ファイアーエムブレム風花雪月 異国のサムライ   作:戦国のえいりあん

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自己解釈ではありますが、ストーリーの裏側を意識して書いてみましたよ!


第五章 フウカとベレス

野営訓練を終えた士官学校の生徒たちと騎士団はガルグ=マク大修道院に帰還していた。訓練中に盗賊に襲撃されるという不測の事態があったが、同行した騎士団の活躍で被害は軽微にとどめられた上に生徒たちも無事だったのだ。そして、その帰還中の軍中には元セイロス騎士団長のジェラルトとその娘のベレスの姿もあった。

 

だが、帰還して早々に騎士団や生徒たちを驚愕させる出来事が起こった。なんと、大修道院に同行してきた傭兵のベレスが士官学校の教師になることが決まったのだ。聞いた話よれば、あの襲撃で生徒たちの担任をしていた教師が生徒を見捨てて逃げ出してしまったそうで、その代わりに推薦されたのがベレスだったのだ。この推薦はアロイスによるものだったが、レアはベレスに何か思う所があったのか、セテスの反対を押し切って彼女を士官学校の教師に任命してしまったのだ。

 

この人事に騎士団や生徒はおろか、父親のジェラルトも驚いていた。教師となることに決まったベレスは三つの学級の一つを担任として受け持つことになり、学級の生徒たちと交流するために大修道院内を忙しそうに歩き回る彼女の姿が多々、目撃されていた。

 

 

・ガルグ=マク大修道院 玄関ホール

 

 

「まったく…あんな得体の知れない奴を教師にするなんて、レア様は何を考えているんだか…」

 

「まさか、いきなり教師に任命するなんて思いませんでした。大司教殿も思い切ったことをされますね」

 

 

玄関ホールで話し合っていたのはカトリーヌとフウカだ。二人もまたベレスが教師に任命されたことに驚きを隠せなかった。特にフウカも彼女と同じ傭兵でありながら突如、生徒たちの武術指導を任せられるなど、教団の予想外な人事の経験があることから今回の人事にも疑問を抱いていた。

 

 

「大司教殿には何かお考えがあるのでしょうか?」

 

「さあね、まあ一つ確実に言えるのはレア様の目に狂いは無いってことさ。…アンタを抜擢したようにね」

 

 

今ではカトリーヌとフウカは任務や日常の生活を通じてお互いに親しい間柄になっており、二人でよく訓練や談笑する仲になっていたのだ。今の二人は戦場を共にする仲間であり戦友でもあるのだ。

 

 

「最初はアンタのことも疑ってたんだが、その必要はなくなった。アンタは腕も立つし信用できるいい奴だったからな」

 

「カトリーヌ殿…そう言って頂けるとは光栄です!」

 

「あはは、これからも頼むよ、フウカ」

 

 

笑いながらお互いに談笑していた二人の前にとある人物が現れた。実は二人が玄関ホールに居たのは、その人物を待っていたからなのだ。その人物はというと…

 

 

「よう、待たせたな」

 

「やっと来たか…遅いじゃないかシャミア」

 

「すまん、少し気になることがあってな」

 

「…では、何か掴めたのですか?」

 

「ああ、話を整理したい。場所を変えよう」

 

「じゃあ、フウカの部屋でどうだ?」

 

「…分かった」

 

「分かりました。では、参りましょう!」

 

 

そう言うと、三人はフウカの部屋がある兵舎に向かった。大司教レアとセテスから命じられた、ある任務によって三人はあることを調べていたのだ。

 

 

・ガルグ=マク大修道院 フウカの部屋

 

 

「さあさあ、どうぞ!お茶でも如何ですか?茶菓子も用意しますよ!」

 

 

案内されたカトリーヌとシャミアはフウカの部屋に足を踏み入れる。フウカは嬉しそうに茶と故郷の菓子を二人に振る舞おうとするが、二人はなんとも言えない表情をしながら断った。

 

 

「い、いや、気を使わなくていい。すぐに終わる」

 

「…ああ、すぐに済む」

 

 

実は二人はフウカの故郷の茶である、緑茶が苦手で飲めないのだ。以前にフウカから初めて緑茶を薦められて飲んだ時から口に合わず、それ以来、緑茶が苦手になってしまったのだ。フウカいわくこの苦味と深みがいいのに…と共感を得られずに残念そうだった。この大陸の人々には緑茶はあまり受け入れられないようだ。

 

 

「そ、そうですか…分かりました。では…」

 

「…ああ、早速だが二人とも何か掴めたか?」

 

 

そう三人の任務は、訓練中に襲撃して来た盗賊団の足取りとガルグ=マク大修道院に出入りしている不審者についての調査が任務だった。

 

 

「盗賊団の居場所が分かりました。あの後、盗賊団の残党は"赤き谷ザナド"と言われる地に逃げたようです。探ってみた所、奴らの一味らしき者たちがあの地を出入りしています」

 

「"赤き谷ザナド"ねぇ…あんな所に逃げ込むなんて、奴らも必死って訳だ」

 

 

赤き谷ザナドは数千年前の建物の遺跡が存在する谷で険しい上に足場も良くない危険な地であり、人が近づくことは滅多にない場所だ。さらに谷の周辺には大量の巨獣が潜んでいると言われているのだ。

 

 

「こっちも大修道院に出入りしている不審者について探ってみたが、特に怪しい奴はいなかったな。最近、大修道院に入って来るのは商人ばかりだ」

 

 

一方のカトリーヌは大修道院を出入りする不審者について調査していたが、大修道院に出入りしているのは商人ぐらいで怪しい者が内部に侵入した噂や痕跡は見つからなかったのだ。

何故、大修道院に不審者が出入りしているかもしれない…という疑惑が流れているのか、これらの調査にも理由があった。

 

 

「ですが、あの襲撃してきた盗賊団は恐らく私たちを待ち伏せしていました。まるで私たちがあの地で訓練をすることを知っていたようでしたね」

 

「ああ、ここの情報を誰かが奴らに漏らしたんだろ。そうでなきゃ説明がつかない」

 

 

あの訓練の情報は騎士団や生徒たちと言った大修道院内の者しか知らない筈で、それを外部の人間が知っているということは大修道院に情報を漏らしている何者かが存在しているということだ。

 

 

「それに関しては、私も少し探ってみたんだが…」

 

「何か分かったのか?」

 

「ああ、ルミール村を調べたんだが、村人の一人があの盗賊団の頭領と何者かが話している所を目撃したそうだ」

 

「頭領と…ですか?では、その者が情報を…」

 

「可能性は高いな、聞いた話によればそいつは鎧姿で奇妙な兜を被っていたらしい」

 

 

そのような者は大修道院でも見たこともないが、大修道院の人間の誰かであることは確かな話だ。それ以外に有力な情報は掴めず、再び調査する必要があった。

 

 

「これだけじゃ、何とも言えないね…、もう少し調べる必要があるな」

 

「それと…最近、妙に大修道院に商人が出入りしていないか?」

 

「言われて見ればそうですね」

 

「ああ、確かに多い。特に今年は帝国の商人がよく来るな」

 

 

カトリーヌは大修道院外部から入った来た、商人や訪問者を取り調べていたのだが、調べた人のほとんどが商人だったのだ。中には王国や同盟領から来た商人もいたが、それはごく僅かでそれ以外は帝国からの商人だったのだ。だが、調べた商人は全員国から正式に商売を認められた証書を持っていたことから、カトリーヌはあまり気にしていなかったのだ。

 

 

「…で、それとこの状況に何か関係があるのか?」

 

「…あくまで推測だが、その商人の誰かが外に情報を流したとも考えられる」

 

「考えられない話じゃないが、調べた商人は全員に商売目的で大修道院に来た奴らだった。証書も持ってたしな」

 

「だが、間者だという可能性も考えられる。これから怪しい奴は片っ端から捕らえたほうがいいかもしれん」

 

 

現時点の情報はこれだけだが、今は逃亡した盗賊の足取りを掴むことが最優先であり、早々に討伐する必要があったのだ。だが今回の盗賊討伐にはセテスからとある頼みを受けていたのだ。

 

 

「今回の盗賊討伐だが、セテスさんの依頼で騎士団は盗賊団の弱体化を最優先して欲しいそうだ」

 

「弱体化…?討伐するのではないのですか?」

 

「どうやら、今回の盗賊討伐は最終的に生徒たちに任せるそうだ」

 

「…なるほどね、ガキどもに実戦を学ばせたいって言ったところか」

 

 

今回の任務は、実戦の経験を生徒たちに積ませる為に賊を可能な限り弱体化させ、生徒たちが戦い易い状況を作り出すのが任務だった。

 

 

「あの程度の盗賊なら案ずることは無いと思いますが、油断はできませんね」

 

「まあ、初陣の生徒でも堅実に戦えば死ぬことはないだろ」

 

「やれやれ、最近は面倒な任務が多いもんだ。まあ、任務なら仕方ないか」

 

 

今でも盗賊が潜伏している赤き谷ザナドには騎士団による監視がついており、命があればいつでも出陣できる状況だ。

 

 

「現在の情報についてはこんなところか…」

 

「そうですね、引き続き調査を進めて行きましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

「二人ともいつでも出陣できるように準備しておけよ」

 

「分かってるよ。さて、話も済んだし…この後、久しぶりに三人で訓練でもしないか?」

 

「いいですね!シャミア殿も如何ですか?」

 

「…まあ、たまにはいいか。分かった、私も付き合おう」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その数日後、士官学校の教師になったベレスが担任する学級が決まり、彼女が担任をすることになった学級は青獅子の学級だった。当初は生徒や教師もベレスに教師としての資質があるのか疑問に思っていたが、その後すぐに行われた三つの学級による対抗の模擬戦で生徒たちを見事に指揮し他の学級を圧倒したことから生徒たちは彼女を教師として認めるようになったのだ。

 

それから一月が過ぎ、季節は堅琴の節。

ベレスは青獅子の学級で武術や勉学、戦術を生徒たちに教える日々を過ごし、フウカもまた傭兵として任務をこなす日々を送っていた。

 

 

○堅琴の節

 

・ガルグ=マク大修道院 食堂

 

 

「はあ~お腹空いたなあ、さてと今日のメニューはなんだろう?」

 

 

時刻は昼時、午前中に任務を終わらせたフウカは食堂に来ていた。今では大修道院の食堂の料理をすっかり気に入ったフウカはこの時を楽しみにしながら毎日を頑張っているようなものだった。本日のメニューは"獣肉の鉄板焼き"という豪快な肉料理でフウカの好物の一つだった。

 

 

「ふふ、これ好物なんだよね。早速、食べよっと!」

 

 

料理をテーブルに持って行き、席に座ると食べようとするが、その時フウカに声をかける者がいた。

 

 

「フウカ、隣いいかな?」

 

「あ、ベレス先生!もちろんいいですよ!」

 

「ああ、失礼するよ」

 

 

声をかけてきたのは今、学院でちょっとした有名人のベレスだった。ベレスはフウカの正面の席に同じく料理を置いて腰かけた。ベレスは生徒たちのやる気とモチベーションの向上のために、こうしてよく生徒たちを食事に誘っているのだ。

 

 

「前から君とは話がしたいと思っていた」

 

「私もです先生、あなたのことを聞かせてください!」

 

「そういえば、君は教団の傭兵だと聞いたけど以前は何をしていたの?」

 

「はい、私はここの傭兵になる前は、武者修行のために世界諸国を放浪していました」

 

「そうなのか、自分も父や傭兵団の仲間に従って大陸の様々な戦場で渡り歩いてきた」

 

「ジェラルト殿とですか、でも敬愛する父君と共に戦えるのは心強かったのではないのですか?」

 

 

だがベレスは何故か微妙な表情になる。聞いた話によれば父ジェラルトには謎が多く、娘であるベレスも父についてあまり詳しいことは分からないそうで、さらに自分自身についてもまったく分からないらしいのだ。本当に二人は親子なのか?と疑いたくなるほどお互いに謎が多い関係だった。

 

 

「なんだか、先生って変わってますね。自分のことが分からないなんて…」

 

「よく言われる。それに自分はいつも無表情で感情表現に乏しいともよく言われるから時に人から不気味に思われたこともあったね」

 

「それを言うなら私も一緒ですよ。私も何故か町や村に行くと、みんな不思議そうな顔で私のことを見るんですよ!それに故郷の話をしても誰も分かってくれなくて変人扱いされたこともありますし…」

 

「…そうだね、確かに君の服装は珍しいし考え方や文化も違う。でも君はすごい人だと自分は思うよ」

 

「せ、先生、急にそんなこと言われても困りますよ…」

 

「本当のことを言っただけだ、生徒と同じぐらいの年齢なのに人を指導できるだけの武術と技を身に付けているし、その強さに驕らず常に敬意を持って皆と接している。君は間違いなく素晴らしい人だよ」

 

 

そのように誰かに褒められたのは初めてだった。父から褒められたことは何度かあったが、それ以外の人にこのように言ってもらえたのはフウカにとって経験がないことだったのだ。嬉しさのあまりフウカの顔がまるでトマトのように赤くなっていた。

 

 

「そ、そんな…えっと…わ、私などまだまだ未熟者ですよ!」

 

「謙遜しなくていい。もし君さえよければ、また生徒たちにも訓練をつけてくれないか?君が参加してくれれば、皆も喜ぶ」

 

 

実はベレスが青獅子の学級の担任になってから、フウカと共に訓練する機会が多くなり、今では青獅子の学級の生徒たちとも親しい関係になっていた。

 

 

「後、自分とも訓練をお願いしたい。君と手合わせすれば自分はもっと強くなれる気がする」

 

「先生…こちらこそよろしくお願い致します!私などまだまだ未熟者…私も先生から学ばせていただきます!」

 

 

その後、フウカはベレスや青獅子の学級の生徒たちの訓練や課題を手伝うようになった。これによってフウカと青獅子の学級はさらに関係を深めていくことになる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

・おまけ 「イングリットと寿司」

 

 

・ガルグ=マク大修道院 食堂

 

 

堅琴の節の11日、この日は"大成長期"と言って大修道院内にある釣り池の魚が成長期で大きく育つ時期であることから、この日は大物の魚がよく釣れる日なのだ。

そんな時、青獅子の学級の生徒であるイングリットが食堂に訪れていた。

 

 

「こんな朝早くに呼び出すなんて…いったい何の用かしら?」

 

 

イングリットと手には小さなメモがあり、そのメモにはメッセージが書かれてあった。差出人はフウカで、内容は「もし、都合がよろしければ明日の早朝に食堂へ来て下さい!!」と書かれて自室の机に置いてあったのだ。

 

 

「やっぱり誰もいない、誰かのイタズラだったのかしら…?」

 

 

メモに書いてあった通り、早朝に食堂へとやって来たイングリットだが食堂は静まり返っていた。この時間に食堂に居るのは朝早くから本日の料理の仕込みをしている食堂のおばちゃんぐらいだ。

 

 

「はあ…帰りましょうか」

 

 

きっと誰かのイタズラだったのだと思って帰ろうとするイングリットに背後から元気よく声をかける者がいた。

 

 

「イングリット殿!来て下さったのですね!感謝致します!」

 

「きゃあ!?ふ、フウカ殿…?脅かさないでください…」

 

「あはは、すみません。嬉しかったものでつい…」

 

「…では、このメモは」

 

「はい!私が書いたものです!本当は口で伝えたかったのですが、機会がなくて…」

 

 

そう、メモを書いたのはイタズラではなくフウカ本人だったのだ。しかしイングリットはフウカの奇妙な格好に首を傾げていた。いつも服装の上にエプロンを身に付け、頭には"捻り鉢巻"という変わった紐を頭に巻いていた。

 

 

「あの…フウカ殿?その格好は…?」

 

「よくぞ聞いてくれました!イングリット殿!今日は故郷の料理をあなたに食べて頂きたいのです!」

 

「え?フウカ殿の故郷の料理を…?」

 

「はい!今日は大物の魚が大量に釣れるというので、私の故郷の料理…"寿司"を作ろうと思った次第です!」

 

「す、スシ…?」

 

 

確かに今日は大成長期で、大きな魚が大量に釣れることから本日は美味な魚料理が食堂で作られる予定であり、イングリットも密かに楽しみにしていたのだが、どうしても疑問に思うことがあった。

 

 

「あ、あの…お気持ちは嬉しいのですが、なぜ私に?」

 

「シルヴァン殿とフェリクス殿から聞かせて頂きました…イングリット殿、あなたは食事がとてもお好きなのですね!!」

 

「は、はあ!!?」

 

 

フウカの話によれば、シルヴァンからは「いつも平気そうな顔してるが、あいつはよく食うぜ…きっと食い意地を張ってるんだろうな」と言われ、フェリクスからは「あいつは、騎士になることと食い物のこと以外は頭に無いかもしれんな」と言われていたそうなのだ。

 

 

(あ…あの、馬鹿っ~!!!)

 

「知りませんでした…イングリット殿も私と同志だったのですね!ですが、恥じることはありません!美味な料理を食べる時ほど幸せなことはないですよね!」

 

「い、いえ!違います!これは…その…」

 

「とにかく、私はイングリット殿に食べて頂きたいのです!私の握った寿司を食べてみてくれませんか?」

 

 

自身の密かな楽しみを暴露された怒りと情けなさに、どこか虚しさを感じていたイングリットだったが、曇りなき笑顔で料理を勧めるフウカの熱意と以前に聞かされた異国の料理の好奇心に負け、料理を食べることを承諾したのだった。

 

 

「はあ…そこまで言われては断れませんね、分かりました。貴女の故郷の料理を食べさせてください」

 

「あ、ありがとうございます!とても嬉しいです!すぐに持って来るので、暫しお待ちを!」

 

 

そう言うとフウカは食堂の奥から急いで例の料理を持って来た。その料理はフウカの故郷で作られる"米"の上に捌いた生魚を乗せたシンプルな料理…これこそが"寿司"だった。

 

 

「こ、これは…?」

 

「これが寿司です!!さあさあ、どうぞ!!」

 

「な、生魚を何かの食材の上に乗せただけみたいですが、本当に食べられるのですか…?」

 

「大丈夫です!食堂のおば様も「食堂のメニューに載せたいぐらい美味いよ!!」と言って頂けました!」

 

「そ、そうなのですか…?で、では…」

 

 

恐る恐る、イングリットは料理を口に入れた。目をつぶり、ただ黙って料理を味わっている。

 

 

「………」

 

「ど、どうですか?」

 

「と、とても美味しい…!!こんな料理、今まで食べたことがありませんっ!!」

 

「ふふ、そう言って頂けると嬉しいです!」

 

「あ、あの…!この白いものは何ですか?このような食材はフォドラで見たことがありません…」

 

「それは、故郷で作られる米に"酢"という調味料を混ぜて作った"酢飯"という食材ですよ。よく母上が作ってくれたのです!」

 

 

よほど美味だったのか、普段は食い意地を張っているイングリットはそれを忘れてあっという間に寿司を完食してしまったのだ。

 

 

「……」

 

「気に入って頂けて何よりです。やはり、イングリット殿に食べて頂いて正解でしたね!」

 

「あの…フウカ殿?その…もう、無いのですか?」

 

「へ?」

 

「え、えっと…おかわりは無いのですか?」

 

頬を赤らめながら、聞こえないような声でこっそりとイングリットは尋ねた。

 

 

「あはは…残念ですが、それだけしか作っていないのですよ。実は持ってる米が無くなってきてしまって…」

 

「で、では…もうスシは食べられないのですか?」

 

「お気持ちは嬉しいのですが、材料がなければ…」

 

「そんな…!あ、あの…その米はどうやって作るのですか?」

 

「私も考えたのですが、米を栽培するには条件が難しい特殊な土が必要なんです。この大陸の土は米の栽培には向かないようで…」

 

 

種ならあるのですが…とフウカが懐から米の種を取り出した。すると、イングリットは閃いたように話し始めた。

 

 

「フウカ殿!諦めてはなりません!まだ手はあります!」

 

「え?イングリット殿には何か考えが…?」

 

「この大修道院には植物を育てる温室があります。そこでなら、米を作れるのではないでしょうか?」

 

「私も何度か考えましたが、うまく出来るでしょうか…?」

 

「安心してください、私も協力します。フウカ殿、私たちなら必ず成し遂げられます!」

 

「イングリット殿…ありがとうございます!」

 

「その…もし、米が作れたら…また、私にスシを作ってくれませんか?」

 

「もちろんです!!必ずや成功させて、故郷の味を世界に広めて見せましょう!」

 

 

その後、二人は温室にて米を作る許可をベレスに相談すると温室の僅かなスペースを借り受け、米の栽培を開始したのだった。二人が米を栽培しようとしていることを何処で聞いたのか分からないが、かつて米を食したことがあった金鹿の学級のリシテアも計画に参加し、この三人による米作り計画が密かに始まったのであった。

 

 

 

 

 




おまけに関しては、またまた思いつきと勢いです。
楽しんで頂けたら嬉しいです!
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