転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

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18.風の武神・ワムウ 1

 ワムウが目覚め、ローマの街に出てきたところを目撃した人間は、実はそれなりにいる。だがそれは、全員が目撃するべくしてしたものたちだ。偶然彼を見かけたものは一人もいない。

 

 そのうちの約半数はドイツ軍、それ以外はルベルクラク民間軍事会社(RPLA)に属している。彼らはそれぞれの組織の目的のために柱の男たちを監視しており、しかし目覚めた直後に殺される可能性の高さから、遠巻きに見張るに留めていた面々である。

 

 ワムウを目撃した彼らの行動は一致する。相手を刺激しない、感知されない範囲での監視の継続だ。

 そしてもう一つ。両者は同じ行動を取っている。すなわち、シフトを組んでこの街に常駐している波紋戦士への連絡である。

 

 そう、このローマには常に二人は波紋戦士がいるよう、ヴェネツィアから派遣されていた。万が一原作よりも早く、柱の男たちが目覚めてもいいように。そしてそのとき、不必要に死者を出さないように。

 だからこそ、その日ローマにいた二人の男が打って出ることになったのも、自然なことと言えよう。

 

 もちろん、彼らがそうするまでの間にも被害は出始めている。ドイツ軍もRPLAも、全滅を避けて下手な刺激をしなかったために原作のような事態にはならなかったが、代わりに民間人……それも警官たちに被害が出たのだ。

 

 丸腰の一般人が襲われず、多少なりとも武装している警官が襲われたのは、ひとえにワムウの性格と言えよう。柱の男らしく人間を喰らうし、寝起きで空腹ではあるが、さりとてまったく戦えない人間を襲うことはワムウにとってはあまり喜ばしくなかった。それを原作の被害と比べて、どちらがいいかを論じることは難しいだろうが。

 

 ただいずれにしても、波紋戦士にとっては同じ犠牲。それを見過ごせない二人は、ヴェネツィアへの連絡もそこそこに出陣したのだった。

 

 やがて彼らの気配を、ワムウは感じ取る。しかし一向に姿を見せない相手に、一瞬小さく怒りを覚えた……が。

 どうやら誘導するように……さながら手招きをするようなあからさまな気配に、一転して口元をぐいと上げて見せた。

 

 ならばよかろう、とワムウは頷く。強者との戦いこそが生きがいで、自身と張り合える勇者こそを尊敬する彼にとって、相手方の思惑はどうあれ戦いの気配がする誘いに乗らない選択はない。

 恐らくは不利な状況で戦うことになるだろうが、それすらも一興。どのような手を使われようと、正面から粉砕してみせる気概と自信がワムウにはあった。

 

 そうして狩りを中断した彼が誘導されたのは、ローマの街の郊外。ほとんど人の気配はなく、代わりに野生動物の気配が感じられる雑木林だった。

 

「……ほう」

 

 森の入り口で立ち止まったワムウの前に、二人の男が現れる。奇襲はなかった。堂々としたその態度に、彼は思わず感心する。

 

 二人が奇襲を選ばなかったのは、前情報からワムウならある程度話が通じるだろうという推測ゆえ。

 そして何より、ウェールズ神話で武神と伝わるワムウが機嫌を損ね、ローマの街中で無遠慮に力を放つことを嫌ったためだ。

 

「……お前たちは」

 

 そんな二人を見て、ワムウは表情を崩すことなく察した。鍛え抜かれた身体に加えて、確かに波紋の呼吸音が聞こえたのだ。

 

「驚いた……この短時間で既にイタリア語をマスターしたってのか」

 

 男の一人……マリオ・ツェペリが目を丸くする。

 

「とんでもない頭脳の持ち主という言い伝えは本当のようだな」

 

 もう一人の男……ジョージ・ジョースター二世は眉を寄せながら、つぶやくように口にする。

 

 そしてそれだけあれば、ワムウには大体の事情を察することが可能だ。

 

「その口ぶり……何よりその呼吸。まさしく波紋の一族の末裔だな。生き延びていたとは」

「おかげさまでな」

「お前たちにしてみれば、残念なことだろうが」

 

 二人の言葉に、ワムウは思わず笑う。

 挑発の類ではない。純粋に、楽しくなってしまっただけだ。

 

「カーズ様のお耳に入れば叱責は免れまいが……それでも俺は少し嬉しいぞ。この時代、もはや俺と戦える強き者はいないだろうと思っていたところだからな」

 

 その返しに、二人は顔をしかめた。

 しかし同時に、ワムウの性格が伝え聞いている通りだとわかって、わずかながら緊張がほぐれたのも感じていた。

 

「……お前がワムウで間違いないな?」

「いかにも! そこまでわかっているなら話は早い……行くぞ!」

 

 かくして、およそ二千年ぶりに因縁の戦いが始まる。

 

 初手はジョージとワムウが同時だった。躊躇いなく踏み込み寸分違わず喉を狙うワムウと、やはり躊躇いなく踏み込みなおも前へ出ながら拳を叩き込むジョージ。

 種族の差を考えれば、圧倒的にジョージが不利だ。しかし彼の拳は波紋の輝きに……()()()()()()()()()()()()()()、ワムウをして下手に受けるわけにはいかないほどの威力があった。

 

 ゆえにか、二人の腕が交差した瞬間。互いの攻撃が持つ衝撃によって互いの軌道は逸れ、両者の攻撃は互いの狙いとは異なる場所へと入った。ワムウの攻撃は左肩に。ジョージの攻撃はワムウの腹巻に入った。

 ワムウは一撃をしっかりと刺し、また素の腕力差から来る交差した瞬間の衝撃に分が。ジョージは服の上からとはいえ、一応は波紋疾走(オーバードライブ)が命中したことによる分がある。

 

 双方がこの一瞬でダメージを与えあった。ゲーム的に数値で表すならば、同程度のダメージ。互角のクロスカウンターだったと言える。

 しかし、やはり種族の差が大きな壁だ。たとえ受けたダメージは同じでも、あらゆる面で人間は柱の一族に劣る。先のゲームのたとえにならうならば、()()()()()()()()()()()()。ゆえにジョージのほうが不利と言えた。

 

「パウッ!」

 

 とはいえ、まだジョージが敗北したわけではない。何より、彼は一人ではない。

 二人の初撃が終わる直前、高速で回転する刃物……のように形成された酒が、ワムウに殺到したのだ。その数は優に十を超え、そのいずれもが多量の波紋を帯びて()()()()()()()()カッターであった。

 

 攻撃が終わった直後のわずかなスキを突く形で調整されたタイミングに、ワムウはニヤリと笑う。この程度はしてもらわなくては。そう顔に書いてあるようであった。

 

 これに応じて、ワムウの後頭部から何本ものワイヤーが現れる。それぞれの先端には小さな刃物がついており、何かしらの武器であることは誰にでもわかる。

 

「ふん!」

 

 ワムウが首をひねり、ワイヤーを勢いよく動かす。するとそれぞれの刃物に風がまとわりつき、極小の竜巻が発生した。

 それらは風特有の音を響かせながら、殺到する波紋カッターを迎撃していく。

 

 無論、ワムウがそれだけにかかりきりになることはない。彼は刃物を扱う動作に連動させて上半身もグニャリと動かし、ジョージに向けてクロスチョップをお見舞いした。

 

「うおおぉぉーっ!」

 

 ジョージはこれを、人間の可動域限界に身体をひねってギリギリの回避。次いでカウンターとして、臆することなくワムウの顔面へ手刀を向けた。

 

 波紋カッターを放ち終わっていたマリオも、藍色の波紋疾走(インディゴブルーオーバードライブ)でこれに続く。波紋カッターは既にみな迎撃されてしまったが、彼はこの攻撃に合わせて迎撃を終えた竜巻の残りをしっかり回避している。

 

「やるな!」

 

 だがワムウも負けていない。奇妙な体勢から放たれた攻撃の勢いをそのままに、身体をその場で上下反転させた彼は、側転の要領でジョージたちから距離を取った。途中で地面を押すことで、拡散する形で放たれた藍色の波紋疾走を回避することも忘れない。

 

「俺の技を初見でよくぞ避けたな! 伝わっていたか見抜いたかは知らんが、いいぞ! そう来なくては!」

 

 そうして姿勢を戻しながら、ワムウは構えを整え直し胸部から管を露出させる。

 

「やらせん!」

「させるか!」

 

 それが意味する能力を人伝いながら理解している二人は、同時に攻勢に出た。ジョージは再度肉薄するため地面を蹴り、マリオは再び波紋カッターを大量に放つ。彼が手にしていた酒瓶は既に空で、それもついでとばかりに投擲された。

 

「ならばこれはどうだ?」

 

 しかしワムウが怯むことはない。両腕が勢いよく後ろへ押し伸ばされた。さながら弓矢を引き絞るような状態だ。

 同時に彼の身体から顔を出した管に、空気が吸い込まれていく。それは彼の体内で何倍にも圧縮され、脇腹周辺の管から排出され始めた。

 そして排出されると同時に、ワムウの両腕が勢いよく前に押し出された。限界までエネルギーを溜め込んだ腕は、まさに放たれた矢のごとく音を立てて彼の前面へ。

 この際に、圧縮されていた空気を巻き込んで、さらなる力が生み出される。

 

「伏せろマリオーーッ!!」

 

 ここまでの動作にかかった時間は、一秒程度。

 

 それでもワムウの行動の意味を漠然とだが察したジョージは、前へ出る勢いを上げていっそ前のめりに倒れ込んだ。そうして声を張り上げながらも、地面を転がりワムウの正面から横へずれる。

 

「風の流法(モード)、風神閃!」

 

 直後のことだ。猛烈な力をまとったワムウの両腕が彼の前面で交差し、横一文字の風が放たれた。

 

 ただの風ではない。あらゆるものを切断するほどの威力が込められた、凄まじい真空波である。遅れて、音に迫る速さが空気を叩く音が鳴り響く。

 切断力に加え()()()()()()()に近しい暴力を持った一閃が、伏せたジョージの上を通り過ぎる。

 

 だが、マリオにはそうする時間がなかった。今からそんなことをすれば、彼の身体は伏せる途中で前と後ろの真っ二つになるだろう。

 後ろに退がることも意味がない。上半身と下半身で真っ二つになる。横であろうと似たようなものだ。

 

(間に合わない? 死……)

 

 そうしたヴィジョンが、マリオの脳裏をよぎる。一瞬の間に彼の思考は加速していた。だが死の淵にあって高速で回る思考は、無慈悲に死を予言し続けている。

 

 だが、

 

(い……いや! こ、こおおおおれだああァァッ!!)

 

 マリオは咄嗟に、大きく跳躍した。それも前方に向けてだ。彼は死中に活を求めたのである。

 

 跳び上がりながら、懐からロープを引っ張り出す。材質は一般的なものだが植物油に浸してあり、波紋伝導率はほぼ百パーセント。

 これに波紋を流し込み、より強く、硬く、柔軟にしなる鞭とする。

 

「喰らえワムウ!!」

 

 そうして彼は波紋ウィップとでも言うべき一撃を、腕力のみならず位置エネルギーを加えてワムウへ振り下ろす。

 

 凄まじい攻撃を放ったがゆえに、多少の隙をさらしていたワムウにはこれを万全に防御する手段はなかった。圧縮した空気も使い切っている。

 回避は可能だが、既にジョージが身体を起こして動き始めている。どこに向かおうと、彼が追撃してくれるだろう。完璧だった。

 

 だった、はずだった。

 

「そう来ると()()()()()ぞ!」

 

 だが、ワムウもまた前へ出ながら跳躍した。死中に活を求めたのは、何もマリオだけではなかったのだ。

 

「な!」

 

 思わず吃驚するマリオ。

 

 その彼の前方で、ワムウは跳躍の反動を用いて上下逆さまになっていた。そして上を向くことになった彼の足は。脚は。

 

「ぐあぁぁッ!?」

 

 種族特有の理不尽な伸びを見せ、マリオの身体を……特に肺の周辺を、強烈に打ち砕いた。

 

 ()()()()()()()()()。人間の世界であればただのパフォーマンス、魅せ技とでも言うべき技。ワムウはそれを、見事な決め技として使って見せたのである。

 

「俺の風神閃を見てから回避するなら、跳躍しかない……その通りだ。前に向けて跳び、攻撃に繋げるのも見事。しかしなればこそ、対処は容易いというもの。それ以外に取り得る選択肢がないのだからな」

 

 蹴り抜いた反動を利用して縦にクルリと半回転し、足を地に向けながらワムウが言う。

 

「ぁぁぁぁああああッ!!」

「マリオォォーーッッ!!」

 

 マリオは大きく吹き飛ばされた。先に通り抜けた一閃により、大量に切り倒されていた木々の中へと落ちて消える。

 ジョージの声に反応はなく、彼の声は夜の闇に溶けて消えた。

 

「さて、次は貴様だな」

 

 着地を終え、悠然とワムウがジョージに向き直った。

 




まずはVSワムウ。
ガッチガチに強化されてる波紋勢に対して、ワムウにはどこぞの女神様の前世の知恵がついてるぞ!

W氏「俺は待たない。初手で討ち取る」

A氏、迫真のガバ。
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