Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手   作:マインドシーカー

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過去ににじファンにて投稿していたものの加筆修正版兼、頓挫した連載物をどうにか完結させるのを目標に、7年ぶりにうpります。
一応、pixivの方でも同じタイトルのものを投稿しました 。
一応、同時並行で行なって行く予定です。
それではどうぞ。


序章
序章01「終わりなき詩」


これは、正史から外れたある物語の終焉(おわり)。

似て非なる歴史を辿った、物語の最後の一幕だ。

 

読者にとっては然程重要ではないかもしれないが、この話を語る上でまずは、「彼」本来の「物語」に決着をつけなければならない。

 

さて、ではこの最後の一幕はこのシーンから始めるとしよう。

 

それは、最後の戦い。

 

 

 

序章01「終わりなき詩」

 

 

 

「これで、国連軍の第一派は退けられたか・・・」

 

溜め息混じりの声が、ブリッジに響く。

声を発したのは、この船のクルーの一人であり、ブリッジでは砲撃手を務めるラッセ・アイオンだ。

ここは、私設武装組織「ソレスタルビーイング」(以降、組織名を「CB」と略す)の母艦「プトレマイオス」のブリッジ内。

暗礁宙域を漂うこの船には、計四機のMSを四方を囲む4つのコンテナブロック内に抱えている。

 

「・・・そうね」

 

「プトレマイオス」ブリッジの艦長席に座るCBの戦術予報士であるスメラギ・李・ノリエガは浮かない表情のまま、ラッセへと言葉を返した。

現状、彼女達を取り巻く状況は、決していいものではない。

それどころか、悪い方向へと進んでいると言ってもいい状況だ。

 

「今現在わかっているのは、国連軍に譲渡された30基の擬似GNドライヴのうち、先の戦いで11基を破壊できたという事実のみ・・・」

 

何者かによって、国連へと譲渡されたCBの固有技術たる「太陽炉(通称「GNドライヴ」)」をベースに製造された紛い物―――――「擬似太陽炉(擬似GNドライヴ)」と、コレを搭載した「擬似太陽炉搭載型MS」の存在。

これが、これまで全ての局面において物量以外ではどの国家もMSの性能では太刀打ちできないほどに優位に在った「ガンダム」を、脅かすまでに至った。

現にスローネチームは「GN-X」と呼ばれる擬似太陽炉搭載型MS部隊に敗北し、敗走の中で消息を絶った。

 

「これで、多少なりとも敵の気勢を削げればいいがな」

 

ラッセが苦々しい表情で言う。

だが、スメラギを含めて彼女たちCBの実動部隊に撤退は許されない。

「紛争根絶」を掲げて世界へと武力介入したその瞬間から、彼女たちに逃げ場などないのだから。

その覚悟は、とうの昔に済ませている。

 

―――――まだ終わっていない。

 

「機体の修理と整備を急いで。デュナメス、ヴァーチェの状態は?」

 

艦橋オペレーターの一人であるフェルト・グレイスの座るモニターから、スメラギはハンガーブロックへと通信を繋げ、そこにいる整備士のイアン・ヴァスティに状況を聞く。

 

『両方とも何とかいける。ただ、ヴァーチェのほうは、前の戦闘でのダメージは完全に直すことは難しいぞ。これ以上の激しい戦闘には無理がある。最悪、ナドレでの出撃も考えないとならん。』

 

数秒して、モニター越しに見えたイアンの苦々しい表情と共に返答が返された。

スメラギは、その言葉を聞いて自身もまた苦々しい表情を浮かべる。

 

前々回の戦い。

その場面で、プトレマイオス配下の実動部隊はCBの中枢たるヴェーダのバックアップを失い、年長のガンダムマイスターは右目を失っていた。

また、国連軍のGN-X部隊による猛攻撃によって彼女たちはジリ貧状態にある。

追撃を振り切ってラグランジュ3へと逃げ込み、そこにあったCBの秘密基地に逃れてから既に3時間。

スメラギの予想では、あと4時間後には敵と再びエンカウントする。

 

「そこまで、何とか機体の修理と整備が終わらせて。頼むわよ、イアン。」

 

本来は非武装艦であるプトレマイオスに、今回は強襲用コンテナを設置し急場凌ぎの戦闘艦に改修。

更に、秘密基地の格納庫に残っていた、追加装備の一つであるテールブースターのキュリオスへの取り付け作業も急ピッチで行っている。

それに、前回の戦闘では地上に刹那と共に降りていたラッセの乗るGNアームズが、少ないながらの粒子残量で決死の覚悟で救援に駆けつけてくれたおかげで敵の戦力も多少なりとも削れたし、なにより大きな戦力増強ができた。

 

「まだ、手はある。こんなところで、終わるわけにはいかないのよ・・・!」

 

スメラギはそう言うと、ブリッジ越しに見える虚空をにらんだ。

戦闘開始まで、残り3時間半―――――。

 

 

 

 

 

 

 

『Eセンサーに反応あり!国連軍の擬似太陽炉搭載型MSの反応です!』

 

状況は、スメラギが予想した通りに進んでいった。秘密基地から出航し、暗礁宙域の中に潜んでいたプトレマイオスのEセンサーに、国連軍部隊の反応が表示されたのだ。国連軍の宇宙輸送艦からMS部隊が出撃した証拠であり、こちらのおおよその位置は判明している事を指していた。

 

「…やはり、おおよその位置は把握されてたみたいだな」

 

『ミツカッタ!ミツカッタ!』

 

「ばーか、まだ見つかってねえよ。MSのセンサーじゃ、この距離でのプトレマイオスの正確な位置まではわかりゃしねぇ」

 

コンテナ内。そこに格納された状態のデュナメスのコクピットに座りながら、ロックオンは相棒のハロと会話をする。

19機の擬似GNドライブ搭載型、そして―――――

 

『更に、擬似太陽炉搭載型MSの中に、スローネがいます!』

 

「・・・!」

 

彼の表情が強張る。

かつて、KPSAというテロ組織の頂点に君臨し、神を騙り、争いを引き起こした男。

 

―――――自分の家族を殺した男。

 

各地を転々とし、戦いを求め、殺し合い、それでも飽き足らず傭兵となって、今また自分たちの前に、CBの象徴たる「ガンダム」に乗って立ちはだかっている。

 

『ガンダム各機は所定の位置で待機。さぁ、先手をお願いね?ロックオン。』

 

「オーライ。さて、狙い撃ちますか」

 

『狙イ撃ツゼ!狙イ撃ツゼ!』

 

デュナメスが格納されていたコンテナの蓋が開き、中からデュナメスが現れる。彼の機体がGN粒子を放出しながらコンテナに固定された状態で狙撃態勢に入った。

狙撃態勢になったデュナメスのセンサーが、虚空を睨む。狙うは、国連軍のMS部隊。

 

 

 

 

 

 

「これで、切れるカードは全て切った…」

 

スメラギは、先手を取れたと確信し、小さくため息をつく。

最悪の状況の中で、最も最良の戦術プランを立て、最善の布陣を立てた。

 

「・・・ッ!?これって・・・!」

 

フェルトともう一人、オペレーターのクリスティナ・シエラが戸惑ったような声を上げる。その直後に、疑惑は確信に変わったかのような声で彼女はスメラギへと告げた。

 

「スメラギさん!敵部隊の後ろから、急速接近中の反応があります!」

 

「なんですって・・・!?」

 

「これは・・・MAクラス!?これだけの質量と出力の反応がどうして今までセンサーに・・・!?」

 

彼女の戸惑いは尤もだ。

なにせその機体は、ここまで来るのにその存在を完全に隠した状態で接近してきていたのだから。

 

「まだ切り札を隠してやがったのか・・・!」

 

砲撃手のラッセが呻く。

モニターに、赤いGN粒子を放出するMS部隊が映り、さらにその後ろに金色の巨大な物体が控えているのが見えた。

まるで甲殻類のような印象を受けるそれは、

 

「これは・・・宇宙艦!?」

 

「違うわ。これは、擬似太陽炉搭載型のMA・・・!」

 

スメラギは、この瞬間に自分の戦術プランの瓦解を悟った。

この状況での敵新型MAの投入。

彼女が考えうる…否、想定外の出来事の中でも、最悪のシナリオだ。

 

「(まさか―――――あれが離反者の乗る・・・?)」

 

彼女が思考の海に浸かっている最中に、その思考はフェルトの声によって中断させられる。

 

「敵MAから、巨大なエネルギー反応あり!推測で、7基のGNドライブを搭載している模様!」

 

擬似太陽炉を7基も搭載した化け物。

 

「・・・ということは、相応の武装が搭載されている」

 

『おいおいまずいぜミススメラギ!あのデカブツから高エネルギー反応だ!』

 

デュナメスに乗るロックオンから警告が発せられる。

モニター越しに映っている巨大MAの前面。その部分が一瞬拡大され、大きな口が開いた。

 

「リヒティ!緊急回避!」

 

咄嗟の判断。

 

「言われなくとも・・・!」

 

スメラギが緊急回避を命じ、操舵手のリヒテンダール・ツェーリが、必死に操縦桿を左へと傾ける。

 

『くそっ!離脱する!』

 

急いでデュナメスも機体をコンテナから離脱させた。

 

次の瞬間、大きな衝撃が、艦全体を震わす。

プトレマイオスの半身が、オレンジ色のGN粒子の光に呑み込まれた。

 

「くっ…!」

 

衝撃が収まり、対ショック姿勢から体勢を立て直すクルー達。

 

「被害状況は!?」

 

「後部メインスラスター損傷!GN粒子の供給断絶!航行不能です!」

 

スメラギの問いに、フェルトが悲鳴にも似た声を上げる。

この状況での航行不能とは、つまるところが格好の的だ。

 

「イアン、なんとか動けるようにして!それが無理なら、最悪の場合はプトレマイオスを放棄して武装コンテナで指揮を執るわ!」

 

『無茶言うなってスメラギ!くそっ・・・!なんとかやってみる!』

 

「お願い・・・!」

 

彼女は正面のモニターに向き直る。

 

「頼んだわよ、みんな…!」

 

スメラギは、四人のガンダムマイスターが奮闘してくれる事と、生き残ってくれることを、ただただ祈るしかできなかった。

 

[newpage]

 

「プトレマイオスが・・・!」

 

機体を暗礁宙域の一角に潜ませていたティエリア・アーデが、ヴァーチェのコクピット内で呻くように言う。

視界の中に、損傷し動けなくなってプトレマイオスが見えていた。

 

『土壇場で厄介な代物を持ってきてくれたもんだよ、国連軍は・・・!』

 

緑色の機体に乗る隻眼の狙撃手の悪態をつく声が聞こえる。

コクピット内のモニターに映し出された紫煙を撒き散らす母艦を見ながら歯噛みした。

 

元来、プトレマイオスは非武装艦だ。

 

―――――やはり、無理があった。

 

「だが、ここで引くわけにはいかない!」

 

GN粒子が既に十全に充填され、その解放の瞬間を今か今かと待っている両手に持ったGNバズーカ。

 

「気休め程度にしかならん。だが―――――」

 

それを前方へと向け、機体を敵MS部隊の前面に踊り出させた。

 

「反撃に出る!アレルヤ!」

 

『わかっている!』

 

「『いっけええええええ!!』」

 

ヴァーチェの持つ二つのGNバズーカ。

キュリオスのテールブースターに装備された二門のGNキャノン。

 

二体のMSから、巨大な桃色の閃光が放たれた。

 

 

 

 

 

 

「いくぞ刹那!」

 

『了解した!』

 

「ハロ、バックアップを頼む!」

 

『了解!了解!』

 

「利き目がハンデだが、やってやるさ!」

 

ロックオンはそう意気込むと、ライフル型コントローラーを下ろし構えた。

それに合わせてデュナメスが、GNスナイパーライフルを構える。

 

「まずは撹乱射撃で!」

 

そして、放たれる桃色の矢。

撹乱を目的に放たれた弾丸は、命中することはないが、敵の連携に綻びを生じさせる。

 

「行け、刹那!陣形を崩せ!」

 

『了解。ガンダムエクシア、目標を駆逐する!』

 

そこへ、GNソードを展開したエクシアが加速し、突撃する。

 

「甘いんだよ。いくら同じスペックだからって、質ではこっちが上だ・・・!」

 

重装備の2機による奇襲攻撃。

逆に虚を突く形となったヴァーチェとキュリオスの攻撃によって既に19機のうち5機が消滅した。さらに、デュナメスの撹乱に加えて混乱に乗じて突進をかけたエクシアによって敵を2機撃墜する。

そこへさらに、畳み掛ける形で、エクシアの背後を取ろうとするジンクスの動きを、デュナメスがGNスナイパーライフルによる撹乱射撃で牽制し、反撃を許さない。

 

「やらせねえよ。」

 

そして再び、レティクル内に敵機を捉えた。

ロックオンは、再び引き金を引く―――――。

 

 

 

刹那達が戦闘を行なっているエリアとは別の場所。

そこでは、最も驚異度の高い火力を持つヴァーチェ目掛け、AEUを中心としたGN-Xの部隊が殺到していた。

ヴァーチェを取り囲むようにして集中的に攻撃を行うGN-X部隊。

 

「ちぃ・・・!」

 

集中砲火に晒されれば、流石のヴァーチェといえども辛いものがある。GNフィールドを展開して耐えているが、どこまで持つか―――――。

 

不意に、熱源の急速接近を告げる警告音がコクピット内に鳴り響いた。

 

「あれは・・・!」

 

Eセンサーで捉えた反応は一つ。

それはかつて、地上で刃を交えた3機のスローネの一機。

モニター越しにに見える、宇宙空間に浮かぶ資源衛星の裏から現れたのは、緋色の機体。

 

「やはりスローネか!」

 

『ハッハァー!』

 

「ガンダムスローネ・ツヴァイ」が、左腕に装備されたGNハンドガンを乱射しながら突進してきた。ティエリアはロックオンしたツヴァイに照準を合わせると、展開していたGNフィールドを解除し、それと同時にトリガーを引いて極太のビームをツヴァイ目掛けて発射する。

だが、その行動は誘いだった。

極太のビームは当然の如く回避され、その直後にツヴァイから、二つの小さな反応が放たれる。

 

GNファング。

 

「このおおお!」

 

二門のGNバズーカを下げ、上方から迫るGNファングへ計四門のGNキャノンを向ける。

再び引かれるトリガー。

同時に放たれた閃光が、二つのファングを包み込み消滅させた。

 

『まだあるんだよ!ノロマがぁ!』

 

爆発を起こしたGNファングの紫煙を切り裂いて、新たな2つのGNファングが、ヴァーチェへと襲いかかった。

展開されたGN粒子の赤い牙により、左手のGNバズーカと、右背部のGNキャノンがそれぞれ貫かれて爆散する。

 

「うわあああああ!!」

 

衝撃で、ヴァーチェの巨体が大きく揺れ、コクピット内は激震に襲われた。緋色の機体が、身を翻して去っていく。

GNキャノンの片方が破壊され、GN粒子の放出量が減少し、GNフィールドが半減する。

そこへ再び、GN-Xの集中砲火が再開された。

 

 

 

 

 

 

「ティエリア!」

 

赤いビームの集中砲火に晒されるヴァーチェ。

しかし、オレンジと白のカラーリングのガンダム―――――キュリオスを駆るアレルヤに、仲間の心配をするほど余裕はなかった。

彼もまた、何機ものGN-Xに追われていたのだ。

その内の一機は、自身と同じ超兵。

 

「く・・・!」

 

『被験体、E-57!』

 

小惑星の裏側から、GN-Xが現れる。

 

「ぐああああ!」

 

それが放った攻撃によって、背部に装備されたテールブースターが火に包まれた。

それを瞬時に廃棄し、変形すると同時に左手でサーベルを抜く。

 

「ソーマ・ピーリスか・・・!」

 

『貴様を倒す!』

 

「くぅ・・・!」

 

―――――変われよ相棒!

 

「(ハレルヤ・・・!?)」

 

サーベルが拮抗しプラズマが迸る。

 

「はははははは!!やらせるかよぉ!!」

 

ソーマの「倒す」という言葉に答えたのは、もう一つの人格―――――ハレルヤだ。

 

「甘ちゃんには任せてらんねぇな!?」

 

凶悪な笑みと、歓喜に満ちた声をあげて、

 

『くぅッ・・・!』

 

「お前を、全力で殺しにいってやるよぉ!!!」

 

殺人鬼は同類への反撃を開始した。

 

 

 

 

 

『一気に本丸を狙い撃つ!行くぞ刹那!』

 

「ああ!」

 

眼前に迫る、金色のMA。

それ目掛けて、デュナメスと強襲用コンテナから何十発ものGNミサイルが放たれた。

それらは真っしぐらにMAへと向かい、全弾が命中する。

 

『これで多少なりとも・・・!』

 

「まだだ!」

 

だがそれは、効いていなかった。

 

否、防がれたのだ。

 

金色のMAが瞬時に張った高出力のGNフィールドによって。

返す刀で放たれるオレンジ色の矢が、二機のガンダムと強襲用コンテナを襲う。

 

『こいつ・・・!』

 

「く・・・!」

 

攻撃を回避しながら、それでも距離が詰められない。

 

『なら、俺に任せろ!』

 

前面にGNフィールドを集中展開した強襲用コンテナが後方から金色のMAへ向かう。

 

『遠くからの攻撃が効かないなら、直接攻撃だ!』

 

全力噴射をかけて加速した強襲用コンテナが、金色のMAへ体当たりをかけた。

その体当たりを、金色のMAは強力なGNフィールドで阻む。

 

『だがな、懐に潜り込めばこっちのもんだぜ!』

 

拮抗する二つのGNフィールド。

相殺し合う光の壁に、綻びが生じていた。

徐々に、壁の内側へと食い込んでいく強襲用コンテナ。

 

『これだけの近さだ!受けて無事で済むわけが―――――』

 

ラッセが、トドメの一撃とばかりにゼロ距離によるGNキャノンの砲撃を行おうとした瞬間、金色のMAの両側の装甲部分が展開された。

甲殻類―――――例えるならカニ―――――のような巨大な爪を持った腕が現れ、強襲用コンテナのGNキャノンの砲門を鷲掴みにする。

 

『ふははははははははは!!』

 

回線から、狂気と歓喜に満ち溢れた男の笑い声が聞こえた。

 

『忌々しいイオリア・シュヘンベルグの亡霊共が・・・!』

 

怨嗟にも似た感情を混ぜた声で宣言する。

 

『この私、アレハンドロ・コーナーが・・・・・・この「アルヴァトーレ」で新世界への手向けにしてやろう!!』

 

「アルヴァトーレ」。

それが、金色の巨大MAの名前。

その両腕が、鷲掴みにした強襲用コンテナを強引に左右へ引っ張り真っ二つに引き裂こうとする。

 

『冗談!!』

 

爆発する直前、強襲用コンテナからGNアームズが分離された。

 

『くそったれ!だけどな、こっちは三対一だぜ!』

 

3機でアルヴァトーレを取り囲み、反撃に出ようとする。

 

『俺も忘れなさんな!』

 

だがそれは、新たな乱入者によって阻まれた。

反撃に転じようとした三機とアルヴァトーレの間に、緋色の機体が割り込む。

 

『あれはスローネ・・・!』

 

「アリー・アル・サーシェス!」

 

『よぉ、クルジスの餓鬼。元気にしてたか?』

 

『てめえ・・・!』

 

『そろそろ俺も、テメェらの顔は見飽きてたところだ。手始めにクルジスの餓鬼ィ!ここで、お前を血祭りにあげてやるぜ!!』

 

肩部にマウントされているGNバスターソードを抜いたツヴァイが、刹那の乗るエクシアへと襲いかかった。

 

『てめえの相手は、この俺だ!!』

 

GNビームサーベル抜いたデュナメスが、エクシアとそれに斬りかかるツヴァイとの間に割り込み、斬撃を受け止める。

 

『チッ・・・あの時のやつか・・・!』

 

『お前に刹那はやらせねえ・・・!』

 

実体剣とビームサーベルが拮抗し、プラズマの奔流が巻き起こる。

 

「ロックオン!」

 

『刹那、お前はラッセとあの金ピカ野郎を叩け!こいつは、俺がやる・・・!』

 

『大丈夫なのか、ロックオン?』

 

ラッセの心配したような声が耳に響く。

 

『野暮なこと聞くもんじゃねぇよ。』

 

いつものように軽口を返すロックオン。

 

『殺りあってる最中にお喋りかい!?』

 

『黙ってろ戦争中毒が!』

 

斬撃を振り払い、距離を取る。

 

『刹那、エクシアになぜ実体剣が装備されているかわかるか?』

 

「ロックオン・・・?」

 

『対ガンダムのカウンターなんだよ、そいつは。実体剣のみが、唯一GNフィールドを破ることができる。』

 

「・・・・・・っ・・・!」

 

『お前は、俺たちの切り札なんだ。それを忘れるな。さぁ行け!』

 

モニター越しに映るロックオンに刹那は無言で頷くと、エクシアをアルヴァトーレへと向かわせる。

 

『死ぬなよ、ロックオン。』

 

ラッセはそれを言い残し、刹那に続いた。

 

 

 

 

 

 

「さて・・・」

 

一度距離をとったお互いの機体。

正面の緋色の機体を睨みつけるように見ていると、通信機越しに“奴”の声が聞こえる。

 

『いいねぇ。仲間への別れは済んだってやつかい?』

 

「お前こそ、奴らを追わなくていいのかよ。」

 

ロックオンの問い。それに対して、緋色の機体の主は嘲笑で返す。

 

『どの道、殺しあう相手だ。それが早いか遅いかの違いだよ。それにな―――――』

 

「それに?」

 

次の瞬間、剣を大きく振りかぶって、ツヴァイがデュナメスに斬りかかった。

 

『お前と殺しあった方が、殺し甲斐がありそうだぜ!!』

 

刃と刃が交錯し、受け止めたことによって再びプラズマの奔流が2機を包む。

 

「同感だぜ!!!」

 

怒気を孕んだ声で、彼は狂人に返した。

 

 

 

 

 

 

『刹那、ドッキングだ!』

 

「わかった!」

 

エクシアがGNアームズにドッキングする。

 

『邪魔をするか亡霊!』

 

「誰が!」

 

猛烈な対空砲火を展開するアルヴァトーレの攻撃をGNフィールドで受け流しながら、距離を詰めるGNアームズ。

 

「うおおおお!」

 

『もう一度、直接攻撃だ!』

 

大型GNソードを斬撃態勢に移行し、一気に距離を詰める。

 

「切り裂く!」

 

『やってみろ!』

 

「うおおおお!」

 

刹那の咆哮とともに、GNアームズとエクシアは突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

「く、ぅ…!」

 

再度の衝撃が、身体を襲う。

ティエリアの乗るヴァーチェは、既に先の攻撃に加えて砲火に晒されたことによって満身創痍の状態にあった。

四方八方からヴァーチェの装甲へ叩きつけられる赤い光弾。

出力が低下した状態でのGNフィールドに意味はなく、外部装甲はとうに限界を超えている。

 

―――――もう長くは待たない。

 

「ならばせめて・・・この一撃を!!」

 

猛攻撃に晒されながら、ヴァーチェは残る一門のGNバズーカを中央に構えた。胸の発光体に連結することで、GNバズーカと太陽炉を直結させる。

 

そして、切り札を発動させた。

 

「【TRANS-AM】・・・!」

 

ー【TRANS-AM】ー

 

モニターに【TRANS-AM】と表示され、内部がモニターの放つ赤い光の色に染まっていく。

 

「いけえええええ!」

 

ティエリアが吠える。

それと同時に、最大出力でGNバズーカが発射される。

バーストモードに加えて、トランザムによる出力の底上げ。

それが、ヴァーチェを取り囲むGN-X部隊へ向けて放たれたのだ。

巨大な閃光は、4機のGN-Xを瞬時に呑み込み、小惑星を陰に逃げようとした5機目のGN-Xも小惑星諸共蒸発させる。

 

「まだだ!」

 

光芒が消えると同時に、ティエリアはヴァーチェの装甲を全てパージした。

 

「うおおおおお!」

 

外装をパージし、先程のヴァーチェ同様に赤く発光した機体―――――ガンダムナドレが姿を現わす。赤色に発光したナドレが、装甲の裏に隠されていた残っていたGNキャノンを手に持ち、更なる反撃に転じる。

 

鬼神の如く、宇宙空間を駆け抜けるナドレ。

 

残る機体を追いかけ回し、1機、また1機と屠る。

その姿はまるで、虚空を舞う女神のようだった。

 

「ナドレ、目標を―――――!」

 

しかし、その叫びは最後まで続かなかった。

最後の二機に攻撃を放とうとした瞬間、無情にもトランザムは終了する。

 

「な・・・!?」

 

動きを鈍らせるナドレ。

 

『セミヌード如きが、俺に楯突いてんじゃねえよぉ!!』

 

そこに赤色のビームが襲いかかり、次々に直撃する。

赤いビームが軽装甲のナドレの外装を次々に砕き、左腕と両足を破壊する。

装甲にヒビが入り、コクピット内にプラズマが走る。

 

「まだだ・・・まだ死ぬ訳にはいかない・・・!」

 

ナドレの装甲が次々に破壊され、コクピットに警告音が響き渡る。

 

「死ぬ訳にはいかないんだ。こんな僕に生きる道を示してくれた―――――」

 

残る最後の力を振り絞り、ティエリアは引き金を引いた。

 

「ロックオンのためにも!!」

 

 

ナドレから放たれたビームは、正面から襲い掛かったGN-Xの上半身を吹き飛ばした。

それと同時に被弾する寸前にGN-Xから放たれた放たれたビームがナドレの頭部を吹き飛ばし、ティエリアの視界はホワイトアウトした。

 

 

 

 

 

 

一人、また一人と散っていく戦士達。

場面は損傷したプトレマイオスへと戻る。

強襲用コンテナにスメラギとイアンが移乗し、遅れて移乗したフェルトが必死に迎撃に当たる中で、プトレマイオスへ攻撃をかけていたGN-X部隊の最後の一機が、損傷したプトレマイオス本体に迫った。

 

『やらせないわ!GNミサイル!』

 

スメラギが、強襲用コンテナの操縦席のトリガーを引く。

プトレマイオスに残された最後の強襲用コンテナから、二発のGNミサイルが発射され、GN-Xに命中した。だが、爆発した際に発生する紫煙の中から左腕を失った以外は無事な状態のGN-Xが出現し、それが一気にプトレマイオスへと距離を詰める。

 

『死角に回り込むつもりね…!』

 

『トレミーからコンテナを切り離す!』

 

強襲用コンテナに乗るスメラギとイアン、そしてフェルト。

プトレマイオスからコンテナを切り離し、迫るジンクスの迎撃を試みる。

 

だが、間に合う筈がない。

 

未だプトレマイオスのブリッジに残るリヒティとクリス。

プトレマイオスのブリッジ眼前にGN-Xが到達した。

 

GNビームライフルの銃口が、ブリッジに向けられる。

 

「・・・!」

 

クリスが、表情を恐怖に染め、声にならない悲鳴をあげた。

 

「クリス!」

 

操縦席から身を乗り出し、彼女を庇う形で覆い被さるリヒティ。

直後、赤い閃光がブリッジを貫き、

 

『クリス―――――!!!』

 

直後にブリッジ部分が爆炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ぁ・・・」

 

意識が戻る。

クリスは、自分を覆う何かの重みによって目を覚ました。

 

「リヒティ・・・!?」

 

自分を覆う何か。それは、自分を庇う様にして覆い被さる形で変わり果てた姿になったお調子者のリヒティだった。

 

「大丈夫・・・っスよォ・・・」

 

浅い息をつきながら、苦しいはずなのにいつものような口調で返す。だが、その浅い呼吸が既にリヒティを-----リヒテンダール・ツェーリという青年の命が、残り僅かだという事を示していた。

 

「親と一緒、に・・・巻き込まれて・・・体の半分が・・・・・・こんな、感じ・・・。生きているのか・・・死んでいるのか・・・・・・」

 

「リヒティ・・・」

 

そんな状態で今まで生きてきて、そんな風に思っていても、自分を助けようとしてくれた。

 

「馬鹿ねぇ、あたし。すぐ近くにこんな良い男、いるじゃない・・・!」

 

マスク越しに映った彼の顔にはまだ生気がある。

 

「・・・ホントっス、よぉ・・・・・・」

 

いつものように、からかうようにリヒティは答える。

 

「見る目ないね、あたし・・・」

 

そうクリスが言った瞬間、

 

「ほん、と・・・」

 

リヒテンダール・ツェーリという青年は、その短い生涯を終えた。

 

「リヒティ・・・!」

 

不意に、通信機からスメラギの声が聞こえてきた。

 

「スメラギ、さん・・・?」

 

『無事だったのね!?リヒティは!?』

 

ノイズ混じりのスメラギの安堵した声が聞こえる。

 

「・・・」

 

沈黙が答え。

 

「・・・・・・ッ・・・!」

 

そして、気づいてしまった。先程から体に感じていた違和感。

それが痛みへと変わった瞬間に、悟る。

 

彼女の背中には―――――

 

「…こふっ…!」

 

深々と金属の破片が突き刺さっていた。

 

口から吐血し、視界の端に赤い何かが映る。

それは、彼女が口から吐き出した血液。

 

「フェルト・・・いる・・・?」

 

『います!』

 

直ぐに、返事が返ってくる。

 

―――――せめて、妹分に言っておかなくちゃ。

 

「もうちょっと、オシャレに・・・を遣ってね・・・?」

 

いつも、あんまり女の子みたいにおめかししなかったフェルト。

どこか放っておけないフェルト。

 

「(私が言わなきゃ、フェルトはお洒落なんてしないよ。)」

 

もう二度と言葉を交わす事が叶わないからなのか、口から出るのは他愛もないことばかりだ。

 

「私達、の・・・分まで、・・・生きて、ね・・・?・・・お願い、ね?」

 

『クリス!』

 

「お願い。世界を、・・・変えて。お願い・・・!」

 

 

次の瞬間、彼女の視界が白く染まる。

 

それは、プトレマイオスのブリッジが誘爆を起こしたからだった。

そうして彼女は―――――クリスティナ・シエラもまた、リヒテンダール・ツェーリの後を追うようにこの世を去った。

 

 

強襲用コンテナの中でガラス越しに見えた、沈んでいくように縦向きに態勢を崩していくプトレマイオス。

 

「リヒティ!」

 

イアンが叫ぶ。

 

「クリス!」

 

スメラギが叫ぶ。

 

二人は、彼女たちに思いを託して散った。

フェルトの―――――フェルト・グレイスにとってそれは「家族」同然の存在だった。

例え血が繋がっていなくとも、「プトレマイオス」という「家」で一緒に戦った、唯一の「家族」だったのだ。

 

―――――だからこそ、彼女は叫んだ。

 

内気な自分の姉のような存在になってくれた、少女の名を。

 

「クリスティナ・シエラァ!!」

 

そして同時に、「トレミー」の愛称でと呼ばれた船は、二人の亡骸を抱いたままに、その短い生涯を終えた。

 




序章はあくまでリハビリです。

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