ファイアーエムブレム風花雪月 異国のサムライ 作:戦国のえいりあん
セイロス聖教会の傭兵として雇われたフウカはその日から早速、任務に協力することになり、忙しい毎日を送っていた。その任務内容は盗賊の討伐や各地の村落の支援活動に異民族からの町の防衛など多岐に渡る種類の任務が日々、大修道院に依頼されてくるのだ。
特に騎士団や傭兵団の中では最年少であるフウカは、その若さもあって当初は周囲の騎士や傭兵たちから腕前を疑問視されていが、フウカは任務で常に抜群の活躍を見せ、特に戦闘に関する任務での活躍は騎士や傭兵たちの中でもずば抜けており、今ではフウカの腕前は騎士団の全員が認めており、彼女のことを若年だと侮る者はいなくなっていた。
傭兵とした雇われて一月が過ぎ、時は孤月の節の初頭。大修道院での生活にも少しずつ慣れてきたフウカはいつものように任務の依頼をのんびりと待っていた。
◯孤月の節
・ガルグ=マク大修道院 フウカの部屋
「よ~し!今日も1日頑張るぞー!!」
フウカにとって日課となっている朝の気合い入れであり、身体を思いっきり伸ばした後に両手で強く両頬を叩く…いつからやっているかは本人も忘れたが、どんな場所でも毎朝行っていることだ。
「さて…今日はどんな任務だろ?」
未だに参加した任務の数は少ないが、それぞれの任務で抜群の活躍を見せており、フウカの評判も上がってきている。しかしフウカ本人からしてみれば盗賊の討伐など傭兵になる以前から数え切れないほど行ってきたことから若干、物足りなさを感じていた。
「まあ、仕事だから仕方ないけど、もっと他の任務は無いのかな?例えば、すごく巨大な獣を討伐するとか…」
そんな期待を膨らませていたフウカの元へ訪ねて来た者がいた。
「フウカ、入ってもいいか?」
「セテス殿?どうぞお入りください」
「ああ、邪魔をする」
訪ねて来たのは、セテスだった。
ここにやって来たということは恐らく、任務の依頼だろう。今回はどんな任務なのか内心わくわくさせながらフウカはセテスの言葉を待っている。
「今回、君に依頼したいことなのだが…」
「はい、今回はどんな任務なのでしょうか?」
「依頼というよりも、私からの頼みなのだが…」
「セテス殿個人の頼み?」
これは相当に重要な任務に違いない…きっと、私にしか頼めないような困難な任務なのではないか?フウカはますます期待を膨らませていた。
「いったいどのような任務なのですか?」
「…うむ、実は君に剣術師範として士官学校の生徒たちの鍛練を任せたい」
「はい!!士官学校の生徒たちの鍛練ですね!!分かりま……えっ!!?」
なんとセテスがフウカに頼んだのは、士官学校の生徒たちの武術指導だったのだ。あまりに予想外な依頼にフウカは驚きを隠せなかった。
「ま、待ってください!!私は未だに半人前の身…他人を指導するなどもっての他です!それに、私はただの傭兵のはず…」
「君の実力はすでに拝見させて貰った。君のような腕前を持つ者は大陸中を探してもそうはいないだろう…君が指導してくれれば生徒たちもさらに成長するはずだ」
「ですが、私は生徒たちとほとんど歳は変わりませんし、私の指導など聞いてくれないのでは…?」
「その点に関しては心配はいらない、私が各学級の担任に伝えておく。それに、君の腕前を見せれば生徒たちも納得するだろう」
セテスの話によれば現在、士官学校では教員が不足しており、主な教員は医師であり教師でもあるマヌエラと大修道院で紋章学について研究しているハンネマンという人物の他に数人の教師しかいないそうなのだ。
そのような人材不足のせいか、フウカと同じ浪人でありながら、その腕前を見込まれて傭兵から剣術師範として教師になったイエリッツァという人物もいるそうだ。彼もまた同様に謎の多い人物だが、現在でも生徒たちの指導を手伝っているらしい。
特に今年は、各学級にはそれぞれの国の王子と皇女、盟主の嫡子が揃って入学しているらしく、特に厳しく指導して欲しいと各国から強く要請されていたのだ。
その影響で今年の士官学校は特に忙しく、優秀な指導者が一人でも多く必要な聖教会としてはフウカのような人材が必須なのだそうだ。
「君はあくまでも傭兵だ。だから生徒たちへの指導は空いた時間で構わない、もし協力してくれるなら報酬をさらに上乗せしよう」
「う~ん…」
「私だけではなく大司教からの頼みでもあるのだ。引き受けてくれないか?」
しかし、腕が立つとはいえ一介の傭兵に士官学校の生徒を指導させるなど、このセテスという人物を含め聖教会の者たちは何か企んでいるのだろうか?もちろん怪しさもあったが、フウカ個人としての理由はやはり指導など出来るのだろうか?という不安が理由だった。
自身に剣術と剣技を教えてくれた父を始め、多くの師から多くを教わって来たフウカだったが、今度は自身がそれをしなければならない…
教わるならともかく、学生ほどの年齢のフウカが指導を戸惑うのも無理はなかった。
「…私に指導なんてできるでしょうか?」
「難しく考える必要はない。君が見たこと、教わったこと、感じたこと…それを生徒たちに伝えればよいのだ。どう受け止めるかは生徒次第だが君の思うようにすれば大丈夫だ」
「……分かりました。やってみましょう」
「有難い。早速だが、今日は"青獅子の学級"の生徒たちの模擬訓練が行われる。共に参加して指導して欲しい、頼めるか?」
「ところで…先ほどは剣術師範と申していましたが、教えるのは剣術だけでよいのでしょうか?」
「…その口ぶり、君は剣以外にも武術を習得しているのか?」
「はい、剣術のほかに槍術、柔術などいろいろ習得してます」
実はフウカは剣術以外にも故郷で伝授されたさまざまな武術を習得していた。もちろん最も得意とするのは剣術だ。
「ならば、君は剣術師範ではなく武術師範としよう。君の教えられるすべてを学生たちに伝授してやってほしい。訓練は今日の午後からだ、その時はまた声をかける」
「分かりました」
そう言うとセテスは去っていった。
その直後、フウカは部屋のベッドに大きなため息を吐きながら大の字で倒れ込む。
「はあ~…大変なことになっちゃったなあ…本当に私に人を教えることなんて出来るのかな…?」
まったく聖教会も雇ったばかりの自分になんとも無茶苦茶な仕事を依頼してきたものだと、フウカは戸惑っていた。むしろ教えて欲しいのは自分のほうであり、指導の方法などこちらが聞きたいぐらいだ。
そもそも、まだ雇われて日の浅い傭兵に生徒の指導を任せるなど正気の沙汰ではない。もし自分が生徒たちを狙う刺客だったらどうするつもりなのだろうか?
どう考えても普通の人選ではない、聖教会の不可解な判断にフウカはますます疑問を募らせていた。
「…とにかく、頼まれたからにはちゃんと指導しないといけないなあ…父上みたいに上手くできるかな…?」
そんな時、フウカは故郷にいた昔のことを思い出していた。自分がこうして騎士や聖教会たちから一目置かれるような強者になれたのは、剣術を始め、多くのことを自身に教えてくれた父親のおかげだった。
フウカの父親はフウカを越える剣術の腕前を持ち、故郷の者たちからは"剣聖"と謳われたほどの剣士だった。フウカの流派である"二刀"も父親から伝授されたものだ。
さらに父親は、故郷で小さな道場を開いて子供たちに剣術を教えている先生でもあったのだ。
「う~ん…こんな時、父上がここに居たらなんて言ってくれるかなあ…」
そんな悩むフウカの脳裏にある言葉が浮かび上がった。
『君が見たこと、教わったこと、感じたこと…それを生徒たちに伝えればよいのだ』
『君の思うようにすれば大丈夫だ』
「…あー!!もう!考えても仕方ないよ!!…やるんだ!私ならきっと出来る!頑張れ私!!」
再び自身に気合いを入れ直すと、フウカはベッドの上で座禅すると深く瞑想する。
自分が出来る指導は何なのか?生徒に何を伝えればよいのか?そんなことを考えながらフウカはじっと来るべき時を待っていた。
・午後 ガルグ=マク大修道院 訓練場
士官学校の訓練場では、王国出身の生徒が中心の学級である"青獅子の学級"の生徒たちが集合していた。今年、青獅子の学級にはファーガス神聖王国の王子であり、時期国王であるディミトリが在学しており、他にも王国の領地を任せられている貴族の息子なども在学していた。
今回の模擬訓練に参加したのは八人の生徒たちだった。
「みんな聞いてくれ、今日の模擬訓練は特別講師が来てくれるそうだ」
彼の名はディミトリ、"青獅子の学級"の班長を務め、今年の学生の中でも特に注目されている、ファーガス神聖王国の王子というのが彼のことだ。
「特別講師…ですか?」
「ああ、先ほどセテス殿から聞かされたんだ。なんでも、大修道院で雇われている傭兵が訓練に参加してくれるそうだ」
「傭兵だと…?くだらんな、どうせ報酬目当てのゴロツキか何かだろう」
「まあ、そう言うなってフェリクス。どんな奴は知らないが、聖教会が選んだ傭兵ならそれなりの奴だろ。多分だが、実戦の経験は俺たちより高いんじゃないのか?」
話を聞いてつまらなそうな態度をする男、彼の名はフェリクスと言い、王国のフラルダリウス領を治める領主・ロドリグの次男で皮肉家で一匹狼な性格の男だ。
そして、そんなフェリクスを宥めている男がシルヴァンという名で、同じく王国のゴーティエ領を治める領主の次男で、学級内では頼れる兄貴分として慕われているが、無類の女好きでたびたびトラブルを起こしている問題児でもある。
「…ふん、そうだといいがな」
「そう拗ねるなって、考えてみろよ、ひょっとしたら超絶美人な傭兵かも知れないぜ!」
「そんな訳ないでしょう…適当なことを言わないでシルヴァン」
「おいおい、適当とは酷いなイングリット。もしかしたら本当にそうかも知れないだろ?」
「本当にそうだったら困るわ、これ以上、私の苦労を増やさないで欲しいんだけど?」
シルヴァンを指摘する女性。彼女の名はイングリット。王国のガラテア伯爵家の息女で、高潔な騎士に憧れる生真面目な性格の女性だ。
ちなみにこの四人はそれぞれ幼なじみで、幼い頃からお互いに親交があった。
「その傭兵のことだが、シルヴァンの言うとおり女性だそうだ」
「えっ!マジかよ!?」
「ほ、本当なのですか?」
「ああ、しかもあの噂の傭兵らしい」
その噂とは、謎の傭兵のことだ。
一月前から突如、大修道院に現れ、その並外れた腕前を見込まれて聖教会に雇われたと言われる傭兵…その姿は見たこともない風貌で、年齢も学生とほとんど変わらないのだそうだ。その強さと活躍は、すでに士官学校にも轟いていたのだ。
「あ!私、多分その人を見かけたわよ~」
「あたしも見ました!何か…変わった服を着てましたね」
「ええ、でもその子って、私たちと同じぐらいの歳なんでしょう?それなのに、噂になるぐらい強いなんて凄いわね~」
独特な話し方をする女性の名はメルセデス。おっとりとした性格でのんびり屋だが、細かな気配りが出来る上に困っている人を放っておけないほどの心優しい女性だ。
そしてメルセデスの隣にいるもう一人の女性、彼女の名はアネット。ドミニク男爵の姪で、王都の魔道学院を優秀な成績で卒業した才女だ。明るい性格で努力家だが、少しドジな一面もある。メルセデスとは魔道学院時代からの仲良しで、お互いに愛称で呼び合うほど仲が良い。
「なんでも、あのカトリーヌさんと互角以上に戦えるほどの腕前だと噂されているそうですよ…どんな人なんでしょうか?」
「ええっ!!?あのカトリーヌさんと!?」
そんな首を傾げる少年の名はアッシュ。王国内のガスパール領の城主であるロナート卿の養子で、平民の出身だが養父であるロナート卿に我が子のように育てられ士官学校に入学した経歴を持つ。彼に憧れ勉学と鍛練に励む真面目な少年である。
「…殿下、模擬訓練とは言えお気をつけを」
「はは、相変わらず心配性だなドゥドゥー。大丈夫だ、実は俺も楽しみなんだ。どんな奴なのか気になる」
ディミトリの後ろに侍る大男。彼の名はドゥドゥー。ディミトリの従者で、彼に絶対の忠義を誓っている。強面で寡黙なことから誤解されやすいが、根は温和で気の良い青年だ。
「…で?そいつはまだ来ないのか」
「そろそろ、来るはずなんだが…」
生徒たちはそんな特別講師の到着を今か今かと待っていた。すると訓練場の扉が開き、二人の人物が生徒たちの前に姿を現した。一人はセテスで、もう一人は例の特別講師で生徒たちの訓練の手伝いを引き受けたフウカだった。
「諸君、待たせたな。紹介しよう、彼女が今回君たちと共に模擬訓練に参加してもらうフウカ先生だ」
「皆様、こんにちは。私は聖教会の傭兵、フウカです。今回は皆様と一緒に訓練を行うことになりました。よろしくお願いしますね」
そう言うとフウカはディミトリたちに向かってお辞儀をする。一方、ディミトリたちは噂の傭兵であるフウカを珍しそうに見ている。
「あら~、本当に私たちと歳がそんなに変わらないのね~」
「やっぱり、あの時見た人だ。傭兵だって噂は本当だったんだ…!」
「おお、なんて美しい人だ…!あの、訓練が終わったら俺とお茶でも…」
「シルヴァン!!いい加減にして!!」
「お、おい、お前たち…セテス殿の前だぞ」
はしゃぐ生徒たちをセテスは険しい表情で見つめていた。その視線に気づいたディミトリたちが慌てて姿勢を正す。
「……確かにフウカ先生は君たちと歳は近いが、実戦での経験や実力に関しては君たちよりもはるかに上だ。同年代だからと言ってあまり気安くしないでもらいたい」
「は、はい…」
「す、すみません…」
「うむ、では諸君、早速訓練を開始してくれ。フウカ、生徒たちを頼む」
「はい、分かりました」
セテスが訓練場を去った後、ディミトリたちは簡単な自己紹介を行った。
「フウカ先生、申し訳ありません。貴方の噂は士官学校にも聞こえています。私は班長のディミトリです。今日はよろしくお願いします」
「あの、セテス殿はああ言ってましたけど、私にはお気軽に接して頂いて構いませんよ?」
「え?し、しかし…」
「私も歳が近い人たちから礼儀正しくされるのは、ちょっと慣れませんし…その方が皆様も気が楽だと思います」
「ああ…美しいだけでなく心も広いなんてまるで君は天使のようだ。この後、本気で俺とお茶でも……っててて!!!おい!イングリット!!腕をつねるなよっ!!」
「…黙らないと、本気で殴るわよ?」
「えっと…じゃあ、よろしくね?フウカさん」
「ふふ、よろしくね~フウカ」
「よろしくお願いします!フウカさん。今日の訓練、一生懸命頑張ります!」
「……ふん」
「……よろしく頼む」
「…まったく、それじゃあ、お言葉に甘えさせて貰う、フウカ、今日はよろしく頼む」
「はい。皆様、よろしくお願いしますね」
そう言うと、一同は早速訓練の準備を開始した。
それぞれ訓練用の武器を持ち、鍛練を行い始める。そして訓練が始まって早々にフウカに声をかける者がいた。
「なあ、フウカ、俺と手合わせを…」
ディミトリがフウカに声をかけようとした瞬間、それよりも先に訓練用の剣を突き出して声をかけたのは…
「……勝負だ。構えろ」
「おい、フェリクス。抜け駆けは感心しないぞ」
「…ふん、仲良く喋る暇があったら剣を手に持っているんだったな、お前は俺の後だ猪」
フェリクスはすぐにでもフウカと手合わせをしたかったのか、ディミトリたちが談笑している間に訓練用の剣をすでに持っていたのだ。
「…仕方ないな、フウカ。後で手合わせを頼む」
「はい、いいですよ。じゃあ、お相手しましょうか」
フウカとフェリクスは訓練場の中央に移動すると、お互いに武器を構える。士官学校で噂になるほどの腕前はどれほどのものなのか…訓練していた生徒たち全員が二人の勝負に注目していた。
フウカの前に立つフェリクスはいつでも攻撃できる準備が整っており、攻撃しようと間合いを図っていた。
(この女…隙が無い…)
構えを取るフェリクスに対して、フウカは構えもせずに無形の状態でじっと立っている。眉一つ動かさずにフェリクスを見つめていた。
そして先に仕掛けたのはフェリクスだった。フウカに向かって走り、渾身の一撃を繰り出す。
「ハァァ!!!」
だが、フウカは難なくそれを片手で受け止める。
続けてフェリクスは怒涛の如くフウカに剣撃を繰り出すが、それらはすべて軽々といなされる。剣撃をいなし続けるフウカは一瞬の隙を見つけると、そこに一閃の一撃を繰り出す。
(ッ!!?早い…!!)
隙を突かれたフェリクスは何とかフウカの一撃を受け止めたが、防いだにも関わらずその一撃の重さに、後ろに後退させられてしまうほど強力な一撃だった。
(グッ!!なんて馬鹿力だ…!あの身体の何処にこんな力が…!)
「…では、今度はこちらから参ります」
そう言ったフウカは目にも止まらぬ早さで間合いを詰めると、剣撃をフェリクスに繰り出した。
あまりの早さに斬撃が見えず、フェリクスは必死に反射神経でかわし続けるが、ほとんどは避けきれず斬撃が身体をかすっている。
そして一瞬、間合いを置くとフウカは強力な横斬りの一撃を放った。
避けらないと判断したフェリクスは防御の構えを取るが…
ガキィィンッ!!!と鈍い音がした直後、ディミトリの側に何かが突き刺さった。
…なんとそれはフェリクスが持っていた訓練用の剣の刃先だった。フウカの強力な一撃に剣が耐えられずに破損してしまったのだ。
フウカは剣をフェリクスの喉元に突き付ける。
「…一本ですね」
「…参った。完敗だ…」
そう言うとフェリクスは潔くよく負けを認めた。己と相手の実力が分からないフェリクスでは無い、本当に敵わないと感じたからだった。
そして勝負の一部始終を見ていた他の生徒たちはフウカの強さを実感していた。
「強え…あのフェリクスが手も足も出ないなんてな…」
「すごい…!剣がまったく見えませんでしたよ!!」
「強い…!フウカ殿、貴方はいったい…」
「…驚いたな」
誰もがその強さに驚愕していた。
実際に立ち合ったフェリクスもその並外れた腕前に驚きを隠せなかった。
(強い…こんな奴が大陸に居たとはな…この俺が何も出来なかった)
「なかなか良い太刀筋ですね、でも少し力任せで無駄な動きが多いです。もう少し力を抜いてはどうですか?」
「クッ!!…もう一度だ!今度は負けん!」
「ふふ、いいですよ。もう一度です」
「おい!フェリクス、今度は俺の番だぞ」
「うるさい!一本取るまで引き下がれん!」
「順番はちゃんと守れ、お前一人で訓練してるんじゃないんだぞ」
「……チッ!勝手にしろ」
そう言うとフェリクスは渋々フウカの前から下がり、代わりにディミトリがその前に立った。
得意武器である槍を構え、ディミトリは戦闘態勢に入る。
「フウカ、勝負だ!いくぞ!」
「…参ります」
その後、フウカと青獅子の学級の生徒たちは共に訓練を行った。その後シルヴァンやイングリット、ドゥドゥーもフウカに挑んだが、敵わず全員が完敗だった。特にフェリクスやディミトリは幾度となくフウカに挑戦したもののついに一本も取ることは出来なかった。
そして時間はあっという間に過ぎ、訓練場に鐘の音が響き渡った。
「ん?もう終わりか…あっという間だったな」
「え?もう、そんな時間ですか?」
「フウカ、今日はありがとう。お前の強さは本物だ。今回の訓練とても実りのある物だった」
「はい、こちらこそ。あの…私、ちゃんと指導できていたでしょうか…?」
「はい!すごく分かり易かったです!」
「とても勉強になりました。フウカ殿、感謝します」
「…感謝する。お前の技、見させてもらった」
「ってて…身体中アザだらけだぜ…まあ、美女にぶっ飛ばされるってのも悪くないな」
「…おい、また勝負しろ。次は…負けん」
「フウカさん!今日はありがとうございました!」
「本当にありがとう。勉強になったし、楽しかったわ~」
どうやら生徒全員が満足しているようだった。
そんな嬉しそうな生徒たちの笑顔を見ると、不思議とフウカも嬉しくなってきた。父が何故、いつも笑顔で子供たちに剣術を教えていたのか…その理由が初めてわかった気がした。
「そうだ、フウカ。よかったらこの後みんなで食事でもどうだ?」
「いいですね!フウカさんも行こうよ!」
「フウカ、君の隣に座っていいかい?君の話を俺にもっと聞かせて欲しいな」
「はいはい、シルヴァンは黙ってて」
「皆様…」
フウカは嬉しかった。友達は故郷にもいたが、これまで一人で旅をしていた影響で長らく友達という存在とは無縁だったのだ。嬉しさのあまり思わず涙が溢れそうになってくる。
「はい!是非、ご一緒させて…うぐっ!」
誘いに答えようとした瞬間、途端にフウカの顔色が悪くなる…そう、激しい訓練と嬉しさによる強い興奮によりいつもの症状を引き起こしてしまった。
「ゴファ!!」
「フ、フウカ!!?どうしたんだ!!?」
「あはは…すみません…いつものことですから…また…張り切り過ぎちゃったなあ…ゴフッ!!」
フウカは笑いながら自分が吐いた血の海に沈む。
「おいおいおい!!どうすんだよこれ!!」
「わ、私マヌエラ先生を呼んでくるわ~!」
「とにかく医務室に運ぶぞ!ドゥドゥー!手を貸してくれ!」
「…はい!」
(ああ…ついてないなあ…せっかく友達が出来ると思ったのに…私のばかぁ…!!)
その後、生徒たちによって医務室に運ばれたフウカは無事に回復し事なきを得た。
これが、サムライと後に共に戦うことになる戦友たちの最初の出会いだった。
ついに殿下や青組のみんなが登場しました!
書いててとても楽しかったです!!
他の生徒も少しづつ登場させていきます!!