転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

16 / 56
16.合法ロリVS脱法ロリ

 結局と言うべきか案の定と言うべきかはわからないけど、赤石はシラクサでは見つからなかった。

 あのあと足を運んだアルキメデスの家は、当たり前だけどかなり略奪されていた。ただ、図面や資料の類は乗り込んだ兵士が価値を見出せなかったのか多くが残ってた。これはカーズ様にとっては不幸中の幸いだと思う。

 

 何せこれを見るに、アルキメデスが熱光線に利用した赤石は石仮面を完成させるに足るもの、すなわちスーパーエイジャである可能性が極めて高いということはわかったからね。

 彼は色までつけたかなり詳細なスケッチを残してたんだけど、それを見る限りここにあった赤石の形はまさに原作で出てきたスーパーエイジャだったからね。これにはカーズ様も一応にっこり。

 

 そのスケッチは、今後の比較用にするという名目でスタンド空間に収納させていただいて、このときは撤収することになった。

 

 そのあと指示を受けてローマ軍に潜り込んだ結果わかったのは、少なくともローマ側指揮官は赤石の存在を認識していたこと。そして彼は略奪の成果を奪うことはしなかったものの、アルキメデスを殺すなと命令していたのに殺して略奪に走った兵士たちを、後方に下げたことの二つだ。

 

「……で?」

「はい。そのあと彼らは冷遇されたことに腹を立て、勝手に陣幕から脱走したみたいです。そのあとの行方はわかりません。

 ローマの兵士が脱走してローマに戻るとか、ローマと戦争中のカルタゴ方面に行くとかはちょっと考えづらいですけど、可能性がないとは言い切れないですね……。他にも選択肢はいっぱいあるので……そのぅ」

 

 無言のカーズ様が拳を下ろした机が「ゴワシア」とあっけなく壊れる。やめてよね心臓に悪い。

 

 にしても、これは相当お冠ですね……。原作で手段選ばないやり方が目立ったのも、こういうイライラが積もり積もった結果なんだろうか……。

 とはいえ、激昂した様子を見せたのは一瞬。すぐに普段の様子に戻るのはさすがと言うべきか。

 

「……赤石は傍目には宝石とさほど変わらん。各地の商人や質屋などを重点的に探すぞ。エシディシはギリシャを頼む。ワムウはヒスパニアだ。私は念のためエジプトを調べる。

 アルフィーはローマ周辺を調べろ。だがついでに、ローマのたかが末端の兵士に波紋使いがいた経緯も調べておけ。どうも嫌な予感がする」

「あいよ、任された」

「御意」

「わかりました」

 

 わたしだけ仕事が多くないですか……。そりゃあ、便利キャラなのはわたしも自覚するところではありますけど。

 

 ともあれそんなわけで、それぞれ別行動になった。カーズ様たちが行くことになった土地で何かやらかさないかすごく心配だけど、今は何もできない。せめて穏便でありますようにと祈る。南無阿弥陀仏。

 

 さてせっかくの単独行動だから、この機会にローマの街並みを堪能しながらゆっくりしたいところではあるけど、まずは赤石探しだ。

 少なくとも現状のローマにある情報をしっかり集めておかないと、万が一他の地域でローマから来た商人がスーパーエイジャを持ってたなんてなったら、カーズ様に殺されかねない。あの不機嫌な感じからしてその可能性は高い。だからお楽しみは全部終わってからだ。

 

 で、ローマおよびその周辺であれこれ調べて回ったところ、いやはや戦争景気と言うべきか。儲かる人は儲かるんですね。結構短い間に宝石関係の商取引が行われてて、歴史って繰り返されるんだなぁなどと思うなど。

 

 まあその手の売買で動いた「赤い宝石」の大半はルビーだったわけだけど、中には質は良くなくても本物の赤石がちょっとだけ混ざってた。この辺りは、昔と比べて変わったなと思うね。人類の数が少なかった数千年前じゃ考えられなかった。

 

「……ここのもルビー、と。これでとりあえず、今のところ回ってきた情報のところは全部答え合わせが済んだかなぁ」

 

 そんなある日。わたしはとある新興貴族の家に忍び込んで、宝物庫(と言うほど広くはないけど)を物色していた。

 

 調べた限り、ここも外れ。そして現状、これ以上ここ一年以内でそれらしい宝石が動いたって話は聞かないから、赤石関係はここらで一旦中断して波紋関係の調査に移ったほうが良さそうだ。

 ……闇取引とか個人間の譲渡とか、あるいはどこかで盗賊とかに奪われたとかの可能性もあるけど、それをやり始めるときりがない。一応の区切りは必要だろう。

 

「よーしそれじゃあ帰るかー。今日はもうゆっくり休みたーい」

 

 持ち主が無精者なのか、今日のとこは宝物庫内がごちゃごちゃしててかなり時間がかかっちゃって疲れた。最近はまず赤石の情報を早めに潰しておこうと思って働きすぎだったし、今日くらいはゆっくり休んでも許されるよね。

 

 そう思いながら宝物庫を出る。結構広い邸宅だからちょっと脱出が面倒だけど、わたしには空から出入りするという反則技があるから庭に向かう。

 廊下を抜けて見えてくる庭まで行けば天井がないから、そこで大幅なショートカットだ。ちょうど正方形を対角線に切り込む形で中に足を踏み入れ……ようとしたとき、それが目に入った。

 

 寝室と思われる部屋で、恰幅のいいおじさんが全裸でハッスルしておられる様が。もちろん、性的な意味でのハッスルだ。うわあ。

 

 正確にはこれからハッスルしようとしてるところ、ではあるんだけど……それだけなら別に、嫌なもの見たってだけでスルーなんだけど、問題はそのおじさんが迫ってる相手だ。

 

 そこにいたのは、どこからどう見てもわたしより小さい女の子だったのだ。

 どう見積もっても二桁に達してないだろう女の子が、全裸に剥かれて襲われて泣き叫んでる。どこからどう見ても事案ですよこれは!

 

 しかも改めて見るとあの女の子、身体のあちこちに暴力のあとが見えますね!? これは……ギルティ! 誰がなんと言おうとこれはギルティです!!

 

 わたしは一刻も争うだろうと、大急ぎで今まさに蛮行がなされようとしていた部屋に突入……。

 

「ぶげぁ!?」

「えっ」

 

 したところで、入れ替わるようにしておじさんが外に吹き飛んでいった。

 

 その姿を見送って、数秒硬直。まさかこんな小さな女の子が……と思って、改めて室内に目を向けたわたしは、お釈迦様に会ったとき以来くらいの驚愕を覚えた。

 

「は?」

 

 そこにいた女の子の背中から、白い翼が生えていた。

 それはいい。それだけならまだいい。

 

 けど、次の瞬間女の子の身体が波打つようにたわみ、ぐにゃりと歪んだかと思うと、それまでとまったく違う姿に変わったんだから、驚くなってほうが無理でしょこんなの!

 

 しかも現れたのは、全体的にダークな系統の色で統一された身体、それに反して唯一抜けるような白さを保つ一対の翼、禍々しい形状の装飾、あちこち割れたり欠けたりした悲しげな顔をした謎の存在で……。

 

「いやいやいやいや、ここジョジョの世界なんですけど!? 仮面ライダーの世界じゃあないんですけど!?」

 

 そう、有り体に言ってそれは仮面ライダーとかに出てきそうな怪人みたいだった。そんなものに女の子が変身してしまったんだから、驚くなって言うほうが無理!

 

「グキカクゲコカアァァァ!!」

「そんなー!?」

 

 そしてその怪人は、自我をなくしたような獣じみた声を上げて襲いかかってきた!

 

 ……けど、なんていうかわりと冷静に対処できた。

 いやその、だって相手が普通に遅くてパワーもなかったから……見てから回避余裕でした……。

 

 これはあれかな、見た目すごいヤバそうだけど、中身はそのまま幼女のままで身体能力は特に変わってないってことなのかな? だとしたら、逆に下手な攻撃をすると死なせちゃうぞ。どうしよう。

 

 そう思って、まずは無力化するために軽く腕を狙って拳を当ててみたんだけど……これがなんとノーダメージ。

 あまりにもダメージがなかったから、次は強めに攻撃してみたんだけど、これまたノーダメージ。

 

「……え、なにそれどんな防御力?」

「グギエェェェー!!」

 

 さすがに二発目はそこそこ効いたでしょって思ってたから、手応えのなさに思わず呆然としちゃって反撃に頭を殴られた。

 

 ところがこの攻撃、こちらもノーダメージに終わった。

 いや、普通に幼女に殴られたくらいの威力しかなかったらそりゃノーダメですよ。子供の加減知らずな一撃はときにかなり効くものだけど、一応わたしこれでも柱の女なんで……。

 

 ただこのままだと千日手だ。仕方ない、暴れられたら中のものが壊れかねないからしたくなかったけど、ここは【スターシップ】で……。

 

「えっ、うっそだぁ!?」

 

 弾かれた!? マジでどんな防御力してるの!?

 

 試しにと思って今度は普通の矢を、結構本気で射かけてみたらこれまた弾かれる。ちょっと待ってそれはどうかと思う!

 これでもわたし柱の女ですよ!? コンクリ破壊できる威力の矢を出せるんですよ!? それ食らってちょっと火花が散るだけって絶対おかしい!

 

 でも現実は変わらない。

 となると仕方ない、今度は本気でボディーブローだ! 中の幼女に何かあったら……そのときは平謝りの上で【センド・マイハート】しかないだろう。

 

 そうと決めたからには、速攻だ。ガッて近づいてどんってパンチを放った……と思ったら、あっと思う間もなくいきなり吹っ飛ばされた。

 吹っ飛ぶ衝撃はなかった。そして速度も結構なものだ。人間だったら反応できなかっただろう。

 

「……え、今のなに?」

 

 伸ばした手を地面に打ち込んで、体勢を整えながら着地する。

 しながら思わずつぶやいたけど、それに対する答えは言葉じゃなくてそこら辺の石とか木屑とか()()とかだった。まさしく手当たり次第って感じで飛んでくる。

 これも一応回避できる速度だったから、なんとか全部避けた。正面向いた状態で横向き九十度に身体が曲がるのは、我がことながら気色悪い。でも、飛んできたものに何か変な効果があっても嫌だからね。がんばったよ。

 

 いや、今のは明らかに物理法則が無視されてたもの。つまり、この奇妙な怪人? もたぶんスタンドなんだ。となると、それによると思われるものに迂闊に触れるのはまずいでしょ。暴走してるっぽいし。

 

 スタンドとしては、物質と同化する【ストレングス】か、スタンドのスーツを身にまとう【ホワイトアルバム】みたいなものかな? 前者だとしたら、普通の人にも明確に認識できる。この外見で人目に触れたら、バケモノ扱いまっしぐらだろうなぁ……。

 

 じゃあ問題の能力は、ってことだけど……。

 

「サイコキネシス? ……や、違うな、どっちかっていうとこれは……【タスク】に近い?」

 

 爪を弾丸として放つあれとは違うけど、雰囲気……ものを放つって一点に関してはかなり近いような。

 音はない。けどまっすぐ飛んでくる様はまさに弾丸みたいで、言うなればあれの能力はものを撃ち出す程度の能力と見た。

 

 確認のためにそこら辺のものを投げ返したりして様子を見たけど、飛ばしたものに何か特殊効果があるわけでもなさそうだ。

 本体もただ叫びながら殴りかかってくるかものを飛ばしてくるだけな上に、それも単調。本当に子供を相手にしてるみたいだ。

 

「……そろそろ終わりにしないと人が集まってくるかな」

 

 人が慌ただしく集まってくる気配もある。となると、これ以上の長居はまずい。そう思ったわたしは、一気に前に出ることにした。

 

 特殊効果のない飛来物なら、怖くない。色んなものを正面から食らいながら無視して突き進む。

 たぶんマスケット銃くらいの威力はあると思うんだけど、残念ながらそれくらいでダメージを負うような身体じゃあないから……。

 

 近づいてどうするかといえば、同化だ。わたしは普段滅多にやらないから忘れがちだけど、一応柱の女。普通の生き物を体表から吸収できるし、吸収せずその体内に潜り込んだりができる。

 もしもあれが本体と同化したことで見た目が変わっただけなら、たぶん接触からの同化は行けると思うんだよね。スーツタイプだったら……一度抱えてこの場を離れよう。

 

 ということで、相手の眼前。だけどそれを認識するよりもわたしが手を出すほうが早い。やっぱりというかなんというか、身体能力は全面的に幼女のままみたいだ。

 とくれば、振り払うこともできないだろう。わたしが発射されるのは防げないけど、今からやるのが成功すればそれも無効化できる。

 

「よいしょ」

「ギアッ!?」

 

 鞭……というか触手じみた状態にした両手両腕で、相手の身体を拘束する。それと同時に、相手を取り込む要領で一体化……あっ、できた!

 よし。大丈夫、食べはしないよ。このまま身体の中に入り込んで、ちょっとだけ体内を傷つけるだけだから!

 うん、外からの攻撃には強い相手は中からやっつけるのは鉄板だよね。

 

「アアアアアアアッッ!!」

「ちょ、そんなに嫌がられるとさすがにわたしも傷つくんですけど」

 

 ところがものすごい悲鳴を上げながら、のたうちまわろうとするものだから思わずこっちが泣きそうになる。

 そんなにこれ嫌なのかな……。いや確かに嬉しくはないだろうけどさ……。

 

 このままだとわたしの心に致命的なダメージを受けそうなので、さっさと終わらせよう。

 

 えーっと、まだちっちゃいんだし、なるべくあとに響かないだろう場所を選んで、ちょっとだけちくりと……。

 

「アアアアアアアッッ!!」

 

 そしたらそれがまたよっぽど痛かったのか、びくんびくんしながら絶叫してそのままがくりと動かなくなってしまった。

 と同時に、変身が解けて元の幼女に戻る。

 

「ええ……そんなに……? 体内が傷つくくらい、よくある……ことじゃあないな。うん」

 

 しまった、一万年以上人間してなかったせいか感覚がマヒしてる。

 

 そりゃそうだ。麻酔なしで体内をいきなり傷つけられたら、普通死ぬほど痛い。しかもこの子はまだ幼いわけだし、気絶の一つや二つくらいしちゃってもおかしくない。

 うん……わたし見た目はこの子よりちょっと大きいくらいだけど、中身は大人だしなんなら死にそうな大ダメージも稀によくあるから、痛み自体にはもうすっかり慣れ切ってるんだよね……。

 

「……ごめん。いやホントごめん」

 

 ずぷりと女の子から抜け出ながら、とりあえず謝る。気絶してる子に言っても仕方ないけど。

 

 と……とりあえず、このまま放置したら大変なことになる。わたしはこの幼女に【スターシップ】を撃ち込んで、そそくとその場を後にした。

 

「……あれ、待てよ。この子の立場がどうあれ、この時代の法律だとわたしは文字通りの誘拐犯なのでは?」

 

 そのことに気づいたのは、ねぐらにしてるスラム近くの家に着いたときだった。

 

 ……共和政ローマって、虐待されてた子を助けましたって言って通じる時代かなぁ?

 




申し訳ないけどさすがに共和政時代のローマの法律を調べる手段は持ち合わせていないので、うやむや(物理)にして進める所存。

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。