ファイアーエムブレム風花雪月 異国のサムライ 作:戦国のえいりあん
今回はベルナデッタですよ!
・深夜 ガルグ=マク大修道院 学生寮一階付近
時刻は深夜、生徒たちは皆就寝し学院内は暗闇と静粛に包まれていた。そんな暗黒の修道院内を小さな灯りを頼りにこっそりと歩く一人の人物がいた。
「…はあ、よかった…まさか、あたしとしたことが書庫に"あれ"を忘れちゃうなんて…」
小さな蝋燭を手におぼつかない足取りで歩いていたのは黒鷲の学級の生徒、ベルナデッタだった。何故こんな真夜中に彼女が秘密裏に学院内を歩いているのかというと…
「うう…書庫なんかで書くんじゃなかったなあ…で、でも…あれを読まれるわけにはいかなかったし…」
彼女の小脇には本が抱えられており、それは彼女が自己観賞用のために書いていた秘密の物語本だった。その本を書庫に忘れてしまい、誰かに見つけられる前に密かに回収しようと自室を抜け出してきたのだ。
そして無事に本の回収に成功した彼女は来た道を戻り、自室へと帰ろうとしていた。
「…こ、怖いなあ…で、でも、大丈夫!ここまで来ればもう勝ったも同然!あたしの楽園がすぐそこに…!」
もちろん灯りのない暗闇の大修道院も不気味で恐ろしいが、何よりも恐ろしいのは大修道院内を巡回している見回りだ。深夜とは言えど、警備のためにセイロス騎士団の騎士が大修道院内を巡回しており、もし見つかってしまったらただ事では済まないだろう。
しかし、普段から人目に付かないように行動することを心掛けているベルナデッタは見事に見回りの目を掻い潜って学生寮の近くまで戻って来たのだ。
(あ!見えた…!後は部屋に戻るだけ…!帰って来たよ!あたしの部屋~!)
素早く自室に戻ろうとするが、ベルナデッタの足が突如止まる。何と彼女の眼前から蝋燭の灯りがこちらに近付いているのが見えたからだ。このまま物陰から飛び出したら確実に見つかってしまう。なんとかやり過ごそうと考えたベルナデッタは近くにあった花壇の死角に匍匐して隠れた。
(み、見つかりませんように…息を殺して…気配を消す…大丈夫!頑張るのよベル!)
見つからないと信じてじっと見回りが通り過ぎるの待っているベルナデッタだったが、その見回りは彼女が隠れている花壇の近くを通り過ぎる途中で急に立ち止まってしまった。
(……え?と、止まった…?は、早く行ってほしいなあ…)
「ふああ…眠いなあ…」
眠そうな目をこすりながら見回っていたのはなんとフウカだった。何故フウカが見回りをしているのかというと、見回りの当番だった騎士が体調不良で倒れてしまったそうで、その代わりにフウカが大修道院の見回りを引き受けたのだ。
(…あれ?この声って…フウカさん?)
「それにしても、見回りってつまらないなあ…でも、引き受けたからにはちゃんとしなきゃ!」
眠気を覚まそうとしたのか、フウカは自身の顔の両頬を思いっきり手のひらで叩いた。静かな大修道院にぱちん!とよい音が響き渡った。
「よーし!!後、もう少しで交代だし頑張ろう!!」
(……ひっ!!!?)
フウカの大声に驚いたのか隠れていたベルナデッタは思わず身体が動き、それが原因で花壇に植えてあった植木に接触してしまいガサガサと音を立ててしまった。
「……!!誰ですか…?」
(し、しまったああ~!!!?)
「……」
フウカは刀に手をかけると凄まじい殺気を放ちながらゆっくり花壇に近付いていく。一方、隠れているベルナデッタは気が気でなくほぼ半泣き状態になっていた。
(うう…も、もう駄目ぇ…短かったなあ、あたしの人生…さようなら…ベルはここまですう…)
しかし、花壇に近付くフウカに異変が起こっていた。予想外の事態に若干驚いて殺気を強くしすぎて興奮したのか、いつもの発作が起こってしまったのだ。
「…うぐぅ!?こ、こんな時に……ゴフォア!!」
大量に吐血すると、フウカは崩れるように自ら吐いた血の海に沈んだ。フウカが倒れたことに気付かないままベルナデッタはまるで死体のように手を合わせてじっと動かなかった。
(ああ…見つかったらどうなるのかなあ…?ま、まさか!処刑っ!?ひいいっ!!本を取り行っただけで処刑なんて嫌ぁぁ!!!………あれ?こ、来ない?)
ようやく異変に気づいたベルナデッタは恐る恐る花壇の死角から覗いてみる。
「………」
そこには血溜まりの海に倒れているフウカの姿があった。その光景を見た瞬間…
「あんぎゃあああああ!!!?さ、さ、殺人事件ですぅぅぅ!!!」
(…あれ?この声は…ベルナデッタ殿…?何故このような時間に…?)
ベルナデッタは慌てて走り出し、途中で躓いて転びそうになりながら自室へと逃げ出して行った。
「ゴホッ!ゴホッ!…な、何だったんだろ?」
「何だ?今の声は?誰かいるのか!」
大声を聞きつけてやって来たのは、同じく見回りをしていた騎士だった。よほど大きな叫び声だったのか、目を覚ました数人の学生が灯りを点けて扉を開けるほどの事態になっていた。
「ふ、フウカ殿!?大丈夫ですか!今、マヌエラ先生を呼んできます!」
「ゴホッ!…い、いえ、皆様に迷惑はかけられません…私の部屋にある赤い液体が入ったビンを持ってきてくれませんか…?」
「は、はい!すぐに!じっとしててください!」
騎士は慌ててフウカの部屋がある兵舎へと走っていった。そんな時、近くにあるものが落ちていることに気づいたフウカは血で汚れないように服の端を使ってそれを拾い上げた。
「…これは、本?ひょっとして…ベルナデッタ殿の本かな…?」
それはベルナデッタが苦労して取ってきた物語本だった。よほど逃げることに夢中だったのか、せっかく取ってきた本を落としたことに気付かずに逃げてしまったのだ。
「悪いことしちゃったなあ…明日渡しに行かなきゃ…」
その後、騎士が持ってきた血液の入ったビンのおかげでなんとか体調も無事に回復し、事なきを得た。ちなみに血で汚してしまった大修道院の地面はフウカが必死に掃除したことで跡形も無くなり、大きな問題にはならなかった。
・翌朝
・ガルグ=マク大修道院 ベルナデッタの部屋の前
フウカは学生寮一階にあるベルナデッタの部屋を訪れていた。フウカの手には彼女が落とした本が握られている。早速、これを渡そうと扉をノックする。
「すみません!ベルナデッタ殿?いらっしゃいますか?」
「ひいい…!!そ、その声は…フウカさん!?昨夜、血だらけで倒れてのに……はっ!ま、まさか、幽霊…?お、お助けぇ!!」
「あはは…確かにあの時倒れてたのは私ですけど、ちゃんと生きてますよ。だから、怖がらないでください」
「……そ、そうなんですか?はあ…よかった…あたしのせいでフウカさんが死んじゃったんじゃないかと思ったら怖くて眠れなくて…」
「実は、落とし物を届けに来たのです。この本…あなたのですよね?」
「え…?本?あ、ああ!!すっかり忘れてたあ!!す、少し待ってください!」
すると扉が僅かに開かれ、少しだけベルナデッタが顔を出した。フウカはその姿を見ると笑顔で本を彼女に差し出した。
「はい、どうぞ。内容は見てませんから安心してください」
「あ、あの…ありがとうございます。おかげで助かりました」
「いえ、お気になさらず…驚かせてしまった私が悪いのですから。ところで…いったい何の本だったのですか?題名が書かれていませんが?」
「な、なんでもありません!あ、あの!ベルはこれで失礼します!」
これが自己満足で書いた自作の物語本などと知られたくないベルナデッタはお辞儀をして再び扉を閉めてしまった。
「う~ん?何の本だったんだろ?気になるなあ」
ベルナデッタとの支援が上がった!
次回から本編に戻ります!書いてて楽しいので、いろんな生徒との支援会話を書いてみたいです!