Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手   作:マインドシーカー

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この小説は、ご覧の作者の提供でお送りします。

さて、今回は前みたいに幕間のお話です。
なのであんまし進んでいません。
あれ何ですよね。話のタイトル考えるって難しい!

君は知るだろう。段々ネタに新鮮味が感じられなく恐怖を(ぇ

ではどうぞ。

イメージOP「Rock on/ナノ」


story12「対外折衝」

1999年8月9日。

旧横浜ハイヴ内、地下茎構造内部および広間部周辺。

まだ青白く光る壁に囲まれたその中を、ゆっくりと進む一団がいた。

それらは全て、国連軍カラーのF-15Eだ。

彼らは今、陥落した横浜ハイヴの内部を進み、反応炉がある区画を目指して進んでいた。

彼らに命じられた任務は、ハイヴ内部に残ったG元素の捜索と回収、内部構造の探索、様々な情報の持ち帰り、そして反応炉の確認だった。

 

G弾2発の攻撃によって大きくその機能を喪失したハイヴが、その後にどうなるか。

 

ここで行われる様々な調査は、次のハイヴ攻略に大きく貢献する。

だからこそ、国連軍と米軍は未だ立て直しに忙しい帝国軍や大東亜連合軍に代わって調査隊を派遣していた。

 

『ブラボー01よりCPへ。現在、深度1300m。中枢区画へ到達した。これより、担当区画の探索を開始する。』

 

『CPよりブラボー01。そちらから送られてくる映像は激しいノイズだらけだ。恐らく、中継用のケーブルが一部破損した可能性がある。万が一の場合は、記録の回収を最優先とする。』

 

『ブラボー01、了解(コピー)。』

 

派遣された調査隊の1つであり、奥の中枢区画そ任されたブラボー中隊は、その場所にある大きな広間(ホール)部に差し掛かっていた。

 

『すげぇ大ホールだ・・・!』

 

『床が・・・それ自体が光っているのか、これは?』

 

ブラボー中隊の何人かの衛士が、初めて見る幻想的な光景に、感嘆と畏怖が入り混じった声をあげる。

 

『ブラボー01よりCP、BETAの反応は皆無だ。全センサーで確認。』

 

中の状況と周囲の索敵を行なっていたセンサーに反応がないことから、ブラボー01がそうCPへと報告する。

 

『CPよりブラボー01、G弾の影響による破壊状況の変化も細大漏らさず記録せよ。』

 

『ブラボー01、了解。』

 

前へと進み続けるF-15E。

 

『・・・専門家じゃあるまいし、そんなのわかるかよ・・・』

 

ブラボー01は、中の状況を確認しながらそう愚痴を零した。

 

『大体こっちは、壊れる前がどんな状況だったのかわからねぇんだしよ・・・』

 

『ブラボー02よりブラボー01。中隊全機、レコーダー回しっぱなしにしています、中尉。』

 

『よし、優秀だ。中隊全機、このまま前進』

 

前進を続けていると、CPから再び通信が入った。

 

『CPよりブラボー01、デルタ中隊が数体の敵と交戦中。残敵に警戒せよ』

 

『ブラボー01、了解。中隊各機、周囲の警戒を怠る―――――』

 

『中尉!』

 

静かな大ホールの中を進んでいると、中隊の1機がブラボー01を呼ぶ。

彼を呼んだのは、ブラボー05のコールサインを持つ衛士だった。

 

『ブラボー01よりブラボー05。一体どうした?』

 

そう問い返すと、少し動揺した様子のブラボー05の声が返ってくる。

 

『あれは、なんでしょうか・・・?』

 

ブラボー05のF-15Eの手が上を向き、その場所を見るよう促すように、ある方向を指差す。

 

『CPよりブラボー01。状況を報告せよ』

 

バイタルに変化があったのだろう。

変化に気づいたCPがブラボー01に状況の確認をしてくる。

 

『ブラボー01よりCP。少し待ってくれ。』

 

彼は網膜投影越しに見える暗がりの中の光景をはっきりと見るため、カメラやセンサー類などをナイトヴィジョンへと切り替える。

 

『ホールのど真ん中・・・なにかあるぞ?』

 

『ブラボー03よりブラボー01。こちらでも確認できました。あれ・・・何かの柱のようにも見えます。」

 

中隊各機がその場所に注目し、望遠モードで「柱のような何か」を見ようとする。

 

『こちらブラボー01。ホールの真ん中に柱のようなものが天井から床まで伸びていて、その中央部に透明になっている部分が見える』

 

『―――――ブ、ブラボー05よりブラボー01!あの柱、1つだけじゃありません!すごい数だ・・・!』

 

『みたいだな・・・。こちらブラボー01、これから最大望遠で確認する』

 

ブラボー01は網膜等越しに映る光景を段々と拡大していき、ノイズキャンセリングをかけながら徐々にその柱の正体に近づいていく。

 

『CPよりブラボー01、状況を報告せよ。メンタリティが、極度の緊張状態を示している。』

 

CPの声を流しながら、最大望遠で柱を注視するブラボー01が、暫くして呻き声のようなものをあげた。

 

『な・・・こいつは・・・!』

 

『CPよりブラボー01!状況を報告せよ!繰り返す、状況を報告せよ!中尉!』

 

焦った様子のCPの声は、彼には届いていなかった。

それはなぜか?

 

『―――――くそったれ(Shit)!なんてこった・・・!』

 

直後、ブラボー01が声を荒げた。

それに気づいたCPが再度状況を確認する。

 

『CPよりブラボー01!一体何があった?直ちに状況を―――――』

 

『―――――人間、だ・・・』

 

衝撃的な一言。

 

『CPよりブラボー01!生存者か!?ブラボー01!』

 

人間だ、という言葉にCPは焦った声を上げた。

もしも生存者がいるとすれば、それは奇跡だ。

しかしその希望も、次の言葉で打ち砕かれることになる。

 

『―――――人間の(Human‘s)・・・脳だ(brain)・・・!』

 

そこにあったのは、人間の脳。

培養液のようなものに浸された人の脳が、柱の中に収納され、その柱が無数にその場所に在った。

それはまるで墓標だ。

そこにあった脳の正体はーーーーーこの横浜において、行方不明となった人間達の成れの果てであった。

 

 

 

 

 

明星作戦。

1999年8月5日に行われたこの作戦において、人類はついにBETAの侵攻によって奪われた領土を取り戻した。

しかしそれは、戦術機や人の手によるものではなく、BETA由来の元素である「G元素」と呼ばれる未知の物質によって作り出された新型兵器によるものだった。

 

―――――G弾。

 

それは、人類がBETAの技術を流用して作り出した核に変わる新たな人類の「神の火」。

 

「5次元爆弾」と呼称されたそれは、重力によって敵を圧殺する兵器だ。

臨界に達すれば、重力異常を引き起こすだけでなく、様々な影響を核とは違った形で残す兵器だった。

 

しかし、明星作戦においてハイヴを直接攻撃するために投入された2発のG弾は、結果として期待された性能には満たない「欠陥品」であるという事が、白日の下に晒されることになってしまった。

米軍が中心となって行われていたこの決戦兵器たる「G弾」の研究段階で想定されていた威力に比べて、その効果範囲は想定よりも低かったのだ。

更にもう1つ、彼らにとって誤算だったことがあった。

それは、米国政府とG弾投入を当初から予定していた一部の国連軍高官によって、突入部隊との通信途絶を口実にG弾投下が決定され、米国政府からの圧力もあって、帝国政府に対して一方的にこれを通達したが、可能性があった筈の「戦術機によるハイヴ攻略」を早期に放棄しただけでなく、結果的に突入部隊の生き残りが多くの戦力を残したまま無事に生還したという事実からG弾投下に対して多くの方面から疑問の声があげられたのだ。

 

なぜ、あんなにも早く部隊を切り捨てたのか?

戦力の逐次投入を行わず、なぜあのような形でG弾投下に踏み切ったのか?

それだけでなく、この急なG弾投下によって、情報が錯綜する戦場に置き去りにされた多くの兵士が戦死、あるいは行方不明となってしまったのだ。

今回の作戦において最も積極的に動き、自国の領土内にハイヴを抱えているの立場である日本帝国政府は、一方的にG弾投下を通達してきた米国政府に対して猛抗議を行なっていた。

1番の被害を受けていたのは、帝国軍だったのも大きかった。

 

「少なからず戦術機によるハイヴ攻略の可能性があったのにも関わらずそれを切り捨ててまで、G弾投下に強硬に踏み切る必要があったのだろうか?」という意見と共に、この作戦でG弾の威力を目の当たりにしたユーラシア各国ばかりではなく、アフリカ諸国の一部でも脅威論が噴出し始めた。

 

これが後の、「G弾脅威論」である。

 

これに対して、G弾投下に踏み切った米国政府側や国連の一部上層部の人間たちは強硬にG弾のその威力とハイヴを陥落させたという事実を傘に反論し、また、逆に米国案を元々支持していた国々は、威力の実証によってより強硬にG弾の使用を主張し始める。

 

結果的に、この作戦で第5計画の優位性を示そうとした一部の急進派の暴走とそれを利用しようとした上層部は多くの反対意見を受けたことによって勢いを削がれる形になっていた。

それに対して、この作戦を主導した香月夕呼を含めた第4計画側は一定の戦果(ハイヴ内の構造などの新たなデータや戦闘データに加えて、ハイヴ攻略戦における貴重なデータ収集など)を挙げており、G弾脅威論に後押しされる形で優位に立つことができたのだ。

それがたとえその状況が期限付きであったとしても、想定よりも威力が低かったとはいえ、実際のところは核以上に危険な代物であるG弾集中運用によるハイヴ攻略を唱える第5主導の合衆国による案と、情報収集と共に、情報戦と人類の技術力を持ってBETAに対抗すべしという第4の案は、帝国政府が後ろ立てにあると同時に、水面下で第4計画を支援してきていた者達の働きもあって、ようやく優位に立ち始めていた。

 

そして、今回行われたハイヴ攻略戦において奪回された横浜の地に、第4計画主導による基地が建設された。

 

国連軍・横浜基地の誕生である。

 

旧帝国軍白陵基地の跡地に建設されたそれは、かつての白陵基地よりも大きな規模になり、そして同時に、人類の希望の象徴として扱われるようになる。

人類が初めて、BETAから人類の領土を取り戻した地として。

 

だが、それでも尚、この地を忌み嫌う者もいた。

 

彼らは一様にこの地をこう言った。

 

ーーーーー忌むべき土地だと。

 

 

 

さぁ始めよう。

物語の第二幕を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪夢の1998年、そして激闘の1999年を経て、20世紀は終わり21世紀へと移行した初めての年と初めての月。←2000年の話をしてるように見えるが、21世紀は2001年からなので間違い?

前年の横浜ハイヴ陥落後に跡地にて建設が開始された国連軍・横浜基地は、仙台からその機能の一部を元に戻していた。

基地全体の完成はまだ先であり、2001年の初頭が完成予定とされていたが、1月の段階で既にAL4占有区画は稼働を開始し、帝都大にあった研究機関そのものはこの横浜基地へと移設された。

同時に、仙台に臨時で移されていた衛士訓練学校もこちらに移設。

いよいよ、AL4計画の前進基地としての機能を果たし始める。

 

2000年1月。

 

この地で、次なる反撃の準備が始められた。

 

 

 

 

 

 

市街地。

その中を、何機もの戦術機が駆け抜ける。

94式戦術機「不知火」だ。

彼らは互いに別々の部隊に所属するが、同じ機種同士での戦闘を行っていた。

中隊同士での戦いは、12:12で、未だ数はお互いに減っていない。

 

『デリング01よりデリング全機へ!ヴァルキリーの連中に目にものを見せてやれ!』

 

『ヴァルキリー01よりヴァルキリーズ!デリングの連中に後れを取るなよ!』

 

互いに一歩も引くことなく、高度な連携によって一進一退の攻防を繰り広げていたのだ。

彼らは今、「ある物」を評価するために、シミュレータを用いて中隊同士での対人戦を想定した模擬戦を行っていた。

 

 

 

 

「G-OSの調子、良いようですね。」

 

模擬戦の様子をモニタリングする部屋の中で、1人の女性が言った。

 

「ああ。俺たちがせっせと収集していたデータが役に立ったってことだな。」

 

彼女にそう返したのは、彼女の上官にあたる男性だ。

 

「先行量産型のG-OS・・・。1か月に及ぶ突貫の慣熟訓練の甲斐もあって、随分とうまく使いこなせるようになったようで。」

 

「ああ。これで、ようやく今回の新型OS開発もある程度の区切りをつけることができるってわけだ。」

 

モニターを見つめる男女―――――ロックオンとホークアイは互いに視線を合わせて言葉を交わしていた。

 

5か月前に行われた明星作戦。

この作戦において、少なからず被害を受けたA-01連隊のデリング中隊とヴァルキリー中隊。

特技は、この2つの部隊の再編に合わせて、新型OSを実装したシミュレータ及び実機による慣熟訓練を要請し、これと並行して新型OSである「G-OS」の評価試験を行っていた。

これは、今回ロックオン達特技が開発した「G-OS」の量産化に向けた評価試験でもある。。

これによって、一般兵向けの仕様である「G-OS」が実用化できれば、当初の予定通りこれまでの戦闘による生存率を大幅に上げることが可能となる。

 

その為のテストベッドとして、先行量産仕様の「G-OS」の運用試験を行う対象としてA-01連隊の2つの中隊に白羽の矢が立ったのだった。

 

実用化に至れば、最初の提供先は帝国であると予想していたロックオンは、A-01連隊が運用する戦術機が帝国軍が開発した「不知火」であるという点について好都合であると考えていた。

そうすれば、少なくとも不知火を運用する部隊に対してはスムーズにOSの変更ができ、今回の運用試験を元に作成されるマニュアルによって慣熟訓練の難易度もぐっと下がるはずだからだ。

 

「このままいけば、俺たちの計画の後ろ盾になってくれてる帝国の連中に恩を売ることもできる。」

 

さらには、特殊技術研究部が独自に開発した97式練習機「吹雪」を改修した「雪風」をはじめとした4機で得たデータに加えて、「ヘルダイバー」で得たデータ。

これらを日本帝国の兵器開発部門関連に売り込みに使えば、既存の機体を上回る戦術機の開発も夢ではないとロックオンは考えていた。

 

実際、この頃の帝国政府は、かつて大日本帝国が開発した零式艦上戦闘機の開発において起こした過ちを繰り返した結果、高い性能と量産性を両立しながらも尖った設計であるがゆえに拡張性が殺されてしまった「不知火」の改修計画、ならびに素案であるものの、のちに実戦配備される00式「武御雷」とは別に新型機開発を巡って、帝国の軍内部では多くの議論が行われていた。

 

「これがうまくいけば、”あんな兵器”に頼らずともハイヴ攻略が可能になると?」

 

「・・・そういうことだな。」

 

ホークアイが言う「あんな兵器」。

その言葉を聞いて、ロックオンは5か月前の出来事を思い出していた。

 

明星作戦の最中、アクシデントに見舞われたために一度は見捨てられた自分たち。

しかもその理由は、出来レースにも近い理不尽な理由。

自分たちはそれに抗い、生き恥を晒したとしても次に活かすために撤退を決断し、少なからず犠牲を払いながらも生還を果たした。

 

相模湾にたどり着き、安全圏に到達したまさにその瞬間。

自分たちの背後に光が溢れ、現れたのは2つの黒い球体。

 

G弾という新たな兵器は、その威力を遺憾なく発揮し、ハイヴそのものを押しつぶした。

その光景を、自分の目ではっきり見たのだ。

 

「あんな形でーーーーー上の連中の身勝手で死ぬような目に遭うなんて事、誰も納得しないだろうさ。だからこそ、それを少しでも減らすための1歩がこいつだ。」

 

既存の戦術機運用のために必要なOSの性能を遥かに上回る「G-OS」を使えば、たとえ新兵であろうとも生き残る確率は大幅に上がるのだ。

それはまさに、有限の戦力で無限の戦力を持つBETAと消耗戦を続ける人類側にとっては、夢のOSだった。

夢を夢で終わらせないために、この運用試験は様々な意味で重要な行程だった。

 

新型のOSという事象1つでどうにかなる事ではないが、夢だった事は今、確かに、現実に一歩ずつ近づいていた。

 

 

 

 

 

 

某所、会議室。

そこでは、オルタネイティブ 計画の内容に関する会議が行われていた。

議題は、オルタネイティブ第4計画の今後について、といったところか。

夕呼を中心としたAL4の関係者と、国連軍の高官など、様々な人間たちが一同に介していた。

 

「それではまず最初に、以前の取り決めでもあった横浜基地の今後の運用についてです。」

 

今回議題に挙げられたのは、2000年以降のAL4計画に関する最も重要な拠点である国連軍・横浜基地についてだ。

 

「当初の予定通り、本格稼働は2001年初頭を予定しています。現在の稼働率は40%程ですが、これで停滞していたAL4計画における研究を再開する事が可能となりました。」

 

モニターには現在の基地の状況などが大まかに表示されていく。

現状、横浜基地は前述した通り未完成であり、基地本来の機能を果たすようになるまでは1年ほどかかる状況であった。

それでも、AL4計画の本来の目的を果たすための下準備としては十分であり、研究材料であるハイヴ自体も、非公式ながら稼働状態で基地の地下深くに封印されている状態だった。

これだけの規模の代物をAL4計画が得るにあたって、様々な方面からの支援、そしてなにより夕呼やその関係者が奔走した事が大きく関係しており、同時にこの計画に関して少なからず期待が寄せられているという証拠でもあった。

 

しかし、それを面白く思わない者もいる。

 

「はたして、この基地もいつまでもつやら、ですな。」

 

「なによりも、です。このような荒唐無稽な話は実現するとは考え難い!」

 

発言をしたのは国連軍の高官の1人で、彼自身はAL4計画に懐疑的な感情を持つ人物であった。

これは、彼だけに限った話ではない。

 

ここで、改めてだがAL4計画に関する大まかな概要の話をしよう。

 

この計画は、過去に行われたオルタネイティブ第3計画の流れを組んでいる計画であった。

オルタネイティブ第3計画は、人工ESP発現者を使ってBETAとのコミュニケーションーーーーーつまり、相手が会話可能であり、交渉が可能な相手かどうかを見極めるのが主な目的であった。

しかしこの計画は、パレオロゴス作戦の失敗を機に凍結され、やがて第4計画へとシフトしていく。

 

そして、次の計画であるオルタネイティブ第4計画の目的とは、「ある要素」、或いは「ある因子」を用いて対BETAの諜報員を生み出し、そこから得た情報を元に通常兵器でオリジナルハイヴを含めた地球上のハイヴを攻略、という内容だった。

 

ここで言う「ある要素」、或いは「ある因子」とは、人類が定める生命体を認識しないBETAに対して、「生体反応0、生物的根拠0」の存在の事であり、夕呼は独自に「00ユニット」と呼称していた。

 

これら全ての要素を揃えるために、まず夕呼がやった事は第3計画の接収だ。

そこから、自分の理論や様々なパイプを使ってPRし、第4計画始動までこぎつけた。

しかし、計画が始まったとしてもこれらの条件を満たすためには膨大ない時間と資金と、人員とが必要になる。

たった1人の、しかも日本人の女性に、簡単に耳を貸すような人間は1人もいなかった。

むしろ、絵空事だと一笑に付す人間の方が多かった。

 

それでも彼女は諦めず、ようやくここまで来たのだ。

 

しかし、事ここに至っても尚、彼女の存在を、第4計画の存在自体を良しとしない勢力があった。

 

それが、5つ目ーーーーーつまり、第5計画の存在だ。

G弾もまた、第5計画が推進し、生み出された決戦兵器であった。

彼らは世論の批判を浴びて尚、自分達のとるべき道こそが正しいと、それ以外は全て無駄であると断じていたのだ。

それは、あれだけ批判を浴びても変わる事はなく、むしろその勢いは対外的には削がれていても、内面的には削がれるどころか火に油という状態であった。

 

これは、一時的にとはいえ計画における優位性がG弾によってAL4側に傾いたのが大きい。

 

「では、貴方方はあのG弾という兵器を使う方が余程現実的であると、そう仰りたいのでしょうか?」

 

夕呼側の人間の1人が、そう返す。

 

「そうだ。現に、あの兵器があったからこそ、今回のH:22目標の攻略は成ったのであろう?」

 

結果のみ見れば、そうなる。

しかし、この発言に対しての反論が投げかけられる。

 

「しかし、仮にそうであったとしてもあの破壊力に加えての二次被害は凄まじいものです。かつて行われた水爆実験のように、人体実験紛いの行為をしなければならない。」

 

それは、G弾を使った土地に残る、いわば「後遺症」だ。

 

「現に、G弾使用後のあの土地には草木一本生えていません。一部例外はありますが、不毛の大地と化しているのです。これは、核以上に大きな二次被害を残しているのは自明の理です。」

 

これは、国連軍・横浜基地を建設するにあたって米軍を中心に調査が行われ、提出された報告書によって非公式ではあるがここにいる人間全員がわかっている事実であった。

 

「このままG弾集中運用による対BETA戦勝利を目指すのであれば、それはつまり人類の母なる大地である地球そのものを破壊するに等しいのですよ。それがわかっていながらーーーーー」

 

「だがしかし、君たちが推進する計画における「対BETA諜報員育成」自体も眉唾に等しいものではないか!現に第3計画では成果が出せず、頓挫している前例もある!」

 

やがて議論は白熱し始め、暫くの間熱の篭った声が飛び交う。

そうして熱がピークに達した時、1人の男性が声を上げた。

 

「ここで、このような議論を行っても仕方がないでしょう。これでは、話がまとまらない上に、お互いに禍根を残したままになってしまうのではないでしょうか?」

 

淡い緑色の髪に、中性的な顔立ち。

国連軍の軍服に身を包んだ男性は、夕呼サイドに立つ国連軍の諜報部の人間だった。

 

「君は何者だね?」

 

自分達の声を遮ったことに苛立ちの声を上げたのは米軍における第5計画推進派の軍人だ。

 

「E・A・レイと申します。所属は国連・諜報部所属です。階級は、中佐となっております。」

 

努めて冷静に、むしろ諭すようにして優しい声で語りかけるE・A・レイ。

 

「それで、レイ中佐。君は我々に何が言いたいのかね?」

 

「小官は、当計画における一部の成果を皆様にお見せ致したく同席させて頂きました。これは、この計画を進めるにあたって皆様にもとても有意義ない時間になると思われます。」

 

そうして彼は、指示を出すとモニターに新たなデータを映し出す。

 

「これは、5か月前の作戦において収集された戦闘データと、ハイヴ内部における新たなデータ。そして、我々が独自に開発したあるものと、ある研究の成果です。」

 

そこに映し出されたのは、戦闘データに加えて、特技研が開発したいくつかの新兵器、そして「ある研究」の研究データであった。

 

「GN粒子。これは、BETAとの対話をも可能とする可能性がある粒子です。」

 

それは、イオリア・シュヘンベルグが提唱した理論を立証する過程で見つかった粒子の名称であり、イオリアが人類の希望として考えているものだ。

今回、情報公開のために用意した研究データは、イオリアが既に公開しても問題ないと判断したものである。

 

そうして、彼は宣言した。

 

「これが、人類救済の真の一歩です。」

 

 

 

 

 

 

 




はい、前日譚も終盤に入ってまいりました。
あれ・・・?このセリフ前も言ったような・・・?

さて、と。
あと1、2話やったらTE編に行きたいなーなんて思ってます。

その時はどんな試作機持っていきましょうかね。
アクティブイーグルなんて機体もありますが、原作よりも魔改造する流れにもっていきましょうかね(やるとは言ってないし、やれるとも言ってない)

ではでは、お次の話に乞うご期待!(ウルトラマンティガ次回予告風)

~(勝手な)恒例の予告パート~

世界はいまだ1つにならず、勝利を得て尚、安息の日はない。
なぜならそれは、未来が定まらぬからだ。
明日の担い手を巡り、世界はますます混沌を極めていく。
戦うべきは何なのか、何のために戦うのか。
そんな迷いだらけの世界の中で、現実は答えを急かしていく。
次なる一手のために、混迷の空を翔る1体の巨人。

次回「新たな翼」

その系譜に新たな血統が加わる。

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