近衛兵と警察により、厳戒体制が敷かれたバッキンガム宮殿。夜にもかかわらず煌々と光が交錯し、さながら真昼の様相を呈している。
なぜ年明けのバッキンガム宮殿で、ここまで厳重な警戒網が敷かれているのか。
答えは簡単だ。王室の資産の中からとある宝玉を盗む、という内容の予告状が届けられたからだ。そして指定された日時こそが今日なのだ。
暗号めいた予告文は難解なもので、近衛隊も警察も解読に時間を要したものの、時間切れの前には間に合い、こうして警戒網が敷かれたというわけである。
だがこれがただの予告状であるなら、ここまで警戒されることはなかっただろう。仮に王室のものが狙われているのだとしても、もう少し穏当なものになっていたはずだ。
そうならなかった最大の理由は、差出人にある。踊るような達筆の末尾に記されていた名前は、すべてのヨーロッパ人にこれほどの警戒をするに値する、と思わせるに十分だった。
アルセーヌ・ルパン二世。それこそ、送り主の名前である。
このことは厳に秘匿され、一部の人間が知るにとどまるはずだった。しかしルパン二世は、同様の予告状を王室のみならず報道各社にも送りつけており、ゆえに今回の件は完全に熱狂的な騒動へと発展した。
かつて世間を賑わせた、フランスの大怪盗アルセーヌ・ルパン。何度も逮捕されながらもその度に脱走し、正体が明確には暴かれていない希代の怪盗が戻ってきたのだ。メディアも大衆も黙っているはずがない。
しかも、これ見よがしに追加された「二世」の文字がより人々の想像をかき立てる。
おかげでここ数日の新聞各社は、連日一面記事をルパン特集で埋め尽くしており、政治的なニュースなどはすっかり後ろへ追いやられている始末だ。
結果、メンツを既に潰されかけている警察は殺気立って宮殿に入ろうとし、近衛兵たちと一悶着もあったが、それはともかく。
王室を守る近衛兵も、最終的な目的は同じである。多少の紆余曲折はあったが、両者は協力してルパン二世に対することとなったのだった。
今この場を満たしているのは、緊張感。ほとんどのものが物々しく、鋭い目で周囲を見張っており、誰にも気づかれることなくここに侵入、あるいは脱走できるものなど、一人もいないだろう。
しかし。
ふわり、と人影が上空を駆ける。夜闇に馴染む黒の夜会服に、同じく黒のシルクハット。そして顔を隠す銀色のマスカレイドマスク。あまりにも特徴的すぎ、平素であれば確実に人目を惹く影は、背中にハンググライダーを負っていた。
アルフィーが見たら前世と違うと思うだろうそれが、緩やかに宮殿の上に降り立った。同時に、微かな音と共にハンググライダーが閉じる。
「ひゅー、まさかここまで人が集まるとはなぁ。最後に親父が活動したのは十年以上前のはずなんだがねぇ……ルパンのネームバリューってなぁここまでのものなんだな」
人影……ルパン二世が驚きと誇らしさをないまぜにした口調でひとりごちる。
まさに今、彼の視界はほぼすべて人で埋まっていると言っていい。そのすべてがルパンの名前によって動かされているのだから、彼の言いようも無理からぬことだろう。
だが、仮面に隠れていない部分が若くとも。実際その見た目通りの若造であっても、彼は大怪盗ルパンの技を受け継いだ男だ。気負いはない。
彼はすぐさま動き、するりと宮殿の中へと潜り込む。近衛兵の一人を物陰に引きずり込むと、瞬く間にその顔を模倣して成りかわる。
やがて、夜であればまず見間違えることのないレベルの変装をまとったルパン二世は、悠々と警備の輪の中に加わった。
加わりつつも少しずつ輪から外れるように立ち回り、どんどん目当ての場所に近づいていく。
気づかれた様子はない。彼はなおも宮殿内を進み続ける。その足取りに迷いはない。
何せ、今回は様々な事情から宮殿内の地図や巡回ルートなどが筒抜けだ。既にアルセーヌ・ルパンを襲名している二世がヘマをするような状況ではなかった。
かくして二世は、余裕綽々で宝物庫までたどり着く。こちらも厳重に固められているが、彼の予想を上回るものではなかった。むしろ相当に緩い。
だがこれも仕方ないところがある。というのも、暗号解読に時間がかかった警察は、何が狙われているのかが本当に直前までわからなかったのだ。なんとかものがわかったとしても、今度はそれがどこにあるのか、どういう形で保管されているのか、確認するのにまた戸惑った。動かすべきか否かでも揉めた。
これについては警察側と宮殿側の連携不足によるものだが、いずれにせよ二世は運が良かった。幸運の女神は今、確かに彼に向けて微笑んでいる。
「これか……なるほど、美しい紅玉だぜ。細工も素晴らしい」
そして彼が手を伸ばしたもの。それは、太陽の形に浮き彫りを施された赤い宝石だった。
ルパン一家に対する貸しを許容した依頼主によれば、その名をレッドサン。まさに名前通りの逸品であった。
だが二世は、その美貌に見惚れて我を忘れるような二流ではない。すぐさま特注の布で二重に覆って懐……から取り出した
帰路について、特筆すべきことは何もない。往路と同じく鮮やかで、芸術的な移動とだけ言えば十分である。
だが、屋上からハンググライダーで飛び立ち、宮殿から少し離れたところで二世を襲った出来事は、まったく埒外のことであった。
「!?」
何かが二世の横を猛烈な勢いで通り過ぎ、ハンググライダーに穴が開く。結果、彼は墜落することになった。
無論、彼は慌てることなくハンググライダーを切り離した。足からの着地はできなかったが、父譲りの受け身で二階ほどの高さから飛び降りる程度まで衝撃も殺して済ませる。
しかし、解せぬと彼は眉を潜める。立ち上がりながら周囲を見渡せば、そこはかつて
そしてひとしきり確認を終えた二世が異質な気配を感じて振り返れば、そこには真紅の瞳をギラギラとたぎらせて佇む
「……何者だ?」
「答える義理はないな。何せ、これからお前は死ぬのだから」
問答は無用であった。男は二世にはまるで取り合わず、一気に距離を詰めて貫手を放ってきたのだ。
その勢いはまるで銃弾のようで、とても常人に認識できるものではなかった。
だが二世は、多少の幸運と培った技術によってギリギリで対処して見せた。
対応する方法は知っていた。父仕込みのジパングの技が冴えたのである。
しかし、タイミングはほとんど偶然であった。
「ぐう!?」
そして彼は、その偶然に感謝することになる。かすりすらしていないのに、全身に強烈な衝撃が走ったのだ。
彼の身体は大きく吹っ飛び、街路灯に背中から激突する。明らかに人間の力ではなかった。
「て、テメー……吸血鬼か! 親父から聞いたことはあったが……まさかこんなところで出くわすとは……!」
「今の攻撃を避けたことは褒めてやろう。俺様の正体を看破したこともな。だが幸運は続くものではない。だからこそ幸運と言うのだ」
男が近づいてくる。真冬であるにもかかわらず、吐息がまったく白んでいない姿は異様だった。にたりと笑った口元からのぞく牙も。
しかし、二世は恐怖しない。諦めない。相手が吸血鬼だろうとなんだろうと、こんなところで終わるなど、己の家名はもちろん矜持が許さなかった。
だから彼は立ち上がる。化け物相手であろうと不敵に笑って見せる。
そして、啖呵を切って見せるのだ。
「吸血鬼ごときが粋がるんじゃあない。ふん、ちょうどよかった。初仕事があんまりにも簡単で退屈していたところだ、ちょいと遊んでやるからかかってこいよ!」
同時に彼は、「怪盗『紳士』」と呼ばれた父のようには振る舞えないなあ、と思いながらも懐からあるものを取り出す。
吸血鬼は彼の啖呵を嘲笑って、それをとめることはなかった。
その慢心を見て、二世は勝利を確信する。ただし口にも、態度にも出すことはなく。
代わりに彼が出したもの――懐から取り出したものは、一見すると本のようであった。
いや、実際それは本の機能を持つ。だがそれはメインではない。これの最大の機能は、そうではないのだ。
「【トレジャー・オブ・タイム】」
二世がその名を告げる。同時に、深緋の表紙に描かれた紋章に手のひらを当てて、すぐに離す。
『こんばんは、アルセーヌ様。お会いできて嬉しいです』
すると、どこからともなく女の声が響いた。フランス語だ。
直後、勢いよく本が開いて無数のページが自動でめくられていく。
それを見て、吸血鬼は目の色を変えて身構えた。明らかに超常の変化だったから、無理からぬことではあるが。
しかしもう、遅い。
二世は、その中の一ページに指を挟みこんで動きを止めた。
『はい、旦那様。ルパンコレクション、第三十三番。【プロンジー】起動します』
再び女の声が響く。
すると次の瞬間、本の中から紫色を基調としたイルカのような、機械的なフォルムの物体が三体現れた。いずれも生命力の
対する吸血鬼は、身構えたのに何も起きなかったことに怪訝な表情をする。
当然だ。なぜなら、スタンドはわずかな例外を除いて、スタンド使いにしか認識できないのだから。
そしてこの吸血鬼は、そうではない。
二世もまた、反応を見てそうだと判断した。
だからと言って手加減などしない。彼は指で鉄砲を形作ると、立てた人差し指を吸血鬼に向けた。
「行け【プロンジー】!」
同時に指示を下す。
瞬間、三つの像が勢いよく飛び出し、吸血鬼を襲った。
「ぬう!?」
人ならざる男は、しかし生き物ですらないそれを認識できず、後手に回る。
だがそこは吸血鬼だからか、寸前で不可視の何かがあるらしいことに気がついて身をよじった。
結果、喉元を狙って飛来した一体は狙いを外したが、残りの二体は狙いを過たずそれぞれ脇腹と膝頭を噛み砕く。
ただの人なら、これでほぼ勝負はついたと言えるだろう。片方とはいえ脚の要を砕かれてしまっては、もはや立つことも難しいはずだ。実際、男もバランスを崩してふらついた。
しかし、それだけだった。
すぐさま男の出血はとまり、怪我も癒える。そうしてぐいと立ち直り、にたりと笑って見せたのだ。
「妙な技を使うようだな……だが、所詮人間の小細工よ」
「……うーむ、さすが吸血鬼ってとこか。この程度じゃあなんともありません、ってか?」
ぎしりと男の笑みが深くなる。
だが二世としては、これくらいは想定内。だからこそ、己が繰り出したスタンドを操り、今度は絶え間なく四方八方から襲わせる。
これを受けて、吸血鬼は数秒その攻撃に対応……しようとしたが、数度の打撃を受けるや即座に防御を諦め、二世に突っ込んだ。
スタンドを持たないものが、スタンド使いに対抗する戦術として極めて正しい選択である。何せ、スタンドにはスタンドでなければ触れることすらできないのだから。
ゆえに狙うならば、本体。これはスタンドの有無にかかわらず、スタンド使いと戦う際の鉄則と言える。吸血鬼はそれをたった数秒で看破したのだ。
しかし、やはりスタンドを持たないものがスタンド使いに対抗するのは難しい。
「おっと危ねぇ」
「ぬ!?」
吸血鬼の手刀が二世の首を刎ねんと風切り音を響かせる、その直前。
二世は彼の背後に回っていたスタンドの一体に首根っこをくわえられ、かと思うとそのまま地面の中に引きずり込まれたのである。彼が地中に消える瞬間にはまるで水面のように波紋が広がって、硬いはずの石畳がかすかにうねった。
そして吸血鬼の後ろに、やはりスタンドに引っ張られた状態で、水面から跳ね上がるようにして二世が現れる。
彼はそのまま残る二体のスタンドに左右を支えられると、さながらイルカにまたがったかのような趣で地面や壁を伝い、この場から離れていく。
「あばよ吸血鬼のあんちゃん!」
「な!? 逃げるのか! あれだけ偉そうな口をきいておきながら!?」
「あったりまえだろ! こちとら泥棒なんだ、ヴァンパイアハンターは本職じゃあないんでね!」
笑い声が遠ざかっていく。あちこちに残響するそれは、彼の居場所を辿っていく手がかりには向かない……が。
「舐めやがって若造が……!」
吸血鬼には関係のないことだ。彼は全身をわななかせると、下半身に力を込めて遠ざかる二世の声に向けて飛び出した。
その先には、粗末ではあるが建物がある。あったが……そんなものは関係ないとばかりに、吸血鬼は突っ込んだ。
轟音と共に壁に穴が空き、そのまま突き進む。途中に何人かと室内ですれ違ったが、ぶつからなければ無視し、ぶつかったならそのままついでに喰らって走り続ける。
「そこか!」
そうして、吸血鬼は二世に追いついた。吸血鬼のフィジカルでゴリ押した、とも言う。しかしそれができてしまうからこそ、吸血鬼は恐れられるのだ。
悠々と地面と壁面を泳いでいた二世は、この無茶苦茶なやり方に目を剥く。
「げぇっ、マジかよ!? できるからって、普通建物ぶち抜いてくるか!?」
「些事だな!」
「大事だろ!? あーっ、親父が吸血鬼に関わるなっつったのはこういうことかよ! お前倫理観とかないわけ!?」
「知らんな!」
吸血鬼の拳が振るわれる。
二世は慌ててその壁面から離れて向かいの壁面へと飛び込んだが、直前までいた壁はいとも容易く粉砕された。
(おいおい冗談じゃねーぞ! 周りにまだ警察やらなんやらがウヨウヨしてるってのに!)
負ける気はしない。父から受け継いだスタンドを駆使すれば、間違いなく勝てるだろう。
だが二世の目的はあくまでレッドサンの奪取と速やかな帰還であり、吸血鬼を倒すことではない。
むしろここで吸血鬼退治に精を出すと、まださほど宮殿から離れていないせいもあってすぐに見つかってしまうだろう。吸血鬼に至っては忍ぶつもりがまるで見られないし、やればやるほど二世の目的は遠ざかる。
(さてどうしたもんか……)
紙一重の逃亡を続けること十数秒。
「おい! こっち、こっちだ!」
飛び込んだ路地の辻で、二世を招く手と声があった。まだ若い二世の声よりもなお若い声で、声変わりはしているようだが明らかに幼さが残る。
しかし強い意思を感じる声でもあった。二世の泥棒としての勘が、行けると告げていた。
だから二世は、躊躇うことなくその招きに乗ることにした。スタンドに守られながら、手が招くほうへと迷いなく飛び込む。
「こっちだぜ!」
現れたのは、やはり少年だった。ただ、少年と言うにはかなり体格がいい。発展途上のはずの肉体は既に厚く、将来は間違いなく巨漢になるだろう。
だが顔つきや、何より眼。そこに宿る、理知的ながらもキラキラと光が踊るような色合いの眼は、間違いなく少年のそれであった。
そんな少年は、二世が並んだのを見るやともに走り始める。
スタンドを消し、本も閉じて懐にしまいながら、二世は彼に声をかけることにした。
「よう少年! ノった俺が言うのもなんだが危ねぇぞ?」
「任せとけって! こう見えてもケッコー実戦経験豊富なんだぜ!」
「そいつぁ頼もしくて涙が出るね! だがさすがに吸血鬼との実戦経験はねーだろ?」
「ないなぁ! ないけど、知識としては知ってんのよこれが!」
にひひと笑った少年の口元から、特徴的な音が響いてくる。
音にするならコオオォォ……とでもするべきそれに、二世は覚えがあった。彼の表情が変わる。
「それは、……まさか少年、その歳で波紋を?」
「お? もしかして波紋をご存知?」
「習得はできなかったけどな! うちの一族は波紋とは違う流派でね!」
「マジ? それはとっても気になっちゃうなァ〜……ま、でもそういうのは後回しかな!」
どごん、という建物がぶち抜かれる音が後ろから響いてきた。二人してちらりと視線を向けてみればその通り、そこには吸血鬼が建物を破壊しながら猛スピードで突進してきている。
顔は凶悪に歪んでおり、正面にあるものはすべて破壊する、と言いたげな威圧感がそこにはあった。
あったが……二世はもちろん、少年もまるで動じていなかった。
そして改めて前を向き、
「こっちに!」
少年の指示通りに、さらに狭い路地へと飛び込んだ二人。
やはりそれを、最短距離で踏破する吸血鬼。
そしていよいよ追いつかれる……となったところで、少年がしかけた。
「行くぜ! ホラご一緒に……せーのッ! ホップ! ステップ! ジャーンプ!」
言うなれば一二の三、と言ったところか。
そんな調子で、二人は同時に大きく跳躍した。そして、かなりの距離を跨いで勢いよく着地する。
すると、その衝撃に反応してか、周辺に一気にロープが出現した。
雪の中や物陰などに伏せられていたのだろう。その出来栄えは実のところさほどではなく、第三者目線で鬼ごっこを見ていればすぐに気づける程度のものでしかなかった。
しかし鬼ごっこの当事者にとっては……特に鬼をしていた吸血鬼には、突然ロープが現れたように見えた。彼はそのまま吸血鬼は身体を絡め取られていく。
これが投石の類であれば、素直に蹴散らせただろう。しかし柔らかくしなやかなロープは単純な力で破壊できるものではなく、少なくとも臨界を迎えるまではぐにゃりと動いて吸血鬼を捕縛した。
「ぐぬっ、なんだこれは!?」
「ホォー、こいつは見事だ。これは少年が?」
「まーねぇ! ちょいとロープの扱いには自信があるのよ……ひひひ」
そんな吸血鬼の姿を遠巻きに眺めながら、振り返った二人は呑気に言葉を交わす。
吸血鬼にしてみれば、まったく癪に触る光景だった。彼の額に青筋が浮かぶ。
彼は身体に力を入れた。文字通り人外のエネルギーが働き、一気にロープが引きちぎられていく。
そうして再び自由になった吸血鬼は、更に勢いづけて飛びかかった。
――が、少年は動じない。むしろ不敵に微笑み、人差し指を吸血鬼に向けて見せた。
「お前は次に、『こんな小細工をしても無駄だ』と言う」
「こんな小細工をしても無駄だ! ……はッ!?」
少年の予言めいた物言いに、吸血鬼が見事に乗せられた。しかしすぐに気を取り直して、標的を少年に切り替える。
「次のセリフは『舐めやがってお前からぶっ殺してやる』だッ」
「舐めやがって! お前からぶっ殺してやるッ!」
今度は吸血鬼も反応しなかった。
しかしそれならば、最初からしないでおくべきだった。彼は既に、少年の術中に落ちている。
少年が、いつの間にか手にしていたロープを勢いよく引っ張った。すると、ちぎれたはずのロープがぐんと伸び上がり、再び吸血鬼を拘束したではないか!
「な……っ、何ィこッこれは!?」
「この辺は街灯も少ないからなァーッ、道端の暗がりにはちゃあんと気をつけておかないと痛い目見るぜ! 雪の中なんて特にねェーッ!」
「くっ、この……ッ!」
「さ〜ら〜に〜? ダメ押し、行っちゃうよォン!」
コオオォォ、と波紋の音が響く。
吸血鬼の目が見開かれる。
「
太陽の衝撃が少年の手から放たれ、ロープを伝い、吸血鬼を襲う。
雪の中に隠れていたロープだ、水分はたっぷり吸っている。であれば、波紋が伝わるのは容易い。
「があああぁぁぁ!!」
波紋が入ったとき特有の衝撃音が鳴り響き、ばたりと吸血鬼が倒れる。その身体は、既に溶け始めていた。
ひゅう、とそこに口笛が鳴る。
「やるじゃん! 見事な手品だったぜ少年!」
「でっしょォ?」
二世の手放しの賞賛に、少年は笑って振り返る。
彼を迎える形となった二世もまたにやりと笑い、やや畏まって声をかけた。
「少年、名前は?」
「ジョセフ・ジョースター」
問われて名乗った彼は、やや乱れた前髪をぐいとかけ上げて、笑みを不敵に深める。
「JOJOって呼んでくれ、ルパン二世さん!」
ルパン二世をスタンド使いにするか、それとも怪盗チェンジさせるかで直前まで悩んで一度は怪盗チェンジさせるところまで書きましたが、結果的には没にしました。
あんまりクロス要素足すのもアレかなと思ったので、素直にスタンド使いのほうがいいかなって。怪盗チェンジさせるとなると、異世界と明確に繋がりがあると思われかねないですしね。
でもせっかくだし、ルパレン要素もちょっと残してみたりして。スタンド名はまた別だけど。