Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手   作:マインドシーカー

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この小説は、ご覧の作者の提供でお送りいたします。

まず最初に、想定よりも長い文になってしまったため、分割することになったことをお詫び申し上げます。

それを了承した上で、読んでいただけると助かります。

それではどうぞ。

イメージOP「DEAD OR ALIVE/angela」



story11-1「光の果てに 前編」

太平洋上、国連軍横浜ハイヴ攻略艦隊。

後方に展開する国連軍に臨時編入された数隻の艦艇。

 

その中に、1隻の艦がいた。

 

強襲揚陸艦「パウエル」。

アメリカ合衆国海軍、太平洋艦隊に所属するこの艦は、戦場を外側から監視していた。

 

 

 

「攻略部隊は、思ったよりも善戦しているようですな」

 

CIC内に立つ男性の傍に立ったのは、米軍の制服に身を包んだ少し太った体型の将官だ。

彼らが注目するのは、現在の戦況をリアルタイムで映し出している大型のモニターだ。

 

「奴らとて、必死なのだよ。かつて、真珠湾を卑怯な騙し討ちで壊滅させ、我らを一瞬でもあそこまで追い詰めた国の軍隊なだけはある。」

 

男性もまた、米軍の軍服に身を包んでおり、話しかけてきた将官は彼の部下だ。

彼自身は、先程の将官よりも上の階級に位置していた人物だった。

 

「ですが、あくまでもこの作戦の成功の可否を決めるのは我々。それまでは、精々頑張ってもらいましょう。」

 

「ああ、そうだな。」

 

下品な笑い声を零す部下に、彼はそう返した。

表情は見えないような角度で不快な表情を浮かべる。

 

「(勘違いしている輩は、いつ見ても不快なものだ。)」

 

頭の中でそんな事を考えながらも、視線はハイヴ周辺に展開する部隊の展開模様を見ている。

 

「門周辺の状況は?」

 

彼がCIC内の男性オペレーターの1人へ聞く。

 

「既に、安全を確保された場所からは突入部隊がハイヴ内への侵入を開始しています。」

 

「軌道降下兵団の連中はどうなっている?」

 

「スタブを目指して進行中です。」

 

既に、戦闘が開始してから6時間余り。

戦場の様子は、益々苛烈さを増していた。

 

 

 

 

 

 

『メイジ01よりメイジ各機へ。状況を報告せよ。』

 

国連軍所属の上陸部隊第一陣であるウィスキー部隊に属していたメイジ中隊は現在、旧横浜市における市街地内で散発的なBETAとの交戦を繰り返していた。

第二艦隊による港側と太平洋側からの支援砲撃の甲斐もあり、戦況は悪くはない、といった状況だった。

 

『メイジ02、問題ありません。(オールクリア)

 

『メイジ05、残弾残り僅かですが補給ポイントでの補給ができればまだ戦闘継続は可能です。』

 

『メイジ03よりメイジ01へ。損傷し後退したメイジ06とメイジ07は無事母艦に辿り着けたようです。』

 

『メイジ08〜メイジ12、共に問題ありません。補給の目処さえ立てば、ですが。正直、メイジ10とメイジ11の残弾が心許ないです。』

 

メイジ中隊は、国連軍のF-4Eで

構成された部隊だ。

未だ、F-15Cの後継機であるF-15Eは配備数が少なく、現状の国連軍では第2世代機ではF-16CやF/A-18Cなどが主流であり、戦術機としてのその大半の戦力を占めるのは未だ第1世代機のF-4Eや、F-5系列の機体だった。

 

『了解だ。メイジ05、10、11は現ポイントより移動。補給コンテナがある後方へ一時後退し、残弾補充と、念のために燃料補給もしておけ。』

 

現在の戦況であれば、一時的に戦線に小さな穴が空いても問題はないと判断したメイジ01は、先ほど残弾に不安があると報告してきたメイジ05、10、11のコールサインを持つ衛士にそう命令する。

 

『残存機は現ポイントを維持。奴らを一歩も通すな。』

 

移動を開始した3機を背に、残ったメイジ中隊の機体は再び戦闘を再開した。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、メイジ中隊が位置する場所よりもハイヴに近い場所。

つまり、現在は突入部隊の進入路を確保し、同時に退路を維持するため、戦線を維持しようとする地上部隊とBETA群との間で激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

『オクト03よりオクト01!四方八方から敵がわんさか来やがる!このままじゃ手が足りねぇぞ!』

 

帝国軍オクト中隊。

77式「撃震」12機で構成されたこの中隊は、他の中隊と共に戦線の維持を目的にこのエリアに踏み留まり続けていた。

だが、次々に戦域へと侵入してくるBETAの大群は蟻地獄のように向かってくる戦術機を引き摺り込んで喰っていく。

 

「無駄口を叩く暇があったらクソ野郎共を始末することに集中しろ!」

 

オクト中隊の隊長機―――――オクト01のコールサインで呼ばれる衛士が部下を叱咤する。

 

先程も、小さな綻びから全滅した部隊を見た。

 

「(あの部隊の二の舞だけは御免だ・・・!)」

 

そのせいで、彼らはその穴を埋めながらも戦線を維持し続けなければならない状況に立たされていたのだ。

追いついてきた戦線維持を任務とした部隊も参戦した事によって、BETA群の侵攻を押し留めつつ戦線維持に努めていたが、いつ崩れるか分からない。

戦域には、遅れてやってきた後続の突入部隊の光点が出現した。

 

『こちらストライダー01。すまない、遅くなった。』

 

戦域に、国連軍の識別信号を発する部隊が進入してくる。

 

「こちらオクト01!レッドカーペットは用意してあるんだ!そのまま真っすぐハイヴに向かってくれ!」

 

短いやり取りをし、オクト中隊の後ろを国連軍のF-15Eで構成されたストライダー中隊が通過していく。

 

『こ、こちらオクト05!突撃砲の残弾がもうありません!予備弾倉もなくて・・・!』

 

『調子に乗って撃ち過ぎなんだよ、オクト05!下がれるか?』

 

『こちらオクト06。オクト07と共にオクト05のフォローに回ります。』

 

こういう状況が何度も続いていた。

いくら補給しても、相手はそれ以上に向かってくるのだ。

その様子は、まるで猪だ。

しかも大小様々な猪がいて、その中には凶悪な赤蟻まで混ざっているのだからタチが悪い。

 

『オクト03、オクト04は左翼へ展開。オクト08〜オクト12は右翼へ。俺とオクト02は左翼と中央のフォローをしつつ戦線を維持する。わかったな?』

 

『オクト03、了解。』

 

『オクト04、了解!』

 

『オクト02、了解。』

 

オクト各機の衛士達がオクト01の指示に、了解の返事を返していく。

軌道降下兵団の投入から既に1時間近くが経過している。

しかし一向に、ハイヴ内に突入した部隊の情報は入ってこない。

一体どうなっているのかがわからないのだ。

 

『隊長!更に戦域に進入してくる反応を探知!』

 

部隊の1機が、新たな参入者を捉えた。

オクト01の網膜投影越しに見える戦域エリアマップに、新たに5つの光点が現れる。

 

「小隊規模の増援・・・?」

 

『ここに来る過程で戦力を削られたのでしょうか・・・?』

 

その光点は、また国連軍の識別信号を発していた。

しかし、識別信号は出ているが、5機全てがデータベース上に存在しない事を示す「UNKNOWN」の表記になっている。

 

『こちら、国連軍特務部隊「ウルズ」。遅くなって済まない。』

 

網膜投影には、通信が入った事を示す2つの「SOUND ONLY」の表示。

 

『カウント10で回避運動をとれ。アンタらの障害になってる左翼の要塞級をまとめて潰す。』

 

聞こえてきたのは若い男性の声だ。

突然現れた上に急な指示に抗議の声を上げようとするが、それを無視するかのように聞こえてきたのは女性の声。

 

『10、9、8―――――』

 

「くそっ・・・!オクト03、04!後方へ回避しろ!」

 

『―――――3、2、1』

 

カウント終了と同時に、戦場を何発もの銃弾がすり抜けた。

 

 

 

 

 

『全弾命中!全弾命中!』

 

「3体の要塞級の沈黙を確認したわ。」

 

複座の管制ユニット内。

銀髪の少女が、機体のカメラアイで捉えた映像から戦火を報告する。

 

「OK。ウルズ01よりウルズ全機へ。ミッションをフェイズ2からフェイズ3へ以降。突入ルート上の敵を一掃する。」

 

彼女の後ろの座席に座る男性―――――ロックオン・ストラトスは、いつも通りの飄々とした笑みを浮かべながら言った。

 

「ウルズ02と俺は所定の位置で移動しつつバックアップ。残りはウルズ04を先頭にルートを直進しろ。」

 

『ウルズ02、了解。』

 

『ウルズ04、了解。目標を蹂躙するぜ』

 

「ウルズ05、ウルズ06は突撃するウルズ04のフォローしつつ同じようにルートを直進だ。喰い荒らせ。」

 

『ウルズ05、了解ッス。』

 

『ウルズ06、了解。』

 

直後、ウルズ04のコールサインで呼ばれたリーバー機が突撃を開始した。

 

そこから先は、BETAにとって文字通りの地獄絵図だった。

 

ロックオンとジーナの乗るヘルダイバーは動き回りながら正確な照準で進路上の中型種を次々と撃破していき、それに続くようにホークアイ機がヘルダイバーの狙撃に合わせて同じ目標位置の中型種を撃ち抜く。

 

突撃を開始したリーバー機に続いて、クリス機とリヒティ機が追従する。

 

肩に「04」の数字がマーキングされた機体を先頭に、突入ルート上に流出しようとしてきたBETA群に3機が襲い掛かる。

 

大胆かつ繊細な動きでBETAを食い荒らしていくリーバー機。

 

それをフォローする2機。

 

隙のない陣形で行われる蹂躙によって、彼らが通った後には骸しか残らない。

 

やがて彼らはそのまま戦場を駆け抜け、ハイヴへと向かい、その場にいた部隊の視界からは消えてしまった。

 

 

 

 

『た、隊長・・・』

 

彼らが去った後に形成された骸、骸、骸ーーーーー。

 

オクト中隊他、この戦線を維持していた部隊は、結果的にはたった5機の戦術機部隊に窮地を救われた形になる。

 

そこに広がるのは先ほどまで彼らを苦しめていたBETAの群れの成れの果て。

 

ウルズ小隊にとっては、最小限の弾薬消費と燃料消費のみでの戦闘だ。

しかしそれは、その場にいた全員にとってはまるで違うものを見ているかのような印象を与えていた。

 

ーーーーー得体が知れない。

 

一瞬の静寂が、戦場を支配する。

 

「奴ら、一体何者なんだ・・・?」

 

オクト01はただ呆然とするしかなかった。

 

 

 

 

「各部隊の状況を教えて頂戴。」

 

太平洋上に待機している「最上」の中で、戦況を見ている夕呼。

彼女は、自分の近くにいるヴァルキリー中隊、そしてデリング中隊と他にもう一つ、ウルズ小隊との通信を担当するオペレーターのうち、ウルズ小隊を担当している女性オペレーターに聞いた。

 

「ウルズ小隊、未だ健在。作戦はフェイズ3に移行しています。順調にハイヴへの進入ルートを進軍中。」

 

彼女はそう答える。

 

「ヴァルキリー、デリングの方はどう?」

 

残り2部隊の状況を聞く夕呼。

 

「デリング中隊は、作戦をフェイズ2へ移行。最小単位(エレメント)で、各方面に展開中です。全機、信号確認(シグナル・オールグリーン)。」

 

デリング中隊は現在、戦域におけるありとあらゆる情報を持ち帰るため、2機1組の最小単位編成で12機の中隊を6つに分割して展開し、観測任務に当たっていた。

 

「ヴァルキリー中隊も全機健在。作戦をフェイズ3へと移行」

 

ヴァルキリー中隊は現在、実働部隊としてウルズとは別の目的で戦場に在った。

オペレーターが現状報告を終えると、それを聞いていた小沢艦長が言う。

 

「A-01連隊の2部隊は、よくやっているようですな。流石は、かの計画における精鋭部隊です。」

 

「お褒めに預かり光栄ですわ。」

 

小沢艦長がそう言うと、笑みを浮かべながら返す夕呼。

 

「もう一つの部隊・・・確か、部隊名は「ウルズ」、でしたかな?」

 

小沢は、モニターに向けていた視線を少しだけ夕呼へと向けながら言う。

 

「ハイヴ突入の役目を持つのにも関わらず、たった5機の部隊。一体どのような隠し玉なのでしょうか?」

 

そう、質問してくる小沢に、夕呼は笑みさえ浮かべながらこう答える。

 

「詳細は、今はお教えできませんわ。ただ彼らは、実戦部隊としてはA-01以上であり・・・そして、帝国や大東亜連合、そして国連のどの部隊も追随を許さないでしょう。」

 

「ほう。その根拠は?」

 

「それは・・・見てのお楽しみ、ですわ」

 

その笑みは、まるで何かを企む魔女のように見えた。

 

 

 

 

 

ハイヴ攻略。

それは、未だ人類が成し得たことのない偉業だ。

かつて行われた「パレオロゴス」作戦において人類で初めてハイヴ内における地下構造のデータを持ち帰ったヴォールク連隊のによる「ヴォールクデータ」。

それによって、ハイヴ攻略のセオリーは徐々に確立されていった。

ハイヴ内部への進入には、まず最初に「(ゲート)」と呼ばれる地上に空いた大きな穴。

そこから、地下茎(スタブ)構造と呼ばれる蟻の巣のように縦横無尽に張り巡らされたハイヴの内部構造を奥へと進んでいった先に、ソレはある。

最奥部である女王蟻のいる部屋―――――つまりは、「反応炉」と呼ばれるハイヴ中心部にある、いわば動力炉や司令塔の類の構造物を機能停止まで追い込むことでハイヴを攻略する。

 

これが、ハイヴ攻略における大まかな流れだ。

 

「こちらストライダー隊。(ゲート)に取り付いた。」

 

ハイヴの入り口である巨大な穴の入り口―――――門へと至ったストライダー中隊。

既に軌道降下兵団によって安全を確保され、確実性を上げるために周囲の敵を掃討するために合流してきた後続部隊によって門周辺の安全は守られている。

そこから、ストライダー中隊よりも前に別の突入部隊が進入を開始していた。

地上からの突入部隊の1つであるストライダー中隊は、今まさに地獄の釜へと飛び込もうとしていた。

既に、別ルートから侵入した部隊や、同じ門から突入した部隊が設置した中継器からは、随時内部の状況が知らされていた。

突入準備に入ったストライダー中隊に、CPから通信が入る。

 

『CPよりストライダー全機、状況を報告せよ。』

 

CPがそう聞くと、周囲のストライダー隊機の衛士たちが答える。

 

『こちらストライダー02、スタンバイ』

 

『ストライダー03からストライダー10、スタンバイ』

 

『ストライダー11、スタンバイ』

 

『ストライダー12、スタンバイ』

 

「ストライダー01、スタンバイ」

 

ストライダー中隊全機からの報告を聞き、CPが指示を出す。

 

『全機突入準備完了を確認。ストライダー隊全機、突入を開始して下さい。』

 

「ストライダー01、了解。全機、突入開始!」

 

ストライダー01の号令に従って、ストライダー中隊のF-15Eが門への突入を開始した。

 

 

 

 

 

 

ハイヴ攻略戦における最終段階である、戦術機によるハイヴ内部への直接突入。

突入部隊は、ハイヴ中心部に近い地下茎構造を極力進むようにして奥へ奥へと進んでいく。

その際に、彼らの進軍を阻むために出現するBETAの数は地上戦の比ではない。

更に言えば、 ハイヴ内においていくつもある地下茎構造の中には、応急処置的な形で塞がれた穴がいくつも存在し、それらは「偽装孔」と呼ばれ、縦、横とそれこそ毛細血管の如く、巨大な地下茎構造以上に張り巡らされている。

そのため、突入部隊は最悪の場合は退路を絶たれ、全滅する可能性は十分にあった。

実際、作戦開始から既に8時間以上が経過した現在の段階では、幾つかの部隊が壊滅するほどの被害を受けていた。

 

 

 

 

 

『くそっ・・・ハイヴ内構造は、予想ではフェーズ2相当って話じゃなかったんですか!?』

 

「無駄口を叩く暇があったら敵を殺せ、サベージ03!」

 

『了解・・・!』

 

地下茎構造内。

前進を続けていた突入部隊の1つであるサベージ中隊は、現在同時突入したドミノ中隊とハイヴ中心部を目指していたが、合流予定だった部隊と連絡がつかず、闇雲に前へと進まざるをえなくなっていた。

既に奥へと進んだはずのアクイラ中隊などの部隊との連絡はつかず、進んできた後方から後続が来る気配もない。

これ以上進んでも、果たして反応炉へ辿り着けるかーーーーー。

 

『ドミノ01よりサベージ01へ。こちらの機体が異常な振動を感知した。恐らくはBETAが閉じたはずの穴の中を進んでいる音か、或いは別所での戦闘による振動の可能性が高いが念の為だ。そちらで何か確認できたか?』

 

戦闘がひと段落しがところで、ドミノ01からサベージ01へと通信が入る。

先ほどまで、進路上に残存し障害となっていたBETA群を相手に戦っていた為サベージ01自身は気付いていなかったが、僚機に確認を取るとすぐに返事が返ってくる。

 

『サベージ04よりサベージ01。たしかにこちらでも振動センサーで反応を検知しました。恐らくは、周囲の地下茎構造内、或いは小さな穴をBETA群が進んでいる可能性があります。』

 

「サベージ01よりドミノ01。こちらでも振動を検知した。全周警戒を厳にしながら先へ進もう。」

 

『ドミノ01、了解。いざとなれば、後退も視野に入れて行動するぞ』

 

通信を終え、サベージ01は中隊各機の状況を聞いていく。

全機が戦闘続行可能。

そして、陣形を組み直し、速度を上げようとした瞬間ーーーーー

 

『異常振動を検知!真下です!』

 

偽装縦穴(スリーパーシャフト)か・・・!』

 

『近づいてきます!敵増援出現まで90!』

 

「同士打ちを避ける!全機、前面方向へ全力噴射ーーーーー」

 

『うわぁぁ!?』

 

通信機から、誰かの悲鳴が聞こえた。

 

『な・・・!?』

 

『今の音に紛れて、偽装横穴(スリーパードリフト)からの奇襲・・・!?』

 

それは、真下からの進行に合わせて偽装横穴から出現したBETAによって奇襲攻撃を食らったサベージ隊の1機の衛士の悲鳴だった。

 

『く、くそ!離れろ!離れろよぉ!』

 

「サベージ07!落ち着け!迂闊にーーーーー」

 

『隊長、敵増援きます!』

 

破裂音。

地面に穴が開き、中から要撃級数体が姿を表す。

 

「サベージ01、接敵(エンゲージ)!全機、迎撃行動に移れ!」

 

『こちらドミノ01!こちらも接敵した!くそっ!奴らこのまま俺たちをすり潰す気だ!』

 

「通信で後続になんとかこの情報を伝えるしかない!」

 

彼はすぐに、司令部とのコンタクトを試みる。

 

「サベージ01よりCPへ。聞こえるか?」

 

『CPよりサベージ01へ。どうした?』

 

「問題が発生した。現在サベージ、ドミノ両隊は敵増援の出現により包囲されつつある。それともう1つ。現状確認できた限りでの地下茎構造は、状態的に見てフェイズ2相当ではない。BETAのハイヴ内における数からしても、少なくともフェイズ3以上であると考えられる。」

 

『何・・・!?それでは現行戦力で、ハイヴの直接攻略は・・・』

 

「なんとか踏ん張るが、恐らく想定以上にーーーーー」

 

通信をしながら回避機動を取るサベージ01。

 

『隊長ォ!』

 

直後、サベージ01のF-15Eは、頭部ごと上半身を要撃級の前腕部に押し潰された。

 

 

 

 

 

ストライダー中隊を含めた地上からの突入部隊がハイヴ内部を進軍している中、ウルズ小隊もまた、ハイヴ内部への突入に成功し、内部を突き進んでいた。

 

少佐(・・)、前方の地点で友軍の反応を検知しました。』

 

ウルズ02、ホークアイ大尉(・・)から報告が入る。

 

「ジーナ、どうだ?」

 

ロックオンは、前のシートに座るジーナ・チトゥイリスカにも確認をした。

 

「こちらでも反応を確認したわ。恐らく、先行部隊が不意の遭遇戦に突入したんだと思う」

 

すぐにそう、ジーナから返答が返ってくる。

 

「オーライ。LNRを砲撃モードで使う。エネルギーのチャージを開始。射線上の友軍を退避させてくれ。ジーナ、タイミングは任せるぜ」

 

「了解よ。ウルズ03よりウルズ全機へ。これよりウルズ01によるLNR砲撃モードによる支援射撃を行う。周囲の警戒を厳にし、次の行動に備えて」

 

『ウルズ02、了解。』

 

『ウルズ04、了解した。』

 

『ウルズ05、了解ッス』

 

『ウルズ06、了解です。』

 

円形に陣形を組み、前方に転回する部隊の更に前にいるBETA群を破砕すべく、ロックオンは武装ラックに懸架されていたLNRをヘルダイバーのマニピュレータで掴むと、モードを狙撃モードから砲撃モードへと移行させ、砲身を展開させる。

 

「ハロ、LNRを砲撃モードだ。俺は射撃に集中する。チャージその他、ジーナのサポートをよろしく頼むぜ」

 

『了解!了解!』

 

機体を射撃姿勢に。

背部固定用アームを展開し、地面に固定する。

 

「砲撃の際の制動動作に跳躍ユニットを使う。ハロ、タイミングを同調させろ」

 

ハロへと指示を出すロックオン。

網膜投影に移る電力のチャージ率は既に50%を超えており、ヘルダイバー管制ユニット内におけるロックオンが座る方の座席に特設されたデュナメスコクピット内に設置された射撃用ユニットのような機械がロックオンの前に降りてくる。

 

「ん〜。やっぱりこういうタイプの方がしっくりくるぜ」

 

スコープ部を覗き込み、照準を合わせていく。

 

「こちらウルズ小隊。これより、ルート上のBETA群を一掃します。射線上にいる友軍機は、カウント60以内に退避してください。」

 

ジーナが通信で前方に展開する部隊に通達していく。

電力チャージ率は既に75%を超え、砲撃準備完了までは僅かだ。

 

「ウルズ小隊各機へ。砲撃終了と同時に、ウルズ04〜06は突撃を開始。進行ルートを確保しろ。」

 

ロックオンの目に移る映像では、ターゲットを射線上に収めた事を示す表示がなされる。

 

『チャージ完了!チャージ完了!』

 

「ジーナ!」

 

「友軍機の退避完了。射線の確保を確認!」

 

全ての準備が整った。

 

「ロックオン・ストラトス、目標を破砕するぜ!」

 

次の瞬間、ロックオンがトリガーを引き、ヘルダイバーのマニピュレーターもLNRの引き金を引く。

直後、大出力で押し出された砲弾が放たれた。

放たれた砲弾は真っ直ぐBETA群へと向かっていきーーーーー

 

「弾着、今。」

 

轟音とと共に、怒濤の勢いで接近してきていたBETAの大群の中央を薙ぎ払う。

 

『すげぇな、コイツは・・・!』

 

興奮気味のリーバーの声が聞こえた。

 

「全機、兵器使用自由(オールウェポンズフリー)!喰い荒らせ!」

 

ロックオンの号令。

リーバー、リヒティ、クリスの乗る3機が、一斉に戦線へと参戦していく。

 

『邪魔だ化け物共!』

 

『2時方向、突撃級6、接近中ッス!』

 

『はいはい!どんどん処理していくよ!』

 

ヘルダイバーによる支援砲撃に加えて、3機が戦線に加わったことで、突入部隊に勢いが戻る。

3個中隊規模の戦術機が、一気に戦線の押し上げを図った。

 

『助っ人さんに遅れを取るなよ!ヘイロー中隊全機、続け!』

 

『こちらアバランチ中隊、援護に感謝する!』

 

『ウィザード全機、今までの借りを返せ』

 

勢いを取り戻したヘイロー、アバランチ、ウィザードの3個中隊が、一斉に押し上げを図り、BETA群の数を減らしていく。

 

「引き続き、援護射撃に移る。ハロ、LNRを砲撃モードから狙撃モードへ戻せ。」

 

『了解!了解!』

 

システムを砲撃から狙撃へとシフトさせ、その間に加熱された砲身を冷却しつつ格納し、LNRを狙撃モードへと戻す。

 

「ヘルダイバー、ロックオン・ストラトス!狙い撃つ!」

 

準備を整え、固定用アームを解除すると跳躍ユニットを噴射させ、滞空を開始、高機動狙撃戦闘へと移行する。

高度に限界があるとはいえ、ハイヴ内における光線級の攻撃はないというセオリーから、普段地上ではできない3次元的な戦闘が可能となる。

ヘルダイバーが放つ弾丸は、次次に中型種である要撃級へと命中し、突進する突撃級の気勢を削ぐべく足元を攻撃し動きを鈍らせる。

 

「お前らは確か、同士打ちは絶対しないんだったな。まだ生きてるぜ、そいつらは」

 

BETAは決して同士打ち(フレンドリーファイヤ)はしない。

つまりは、生きているBETAの個体を盾にした場合や、危険だが行動不能の小型種なりを抱えて戦場を飛べば、攻撃対象からは外れる。

 

だからこその戦術であった。

 

動きが止まった突撃級の背後から猛スピードで続いていた後続の突撃級の集団は、止まりきれずに前方の動きが鈍った突撃級に衝突する。

 

『ウルズ02、援護行動に入ります。』

 

ホークアイ機が、更に後方で勢いが弱まり迂回路を取ろうとする中型種を狙い撃ちにしていく。

そこへ躍り込むリーバー機。

格闘戦特化の「雪風」を更にリーバー用に調整され、たった1機で小型種と要撃級の集団を相手取り、蹂躙していく。

更にそこに、リーバー機の一瞬の隙をついて襲い掛かる小型種を叩き落とすのはリヒティ機とクリス機だ。

 

たった3機の戦術機が、数十機にも相当する働きをしていく。

 

『す、凄い・・・!奴ら、たったあれだけの数で俺たち以上の数を相手に圧倒してやがる・・・!』

 

『後から来た奴らにばっか良い顔させるかよ!俺たちだってやられた連中の仇くらいは討てる!ギズモ残存機は俺に続け!奴らに続くんだ!』

 

『ギズモ05、了解!』

 

『ギズモ07、了解!隊長の仇・・・!』

 

ウルズ小隊3機に続くようにして、ギズモ隊機が続く。

隊長機と何機かの中隊機がやられて残存6機のまま戦闘を強いられていたギズモ中隊は、撤退よりも前進を選択したのだ。

 

『こちらギズモ03、援護する!』

 

『フン。足手纏いにだけはなるなよ』

 

『こらこらリッパー。そんなこと言わないの。こちらウルズ06、援護に感謝します。』

 

『そうッスよリーバー少尉。あ、因みに自分はウルズ05です。さっきの無愛想な彼は、ウルズ04ッス』

 

『余計な事を言う暇あったら奴らを叩けよ。』

 

ギズモ03の申し出を受けて、ウルズ3機に続くようにしてギズモ残存機が陣形を組んでいく。

 

『ウルズ04よりギズモ03。好きにすれば良い。ただし、言った以上は死ぬまで働けよ。』

 

『ギズモ03よりウルズ04へ。了解した、好きにさせてもらう!』

 

即席の部隊編成。

ウルズ小隊の唯一の欠点は、その数の少なさだ。

それを補う要素は往々にして戦場に存在することはない。

しかし、この瞬間に於いては、ギズモ中隊残存機が加わったことにより形だけでも数的不利を補うことができていた。

 

「ウルズ01よりギズモ03。援護に感謝するよ。ウチの聞かん坊が迷惑かけるだろうが、そこはうまくやってくれよ?」

 

『ウルズ01・・・つまり、貴方が隊長ということですね。こちらこそ、援護感謝します。邪魔にならぬよう、最大限努力しつつやらせていただきます。共にこのハイヴを攻略してみせましょう・・・!』

 

戦闘を続けていく中で、下がっていた士気も徐々に回復していき、更に勢いが増していく。

ヘイロー、ウィザード、アバランチなど、フルメンバーで残っている中隊はそのままに、数をすり減らされて実質的な壊滅状態に陥りながらも、残って戦っていた中隊が次々とウルズ04、05、06とそれに続くギズモ中隊残存6機へと合流していった。

暫くの間は問題無く奥へと進んでいったが、先の見えないゴールに誰しもが不安感を再び抱き始めていた。

作戦は順調に進行している。

 

そう信じて進む彼らの前に、それは現れた。

 

『く、くそ!こちらアクイラ03!奴ら、偽装穴から次次に出てきやがる!どこがフェーズ2だよ・・・!』

 

前方から、ノイズ混じりの通信が傍受される。

戦域マップを見ると、数機の友軍の反応が、こちらの方向へ後退してくるのが見えた。

アクイラ、つまりは先行突入した軌道降下兵団の1部隊だ。

 

『こちらアバランチ01。聞こえるか、アクイラ03。他の誰でも良い、返事をくれ』

 

アバランチ01が何かを感じたのか、すぐに今聞こえた部隊へ通信を入れる。

程なくして、アクイラ03ではなくアクイラ02から通信が入る。

 

『こちらアクイラ02!後続部隊か!?くそっ!だったら逃げろ!地下茎構造は想定よりも複雑だ!この規模では、フェイズ2なんてものじゃない!』

 

『なに・・・!?』

 

合流してきたアクイラ02の機体は、片腕を失い、所々が傷だらけだった。

後続のアクイラ中隊機が合流してくるが、数も少なく、全ての機体が大小の損傷を負っていた。

 

『少なくともフェイズ3以上だ!現有戦力では、この場所の攻略は無理だ・・・!既に先行部隊は俺たち以外残ってない・・・!』

 

アクイラ02の悲鳴にも似た声。

 

『こちらアバランチ01、聞こえるかCP!』

 

『CPよりアバランチ01。どうした?』

 

『軌道降下兵団所属のアクイラ中隊残存機と合流!先行部隊は、既に壊滅した模様!』

 

『何・・・?先ほどからデータの更新がないのはそれが原因だったのか・・・!』

 

『それともう一つ、悪い知らせだ。現在のハイヴのフェーズは2相当ではなく3以上の可能性が出てきた。現有戦力でのハイヴ中心部への到達は可能性が限りなく低いと考えられる。』

 

CPとのやり取りはこの場にいる全機がオープンで聞くことが出来る。

 

「こちら国連軍特務部隊ウルズ小隊、ウルズ01だ。辿りつけさえすればどうにかなるんだな?」

 

『ああ、そうだ。しかし、今現在の継ぎはぎで戦力を増やしているとはいえ、これ以上の増援が見込めない以上、外の連中が確保する門もいつまで持つかが怪しい。』

 

『それは、こちらも考えていた。今は一度退いて態勢を立て直す必要がある。』

 

及び腰、と言われてしまえばそれまでだが、想定外の規模のハイヴに加えて、どこから敵が現れていつ包囲されるかもわからない状況だ。

このままでは、悪戯に被害を増やしていくばかりだ。

その上での撤退の進言に近い発言。

 

「だが、退いてどうする?ここまで来たのに、わざわざ逃げ帰るのかい?確かに今のままじゃ壊滅する可能性だってある。だが、ならもう戦えねぇって、そう言いたいのかい、あんたたちは?」

 

ロックオンは、挑発するように言う。

無論、ロックオンの言う事にも一理あった。

もしもここで退いたとしても、次にここまでこれるかの保証はない。

撤退をするにも、前に進むにも今決断するしかないのだ。

CPと、他部隊とのやり取りをしていると、ロックオンに専用回線での通信が入る。

ロックオンは即座に秘匿通信に変更し、回線を開いた。

 

『聞こえる?』

 

「おっと、こいつはミス・コウヅキ。一体全体、どうしたんだい?」

 

 

 

 

 

「聞こえる?」

 

『おっと、こいつはミス・コウヅキ。一体全体、どうしたんだい?』

 

通信回線が開き、ロックオンのいつものような飄々とした返事が返ってくる。

 

「まずは落ち着いて聞いて。単刀直入に言うわね?今現在、帝国上層部と合衆国の連中が揉めているみたい。」

 

『・・・何?そいつは穏やかじゃないな?』

 

夕呼の話を聞いた瞬間に、ロックオンの声音が変わる。

 

「十中八九、米国による新型兵器の投入に関する事よ。入ってきた情報によれば、もう米国上層部は使用を決定。」

 

『それで?』

 

「再突入型駆逐艦に積載された再突入殻には、少なくとも2発の新型爆弾であるG弾が搭載されてると思われる。これは、ほぼ確定情報よ。」

 

歯噛みするように夕呼は言う。

 

「第5の連中は、最初からこの攻略作戦での現有戦力によるハイヴ攻略なんて期待していない。自分たちこそが率いるべきと、だからこんな強硬策もとれる。」

 

『・・・ふざけてやがる。俺たちを、先に逝っちまった連中をなんだと思ってやがる・・・!』

 

ロックオンの怒りに満ちた声。

 

「米国政府は、既に決定したこの事項を覆す気は無い。このままでは、残存部隊も含めてG弾でまとめてお陀仏よ。」

 

『この情報は、今現在同じ戦場にいる連中に伝えられてんのかよ?』

 

夕呼の言ったことを、他の者達は知っているかと聞くロックオン。

しかし夕呼は「いいえ」と答える。

 

「情報が錯綜している上に、戦場はあんたが思っている以上に混乱状態にあるわ。」

 

『それで?ミッション内容の変更か?』

 

「作戦は中止。ただちにその場から地上を目指して撤退を開始して頂戴。あくまでも――――――」

 

直後、外部との通信を行うための生命線である中継器が破壊され、外部との通信が途絶した。

 

「・・・!」

 

「す、すみません。通信が途絶したようです。再度の通信を試みていますが、通信が繋がりません」

 

焦った様子でオペレーターがコンソールを操作するが通信が繋がることはない。

 

―――――それは、サベージ中隊とドミノ中隊が偽装穴から出現したBETA群に包囲され、壊滅した時刻とほぼ同じであった。




はい、次回に続きます。
文字数の都合上、前書きにも書いた通り前後編に分けることにしました。

色々と無茶苦茶な展開でお送りする本作ですが、どうか優しい目で読んで頂けると幸いです。

それと、一つ皆様に提案があります。
細やかですが、作中に搭乗する吹雪改修機である4機の戦術機の便宜名称ではなく、制式採用の際の名称を募集したいと思います。
感想欄に適当に書いて頂くか、もしくはメッセージで送って頂けると嬉しいです。
まあうん、正直こんなことやってるんだったらはよ続きと粗探しして修正していけよって話ですよね・・・()

余談ですが、7年前に書いていた時はこの話の部分でスランプに入り、先へと進めなくなりました。
ここが峠というか・・・なので、頑張って書ききりたいと思います。


それでは恒例の、次回予告ターイム!

過ぎた時は戻ることはない。
人々はそれでも希望を求めるのだ。
それがたとえ、暗雲に包まれた未来にしかないとわかっていても。
未来を求めるには、今を生きる命を使うしかないのだ。
たとえそれが、非難されるとしても。

次回「光の果てに 後編」

その光は、第二幕を告げる鐘。

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