるな、矢面には立たん。君の資料は見た……我々の技術はまだ拙く、たとえアレの改良が首尾よくできたとしても波紋戦士どもには及ばないだろう。癪なことだが……それでもアレが更に発展すれば、連中との連携もしやすくなるだろうからな。少なくとも、ルベルクラクの連中と違い柱の男どもにいきなり喰われることはなくなるはずだ」
「……ですか」
返事に、シュトロハイムは素直にホッとする。彼はこれ以上、同胞を絶対に勝ち目のない戦いに放り込んで死んでほしくなかった。
「……ところでシュトロハイム少佐、これは提案なのだが」
「なんでしょうか?」
話の節目を迎え、上官が話題を変えた。
同時に差し出された書類をひとまず受け取りながら、シュトロハイムは上官に目を向ける。
「君、ゾル中佐に代わって例の部隊を率いるつもりはないかね?」
「……は?」
「いやなに、例の部隊は彼を残して全滅してしまったからな……。責任は、柱の男どもの戦力を甘く見ていた我々にあってしかるべきなのだが、自分が責任を取ると言って聞かないのだ。それはそれとして、負傷もしている」
特に
「ああなるほど……中佐殿は硬骨漢であらせられますからな……」
「そういうことだ。無論、この提案を受けるのであれば君は昇進するが……その分、死の危険も増す。断ってもらっても構わない。これはそれほどの任務になる。我々もそこは承知している」
「…………」
上官の言葉に、シュトロハイムはしばし言葉を失う。そうして頭の中で、あれこれと思考を走らせる。
しかし、答えはわりとすぐに出た。
なぜなら、シュトロハイムの脳裏には一人の男の姿がよぎったからだ。あいにくと国も、心を捧げる先も違うが、シュトロハイムは誇り高い勇気があるならば、そのようなことは関係なく敬意を表することのできる男だった。
ゆえに、
「准将殿、自分は――」
彼は、己のまさに人生がかかった選択に答えたのだった……。
***
「ここもハズレか……」
無人の遺跡を一通りさらい、出てきた男……カーズは苦々しい表情を隠すことなく呟いた。
どうやら我々は細かい情報収集を、便利だからとアルフィー一人に任せすぎたようだ。そう反省する。
何せ彼女がいるといないとでは、収集力に雲泥の差が出るのだ。戦力という意味では半端な彼女だが、こと人間の使い方については恐らく随一。そう認めてやらねばならないだろうと。
特に今のように目覚めた直後のタイミングでは、そのノウハウの有無で大きな差が出る。今回は、ワムウが短期間ながらも療養が必要なほどの大怪我を負ったこともあって、普段より効率が落ちている。
そうしたことを、しかしカーズは口には出さず、内心で省みながらも足を街のほうへ向けた。
「あのアホめが……どこで何をしている」
剣呑な光を瞳に宿し、夜空を仰ぐ。文字だけで見るならば、まるで恋い焦がれる男のようでもあるが、そんな甘いものではないことは誰の目にも明らかだ。
そうして辿り着いた街の、公衆電話の受話器を取る。
「
電話の向こう……エシディシのややイラついた声に逆に気持ちを落ち着けつつ、カーズは考える。
何かがおかしい。行く先々でこうも何も得られないというのは、かつてなかった。
いや、無駄足だったことは何度もあったが、そうした常とは異なる違和感があった。まるで何かが自分たちを阻んでいるような、見えない糸に絡め取られているような、そんな不快さが。
「……ああ。うむ、
ガチャン、ツーツーツーという音を置き去りに、カーズは電話から離れる。
空には月。今宵雲はなく、黄金に輝く夜の女王はそのさやかな光でカーズの顔を照らす。
彼はその光に穏やかな目で応じ……視線を下に戻せば、そこには甘えた声を上げる野良猫が、足下にじゃれついていた。
その猫に、気まぐれに菓子を投げてくれてやる。猫は狂喜して食事にありついた。
だが猫があっという間に食べ尽くし、さらなるおねだりをしようと顔を上げたとき。そこには既に、カーズの姿は影も形もなかった。
残された猫は、化かされたようにきょとんとするばかりであった……。
はい、というわけでジョージとマリオは生き残りましたが戦線離脱、という形で決着といたしました。
時間さえあればアルフィーのスタンドで治せるものの、今はその時間すらない状況になってしまった・・・という形です。
さて次はいよいよ彼との戦いなのですが・・・年内にあと1話上げられるかな? といったところ。
いっそワムウ戦のように、一段落するまで少し書きためてから、年が明けた後に連日投稿のほうがいいだろうか・・・。