ファイアーエムブレム風花雪月 異国のサムライ 作:戦国のえいりあん
自己解釈ではありますが、原作ストーリーに繋げてみました!
孤月の節が過ぎ、時は大樹の節。
フウカが聖教会の傭兵として働くようになって一月が経とうとしていた。今ではフウカは、セイロス騎士団の中でも屈指の実力者として大司教のレアやセテスからも強く信頼されるようになっていた。そして傭兵として任務をこなす一方で、士官学校の武術師範としての役割も持ち、今やフウカの名を知らぬ者はガルグ=マク大修道院には存在しなかった。
そんなフウカだったが、今節にとある任務をセイロス騎士団の騎士たちと共に遂行することになっていた。
◯大樹の節 初頭
・ガルグ=マク大修道院 騎士の間
「…という訳だ。今回、帝国領内で生徒たちの野営訓練を行う。そこで、騎士団の諸君には生徒たちに野営の指導及び、その護衛を頼みたい」
騎士の間にセイロス騎士団の主な騎士たちが集められ、セテスが任務内容を説明していた。その中にはフウカやカトリーヌ、そして同じくセイロス騎士のアロイスなどが顔を揃えていた。今回の騎士団の任務は、帝国領内で行われる生徒たちの野営訓練の指導とその護衛だった。
「諸君らも明朝に生徒たちと出発してくれ。以上だ」
そう言うとセテスは騎士の間から去っていった。この野営訓練は士官学校の生徒たち全員で行われる学院の大規模な訓練の一つで、その際に使用される訓練用の野営器具や食料などについては今回、訓練場所を提供したアドラステア帝国からも支援もあった。
実際の戦場を想定した本格的な野営訓練なのだが、フウカは疑問を感じていた。
「近頃、大陸各地で盗賊による略奪や襲撃が多発しているのに生徒全員での野外訓練なんて大丈夫なのでしょうか…?」
「さあね、でもこれもレア様の命令なら仕方ないさ」
今回の騎士団の任務は生徒への野営訓練の指導が目的だが、もし仮に生徒たちが訓練中に盗賊に遭遇した場合にそれを護衛するという役割もあるのだ。
だが、各国の情勢が不安定なこの時期に生徒全員による野営訓練など危険が高いのではないかとフウカは心配していたのだ。
「まあ、仮に賊に襲撃されても問題ない。今回の訓練には十分すぎる数の騎士団が動員されてる。心配し過ぎだ」
「そうですぞ!もし賊に襲撃されようとも、このアロイスが成敗してくれましょうぞ!はっはっは!!」
「…そうだとよいのですが」
豪快に笑いながら話す男の名はアロイス。カトリーヌやシャミアと同じセイロス騎士団の騎士で、その話し方からも分かるように豪快かつ気さくな性格の頼れる騎士だ。フウカとも何度か任務を共に遂行したことがあり、お互いに交流があった。
「とにかく、万が一と言うこともあります、お二方も気を引き締めて参りましょう」
「ああ、分かってるよ」
「おお!この任務、我らで必ずや成し遂げましょうぞ!」
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◯翌日
・アドラステア帝国領内 ルミール村付近
その日の明朝、生徒たちと騎士団は大修道院を出発し、ルミール村付近の森林地帯で野営訓練を行っていた。ルミール村はガルグ=マク大修道院から近く半日ほどでたどり着ける地にあった。しかし、生徒全員と多くの騎士団といった大軍の行軍だったことから進軍速度は遅く、ルミール村に到着した頃には日が暮れ、辺りも暗くなり始めていた。
「よし、生徒の諸君!!これより野営訓練を開始する!騎士たちの指示に従いながら野営の準備を始めるのだ!」
アロイスの号令と共に生徒たちが、野営の準備を始めた。柵やテントの建設に炊事の用意、どれも実際の戦場で使用される物だった。騎士たちの指導のもとに生徒たちが作業を行っていた。
「なんか、キャンプみたいで楽しいですね!」
「うふふ、そうね~」
「はあ~…だるい…なんでこんな時に野営訓練なんだよ、さっさと終わらせて女の子を口説きに行きたいぜ…」
「ふん…くだらんな。鍛練でもしていたほうが有意義だ」
「ちょっとあなたたち!!さぼらないで手を動かしなさい!」
青獅子の学級の生徒たちもまた、野営の準備に取り掛かっていた。だが、そんな訓練に不満そうなシルヴァンとフェリクスを見ていた騎士が二人に声をかけた。
「おい!お前たち、真面目にやれ!!これは遊びではないぞ!!」
「うおっと!?やべぇ!!あはは…すんません…」
「……ふん」
騎士は二人を睨み付けて注意すると、別の陣営を見張るために去っていった。騎士が去るのを見届けたシルヴァンはため息をついた。
「ふう…まったく、たかが野営訓練であそこまで怒らなくてもいいのにねぇ…」
「あなたがいい加減にしてるからでしょう!真面目にやりなさい!」
「はいはい、真面目にやりますよっと」
その後、各学級の陣営の設営が完了する頃には、辺りはすっかり暗くなっており、それぞれ各自で食事の準備に取り掛かり始めた。食事も実戦を想定して兵糧を食べることになっており、兵糧としてパンやチーズ、干し肉などが決まった量で配られていた。
・金鹿の学級の陣営
「ええっ~!!!今日のメシってこんだけなのかっ!!?オデ、こんなんじゃ足りねぇよお!!」
「訓練なんだから仕方ないでしょー、我慢してよ!」
「足りないなら、わたしが何か獲って来ようか?」
「…くっ!!本来ならこんな物、断じて口にしないが…訓練ならばやむを得ないな。しかし…貴族たる僕がこんな下品な食事を…!」
それぞれの各学級が陣営で食事を行う中、騎士団の騎士たちも同じく食事に取り掛かっていた。生徒たちに指導しつつ交代しながら食事を行う予定になっており、指導を他の騎士と交代してもらったフウカはカトリーヌ、アロイスと共に焚き火を囲んで食事をしていた。
「今のところ、問題はなさそうですな」
「そうだな、このまま順調に行けば明日には大修道院に戻れるだろう」
「ところで…フウカ殿はどちらに?」
「ああ、アイツなら物足りないって言って、食料を採りに行ったぞ」
実はフウカは健啖家で華奢な見た目からは想像できないほどの大食いなのだ。食堂でも三人分の食事を平気で平らげるほどで、配られた兵糧だけでは満足できなかったフウカは森林に食料になりそうな物を現地調達しに行ったのだ。
「よ、よろしいのですか?まだ指導の途中ですぞ」
「すぐに戻るって言ってたし、大丈夫だろ」
「すみません~!今、戻りました!」
「お!本当に早いな、もう帰って来た…の…か」
しかし、二人はフウカの姿を見て言葉を失った。そのフウカの姿はと言うと、両手に人の脚ぐらいの太さの魚を数匹持ち、さらに極めつけにフウカの首にはなんと蛇が巻かれてあった。
「見てください!大量ですよっ!」
「……」
「ふ、フウカ殿…そ、それはいったい…」
「すごいですね!この森林、獲物の宝庫ですよ!」
そう、フウカはサバイバル技術にも精通しており、彼女の旅のほとんどが自給自足の現地調達だったことから必然的に身に付けてしまった技術なのだ。普通なら食べないような物を口にしたことも多々あるそうだが、食べることと味に対して強い思い入れを持つフウカはこれらも一種の食道楽として密かな楽しみとしているのだ。
「さて、どんな風に調理しましょうか?」
「ア、アンタ…本気でそれを食う気か…?魚はまだいいとして、そいつは蛇だろ?」
「もちろんです!蛇ってなかなか美味しいんですよ!!」
「そ、そうか…アタシは遠慮する」
そうですか、美味しいのに…と残念そうな顔をしながらフウカは手慣れた手つきで獲って来た獲物を調理し始めた。魚は鱗を綺麗に剥いだ後に木の枝から作った串を差し、塩とフウカ特製の香辛料をつけた後、焚き火でじわじわと炙る。そして問題の蛇も頭を切り落とした後に毒が無いか確認すると、食べやすい大きさに胴体を小刀で切って魚と同じように火で炙り始める。
「完成です!さあ、食べましょう!」
「む?しかし…なんだか美味そうな匂いがしますな…!」
「はい。私の故郷で作られている特製の香辛料を使ったのです!よろしければアロイス殿もいかがですか?」
「う、うむ。では、その魚を…」
アロイスは焼き魚を一本手に取ると、一瞬躊躇ったが豪快に噛り付く。
「…おおっ!!美味いぞ!!」
「ふふ、そうでしょうそうでしょう!美味しい料理もいいですが、たまにはこんな自然の味を楽しむのもよいのではないでしょうか?」
「うむ!これならば何匹でも食べられそうだ!カトリーヌ殿もどうですかな?」
「……じゃあ、その魚を貰うよ」
そう言うと、カトリーヌも魚を手に取り同様に噛り付く。へぇ…悪くないねえ、と焼き魚に関してはカトリーヌも気に入っていたようだった。
ちなみにやはりと言うべきか蛇にはフウカ以外、誰も手を出さず結局彼女が一人で完食してしまった。フウカいわく、鶏肉のような味と歯ごたえでなかなか美味しかったです!!だそうだ。
「さて、それじゃ訓練が終わるまで後は見回りだな」
「そうですね、大修道院に帰還するまで油断せずに参りましょう」
各陣営が食事を済ませた後、就寝時間となり生徒たちは各学級のテントに戻り各自で仮眠を取っていた。騎士たちもまた交代で仮眠を取りながら陣営を見回り、辺りを警戒していた。しかし、カトリーヌの言ったようにこの規模の陣営と騎士団を見て、襲撃してくる無謀な賊もいるはずがなく、何も起きぬまま夜が過ぎ、そして夜明けを向かえようとしていた。
そして翌日の早朝、生徒たちが目を覚まし大修道院に帰還するため陣営をたたみ始めていた時だった。
◯次の翌日 早朝
・アドラステア帝国領内 ルミール村付近
「ふあ~あ…結局何もなかったねえ」
「そうですね。でも、よかったじゃないですか。これで無事に訓練は終了、後は大修道院に帰還するだけです」
「さて、じゃあアタシはもう一度、陣営を一回り見てくる。ここはアンタに任せたよ」
何か物足りなさそうな顔であくびをしながらカトリーヌは歩いて行った。そしてフウカが見張りを任された陣営は青獅子の学級の陣営だった。すると立っていたフウカの前に同じく眠そうな顔をしたアネットの姿が見えた。
「ふあ~あ……あ!フウカさん!おはようございます!」
「はい、おはようございます」
「ひょっとして、ずっと見回りしてたんですか?あの、あたしたちのためにすみません…」
「いえ、これも任務ですから。さあ、大修道院に帰還するまでが訓練ですよ、最後まで頑張ってください」
「そうですよね、大修道院に帰るまでが訓練…あたし、最後まで頑張ります!」
「アン~ちょっと手伝ってちょうだい~!」
近くからメルセデスの呼び声が聞こえきた。青獅子の学級の陣営はほとんど片付けが終わっており、生徒たちはいつでも動ける状態で待機していたのだ。さすがはファーガス神聖王国の出身の生徒だけあって軍での行動には慣れているのか生徒たちの手際良さにフウカは感心していた。
「うん、今行くよメーチェ!じゃあフウカさん、また後で」
「はい、また後……!」
「…え?」
その時、背後に何かの気配を感じたアネットが後ろを振り向こうとするが、それよりも早く動いたのはフウカだった。素早く刀を抜き、アネットの背後にいた"何か"を瞬時に斬り捨てる。
その何かの正体は…
「…が!?ごふっ!!?」
「不意打ちとは卑怯千万ですね…」
「……え?ふ…フウカ…さん…?」
フウカの一刀の元に何者かはその場に倒れた。服装を見ると生徒や騎士ではない、紛れもなく盗賊だった。その盗賊は物陰から密かにアネットに近づき斧を振り下ろそうとしていたのだ。気づくのが少しでも遅れていれば斧はアネットの身体に直撃していただろう。
「…あ、ああ…」
「大丈夫ですか?」
「は、はい…あの、この人って…まさか」
「はい、盗賊ですね。それに…」
フウカの前に見える樹林の暗闇から多くの人の気配を感じた。それもかなりの人数で、数十人どころではない。それとほぼ同時に各陣営から角笛の音が鳴り響いた、その笛が意味する合図は敵襲だ。あちこちから聞こえる角笛の音で恐らく陣営は大混乱に陥っているだろう。
「アネット殿、皆様と共に避難を。ここは私にお任せください」
「で、でも!フウカさんは…!?」
「私なら心配無用です。さあ、行ってください」
「は、はい!フウカさん、死なないでくださいね…!!」
そう言い残すと、アネットは迎えに来たメルセデスに連れられてその場から避難した。すると眼前の樹林から大勢の盗賊が姿を現した。各地から敵襲の合図が聞こえたということはかなりの勢力を持つ盗賊団なのだろう。
「野郎ども!!騎士団には構うな!生徒どもを襲え!」
「「おおっ!!」」
どうやら狙いは生徒たちのようで、盗賊は生徒たちを優先的に狙って攻撃を仕掛けていた。
「生徒の皆に手出しはさせません…あなたたちの相手は私です…」
「相手は一人だ!野郎どもやっちまえ!」
大勢の盗賊たちが一斉にフウカに襲いかかるが、フウカは怯むことなくそれを迎え打つ。フウカは二刀の構えを取ると、次々と盗賊を一太刀で斬り捨てていく、フウカが刀を振るたびに盗賊たちの頭や手足が飛び散り、周りに大量の血溜まりを作っていく。あまりの強さに盗賊たちは恐怖し逃げ出す者が現れ始めた。
そんな時、フウカの背後から何者かが現れた。
「フウカ殿!我々も加勢します!」
「盗賊ども!覚悟しろ!!」
現れたのは、セイロス騎士団の騎士たち…援軍だった。これで盗賊との数は五分五分となったが、錬度で大きく勝る騎士団に敵うはずもなく、次々と騎士たちによって倒されていった。
「フウカ殿!ここは任せろ!貴殿は生徒たちを頼む!まだ、逃げ遅れた者がいる!」
「!承知しました!後を頼みます!」
フウカは騎士たちにこの場を任せると、逃げ遅れた生徒がいないか各陣営を探し回った。ひどく混乱しているようで、そこら中で戦いが起こりどうなっているのかまったく把握できない状況に陥っていた。
その時、フウカの先に人影が見えた。あの服装は間違いない、生徒だった。
「あれは…クロード殿?」
逃げていた生徒は、金鹿の学級の級長・クロードだった。そしてその後ろを同じく黒鷲の学級の級長・エーデルガルトとディミトリが彼を追っていた。最悪なことに三人はかなりの人数の盗賊から追われており、必死に逃げ惑っているようだった。
「おい!お前ら!何でついてくるんだよ!おかげで今度は俺たちがやばいぞ!!」
「貴方が真っ先に逃げるからこうなったのよ!」
「まったく、皆のために囮役を買って出るとはな…一人で格好をつけるからこうなるんだぞ」
それを見たフウカは、大急ぎで三人の後を追った。
・アドラステア帝国領内 ルミール村
追われる三人の級長を見かけたフウカは、急いで追跡したものの途中で見失ってしまい、辺りを捜索していた。
フウカがいる周辺は樹林が深く、聞いた話によればこの近くにはルミール村と呼ばれる村があるそうなのだ。
「どこに行ったのでしょうか…?」
三人の無事を願いながらフウカは勘を頼りに歩き続ける、すると近くから声が聞こえてきた。声と音から察するに何者かが戦っているのだろうか。音の聞こえる方に進んでみると、なんとそこでは戦が起こっていた。
(誰かが戦っている…?)
見ると盗賊団と謎の傭兵団が戦っていた。いったいどこの傭兵団なのか?とフウカは疑問に思った。戦いぶりからして傭兵団は一人一人が熟練の戦士で盗賊団を圧倒していた。そして、その先に見える村の入り口付近では別の戦いが起こっていた。
(あれは…?)
そこでは馬に乗った立派な風格の傭兵と黒色の装束と灰色の外套に身を包んだ青髪の女剣士…そして探していた三人の級長が盗賊団と戦っていた。
「無表情に剣を振りやがって…!俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」
「……」
盗賊団の頭領らしき男が青髪の女剣士に襲いかかるが、女剣士は表情一つ変えずに強力な一撃を頭領に叩き込んだ。その一撃を喰らった頭領は大きく吹き飛び倒れたが、あまり効果が無かったのかその後、勢いよく跳ね起きた。
「死ねぇぇ!!」
なんと頭領は突如、攻撃目標をエーデルガルトに変えると、彼女に向かって走りだし斧を振りかぶって襲いかかった。エーデルガルトは腰に身に付けた短剣を構え、身を守ろうと構える。すると、側にいた女剣士が身を挺してエーデルガルトを庇った。
「どけえぇぇ!!!」
「っ!?危ない!」
(駄目です!!あれでは…!!)
あれならエーデルガルトは助かるが、あの女剣士はまとも攻撃を受けてしまうだろう。あの攻撃を受けては致命傷は避けられない、自分が行こうにももう間に合わない…もう、あの女剣士は助けられないと思ったその時だった。
突如、フウカの視界が一瞬だけ歪みそして、真っ黒になる。
そして目を開けると、不思議なことが起こっていた。なんと頭領がエーデルガルトに襲いかかる直前の状況に戻っていたのだ。だか、フウカは何が起こったのか分からないばかりか、先ほどまでのことをさっぱり忘れてしまっていた。
(あれ…?今、何が…?)
すると先ほどと同じように頭領が再びエーデルガルトに襲いかかろうとするが、なぜか先ほどとは状況が違っていた。まるでエーデルガルトが襲われるのが分かっていたかのように女剣士は守るように前に立つ。
「どけえぇぇ!!」
「はあっ!!」
「ぐおっ!?」
女剣士は再び強力な一撃を繰り出し武器ごと頭領を吹き飛ばした。その一撃で今度こそ頭領は気を失い、慌てた部下たちが頭領を担いで逃げて行った。
「…大丈夫?」
「ベレス?お前、今何か……」
おかしい…さっき確か…フウカが疑問に思っていると、背後から足音が聞こえてきた。フウカは刀に手をかけて身構えるが、その人物を見て警戒を解いた。
現れたのはアロイスと味方の騎士たちだった。
「フウカ殿!ここにおられたか!」
「アロイス殿ですか、生徒の皆様は無事だったのですか?」
「うむ!生徒たちは無事だ!だが…級長の三人が行方不明なのだ…」
「大丈夫です。三人ならあそこに」
フウカとアロイスは樹林を抜け、三人の級長と謎の二人の傭兵の元へ向かって行った。
すると、アロイスが大声で叫んだ。
「セイロス騎士団、ただ今参った!!生徒を脅かす賊ども!覚悟せええ……い?」
「アロイス殿、もうここに盗賊はいませんよ。奴らならあっちに逃げました」
「おお!?そうなのか?よし、貴殿らは後を追うのだ!」
アロイスが指示すると、共にいた騎士たちが逃げた盗賊たちを追っていった。
「さて、級長たちも無事だったようだな。……と、そちらは……?」
するとアロイスを見たとたん、馬に乗っていた立派な風格の傭兵の表情が面倒そうになっていた。どうやら、アロイスとこの傭兵は面識があるようだった。
「おっと…面倒な奴が来ちまった…」
そしてアロイスも、その傭兵の顔を見るなり嬉しそうな表情で叫ぶように話し始めた。
「やはり、ジェラルト団長ではないですか!うおおお!!久しぶりですな!覚えておられますか?自称"あなたの右腕"アロイスですぞ!!」
「相変わらずうるせぇ奴だな、アロイス……。それにもう団長じゃない」
「アロイス殿のお知り合いですか?」
「うむ!何を隠そう、この人こそフォドラにその人ありと言われたセイロス騎士団の元団長、"壊刃のジェラルト"殿ですぞ!」
彼の名はジェラルト。かつてセイロス騎士団に仕えていた騎士で、さらに騎士団長を務めていたのだ。その腕前は歴代最強と呼ばれ"壊刃"の異名で知られるほどの凄腕の騎士だ。
「今はただの流れ傭兵だ……そういうわけで次の仕事あるから、またな」
「ええ、ではまたどこかで……って、そうなるわけないでしょうが!!団長には修道院に来てもらいますからね」
「ガルグ=マク大修道院か。はあ……そうなるよあ」
こうなることが薄々分かっていたのか、ジェラルトはため息をつきながら難しそうな顔をする。どうやら事情があるようでジェラルト本人はセイロス教会とは関わりを避けているように見えた。
そんな時、ジェラルトの背後にいるあの青髪の女剣士の存在にアロイスが気付いた。
「おや?もしかしてそちらの若者は、団長のお子さんですか?」
「…そうだ、自分はベレス、よろしくね」
「そうであったか!見た目ともかく、雰囲気は団長そっくりであるなあ」
ジェラルトの背後にいた謎の女剣士の名はベレス。ジェラルトの娘で父親譲りの武術の腕前を持ち、どこか不思議な雰囲気を漂わせる女性だ。無表情に剣を振り戦うことから"灰色の悪魔"と呼ばれ恐れられていた。
「貴殿にも是非、大修道院を見てもらいたい。同行願えるか?」
聞くとベレスは無言でうなずく。感情表情に乏しくさっきから表情一つ変えずにいた。そんな時、フウカはベレスのことをじっと見ていた。彼女の不思議な雰囲気も気になっていたが、それよりも先ほど起こった"何か"の違和感にフウカは疑問を感じていたのだ。
そんなフウカの視界に気付いたのか、ベレスが声をかけた。
「…?自分に何か用?」
「い、いえ!何でもありません…少し変わった方だなと思って…」
「…貴方も変わってる」
「あはは…私もよく言われます」
「貴方の名前は?」
「私はフウカ、あなたと同じセイロス教会に雇われた傭兵です」
「フウカか、よろしくね」
笑顔で答えるフウカに対して、ベレスは相変わらずの無表情だった。その後、ジェラルトとベレスはアロイスたち騎士団と共に大修道院に行くことになった。
後に英雄と謳われる彼女とサムライの奇妙な邂逅だった。
ここから、本編のストーリー沿いに物語を進めていくつもりです!合間に支援会話を入れながらフウカ視点で書いていきます!