転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

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うやむや(物理)


17.旅は道連れ

「ごめんなさいわたしがやりましたごめんなさい……ぶたないでくださいごめんなさい……」

 

 ……幼女誘拐犯の供述じゃあないよ?

 

 これは目を覚ました幼女が、わたしを見て最初に言ったセリフだ。これに土下座がついてくる。まったく嬉しくないセットがあったものだ。一体普段からどんな生活を送ってたのか、想像するだけでも嫌な気分になる。

 

 というわけで、わたしはすぐに彼女を助けるべく動くことにした。うつろな目で何度も謝罪を繰り返す幼女には、なだめすかすようにしてあやしてスタンド空間の中で休んでてもらう。

 そのついでに【センド・マイハート】を撃ち込んで、治療する。まあ、あの奇妙な姿はやはりスタンドなのか、矢を視認できた幼女にものすごく怯えられるっていう顛末もありましたけどね……。

 

 いや違うんですよポリスさん、誤解です。確かにわたしは思わず幼女を連れてきてしまいました。字面だけ見ると最悪ですね。でもこれには深いわけがあるんです、本当なんです。

 

 ……誰に向けてるのかわからない言い訳はともかく。

 

 この幼女について、あとから調べたことを先に説明しておくと、彼女はあのおじさんの家で使われていた奴隷だった。どうやら見世物小屋で見世物にされていたところをあの屋敷のおじさんが買い取ったらしい。

 

 詳しい来歴は不明。どことなくゲルマン系の雰囲気がある気がするけど、見た目でそういうのを判断できるような知識とか機能はわたしにはないしわからない。

 ただ、背中に生やした不気味な羽と謎の力を振るう娘を嫌った両親に売られて奴隷になった、という話は聞けた。そして、あちこちの奴隷商をたらい回しにされた結果、見世物小屋にたどり着いて今に至る、んだとか。

 

 ここまでだと買い取ったおじさんが善人に見えるけど、買った理由が自分の一族に幼女が持つスタンドを取り込んでローマを牛耳るくらいになりたいから、な辺りもうなんていうか。

 

 で、毎晩のように幼女を犯そうとするも、そのたびにあの同化するスタンドに撃退されてたんだってさ。一般人が毎晩スタンド使いに挑むそのガッツは賞賛するけど、向ける先をもうちょっと考えて欲しかった。

 

 そしてそのおじさん。実はわたしが幼女を連れ出したその日に家が火事になって、それに巻き込まれてお亡くなりになってます。

 

 いや急展開がすぎるようにも思うけど、わたしだってびっくりしたよ! ねぐらに戻ってこれからのことを考えてたらいきなり空が赤くなって、街が大騒ぎになったんだもん!

 聞けば火事で、それが直前までいたところで起こってるってんだから、思わずわたしじゃありませんって言っちゃったくらい驚いたよ!

 

 ただ、原因がまったくわたしにないわけでもなくって。というのも、暴走した幼女と戦ったとき、彼女わたしに向けて燭台を発射してたじゃない? どうもあれがそのまま燃え広がったみたいで……。

 そして運の悪いことにあのとき幼女にぶっとばされたおじさん、ぶっとばされたまま気絶してたみたいで、逃げ遅れて……。

 家族も、幼女を襲って返り討ちに遭う毎日に感覚がマヒしてて、特に起こしたりとかしなかったっていうからなんていうか、因果応報ってこういうことを言うのかなって。しかも彼以外の家族は奴隷も含めてみんな無事って言うんだから、日頃の行いって大事だよね……。

 

 火事自体はわたしのせいでもあるから消火活動は手伝ったし、救助だって手伝ったけど、おじさん火元周辺にいたから間に合わなくってね……。

 

 とまあそういうわけで、なんだかんだあったけどあの幼女はわたしが引き取ることになった。

 

 法律的な面は、先にも言った通り幸い奴隷だったので、お金が解決してくれた。

 うん、家主が死んだ上に家もなくなったわけで、お金がいるだろうと思ってちょっと、ね。元二十一世紀人としてはお金で人の身をやりとりするのは思うところがあるけど、この時代のローマでこれは普通のことだ。

 

 え? いやいや、わたしちゃんと経済活動してますから。お金は各国のをそれなりに持ってるんですよ。カーズ様たちはお前のものは俺のものみたいな感じでかっさらっていきますけど、わたしはちゃんとお金が必要なものは払いますからね!

 

 それはともかく、そこそこの金額(一般人の年収の半分くらい)を払ったから、あちらとしても渡りに船だったんじゃないかな。あのおじさんの趣味で買った気色の悪い小娘、みたいな認識の人ばっかりだったから。

 

 というわけで幼女なんだけど。いや、まさか背中の羽が一般人に認識されるとは思わなかった。

 

 そりゃあ普通の人には受け入れがたいだろう。いや、羽だけなら人によってはキューピッドの化身みたいに崇めるかもしれないけど、暴走したスタンドが本人の意思に関係なく色々巻き起こすとあっちゃあねぇ……。

 あちこちところかまわずものを吹っ飛ばしまくったら、そりゃあ不気味がられても仕方がないんじゃなかろうか。

 これで暴走が加速するとあの姿に変身する話は既にこの辺一帯に広がってるものだから、まあ迫害されるよね。見世物小屋とかで離れたところから見るにはいいけど近づきたくはない、くらいが一般人の歩み寄れる限界じゃあないかな。だから売られたんだろうね。

 

 当初はどこかの孤児院とかに入れてあげればいいかって、思ってたんですけどね。

 だって生活習慣どころか生態が違うし、今はローマにいるけどそれもずっとじゃなくて、カーズ様の命令次第であちこち飛び回る。物騒なことだってする。そんなすさんだ生活よりは、心ある人に引き取ってもらったほうがよっぽど幸せになれるでしょ。

 

 ところが羽を全員が認識できる(ついでにスタンドで事件が起こりまくる)ということで、そうもいかなかった。

 何せあの羽、ただ見えるだけじゃあない。それならマントとかで隠せるけど、スタンドが暴走して中途半端に本体と同化してるからなのか、服とか関係なく生えてるんだ。そのうえで人の目に見えるわけだからもうね。

 連れ立って歩くことすら奇異の目で見られる始末で、引き取ってどうこう以前に、話をするところまで持ち込めないことのほうが多かったレベルですよ。

 

 結果、文字通りわたしが引き取ることになりましたとさ。まさかの一万年ぶりの未婚の母リターンズだよ。

 

 まあ、これも何かの縁だろう。仏教的に言うなら、縁起か。見捨てる選択肢は最初からなかったし、こうなったからには責任を取るべきだろうと腹をくくりましたよ。

 確かに仕事に支障が出るだろうし、それでカーズ様に怒られることもあるかもしれない。でもそんなこと、子供には関係ない。少しでも首を突っ込んだ以上は、面倒見るのがわたしの義務だと思うんだ。

 

 ……というわけで、この幼女にはショシャナって名付けました。元々の名前はあったみたいなんだけど、嫌な思い出でもあるのか名乗ろうとしなくってね。

 

 まあ当たり前だけど、最初は全然心を開いてくれなかった。でもわたしにも羽があるよって言いながら生やしたら、それ以降は一気に懐いてくれた。

 懐くを通り過ぎてしまったような気もするけど、無気力のままずっと心を閉ざしてるよりはマシだろう。断じてわたしが甘やかしているわけではないと思いたい。

 

 そして彼女の生い立ちとかに関する調査も済んで少し。大体引き取ってから三か月くらい経った頃。

 

「おねーちゃん! できたよ!」

「うん、よくできました。ショシャナはいい子だねぇ」

 

 スタンドという概念を理解したからか、彼女は遂に、幼くして自らのスタンドを制御できるようになった。

 これによって彼女は、常に背中から生やしていた羽を消すことに成功。自分の意思で出し入れが可能になり、自由に変身できるようになった。

 

 そう、やっぱり彼女のスタンドは本体が同化して変身するというものだった。一通り試してもらったけど、わたしと戦ったときに見せた圧倒的な防御力も健在だった。

 さらに、触れたものを発射する能力まである。どちらもシンプルだけど、それゆえに使いこなせれば敵対するものにとってはものすごく厄介なものになるだろう。

 

 ……制御しきってもなお、変身後の姿が特撮の怪人みたいなままなのは、彼女の深層心理がそうさせるんだろうか。

 泣いたような悲しげな顔と、ボロボロかつ暗い色彩の身体が心の闇を窺わせる。あの強固な防御力も、もしかしたらそれ由来かも。だとしたら悲しい子だ。

 

 けれどそれ以上に、もう彼女が人目にもつくほどの羽を常時展開させることはもうないだろうことが、今は重要だ。

 

「これで一緒に歩けるね」

「うん!」

 

 頭をなでたわたしに笑う彼女の姿からは、虐待されていたなんて誰も思わないだろう。虐待の痕跡も全部治したし、傍目には普通の子供と変わらないように見えるはずだ。

 いやはや、この短期間で随分変わったとは思うけど、子供は笑顔が一番だよね。

 

「よーし、それじゃあショシャナのスタンドに名前をつけてあげよう。……でも本当にわたしがつけていいの?」

「うん! おねえちゃんおねがい!」

 

 そう言って、べたりと抱きついてくるショシャナ。

 

 だいぶ依存されてる自覚はある。このままだと、わたしがいないと生きていけない大人になりそうで怖い。早いところ人付き合いを学ばせないとなぁ。

 と思いながらも、彼女に合わせざるを得ない形とはいえ実に万年ぶりの人間らしい生活をしてることに、内心喜んでるわたしがいるのも事実だったりする。人付き合いをこんなに楽しいと思う日が来るとは思わなかったよ。

 

 まあ、これが執着になってしまわないか、将来の苦になりやしないかって、思うこともあるんだけど。そのときは念仏と写経をして心を落ち着けて、お釈迦様の教えをしっかり反芻しようと思ってる。

 ……わたしのことだから、どうせうだうだとそれなりの期間悩むような気はするけど。でもそれは今じゃないし、とりあえずそのときの自分の任せようと思う。

 

 まあ、今はともかく彼女のスタンドに名前をあげよう。

 名付けてくれとは言われてたから、実は結構前にもう決めてある。

 

「ショシャナ、覚えておくんだよ。あなたのスタンドの名前は――【ラ・ラガッツァ・コル・フチーレ】!」

 

 願わくば、小さくともあなたが幸せに出会える人生を送れますように。

 




スタンド:ラ・ラガッツァ・コル・フチーレ 本体:ショシャナ
破壊力:なし(本体に依存) スピード:なし(本体に依存) 射程距離:D 持続力:A 精密動作性:C 成長性:A
スタンドそのものは像を持たず、本体と同化することでその姿を変じさせる同化型のスタンド。
物理攻撃のほとんどを相殺する強烈な防御力と、接触したものを発射する能力を持つ。

というわけで皆さん大体予想されてたと思いますが、家族枠です。短期間ですが。
スタンド名に反してキャラ名は特に由来とかないです。いやあるけど、よくある人名です。

それはそうと、いよいよもってストックがなくなったので、そろそろ本当に不定期更新になりそうです。あしからず。
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