転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

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7.初スタンドバトル

 発端はユーラシア行きの道中で村に立ち寄ったことだ。わたしたちがいくら不眠不休で活動できるとはいっても、体質の関係で昼間は移動ができない。だから夜が明けるころには太陽を避けなきゃいけない。今回はたまたまそのタイミングで村に入れたってわけ。

 

 とはいえ、わたしの日光耐性は仲間でも随一だ。これは今もなお変わらない。ノーダメージとはいかないけど、大体平均して四十分くらい。調子のいいときは一時間近く日光の下で石化することなく活動できる。天気が悪いともうちょっと行ける。これ以上は伸びそうにないけど、それでも十分だ。

 

 だから屋内で休憩するカーズ様たちを尻目に、村に繰り出して人間の暮らしぶりを眺めたりスケッチしたり、ときには噂話に耳を傾けたりしてたんですよ。何度か休憩を挟みながら、ツノを隠して人間に擬態しつつね。

 今まで何度か言ってきたけど、わたしは歴史や文化に強い関心を持っているからね。柱の男の一味ということに思うところはあるけど、こういう瞬間がわたしにとってはとっても楽しいひとときなわけですよ。

 

 で、そろそろ日も暮れてきたし戻るか―、って思ってカーズ様たちのいる家に戻ったんですけどね。

 そしたらですね……なんとこの辺を任せてる吸血鬼、死んじゃってまして。壁に空いた穴から差し込んできた日光に焼かれて。

 

 その壁の近くに立って、死んだ吸血鬼の灰を見下ろす屈強な男が一人。周りには明らかに戦いの痕跡。

 ところがそんな中、部屋の隅で椅子に座って優雅にわたしのスケッチ集を眺めてるカーズ様と、彼と一緒に談笑しているみんなの場違い感と言ったらッ!

 

「……ええと、え? あの、なんですこの状況?」

「見ての通りだ。あの人間が、仲間を取り戻しに来たとか言いながら乗り込んできてな」

「ええ……だからって普通吸血鬼が人間に負けます?」

「ふふふ……どうやら例の力を使うようだぞ」

「え゛、マジですか?」

 

 例の力……まさか、スタンド使い?

 

 恐る恐る男に目を向ける。いかにも先史時代っぽい雰囲気のフェイスペイント……入れ墨……? どっちかはわかんないけど、そういう模様が顔に描かれている。

 それと目を引くのは、両手にそれぞれ握られたマカナ(刀身に黒曜石を挟んで殺傷力を上げた木剣)だ。あれはわりと未来の、アステカで使われていたものだったかと思うけど……そうか、この時代でも既にあるにはあったのか。地域も近いし納得はできる。

 

「オマエたちも……あのバケモノの仲間か?」

 

 まじまじと観察していたら、男が口を開いた。思ったより高い声だ……じゃなくって。

 声質は問題じゃあない。そこには明らかに怒りの気配が漂っていた。仲間を取り戻しに来た、ってのは真実っぽいねこれ……。

 

 ってことはこれ、あれじゃないの? もしかしなくても、悪役はわたしたちなのでは?

 そんなことを考えながらカーズ様に視線を戻したところ、

 

「ふん、仲間とは失礼だな人間。あれはただの手駒にすぎん」

「カーズ様ー!?」

 

 なんでそんな煽るようなことを!

 

「そうか……じゃあ、オマエたちが一番悪いやつか! 許さないぞ……オマエたちのせいで、オマエたちのせいでワタシの村はッ!」

 

 完全にまっとうな動機のある復讐じゃあないですかやだー!

 しかも今ので感情が高ぶったのか、男の身体からもう一つ、別のヒトガタが湧き上がってきた。大柄な男の分身と言われても納得する、筋骨隆々な立ち姿。その顔には、男のものと同じ模様が描かれているッ!

 

 ――人型のスタンド!

 やっぱりこの男、スタンド使いだ! まさかこんなところで顔を合わせる羽目になるなんて!

 

 というわけで、前回のラストシーンに戻る。明らかに目の色を変えて動揺したわたしを見て、男ははっきりとわたしも同じ力が使えると察してしまったんだ。

 

「オマエ……まさかワタシの守護霊が見えるのか!?」

 

 これなんて答えればいいですかカーズ様ー!?

 せめて方針! 方針だけでもください! そしたらわたし何とかしてみせますから!!

 

「なるほど、その反応……やはりアレの使い手か。それではただの吸血鬼程度では苦戦してもおかしくはないか」

 

 くっそう、完全に面白がってるなこの人!?

 

 そして、今回ばかりはわたしもジョセフの気持ちがわかるぞ!

 次にカーズ様は、「お前に任せる」と言うッ!

 

「面白い……アルフィー、ここはお前に任せてみよう」

 

 ほらやっぱりなー!!

 くそう、こうなったらワムウ! ワムウだけが頼りだ! こういう未知との戦いは君が一番楽しめるやつでしょ!?

 

「カーズ様、ここは私が!」

 

 ほら! さすがはワムウだ! さすがは生まれついての戦士!

 

「いやワムウ、今回は控えよ。能力者同士の戦いがどういうものになるのか、確認しておきたいのだ」

「ム……なるほど。わかりました、それでは今回は、私も見に徹しさせていただきます」

 

 ワムウーッ!!

 

「ふんっ!」

 

 そして動揺する間も与えず突っ込んでくる男! 勘弁してよもー! わたし、非戦闘員ですよ基本的に!

 

「…………」

 

 あっ、今やれって意味で顎しゃくりましたね!?

 もー! もう、本当に仕方ないですねこのカーズ様は!

 わかりましたよやりますよ、やればいいんでしょ!! そうですよわたしはカーズ様の助手ですからねッ!!

 

「うひっ、とぉ、ちょ、まっ、待って待って、ちょっと待ってってば!?」

「待てと言われて、待つやつがいるか!」

「まったくもってその通りですねごめんなさい!!」

 

 男の前に出た人型のスタンドが、猛烈な勢いでラッシュを放ってくる。明らかに人間の動きを超えたその速度、間違いない。このスタンド、近距離パワー型!

 

 あっ、でも意外とイケる!? 散々戦闘訓練をさせられたからか、動体視力も反射神経もついてこれる! 全部を回避できてるわけでもないけど、これくらいなら!

 なんだ、わたし強くなってるじゃん! いや、種族としての能力が高すぎるだけか!? どっちだ!?

 

「姉上は相変わらず、強いのか弱いのかよくわからないですね……間違いなく防御や回避は一級品ですが」

「はっはっは、確かに。あいつ避けることだけはやけにうまいもんなぁ」

「敵の能力が見えているのだ、ならば回避自体は容易だろう」

「なるほど」

 

 君たち! 何をのんきに実況解説してるのかね!! わたしゃいっぱいいっぱいですよ!

 

 ま、まあ? 【スタープラチナ】とか【クレイジーダイヤモンド】のラッシュがどれほどのものかわかんないけど、確かにこのレベルのスピードなら正面からなら普通に対処できそうだけどさぁ!

 

 というわけで、

 

「ていっ!」

「!?」

 

 右手を腕からぐねりと伸ばして操作して、鞭のように変形。それを振るって相手本体を打ち据える!

 

「んえっ!?」

 

 ところがどっこい、その瞬間わたしの腕ははじかれていた。

 

「むう、今のは」

「どうやら何らかの能力が発動したようだ」

 

 人間の動体視力じゃ見切れないとは思ったけど、カーズ様の言った通りとっさにスタンドを戻して防御したんだろう。その判断は正解だ、鞭と同じようなものだと思って腕とかで防御してたら、そこから腕一本食べに行ってただろうから。

 

 ただ、男の防御は正確に言うと防御じゃなかった。スタンドがあさっての方向を殴ったと思ったら、そこから先の腕が消えて、まったく関係のないところにあった私の腕を殴り飛ばしたのだ!

 何それ、どこでもドア的なやつ!? 攻撃を遠距離に飛ばせるって、それずるくない!? あのパワーを相手の予期してないところに叩き込めるわけじゃん!?

 

「はあっ!」

「うべっ!?」

 

 と思っていたら、今度は後頭部に一撃を食らった。男のスタンドは明らかに虚空を殴った体勢なのに、ある地点から先の腕が奇妙なもやに包まれて消えている。

 

「っで、ぃったぁ!? くっそぉ!」

 

 殴られた反動を利用して前に跳び込んで片手での側転を決めながら殴られた辺りを垣間見たところ、空中に奇妙なもやが浮かんでいて、そこからスタンドの腕が伸びていた。

 

「……どうだワムウ、わかるか?」

「ただの遠距離攻撃では断じてないかと。恐らく、攻撃を別の場所に忽然と飛ばす、か……あるいは攻撃そのものを設置する……そのようなものではないでしょうか」

「ほーう、そいつぁなかなか面白い技じゃあねーか」

 

 はい実況解説ありがとうございます!

 

 しっかしこれ、吸血鬼のパンチと同じくらいの威力だな!? 波紋がないからそこまで脅威ではないけど、それなりに来るものがあるぞ!

 波紋なしで攻撃を受けるとゴムみたいに包み込んで威力を吸収するのがわたしたちの体質なのに、純粋にパワーでそれを超えて来るとかおっそろしいよ!

 

「い、今のが痛いで済むのか……!? くっ、まだだ、まだ行くぞッ!」

 

 男がおののきながらも一歩前に踏み込む。それに応じる形で、スタンドも腕を振るう。

 その腕先が、また消える。今度の出現地点は……わたしの横っ腹か! いいよ、これは回避できそうにない。それなら下手に避けるより、覚悟の上でもらっておこう!

 殴られた反動を利用して、横に吹き飛ぶわたし。けどこれ以上はさせないぞ。種はわかった。それにもしかしたら何かまだ能力があるかもしれないし、これ以上は!

 

 というわけで、吹き飛ばされながらの空中で、わたしは自身のスタンドを呼び出す。

 

「【コンフィデンス】!」

 

 それはあえて文字で言うなら、「ギュパン!」って感じ。そんな感じの雰囲気で、わたしの手の中に弓が出現する。ルビーのような輝きを放つ、かなり大きめの弓。

 これこそわたしのスタンド、【コンフィデンス】!

 

「!」

「いくよ!」

 

 いまだ空中を吹き飛ばされながらも何もないはずの弓を引けば、そこにどこからともなく矢が現れた。鏃はもちろん。スタンドを呼び起こす鏃と同じデザインだ。

 わたしはそれを放つ! 単発じゃあない、連続発射だ! ふっふっふ、何百年も訓練したからねぇ! 速射もできるようになったんですよ!

 

 けど、男は見事にそれに対応してみせた。ほとんど間を置かずに連射したのに、華麗な体さばきでギリギリのところを回避していく。

 嘘でしょ。どんな動体視力してるの。それともこの時代の人間ってみんなそんななの?

 

「ほう」

「やるじゃあねーか」

「そうですね。……ですが、人間ではここらが限界でしょう」

 

 また実況解説組が何か言ってる。

 でもその通りだ。【コンフィデンス】の矢が直線にしか飛ばないと思ったら大間違いだ!

 

 というわけで、おかわりと行こう!

 わたしはもう一度、矢を連射する。数は七本。射程距離内で同時に出せる矢が七本までなんだよね。

 

 と、ここまでならさっきまでと同じ。だけど今度は違う。野に放たれた七本の矢は空間を走り、広範囲へと拡散した。

 そして、多方面から同時に男へ殺到する!

 

「な……っ!?」

 

 ふっふっふ、なんてったって【コンフィデンス】の矢は自由自在! わたしの意思に従って、その使命をまっとうするまでいつまでも(誇張)どこまでも(誇張)飛び続けるんだよォー!

 だからたとえば、直角にだって曲がるのさ!

 

「く……っ、くそっ、くそぉっ!」

 

 さすがにこれは避けられないと判断したんだろう。男は即座にスタンドで攻撃を防ごうとした。自分の身体ごと横に回転しながらラッシュを放ち、それで矢を叩き落そうとする。

 

 実に見覚えのある光景……と思ったけど、ん? わざわざ回転してまでラッシュするってことは、あの空間飛び越えパンチは見えないところには出せないのかな?

 でも、どれだけラッシュを放っても回りながらである以上、タイムラグがどうしても発生する。前後左右、さらには上下からも飛んでくる大量の矢に対応するには、それだけじゃあ難しいだろう。

 何せあの無敵の【スタープラチナ】でさえ、ただ全方位から飛んでくるだけのナイフ(ただし吸血鬼が投げたもの)を防ぎきれなかったのだ。意思を持って動き回る矢を防げる道理はないね!

 

 まあ実を言うとわたしが同時に制御できるのは今のところ二本が限界で、あとはわりと適当に飛んでるんだけどね。状況を見て適度にコントロールする矢を入れ替えることでごまかしてるだけだ。

 それに矢は射程範囲外に出るだけじゃなくて運動エネルギーを喪っても消えるんだけど、物理法則を無視した挙動を何度もさせると普通よりその減少が早い。命中するころには普通の矢程度になってるのはよくあるし、調子こいてたらすぐ消える。

 そんなだから、コントロール下にないやつとか動かしすぎたやつはちょくちょく横に逸れたりあっさりはじかれたりして消えてるんだけど、その間に次の矢を放てば問題ない。ふっふっふ、これぞ我が必殺の布陣!

 

「あれが出たようだな」

「みてーだな。あれは実際ちぃーっとばかし厄介よ」

「はい、どの方向からも絶え間なく攻撃が続くというのは、なかなかに対応しづらいものです」

「ま、俺たちにはチョビっとしか効かんけどな」

「面倒なだけで、威力が低いからな」

「おう。だったらどうにでもならーな」

「同感です」

 

 ……なおカーズ様はもちろん、エシディシやワムウにも普通に負ける模様。

 必殺じゃないとか言わないで……あの人たち見えない矢の雨に構わず普通に突っ込んできて強制的に本体での接近戦になるから、わたしとは相性が悪いんだよ……。それというのも柱の男が生物的に強すぎるのがいけない……!

 

 ちなみに今回戦って初めて気づいたんだけど、【コンフィデンス】の矢はスタンドエネルギーだから矢自体をスタンドで攻撃されると普通にダメージになって返ってくるっぽい。今みたいなラッシュでの攻撃的防御でも同様。

 だから今、わたしの身体には少しずつ傷ができてて、なんなら内臓もさっき殴られたのもあってそれなりに痛む。

 つまり、この広範囲攻撃はスタンド使い相手には諸刃の剣。ちぃ覚えた。

 

 覚えたところでそろそろ決めよう。わたしは飛び回る矢と共に、一気に距離を詰める。

 

「……ッ!」

 

 男はそれに備えようとするけど、スタンドは矢の対処で手一杯。

 それはわたしも似たようなものだけど、本体の戦闘力には大きな差がある。わたしは戦士ではないけど、柱の男の一味。吸血鬼を上回る身体能力を持っている。

 だからこそ、本体同士の戦いに持ち込めばスタンド使いとの戦いでもそうそうは負けない。はず。

 

 一気に踏み込んで、男を殴り飛ばす!

 

「く……っ! させない、()()()()()()()()()()()()()()()……!」

 

 それを見て、もうさばききれないと悟ったんだろう。男は覚悟を決めた顔をして、矢の雨の中前に踏み出した。

 完全に、刺し違えてでもわたしを倒す気だ。スタンドも同様で、今までで一番のエネルギーを感じるパンチがわたしに向かって飛んでくる。

 

 でもね、残念だけどそれは予測済みだ。これくらいのことは、まだ小さかったころのワムウも普通にしてきたからね。追い詰めたからってそこで気を抜かない癖はついている!

 

 わたしは前に踏み込みながら、迫りくるパンチを冷静に正面から見つめながら、少し前から硬化させていた右手を繰り出す。

 身体の操作ももう慣れたもので、これくらいはかなりの短時間でやってのけることができるようになった。モース硬度で言えば、8くらいだッ!

 

 すぐ目の前で、男のスタンドの拳とわたしの拳がすれ違う。速度はほぼ互角! 距離はわたしのほうが少し遠い! 

 このままじゃあ攻撃を食らってしまう……けど! わたしの! 腕は! めっちゃ伸ばせる!

 

 ズームパンチもかくやの速さでぐいんと伸びたわたしの拳が、男の腹部に突き刺さる。捨て身で攻撃に集中していた彼はその直撃を受けて、文字通り腹に穴が開いた。

 

「ぐがッ、がはあっ!?」

 

 血反吐を吐きながら吹き飛ぶ男。勝負あったな。そう思った瞬間。

 

 わたしのすぐ横で、壁が吹き飛んだ。

 穴が開いたとか、崩れたとかじゃない。文字通りに吹き飛んだんだ。どれだけの衝撃が加わったかは、察して余りある壊れ方だ。

 

 だけど、それで何ができるっていうんだろう? 男が、自分の命も捨てて放った最後の一撃があさっての場所を破壊しただけ? そんな意味のない行動をするなんて、とても思えないんだけど――。

 

「――うぇっ!?」

 

 そこでようやく、わたしは男の意図を悟った。吹き飛んだ壁の向こうにあったものを見て、初めて。

 

「そういう、ことか……ッ!」

 

 ぐっと歯をかみしめて、これから襲ってくる痛みを覚悟する。

 

 太陽。壁の向こうに、それがあった。わたしたち闇に生きる一族の天敵にして、唯一の弱点。山の彼方に向かいつつあるそれは、赤く暮れなずんではいるものの確かにまだそこにあった。

 そして遮るものがなくなったこの場所にその赤い光が一直線に差し込んできて、わたしを襲う。

 

「……ッ!!」

 

 うへー、痛い! しんどい!!

 

 そりゃあ確かにわたし一族で一番太陽耐性あるし、なんなら歴史上もっとも太陽に強い女と言っても過言じゃあないと自負してるけど!!

 我慢できるだけで! 別に痛くないわけじゃないの!!

 夕日は南天してるときよりは痛くないけど! 痛いものは痛いです!!

 

「うぐぅ……! や、やってくれたなぁ……!」

 

 なるほど、とっさの機転としては十分すぎる成果だよ。これがわたしじゃなかったら、十分相討ちになってたと思う。

 

 ……いや、わたしたちは吸血鬼と違って石化するだけだし、わたしでなくともみんな即座に石化するほどやわな身体でもないから、どっちにしても勝ちは揺るぎなかったと思うけど。

 それでも、あの土壇場で一矢報いた男は間違いなくひとかどの戦士だよ。

 

「……く、くそ……ぅ……し、死ななかった、か……」

「うん……ごめんね、わたし太陽にはちょっと強い体質なんだ」

 

 そしてわたしは、男の前に立つ。それからそこに片膝をついて、彼の上半身を起こした。

 

「……ワタシの……負け、だ……」

「うん……わたしの勝ちだね」

「……殺、せ……」

「……できればしたくないなぁ」

 

 しなくっちゃあいけないのは、わかってる。だからそう言いはしても、手を止めることはないんだけど。

 

 それでもやっぱり、わたしはできるだけ人を殺したくない。

 今のわたしがそれを言っても、偽善でしかないことはわかってるんだけどね。でも、この気持ちはきっと、忘れちゃあいけないものだとも思うんだ。

 

「……最後に何か言い残すことは?」

「……聖、地に……埋、そ、う……を……」

 

 そこから先は、聞き取れなかった。でも、言わんとしていることはわかった。

 だからわたしはまっすぐ男の目を見て、静かに頷く。

 

 そうして、男の身体から力が抜けて。彼の野太い腕が、ごとりと床に落ちた。

 

「……さよなら、名前も知らない戦士さん」

 

 もう答えを返さない男に、わたしは声をかける。同時に彼の目を閉じてやりながら。

 

「よくやった、アルフィー」

 

 そこに、みんなが後ろから声をかけてきた。その中で、カーズ様がゆっくりと拍手をしてるのがわかる。

 振り返れば彼は、差し込んでくる夕日を避けながらこちらに近づいてきていた。

 

「お疲れさまでした、姉上」

「ああ、アルフィーにしちゃあがんばったんじゃねーか?」

「ふん、まあまあだな」

「……ありがとうございます」

 

 答えながらも思わず目を伏せたわたしの横に、カーズ様が同じように片膝をついた。そして今まさに息を引き取った男に手を伸ばす。

 

 意外だな……カーズ様が立ち向かってきた相手に手を伸ばすなんて……。

 

「……って、カーズ様? なんで石仮面を持ってるんです?」

「知れたこと。この地に置いた吸血鬼は死んでしまったからな。この男に代わりを務めてもらうのだよ」

「ええ……あの、この人もう死んでるんですけど」

「私の見立てではまだ間に合う。なに、人間が意外としぶといことはお前も承知しているだろう? 完全な死が全身を覆うまで、魂を喪うまで、多少だが猶予がある」

「だからって戦士として死んだ人を吸血鬼にするとか……相変わらずやり方がエグいですよカーズ様……」

 

 はあ、とため息をつくわたしをよそに、カーズ様は手際よくやることを終わらせてしまった。

 止める間なんてなかったけど、どっちみちわたしが止めてもカーズ様は強行しただろうし、なぁ……。

 

 ごめんなさい戦士さん……あなたをあるべきところに戻せそうにありません……。

 




スタンド:なし(本体は守護霊と呼称) 本体:古代人の戦士(名前決めてない)
破壊力:B スピード:C 射程距離:B 持続力:C 精密動作性:A 成長性:C
顔に本体と同様の入れ墨が刻まれた人型のスタンド。近距離パワー型。ステータスでわかる通りスタープラチナとかクレイジーダイヤモンドに比べると攻撃力にはかなり劣る。
その代わり本体の視界内の場所に攻撃を転移させる能力を持ち、劇中されたように本体のあずかり知らぬところから不意打ちで一撃をたたき込める。しかも射程範囲が近距離パワー型にしてはちょっと長め。完全に相手が悪かった。

デイリーランキング2位がとっても嬉しかったので、今夜もう一話更新します。
主人公の収納能力はそちらで。

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