「まずは確認をさせてほしい。サンタナ君。カーズ打倒のため、君ならば力を貸してくれるとアルフィー君から聞いているけれど、その認識で構わないかい?」
「そのつもりだ。俺とヤツは目指すところが異なる敵だ。しかし俺一人では逆立ちしてもヤツには勝てん。そのためには戦力が必要だ。その点、姉さんが見込んだ勇者とあらば俺が手を組む相手としては十分だし、ジョセフにその資格があることは確認している。お前は試すまでもなく、俺より強いしな」
何はともあれそういうことで、話をする土台はできた。わりと突貫工事な気はするけど、置いといて。
「じゃあ今後のことについて、話し合おうか」
ジョナサンが音頭を取って、主にわたしが今後想定される流れとそれへの対応を説明していく。
とはいえその内容は、ここに来る前の船内でジョナサンと話したことと大体同じだ。
カーズ様たちが目覚めると思われるタイミングは、年明け前後だと予想される。念のため年内にはイタリアに入っておきたいところだ。
目覚めた彼らがまずすることと言えば、食事だ。そこは人間と変わらない。次いで、昔と変わらずスーパーエイジャ探しに動く。
これは間違いないはずだ。二千年で人間社会がどう変わったかを調べる時間は取るだろうけど、彼らの頭脳ならそれに手間取ることはないだろう。
そんな彼ら相手に、どうするか。
まず、わたしがスパイとして合流する。そうして彼らに適当な情報を流しつつ、動きをある程度制御して分断。しかる後に波紋戦士たちに各個撃破してもらう、というのが作戦の骨子となる。
サンタナにはその前に、ルベルクラク、SPW財団と協力してもらって秘密兵器の完成を急いでもらおうと思ってる。これが完成すれば、一般人でもわたしたち柱の一族に大ダメージを与えられる。しかも遠距離から一方的に。なんなら量産がかなった暁には、手出しする暇すら与えず倒せるかもしれない。
さすがにそれは皮算用かもだけど、せめて一つだけでもなんとかして間に合わせてもらいたいところだ。実のところ大まかな形はできていて、あとは小型化と省エネを進められればという状態なので、サンタナの手にかかれば大丈夫だと思うんだよね。
「いいだろう。姉さんが立案し、進めているその秘密兵器とやら……興味深い。楽しみだ」
ニヤリと笑うサンタナ。彼が一番、原作からかけ離れたなって思った瞬間だった。
なんていうか、だいぶ技術者というか、研究者に寄ったよねぇ。わたしが色々教えこんだからなわけで、違和感はもうないんだけど。元の世界の読者がこのサンタナを見たらびっくりするだろうな。
ああそれと、カーズ様たちを分断するために、それぞれを誘導する場所を用意している。これはルベルクラクが既に取りかかっていて、もうほとんど完了していたりする。
誘導するのはわたしだ。「この場所にスーパーエイジャがあるらしいですよ! いやーでも候補がたくさんあるんですよねー! 困っちゃったなー!」とあることないこと吹き込んで、それぞれに単独行動させる想定だ。わたしがいない原作でも彼らはほぼ同じことをしていたし、この世界でも紀元前当時にはしていたから、この作戦はいけるはずだ。
「けどよーッあんたら二人でなんとかなんねーのかよ? 柱の一族なんだから、俺らががんばらなくてもいけるんじゃあねーのォ?」
とジョセフに言われたけど、残念ながらそんなことはない。
「……己の恥を晒すことになるがそれでも言うと、俺は生き残った一族の中では最弱だ」
「……マジ? アルフィーちゃん様よりも?」
「本当だ。俺は他の誰にも勝てた試しがない」
渋い顔のサンタナの肯定に、ジョセフは信じられないって顔でこっちを見てきた。
残念ながら本当に嘘偽りない事実なので、わたしは頷くしかない。
「そしてわたしも、他の三人には勝てなくってね。わたしの場合、技術とか心構えの問題もあるんだけど、一番の問題は攻撃力不足だよ。ダメージ通せないんだ。見た目通り非力だからさぁ」
普通の攻撃でも、威力を上げれば柱の一族に致命傷を与えることは可能だ。だけどそれは、波紋と違ってわたしたちの身体の自己治癒力を阻害しない。つまり即死させない限り、柱の一族同士の戦いは泥沼になるんだよね。
だからこそ、わたしでは彼らには絶対に勝てない。何せスタンドですら大したダメージにならないのに、素手でどうにかできるわけがないんだよなぁ……。
「……俺が持ち運ぶのに苦労したサンタナをひょいひょい運んでなかったか?」
「そりゃあ人間と比べたらあるほうだよ……」
こう見えても、一応素手で家を破壊できるんだぞぅ。でもやっぱり、体格と性別の差は大きいよね。
「じゃ、じゃあみんなで寝起きを襲うのはどーよ? 全員でタコ殴りッ! ってやつだぜーッ!」
「いや。大人数で一斉にかかったら、逆に不利だと思うぞ。特にワムウのやつが相手では」
「そうだね。あの子、十人以上の波紋戦士を
あのときの波紋戦士はジョナサンたちと違って当代随一の使い手だったわけではないけど、それでも一定以上の水準にはあったはずなんだけどねぇ。
まあそもそもの話、ワムウの
おまけに風はほぼ目に見えないからね。真空波や竜巻まで行けばまあ、見えなくはないけど……そこまで行くと超スピードだし威力が高くて、どっちみち対応は難しい。
ワムウはそんなのを吹き荒らすことができる。自然のそれよりは規模は小さいけど、そんなの気休めにしかならない。
あの子自身が正々堂々の一騎打ちを好むタイプだから、そんなことは普段やらないけど……それなり以上の使い手たちに一斉に襲われて、広範囲殲滅をしないほどお人よしでもない。
そしてもしもそうなったとき、最初に耐えられなくなるのは他の誰でもなく、地下遺跡とか周りの街だと思うんだよね……。
「あー……そりゃあ、なるほどだな……」
ちなみに、カーズ様もフィールドの破壊という点では一級の力を持つ。斬鉄剣ばりになんでも切っちゃうから、遺跡で大乱闘したら大変なことになること請け合いだ。誰もが壁や盾として使うだろう柱は、まず間違いなく機能しなくなると思う。そうすれば崩落は待ったなしだ。街中でやったらなおヤバい。めっちゃ人が死ぬ。
なぜ彼らがわざわざローマの街中で眠ってるかって、そこら辺もあるんだと思ってる。街なら寝起きに食べられる人間も多いしね。もしも敵が待ち受けていたなら、人質にも使える。カーズ様の性格からいって、そういう判断なんだろうなって。
というわけで、やっぱり三人を引き離しての各個撃破が理想だと思うわけです。一人を二、三人のチームで迎え撃つんだ。そうすればかなり勝ち目があるはず。
誰を誰に当てるかは、ジョナサンたちで決めてもらう予定だ。わたしはその中で、戦力的に一番不安なところに入るつもりでいる。
わたしは一人じゃあカーズ様たちに勝てないけど、足手まといにはならないはずだからね。サンタナの開発が間に合えばさらに戦力は増えるし、勝率はもっと上がるはずだ。
「彼らが単独行動しなかった場合はどうするんだい?」
「二人と二人に分かれるなら、基本は同じでいいんじゃあないかな」
「姉さんと組んだやつをみなで迅速に倒し、次いで残る二人に向かう形だな。このとき姉さんには悪いが、片方をしばらく姉さん一人で抑えてもらうことになるだろう」
「アルフィーちゃん様が引きつけてる間にもう一人をタコ殴りにして、最後に全員で残りをフクロにするって寸法だな」
「それ」
わたしだってそのときのために準備してきたんだ。
「全員まとまっての団体行動を取られた場合は……んー、スーパーエイジャをダシにして、一対一で戦うように交渉、かなぁ」
可能性は低いと思うけど、そうなったときは原作を踏襲する方針が妥当に思う。リサリサがやったみたいに、一度スーパーエイジャをチラ見せした上で、同じ土俵での戦いを申し込む形。
で、受けないなら破壊する、と脅すわけだね。こうなったらカーズ様としては受けざるを得なくなる……はずだ。
これらの案に、ひとまず否は出なかった。なので、とりあえずこの流れで行くことになった。
「ちなみに、予想よりも連中が早く目覚めたらどーすんのよ?」
「そのときはおびき出す予定の場所を囮にして、時間を稼ぐつもりでルベルクラクには動いてもらってるよ。ただそれすると、おびき出して戦える場所が減ってあとあと難しくなるし、細かいこと考えてる時間がないだろうから、シンプルに団体行動のときと同じように持っていくのが無難かなぁ」
「まったく想定外の動きをされたら?」
「……
「……臨機応変に行くしかなさそーだな」
ちなみに、レナータちゃんはこの作戦には参加させないつもりだ。
彼女のスタンドはとても強力だけど、もし万が一彼女の存在がカーズ様に露見したら……あの人のことだ、間違いなく利用しにかかる。夜中でも特に道具を使わずに……下手したらそれこそスーパーエイジャすらなしにスーパー石仮面を起動できる可能性が高いから、彼女の存在はカーズ様には知られたくない。
サンタナは使えるものは使うべきだと言ったんだけど、わたしを殴るのでさえ躊躇したジョジョ二人はやはり紳士と言うべきか、声を揃えて否とした。わたしも同感だ。
だってあの子、まだ子供だもの。子供を守るのは大人の仕事なんだから、あまり巻き込むのはちょっとね……。
本当にどうしようもなくなったらそのときは、とも思うけど……逆にそこまで行ったときこそ、レナータちゃんの出番はないかもしれない。
特に、もしも「そのとき」が究極生命体カーズ様との戦いだった場合。
***
打倒カーズに向けて、ジョースター一族と柱の姉弟が話し合いをしてから数日後。その姉と弟が王国のゴタゴタに手を取られている頃、イタリア、ローマの地下に眠る古代遺跡の奥にて。
壁と一体化している三人の男、そのうちの一人……一番下段で眠っていた男の額が、緩やかに開かれた。
ボシュウウ……というようなかすかな音と共に開いたそこから、勢いよく角が出現する。長く雄々しい角が天を衝き、同時に男の身体が変化していく。石同然だった肌が、褐色のそれへと。
やがて男は眼を開き、静かに壁から離れる。音もなく床に降り立つと、周囲へと視線を配った。
「……無人か。だが、人間の気配がないわけではない。この大きなモノは……人間の設置したものか……?」
男がラテン語でひとりごちる。彼の視線の先には、紫外線を多分に含んだ光を煌々と放つ五基の大きな機械が鎮座ましましている。ナチスドイツ軍が設置していった紫外線照射装置だ。
しかしその中にあっても、男――ワムウは死ぬどころか怪我もなく、動きが鈍る気配すらなかった。
これはサンタナとは違うというよりは、寝起きとはいえワムウが万全の状態に近いからだ。サンタナも、ジョセフとの戦いで相応の負傷をしていなければ耐えられただろう。
「……これは、足跡だな。比較的最近までそれなりの人数がいた様子がある……」
その場にしゃがみ込んだワムウは、足下にあった軍靴の形跡に目を細める。またその鋭敏な嗅覚もまた、かすかに空気中を漂う大勢の人間の匂いをとらえていた。
「残念だ。もう少し長くここにいたなら、この場でカーズ様たちに血を捧げることができたのだが」
本当に心底残念そうにつぶやいて、彼は後ろを仰ぎ見る。そこには、いまだ壁と同化し眠りのうちにある主たちの姿が。
しかし彼らの周囲には、眠る直前まであったはずの石仮面の姿はなかった。
「……石仮面が消えている? 人間どもが持ち出したのか。面倒だな……食料は数で補うしかないか」
そうしてワムウは、小さくため息をつきながらも悠然と遺跡を後にする。
入り組んだ遺跡をまるで経路がわかっているように最短距離で脱出した彼は、夜のローマの街並みを眺めて、先ほどとは異なりかすかながら感嘆の息を漏らした。
人間という生き物自体には大した進歩など見られなかったが、彼らが生み出すものは大層様変わりしていたからだ。その様子に、変わり者の姉なら喜ぶだろうなという感想を抱く。
「姉上のお姿は見えなかったが、既に目覚められているのだろうか? 目覚めているのだとしたら……またさぞかし楽しんでおられるのだろうな」
ふふ、とワムウは微笑んだ。
彼の記憶の中にある姉の立ち居振る舞いは子供のようであるが、特に好きなことを語るときはそれが顕著だった。
だが、そんな姉のありようは嫌いではなかった。戦士として尊敬はできないが、弟として敬愛はしているから。
「さて……では、軽く
だが、ワムウはどこまでも人間ではなかった。この星の生態系、その頂点に立つ存在として当然のようにつぶやいた彼の視線は、しっかりと人間に向けられていた。
フラグ、最速の回収。
それはともかく、予想通り今日でストックがなくなりましたので、毎日更新を本日で終了いたします。
ここからの更新は不定期になりますが、何卒ご了承ください。