ファイアーエムブレム風花雪月 異国のサムライ 作:戦国のえいりあん
時系列で言えばベレス先生とジェラルトが大修道院に来る少し前ぐらいです!
ガルグ=マク大修道院にやって来た、謎の旅人フウカ…
たった一人で数十人の敵を斬り捨てる腕前と特異な出で立ちにその謎の出身に三人は驚いていた。
これまで多く人物と出会ってきたセテスもフウカのような人物は今まで見たことはないそうだ。
「海の果て?では君はフォドラの人間では無いのか?」
「はい、詳しくは話せませんけど…とある島国の村で私は育ちました。13歳の時に故郷を出て、今まで世界を旅しながら修行して生きてきました」
「まあ、13歳で…大変だったわねぇ」
「後、この大陸に来たのは数ヶ月前です」
フウカの話によれば、彼女はフォドラ大陸の遥か北からやって来きたらしく上陸した後、途中の村や町などを転々としながら大陸を旅していたそうなのだ。
ちなみに、彼女があの村を守っていたのは見知らずの自分にとても親切に接してくれた村人に恩返しをするためだったそうなのだ。
そして盗賊を食い止めようと戦っていた時、セイロス騎士団が現れたということだ。
「おいおい、そんな理由で盗賊団と戦ってたのか?アンタなあ…お人好しにも程がないか?」
「いえ、見知らずの私にあれほど親切にしてくれた村人の人たちをほおってなどおけませんでした。義には義を持って返す…これが私の"サムライ"としての士道ですから!」
「へぇ…アンタ、なかなか面白い奴だな」
「後、あの村落の者たちが君に大変感謝していたぞ。もし、機会があれば是非また訪れてほしいとな」
「そうですか、村の皆さんが無事で本当によかった…私も嬉しいです」
「…まったく、アンタは底なしのお人好しだな」
そんな彼女を見ていてセテスはあることを話すかどうかを考えていたみたいだが、その人柄と実力を認めたのかフウカに尋ねた。
「フウカさん、貴方は旅人だと言っていたが…これから行く当てはあるのか?」
「いえ、しばらくはこの大陸にいるつもりです。まだ行っていない場所がたくさんありそうですから!」
「ならば貴方に頼みがある。貴方を我がセイロス聖教会の傭兵として雇いたい」
「傭兵?私をですか?」
セイロス聖教会は騎士団だけでなく、傭兵なども雇っておりフォドラ大陸の秩序を守るために様々な任務を請け負っており、聖教会には傭兵や商人など多くの人物が集まっているのだ。
「ああ、カトリーヌからも聞いたが貴方は類い稀なる武芸だけでなく高潔な志も持っているようだ。今、セイロス聖教会には人手不足している。貴方ように腕も立ち信頼できる人材が必要なのだ」
「でも、いいのですか?私は素性も分からぬ浪人者……私のような者が聖教会に居たら迷惑なのでは?」
「いや、貴方ならば問題は無い。実際に話してみて貴方の人柄はよく分かった。是非、我が聖教会の傭兵となって欲しい、どうだろうか?」
「……分かりました。助けて頂いた恩返しもしたいですし、その話、お受けしましょう」
「おお、そうか!それは有難い」
「ですが…一つ条件があります」
「む?条件、なんだ?」
「先ほども申しましたが私は武者修業の旅の途中、いつかはこの大陸を発たなけばなりません。その時が来るまで、という条件でよろしければこのお話をお受けします」
「…いいだろう。その時まで、君を聖教会の傭兵として雇わせてもらう。これで契約成立だ」
「はい、このフウカ=ミヤモト…未熟者ですがよろしくお願い致します!」
こうして謎の旅人フウカはしばらくの間セイロス正教会の傭兵として働くことになったのだった。
その後、体調も無事に回復したフウカはセテスの案内である人物に会うことになりガルグ=マク大修道院の士官学校を歩いていた。ある人物とはそう…大司教・レアのことだ。
「実は大司教のレアが君に一目会いたいと言っていてな、是非、会ってもらいたいのだ」
「それは光栄ですが…私のような者が軽々しくお会いしても良いのでしょうか?」
「大司教はどんな者に対しても身分の分け隔てはしないお優しいお方だ。だが、くれぐれも失礼の無いようにしてくれたまえ」
「承知しました」
セテスに案内され学院内を歩きながらフウカは施設や設備を眺めていた。大修道院の外見を見ずに足を踏み入れたことから、フウカは修道院の巨大な建築物やその壮大な眺めに度肝を抜かれていた。
(大きいなあ…私がいた寺子屋とは大違いだよ!!)
そんな物珍しそうに建物を眺めるフウカを学院内の生徒たちもまた、珍しそうに眺めていた。
見たこともない衣服に歳が学生とほぼ同年代のフウカは注目の的になっていた。
「…なあ、あの子誰だ?」
「さあ、転校生かな?」
「なんか、変わった服着てるな…」
注目されるのは照れるのか、えへへ…と頭を掻きながら頬を赤めて苦笑いしていた。案内されている最中、二人はある場所の近くにやって来た。
フウカの前には3つの教室らしき部屋が見えていた。
「あそこがこの学院の教室だ。ここで生徒たちが日々学問と兵法を学び、勉学に励んでいる」
セテスの説明によれば、国の出身者で学級が分けられているらしく、アドラステア帝国出身者の学級・"黒鷲の学級"(アドラークラッセ)、ファーガス神聖王国出身者の学級・"青獅子の学級"(ルーヴェンクラッセ)、レスター諸侯同盟の出身者の学級・"金鹿の学級"(ヒルシュクラッセ)とそれぞれ教室が分けられているのだそうだ。
「みんな私と同じ歳ぐらいの生徒ばかりですね」
「む?そうなのか。若いとは思ったが、まさか学生と同じほど年齢だったとは…」
「あはは…よく言われます」
それを聞いてセテスはますますフウカという少女に疑問を持った。学院の生徒と同じ年齢である彼女があのカトリーヌが認めるほどの腕前を持つなどいったい何者なのか…?そんなことを考えながらセテスは歩き続ける。
・金鹿の学級の教室
「…ねえ、あの子誰だろー?」
「初めて見る人ですね、転校生でしょうか?」
「あの品の無い服装…おそらく平民だな。まあ、僕には関係のないことだがね」
「……ふ~ん、また面白そうな奴が入ってきたな」
・青獅子の学級の教室
「あら~?あの子、ひょっとして転校生かしら~?」
「へぇ、なかなか可愛いな、後で声をかけてみるか」
「………見かけない服装ですね」
「そうだな、誰なんだろうか?」
・黒鷲の学級の教室
「あいつ誰だ?なんか変わった奴だな!」
「彼女、転校生、間違いありません!新しい仲間、歓迎です!」
「…なんとも奇妙な方ですな」
「いったい何者なのかしら?確かめる必要があるわね…」
・ガルグ=マク大修道院 謁見の間
セテスに案内されフウカは学院の二階にある、謁見の間という部屋に通された。そしてフウカの視線の先には一人の女性が立っていた。緑髪で頭には細かな装飾が施された冠を被り、金色の装飾の入った黒い外套と純白のローブ姿といった風貌だった。一目見て聖職者だと分かるほどの神々しさと不思議な雰囲気を漂わせている。
そう…彼女こそがこのガルグ=マク大修道院の大司教・レアだった。
「こんにちは、貴方がフウカですね」
「はい、お初にお目にかかります。大司教様」
そう言うとフウカはレアにお辞儀をする。服装は質素だが礼儀正しい言葉遣いと、どこか美しさも感じるフウカの丁寧な所作にレアは感心していた。
「話はセテスから聞いています。貴方は一人で賊に立ち向かい、民を救ったとか。貴方の勇気ある行動によってフォドラの民が救われました。主に変わってお礼を申しあげます…」
「い、いえ…とんでもございません!私は人として当然のことをしたまでです。私ごときが大司教様にお褒めに預かるとは光栄でございます」
「ふふ、セテスの言うとおり…慎み深く、そして高潔な志を持っているというのは本当のようですね。フウカ、聞けば貴方は我がセイロス聖教会に力を貸してくれると?」
「はい、未だ半人前の私がお役に立てるかどうか分かりませんが、よろしくお願い致します!」
「いえ、貴方はあのカトリーヌが認めるほどの強者…こうして巡り合ったのも主の導きでしょう、貴方の活躍に期待していますよ」
「ははっ!」
レアに挨拶を済ませると、謁見の間を後にしたフウカはセテスの案内で次の場所へと向かっていた。次に案内されたのは学院内の兵舎だった。この兵舎はセイロス騎士団だけでなく各地から集められた傭兵たちも使用していた。
・ガルグ=マク大修道院 兵舎
「さあ、ここが君の部屋だ。本来なら傭兵はここよりも狭い部屋を使用してもらうのだが、君は特別だ。ここを自由に使ってくれたまえ」
フウカの部屋は畳16枚ほどの広さで、部屋にはベッドに本棚や武器立てに収納用の大きな木製のボックスまでもが置いてある。一介の傭兵に提供する部屋にしては随分と豪華な部屋とも言えるだろう。
ちなみに同じような部屋はまだ数部屋あるそうだが、それはカトリーヌや同じセイロス騎士であるシャミアという凄腕の騎士などといった特別な人物しか使用していないらしい。
「あの…こんな豪華な部屋、私が使ってもいいのですか?」
「ああ、構わない。裏を返せば…私も大司教もそれだけ君を高く評価しているということだ。くれぐれも大司教の期待を裏切らないで頂きたい」
「…承知しました。」
「では任務については明日、報告しよう。それまでは自由に行動してもらって構わない。今日はゆっくりと疲れを癒してくれ」
「何から何まで感謝致します」
「では、私はやらねばならない仕事あるから、これで失礼するぞ」
そう言うと、セテスは兵舎を去っていった。そして部屋に残されたフウカは脇に差してある二本の刀を武器立てに置くと、大の字でベッドに倒れ込んだ。
「はあぁ~…疲れたなあ…。まさかこんなことになるなんて…」
もちろん傭兵として働くことに不満は無かったのだが、ここまで丁寧にもてなされては、むしろ不気味にも思えたのだ。確かに自身の武芸の腕前を認めてくれたのは嬉しいが、この大陸の人間でもなくろくに素性も明かさないような自分に何故ここまでするのか疑問に感じていた。
(まあ、ここにはいろんな人がいるみたいだし、強い人に会えるかも知れない!"最強のサムライ"になるために頑張ろう!!)
これからの生活と新しい出会いに…そして幼き日から志した大きな目標である"最強のサムライ"となる野望を胸に気持ちを昂らせていたその時、いきなり部屋の扉が開き見知った顔が姿を見せた。
「よう!フウカ!早速、来たぞ!」
「うわあっ!?か、カトリーヌ殿っ!?」
「…ん?ひょっとして寝てたか?」
「…い、いえっ!大丈夫です」
フウカは慌ててベッドから身体を起こす。
ノックぐらいしてほしいなあ…と内心、思いながらカトリーヌの前に来る。
「あの、わざわざ来てくれたのですか?すみません…」
「というか…アタシの部屋はアンタの部屋の隣だしな」
「ええっ!!?」
実はフウカの隣の部屋はカトリーヌの部屋だったのだ。
ちなみにフウカの正面にある部屋はシャミアという騎士が使っているそうだ。
「まさか、私の部屋の隣だなんて…」
「あっはっは、アタシも驚いたよ。アンタとは仲良くやれそうだ。…それじゃ改めて自己紹介だ、アタシはカトリーヌ。レア様に仕えるセイロス騎士の一人だ、よろしくな」
「では、私も…私はフウカ、異国から来たサムライです。これからもよろしくお願いしますね!」
「あん?さむらい?なんだそりゃ?…まあ、いいか」
そんな二人の声が気になったのか、正面の部屋の扉が開き、何者かが姿を現した。
「…一体なんの騒ぎだ?部屋の前で騒ぐな」
「おっ!シャミアか。ちょうどよかった、アンタに会わせたい奴がいるんだよ」
「……ん?あんた誰だ?」
フウカの前に姿を現した女性、彼女の名はシャミア。カトリーヌと同じセイロス騎士で、ダクザ出身の元傭兵で今から五年ほど前にセイロス騎士団に入団したそうだ。
弓の達人で、それ以外にもナイフなどの暗器の扱いにも長けており騎士団の中でも高い実力を持っている人物だ。
「ああ、コイツはフウカ。今日から聖教会の傭兵として働くことになったんだ」
「フウカと申します。よろしくお願いします」
「…傭兵?それにしては随分若いな、学院の生徒とほとんど同じぐらいの歳だろ?」
「…よく言われます」
「確かに若いが、コイツの腕前はかなりのものだぞ」
言われてみれば…とシャミアは内心、フウカがただの傭兵ではないということに瞬時に気づいた。ニコニコと笑ってはいるが、今、話しているこの瞬間でもまったく隙を見せていない…仮にもし彼女に攻撃してもかわされるか、または反撃されてしまうだろう。
「…まあ、とにかくよろしく頼む。私はシャミアだ」
「はい!よろしくお願いします!」
「よーし、そうと決まれば、これからやることは一つだ。フウカ。アタシと勝負しな」
「ええっ!?何でこの流れで勝負なんですかっ!?」
「細かいことは気にすんな、…正直に言うと、アンタを初めて見たときからずっと戦ってみたくて仕方がないんだ。早くしないと…アンタに斬りかかっちまうかもしれない…!」
「…ふふ、実は私もカトリーヌ殿と手合わせしたいと思っていました。いいですよ、是非お願いします」
礼儀正しく笑ってはいるが、カトリーヌは気づいていた。この感覚はあの時、放っていた殺気と同じだ。間違いない…コイツはとんでもない化け物だとカトリーヌの本能がそう囁いている。
「よし、じゃあ行くか。アタシに付いてきな」
「はい!私の腕前を見せ……うっ!?ゴファ!!」
カトリーヌと手合わせに張り切っていたフウカだったが、興奮し過ぎたのかまた吐血してしまった。
「…は?おい、大丈夫か?」
「あはは…気にしないでください…いつもの…ことですから…」
「また吐血したのか…アンタ、本当に大丈夫なのか?」
「す…すみません…手合わせは…後日にお願いします…今、手合わせしたら…私…死んじゃいます…」
「…ああ、今日はしっかり休みな。多分、疲れてるんだろ」
「本当に…すみません…ああ…血が足りません…補給しないと…」
よろよろとフウカは部屋へと戻って行った。倒れた音がしたが、きっとベッドに倒れたのだろう…多分。
そして、カトリーヌもまた残念そうに自分の部屋へと戻っていった。
「あーあ、せっかく勝負できると思ったのに…残念だ」
「…いや、あれは大丈夫なのか?」
「心配すんな、アイツはこれぐらいじゃ多分死なないさ」
「多分…?」
こうしてフウカのガルグ=マク大修道院での新たな生活が始まったのだった。
次章で生徒たちとフウカが出会います。
書くのが楽しみですよ!!