※さらに、改訂してから約一時間半後に前半も修正しました。ご了承ください。
「JOJO、お前……」
「あ、いや! 違うんだスピードワゴン! おじいちゃんのことは信じてるぜ!?」
ジョセフの言葉に、スッピーが少しチベスナ顔で突っ込んだ。
これにちょっぴり慌てた様子で……というよりは、いつものノリに戻ったジョセフが言葉を繋ぐ。
「だからこれは、単なる好奇心ってやつだぜ! だってあの柱の一族が、人間の味方するって言ってんだぞ? なんでそうしようと思ったのか、聞きたくなるのが人情ってぇもんだろーッ!?」
その態度に、思わずくすりとしてしまう。
ただ、わたしが人間の側に立つ理由は自分本位というか、立派な理由があるわけじゃあないんだよね。ジョセフの性格から言って、怒りそうではあるけどそれで我を忘れることはないだろうし、言うのは構わないけど……。
言うなら言うで、できる限り想いが伝わるよう真剣に話をしないといけないだろうな。それがわたしが見捨ててきた人たちへの、最低限の礼儀だろうし。
ちら、とジョナサンに目を向ける。彼は心配そうにわたしを見ていた。
ああ、ありがとう。でも大丈夫だよ。あなたのその気遣いだけで、わたしはがんばれる。
「……わたしはね。人を殺すのが嫌なんだ。単純にね」
まあそれでも、わたしに言えることは、かつて伯爵やジョナサンに語ったことだけだ。わたしの心境を説明するためにはそうするしかない。陳腐かもしれないけど、今のわたしの原点はつまるところそこだから。
だから同じことを語る。カーズ様といると、人を率先して殺さなければいけないこと。それを強要されてきたこと。殺されたくなくて、実際にそうしてきたこと。それをすべて今でも正確に記憶していること。
それらに耐えられないのだと。ずっとそれに悩んできたのだと。
そして……ブッダに諭されて、初めて前を向くことができたのだと。
「わたしね、人間として生きていたいんだ。身体を変えることはできないから、それっぽく振舞うことしかできないけど……でも、なれなくっても、人間と一緒に生きていたい。だから……だからわたし、カーズ様を倒すんだ、って……そう決めたの」
そう締めくくって、わたしはジョセフの顔を改めて見た。
彼は最初と違って、とても渋い顔をしていた。想像と違ったんだろうな、ってことがよくわかる。視線は怒気を感じるくらいには鋭く、視線だけでも怪我をしてしまいそうだ。
でもどっちかっていうと、これが人間として当たり前の反応な気もする。むしろ、最初からわたしのすべてを見抜いて受け止めてくれたブッダ、利用しようとすら考えた伯爵、寄り添うような優しさを分けてくれたジョナサンが普通じゃないんだろう。
「あんたが思ってた以上に真面目に答えてくれたから、俺も今回ばかりはそれなりに茶化さず言うけどよー……なんつーか、納得できねーなァ……」
そして、少しの沈黙を挟んでジョセフがため息をついた。そこにはやはり、怒りの気配が含まれている。
「あんたも大変だったんだな……ってことはわかった。色々と……。そんな中で、よくぞ人間の側についてくれたなって思うぜ。そこは素直にすげーと思う……」
「……?」
けれどその怒りの向いている先が、なんだかわたしの思ってたのと違うような気がして、思わず目をぱちくりさせる。
「ただこう、仕方ねーことも、あんたが
普段の明るい様子がほとんど見えない複雑そうなジョセフに、わたしは何とも言えない。ただ、なんとなく若いな、とは思ってしまった。
この辺りは、年の功だろうか。そういえば、ブッダも伯爵もジョナサンも、わたしの話を聞いた時点で結構な年齢だったな……。
「だってよぉぉ~~、神話じゃああんた、知恵やら知識やらの神って言われてるじゃあねーか。所詮神話だ、実際は全知全能じゃあないにしてもよ、そう言われてるってことは近い何かがあんだろ? あのサンタナですら、あんたのことは偉大なねーちゃんって扱いしてたしなァ。
だからもっといい出会いがあんたにありゃあーよ……あんたもそこまで苦労せんでもよかったろーに、って……まあ、予想に反してめちゃくちゃ人間臭いお人だったからそう思うのかもしれねーけどよ……そういうあれやこれやに納得しきれてねー自分の未熟さに、他ならぬ俺自身が納得できねーんだよなァー……ッ!」
そりゃあ、元人間だし。
なんて、思わず頭によぎった。
だけど、ジョセフから目を背けるわけにはいかない。彼は納得いってない自分に納得いってないみたいだけど、ふと抱いてしまったというその気持ちは要するに……
だってわたし、一万年以上もの間、カーズ様に反抗するどころか、備えようとすら思わず生きてきたんだよ。おまけにカーズ様がどういう人で、彼が何をするかを最初から知っていた上に、実際そういう人だってところを見続けてきた。
にもかかわらず見て見ぬふりをして、あまつさえ手を貸してきた。その間にわたしが関係した人の死は、万じゃあとても足りない。
「……ジョセフは何も間違ってないよ。だって、わたし……怖かったんだもん。わたしにあったのはそれだけで……わたしは小心な臆病者で、ずっと逃げてたんだ。自分でもわかってるんだ、
でもその問いに対する答えは、怖かったから、以外に答えられないから……。
「いやー……まあその、あんたは元々の立場の中ですげーやってきたと思うぜ俺ぁよォ」
「そう思ってくれるのは嬉しいけど……でも、結局のところ物事は良し悪しのどっちかに押し込めるしかなくって。それならやっぱり、わたしのそれは間違いなく悪しなんだよ。言い訳のできない……。だからあのとき……ブッダに諭されて自分の生き方を定めたときに。わたしは……わたしの罪から逃げも隠れもしないって、そう決めたの」
「逃げも隠れもしない……?」
「うん。できる限り、人を死なせない。わたしの手が届く限り、理不尽に人を死なせない。そのためにわたしは、まだ十万年はある残りの寿命を使う……そう決めたんだ。それがわたしの償いだって」
「…………ッ」
ぎり、とジョセフが歯噛みする。渋い顔だ。まだ納得できてない、のかな?
まあ、これはきっと、人によっては一生納得できないだろう。今まで理解のある人にしか会ってこなかったから、こんなに態度に出して、それどころか面と向かってぶつけてくる人は初めてだ。
ただ再三言うけど、彼は何も間違ってない。でもって、何が悪いってそれはわたしだ。
それなら、わたしは納得してもらえるように行動するだけだ。それでもやっぱり、納得してもらえないにしても。わたしはわたしにできる範囲でやり続けるしかない。そうしなければならない。わたしがやったことは、それほどの罪なのだから。
「その言葉に……嘘はねーだろうな……!」
「ないよ」
そのつもりだ。だから即答した。
「~~ッ! チィ……わーった、わかったよ……クソッ! あーもう、むしゃくしゃすんなぁ~~!」
それを受けて、ジョセフは頭を掻きむしりながらも矛を収めてくれた。
もっとも怒りが消えたわけではまったくなくて、表に出さないよう努力はしているけど、隠せていない。
「……ジョセフ? 納得してないなら、遠慮なく殴ってくれてもいいんだよ。見た目こんなんだけど、わたしは普通に大人だし」
実際、彼も自覚はあるんだろう。そそのかすように言ったわたしに改めて向き直ると、わたしの眼前に波紋が宿った拳を突き付けてきた。
「違ぇーんだよ、俺が納得してねーのはそういう方向の話じゃあなくってだなーッ! なんであんたはそうやって……クソッ、チロっとだけど殴りてーって思っちまったじゃあねーか!」
? よくわかんないけど。
殴りたいなら別に、殴ってくれていいんだけどな。わたしには断る資格なんてないんだし。
そもそも、「納得」はすべてに優先する! じゃない?
「ま……待った、待つんだアルフィー君。それはいくらなんでもやりすぎだよ! 君はもう十分償っている! これ以上自分を軽視しないでくれ! 何より、ジョセフをそう焚きつけないでほしい。このままだとジョセフだけが後悔するじゃあないか!」
「え……え、あ、あー……ひょっとして、ジョセフが納得いかないのって、わたしを案じて……?」
「そうだよ! 遅ぇーよ、せっかく俺がガラにもなくちょっぴり心配したってーのにあんたってやつは! っつーかよ、あんた仮にも知恵の神サマじゃあねーのかよ!?」
「いやー、その……それは完全に名前負けしてる肩書で……四年前起きてから知って、白目剥いたくらいには自分でも『ない』って思ってて……」
「だからって、君はそういう周りを巻き込んでの自罰的な態度は改めたほうがいいと思うよ、僕は……」
そうかな、わたしそんなに自罰的かな……。
……そう、かもしれない。
自分ではそんな風に思ってないけど、ジョナサンが言うならきっとそうなのかも……。
ぐるぐると思考が嫌なほうに回り始めた。若いとか年の功とか言ってたの、どこのどいつでしたっけ。ハハッ……。
と、そのとき。目の前のジョナサンが何かに気づいたように、ハッとした。
「……いや、待てよ。まさかアルフィー君……今までそうした話は、しないようにしていたけれど……まさか君は……」
――今まで、一度たりとて裁きや罰を受ける機会がなかったのかい?
彼のその問いに、わたしは身体が跳ねた。跳ねてから、身体がそうなったことに気がついた。
「……そういうことか。君がたまに自罰的なふるまいをするのは、そういう……」
納得した様子で、ジョナサンが言う。
そんな彼に目を向けると……彼は、とても悲しい目をしていた。憐れむような色じゃあなくて。もっと、根源的な……心を寄せるような、悲しみの色。
「……んんん……? どーいうことだ、スピードワゴン……」
「フム……こういうタイプの話は、さすがのお前もまだわからんか。つまりじゃな、JOJO……。彼女は
「あー……大体わかった。要するに、良心の呵責がありすぎて誰にもそんなこと言えずにここまで来てて。だからこそ、それを罰してくれる人が今まで誰もいなくて、それが悪い形でループしてんだな? だからここで俺たちに」
「うむ……どんな形でもいいから、殴られても……いやあるいは、最悪死ぬことになったとしても、けじめをつけてほしいと、そう思っておるんじゃろう」
……知らなかった、そんなの(素
いやでも、そうやって文字にされるとよくわかる。たぶんそうだ、って思う。
……たぶんじゃないな。わたし、本気でそう思ってる。
そりゃあ心の内を明かしてこなかったわたしも悪いけど。でも、わたしの心境を語ったところで、「そんなこと気になさらずとも」って返されるのがオチな状況にしかいなかったからな……。
「……本人が一番、目から鱗って顔してんのが腹立つなァ……」
「しょうがないでしょ! だって、みんなわたしのこと神様扱いするんだもん!」
あ。……あー、そうか。
わたしが神様扱い、立派な人扱いされるのが苦手なのって、それが大きいのか。
前世、ただの一般人で、モブだったわたし。そんなわたしが偉そうな扱いされるのが苦手、ってのもあっただろうけど……それ以上に。
大きな罪を重ねたわたしが、周りから賛美されるのが嫌だったんだ。きっと。
「反論しながら目から鱗出すの、やめねぇ!?」
「だってだって!」
……なんかぐだぐだしてきた。
いや、そりゃあ暗い雰囲気でいるよりはこっちのほうがいいし、わたし好みではあるけど。
それはそれとして、本題から少しずれてきてるぞ。
「……確認しようか、アルフィー君。君は、罰してほしいんだね?」
こういうとき、スパンと本題に戻せるジョナサンの対応力よ。
本当にいつもいつも頼りになる人だな……それでこそわたしの推しだ。
「……うん……」
自分でも驚くほど小さい声が出た。蚊の鳴き声かな?
我ながら小者すぎて、笑えてくる。笑えないけど。
けどそれについてジョナサンが言及することはなく、彼はただ、真剣な顔でわたしの顔を見ていた。
彼はしばらくそうしていたけれど……やがて、ふう、と一つため息をつくと、拳を握りながらわたしの前で身構えた。
「……こういうのはどうかな」
その状態で、ジョナサンが言う。
彼に、この場の全員の視線が集中する。わたしは数拍遅れたけど。
「これから行うのは、検証だ。そういうことにしよう」
「検証?」
「そう、検証だよ。柱の一族相手に、
「ジョースターさん……」
「うん、詭弁だよね。けれど、僕はやはり、女性を殴るなんてことはしたくないんだ。けれど君はそうではなく……しかしこのままじゃあ話が進まない。だから、落としどころとして、だ。どうだい?」
彼の気遣いが窺える言葉。重ねられるそれに、わたしは……、
「う……うん。それで……お願いします」
こくりと頷いて、大きく息を吸い込んだ。
覚悟は決まったぞ。
「よし……それじゃあ」
「ま……待った、待った待った!」
が、そこにジョセフが割り込んできた。
「おじいちゃん! おじいちゃんの覚悟はわかったぜ。だからここは俺に任せてくれよな!」
「ジョセフ……?」
「おじいちゃんはやっぱりお人よしだぜ……自分から泥被りに行くんだもんな。けどよーッ、
ニヤリと笑って、ジョセフがジョナサンに見得を切る。
「こーゆーのはさァ~~、同じ人間が、同じレベルで、同じ量、同じよーにやってこそ、初めてデータとして意味が出てくるモンじゃあねーか? なァー!」
……なるほど、確かに。
彼の言うことは一理ある……どころか、情報整理をする上では守らなきゃいけない前提だ。完全に正論だ。
これにはジョナサンも、とっさに反論が思いつかなかったんだろう。ぐ、と口をつぐんでしまった。
そしてジョセフは、そうこうしているうちにジョナサンを押しのけて、わたしの眼前に立つ。
「そーゆーわけでよぉ~~……おじいちゃんに代わってこの俺が! これからあんたに、刑を執行するぜッ! 覚悟はできてるよな、アルフィーちゃん様よォーーッ!」
けどわたしに向けられた顔は、セリフに反して彼らしい……どこかいたずら小僧のような、けれど芝居がかった真剣な笑みで。
彼の性格から言って、この態度は文字通り芝居なんだろう。きっとジョナサンに手を上げさせたくなくて、自分がってことなんだろうな。自分から泥を被りに行ったお人よしはどっちなんだか。
でも、そんなジョセフの態度にわたしが口を挟むのは、お門違いだろう。なら、わたしは彼の厚意を受け取るのがこの場合は正しいはず。
だからわたしも、ふっと笑って彼に応じる。
「もちろんだよ。……まあその、ラッシュでやってくれても、わたしは一向に構わないけどね?」
「そいつはさすがにお断りだ……行くぜ?」
「うん」
ジョセフが拳を握り、しかと身構えた。そのときにはもう、彼の顔に笑みはなく、形容しがたい内心がにじみ出たものになっていて。
――コオオォォ……、と、波紋の呼吸音が室内に響き渡る。
なおジョナサンはここまで来てはもうどうしようもあるまいと、肩をすくめながらもジョセフに譲ってわたしたちから距離を取った。
「はああぁぁぁぁッ!」
ジョセフが声を張り上げた。波紋が一気に膨張する。
「一発行くぜ、波紋のビートッ!」
そしてあえて身構えていなかったわたしの身体に、黄金の輝きが叩きつけられた――。
前書きにも書きましたが。
感想で色々指摘されて、普段なら「これが俺の作品だ!」って押し通すんですが。
今回ばかりはその内容に完全に納得させられたので、今回の話の全体的に書き直しました。
投稿された23時ごろからおよそ3時間以内までに読んだ方には、ご迷惑をおかけいたしましたこと。お詫びいたします。
二次創作も難しいな・・・。
本当に・・・。