転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

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14.合流

 ジョセフ、中米に向かうの報を聞いたわたしとジョナサンは、大慌てでそれを追いかけた。

 そしてあれこれと情報を集めた上で、彼が今どこで何をしているのかを知って……これまた大慌てで現場に踏み込んだとき、既にサンタナは死にかけていた。けど死んではいなかったので……。

 

 ……セーーーーフ! セーフ! 危ない! 本っ当にギリギリのタイミングだった!!

 

 決着のついた場所が屋内だったり、シュトロハイムが健在だったり、ドイツ軍の被害が少なかったりと、原作と異なる点も多々あったけど……まあね、セーフだよセーフ。

 ジョナサンはサンタナが死にかけてたことに関して、ジョセフにしっかり説明しておけばこんなことにはならなかったはずだと地味に凹んでたけど。あとあと聞いた感じ、二人が戦った最大の理由は昔わたしがちらっとこぼした予言(笑)のせいらしいし、ジョナサンは悪くないよ。

 

 ……うん、わたしが悪い……(震え声

 

 ともかくそこからジョナサンがドイツ軍を説得して、サンタナの回収がなされた。移送先はテノチティトランのSPW財団支部で、より具体的に言うならそこの研究所だ。

 

 シュトロハイムがめちゃくちゃごねたけど、そもそもドイツ軍は原作と違ってサンタナ王国内に独自の拠点を持っていない。波紋使いのジョナサンとジョセフが財団側についていることもあって、最終的には渋々認めた。

 そんな彼ですら、サンタナ王国側の施設に運び込むことは大反対してた。なんか彼的に、王様の相手はもう嫌だってのもあるみたいだけど、何があったのやら。

 

 ちなみに原作と違いシュトロハイムには上官がいたらしいけど、ゴタゴタに巻き込まれて重傷らしい。なんか、焦って階段から転げ落ちたとかなんとか。そのため、原作同様現在の中米方面における代表者はシュトロハイムになるようだ。

 

 ……で、諸々あってから三日後。SPW財団の研究所にて、報告会があった。財団の研究者たちを中心に、サンタナについてわかったことが話し合われるのだ。

 オブザーバーとして、財団のトップであるスッピーと、波紋使いのジョナサンとジョセフ。あと、ドイツからシュトロハイムが参加している。

 

 王様は抜き。彼らを入れるとややこしくなるからというのは、ジョセフとシュトロハイムがまさかの同意見だった。本当によっぽどのことがあったんだな……。

 

 ただこの話し合いの直前、サンタナ王国の王様が色々と難癖をつけてきたんだけど……わたしがサンタナに扮して私室に現れてみたところ、護衛の皆さん含めて泣きながら土下座された。サンタナを殺そうとして逆に殺されかけたみたいだから、まあ気持ちはわかる。

 もう二度としませんと、エシディシもびっくりの大号泣で誓ってきたけど、でもとりあえず保留にしておいた。これはサンタナが決めるべきだろうからね。

 

 それはともかく、これ以外は原作の流れと大体一緒だ。行われてる場所とメンツは違うけどね。あと、わたしからジョナサン伝いに情報が流れてるからか、原作よりは詳細に話されてた。

 サンタナはこのまま調査対象として紫外線を浴びせ続け、生物としての柱の男の肉体について研究していくことになったのも一緒。まあ、それは表向きで復活させるけどね。

 

 ただしシュトロハイムがいることと、彼が五体満足ということもあって、ローマに柱の男がまだ三体いる情報も開示されている。実際の対処にはジョナサンたち波紋戦士がこれに当たるわけだけど……シュトロハイムがドイツも援助する用意があると明言してくれた。これは大きい。

 

 あとは、どこにいるかまったく情報がないわたしについても話題に上がっていた。手掛かりはないのか、目覚めているのか、そもそも生きているのか……などなど。

 

 これはジョナサンが詳しいどころか、普通に一緒に行動までしてるから彼は事情を話せるわけだけど……ここではまだ話さないでおいてもらう。彼に嘘をついてもらうのは心苦しいんだけど、わたしのことを知る人間はできる限り少なくしたいって二人で一致してるからしょうがない。

 そしてそんな彼の話を聞いた人間の反応は、二つ。何か隠してるんじゃあないかと言い募るか、隠していることは察した上であえて黙ってるかだ。なんていうか、ジョナサンに嘘をつく才能がなさすぎる……紳士だからね、仕方ない。

 

 とはいえ、この場はなんとかスッピーがなだめてくれたので、一応は乗り切ることができた。財団トップとしての権限で反論をぶった切ったとも言えるけど……。

 

「……で、おじいちゃんはアルフィーとかいうやつの、何を隠してるんだ?」

 

 そして話が不完全燃焼気味に終わったあと。サンタナを遠巻きに眺められる部屋に残ったジョナサンに、ジョセフがズバリ切り込んできた。

 と同時に、スッピーが入り口のカギをかけて部屋を封鎖する。息が合ってるようで何よりだよ。

 

 まあでも、この二人には話してもいいって、事前に話し合ってた。スッピーの口の堅さは信頼できるし、ジョセフに至っては完全に当事者だもんね。

 

「……わかっている、人払いされるのを待ってたんだ。二人には話すよ」

 

 なので、ジョナサンは静かに語り始めた。

 

 既に自分は最後の柱の一族……つまりわたしと会っていること。

 わたしに人類と敵対する意思はないこと。

 わたしがカーズ様と敵対する意思を固めていること。

 今日までに活かしてきた情報のほとんどは、わたしからもたらされたこと。

 なんならエイジャの赤石や、スーパーエイジャの捜索と回収もわたしと同行していたこと。

 それでもなお、わたしがそれらをジョナサンに委ねたこと……。

 

「僕はね、彼女は信頼できると思っている。彼女に言葉を尽くして自身の想いを語ってもらって、それで信じられると。そう彼女を信じたんだ」

「ジョースターさん……」

「……どうだかなァ。おじいちゃんはいい人だけどよぉぉ~~、人もいいから騙されやすいところあるっておばあちゃんがぼやいてたぜ。だから家業の貿易商だって、人の手に渡ることになったってさァーッ」

「それについては本当、何の反論もできない……」

 

 ジト目で厳しい事実を突きつけるジョセフに対して、ジョナサンは後ろ頭をかきながら苦笑した。祖父に対してあんまりな言い方ではあるけど、事実だからこればっかりはわたしもあんまり擁護できない。

 

 けど、ジョナサンはそれでも揺るがない。

 

「だけどね、ジョセフ。僕はそれでも信じると決めたんだ。だから何があっても僕は、僕だけは、彼女を最後まで信じるよ」

 

 信念の人、ジョナサン・ジョースター。彼はとても証明できるはずのないわたしの話を、受け入れ信じると断言してくれた。それどころか、最後まで信じるとさえ。

 こんなに嬉しいことがあるだろうか? 推しにこれほどまでに信じてもらえるなんて、嬉しすぎて死にそう……!

 

「……これだもんなァ、おじいちゃんは」

「JOJO、お前ジョースターさんに対してそんな……」

「わーってるよスピードワゴン、みなまで言うな。わかってんだよ。確かにおじいちゃんは嘘もヘタッピで、騙されやすいお人よしだけど……騙される才能は天下一品よ。騙したほうがだんだん申し訳なくなっていって、最後は自白しちまうくらいに人をまっすぐ信じちまうんだ。それは俺にはない才能だと思ってる」

 

 だから、とジョセフが言う。今までと違い、真剣な顔でジョナサンと向き合ってだ。

 

「なら、俺はおじいちゃんを信じるぜ。おじいちゃんが信じる、そのアルフィーってやつを信じるとするぜ」

「ジョセフ……うん、ありがとう。僕の孫は、本当に立派な若者に成長してくれたみたいだ。嬉しいよ」

「……よせやい」

 

 真正面からの称賛に、ジョセフが顔を逸らした。

 

 うん、そういうところだぞ、ジョナサン。あなたはなんていうか、本当に太陽みたいな人だよなぁ……。そういうところに、わたしがどれだけ救われてることか。現在進行形だよ、ホントにもう。

 

「……わしも同感です、ジョースターさん。五十年前から……あの日オウガーストリートで会ったときから、わしはあなたを信じると決めとります。なので、わしはこれ以上何も言いませんよ」

 

 そしてスッピーも同意して、にんまりと笑った。

 文字にすると二部の彼らしい落ち着いたものだけど、その顔つきは一部みたいなちょい悪なものだ。うん、彼はこういう雰囲気がやっぱり似合うな。

 

「二人とも、本当にありがとう」

 

 そんな彼らに、やはりまっすぐにそう言えるジョナサンは聖人君子か何かだよなぁ。

 

「それで……実はね、今回も僕は彼女と同行している。ここにも一緒に来ているんだ」

「マジかよ!?」

「ジョースターさんッ! あんた今なんて!?」

 

 まあ、その直後に特大の爆弾を投下できるくらいには、ジョナサンも人生経験を積んでいるんだけどね。こういう茶目っ気は、歳を取ってから身に着けたものだろうなぁ。

 

 ともかく、この爆弾発言にはスッピーもすっかり一部当時のようなリアクションをしてしまったし、ジョセフなどは臨戦態勢を取って周囲に目を配り始めた。

 

 だけどどれだけ探しても、わたしの姿は捉えられない。何せわたし、王国到着からここまでの間、基本【スターシップ】の中に隠れてたからね。時間切れのときと王様にお話しに行ったとき以外は、大体ここで様子見だった。今回の会話もここから見ていた。

 いや、だってわたしが普通に出てったらパニックになるのは間違いないし……。変身していったとしても、ジョナサンならともかくどこの馬の骨ともわからないやつを、国の機密に関わることに簡単に触れさせるわけもないだろうし……それならいっそ【スターシップ】から見てた方がスムーズでしょ?

 

 うん、出入口の移動ができるようになって、外の様子がわかるようになって、本当に諜報がやりやすくなったなって思う……。ものすごく便利……!

 

 ともあれ、これでわたしも外に出られる。

 

「じゃあ、行ってくるね」

「はい、行ってらっしゃいませ」

「ませー!」

 

 サチさんとレナータちゃんの見送りを受けて、わたしは自分を【スターシップ】の中から取り出した。次の瞬間、ジョナサンたちのど真ん中にわたしが出現する。

 

「うおォォ!?」

「なんと……!?」

 

 もちろん、それまで何もなかった、気配すらなかったところに突然現れたものだから、みんな驚いた。驚いてないのは【スターシップ】を見聞きしているジョナサンだけだ。

 わたしとしては、解説王スッピーに色々と言ってほしかったって思わずにはいられないけど……完全に脈絡なかったから、さすがにこの状態じゃあ無理かな。

 

 ちなみに今のわたしの格好は、スッピーとニアミスしたときとはだいぶ違う。あのときは人前だったから、表向きの顔であるイギリス貴族的な服装だった。

 

 けれど今は、柱の一族伝統の衣装を着こなしている。すなわち肌の露出がやたら多い、だけど隠すべきところは隠してるという……その……見る人(ショシャナとか)が見ればかなりえっち度の高く見えるやつ。

 幼児体型のわたしじゃあそのステータスは上がらないはずだけど、一部の人間(ショシャナとか)には興奮されたので、ローマ以降はあんまり着けてなかったっていういわくがある。でも現代の人間の衣装とは一線を画したものだから、柱の一族らしさが出るかなと思って。

 

 加えて今回は完全に元の姿なので肌は褐色だし、髪は銀だし、目は金だ。角だって隠すことなく出したまま。これでどこからどう見ても、わたしが柱の一族だってことはわかるだろう。

 

「こんにちは」

 

 そんな二人に、わたしは声をかける。

 

「そして初めまして。わたしの名前はアルフィー。よろしくね?」

 

 さらに、ぺこりと一礼してにこりと笑う。よし、完璧だ。かまなかったぞ。

 

 それでもしばらくは沈黙がこの場を支配していたけど……最初に復活したのはやはりというかなんというか、ジョセフのほうだった。

 

「な、なんだよ……女神なんて言われてるからどんなナイスバデーなネーちゃんかと思ってたら、ちんちくりんのガキンチョじゃあねーか!」

「神話じゃあ『(いとけな)い少女のような』とか『とても小さな』を枕詞にして書かれまくってるんだから、その期待は約束された敗北だったね……。大人のおねーさん風に描いてくれてる人も結構いるけど、こればっかりはルベルクラク(強火の原作厨)が正解だよ。これでもサンタナより四千歳は年上なんだけどね」

「よ……ッ!? ババアじゃん!!」

「ババアはババアでもロリババアと言ってほしいなぁ!」

 

 おっと、ロリータが世に出てくるのは二十年くらいあとだったかな?

 

 まあそんなことはいいんだ。わたしは発育と引き換えに日光耐性を手に入れたんだから、それはいいんだよ。もういいの。だからこの話はこれでおしまい!

 

「そんなことより……表向きはアルフィー・ルベルクラクで通ってるから、人前で話すときはそれでよろしくね。変装もしてるよ……こんな風にね」

 

 言いながら、わたしは肌の色を白く、髪の色を金に、目の色を赤に変え、しゅるると角を頭の中に収納した。これでどこからどう見てもコーカソイドの幼女だ。

 

 この劇的な変化に、ジョセフとスッピーが唖然とする。

 

「る……ルベルクラク? まさか、あの伯爵家の? 本当に?」

 

 今度は先に復活したスッピーが、それでもなお信じられないと顔にありありと出したままで、恐る恐る声をかけてきた。

 

「うん、そのルベルクラクだよ。記録の上では、現伯爵ティトォ・ルベルクラクの末娘ってことになってるね。少し前にちょっとだけ報道もされたんじゃなかったかな?」

「な……!? で、では、ルベルクラク家は……」

「あそこは二千年以上前からわたしのシンパだよ。信者って言ってもいい。そういう意味ではサンタナ王国と似たようなものだね」

 

 わたしがそう告げると、スッピーは絶句してしまった。

 まあね、イギリスに深く根付いている伝統的な貴族が実は柱の女、一の信者の集団とかどんな冗談だって思うよね……。

 

「待て待て待て、あんたもうそこまで人間社会に馴染んでやがんのか!?」

「ルベルクラクの先祖に当たるルブルム商会は、わたしが設立した組織だからね。それが多少形を変えながらも現代まで残ってた、だから伯爵は最初からわたしに協力してくれてるってわけ。わたしも元々、人間大好きだからね。昔からわたしは人間社会の中で生きてきたから」

 

 ついでに言えば、ルベルクラクの敷地内で眠ってたし、伯爵も必ずしも従順ってわけでもないけど……そこは無理に言わなくってもいいかな。

 ジョセフはそれよりも、最後の言葉のほうが気になったらしいし。

 

「人間が大好きィィ~~……? ハッ、信じられねーなァ!」

「ホントなんだよ! わたしはね、人間の作るものが好きなんだ。特に人間の歴史が好きなの。連綿と受け継がれていく人間の意思と精神、それが宿ってるものが好きで……だから、それを作り上げることができる人間が大好きなんだよ!」

 

 そうは言っても、なかなか信じるって顔をしてくれないジョセフ。この辺は、のちの不動産王というかなんというか……簡単には人を信じないところが出てる感じするなぁ。

 

「……ま、そこはそういうことにしといてやるよ……それよりも、だ」

「ん」

「てめー、本当に他の柱の男と戦うのかよ? 同族のはずなのに?」

 

 それまでのおちゃらけた感じから一転して、鋭いことを言ってきたジョセフに、わたしは背筋が伸びる思いがした。

 




アルフィーの正装(?)に関しては、pixiv百科事典にあるような感じのかなり大胆な衣装だと思っていただければ。
もちろん人間社会に入り込むときは、ちゃんと場所にあった格好をしてたわけですけどね。
それでもショシャナに興奮されるまでの約一万三千年、特に気にせずその恰好してた辺り、服装に関する感覚はだいぶ毒されてた模様。
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