Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手   作:マインドシーカー

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この小説は、ご覧の作者の提供でお送りいたします。

はい!相変わらず前振り無しの新キャラ登場していきます。
いやー、名前作成メーカーって便利だなぁ!
そろそろ小隊規模は辛くなってきたんですよね()

短い間で仕上げたものなので、またまた相変わらず拙い文章となっています。

あと、割とマブラヴって世界の歴史的なのが2000年に近づくにつれて正確に把握するのが難しくなっていくみたいなんですよね・・・(
サイドストーリーに関しても、ホビー誌に掲載された当時のものと、そこから肉付けされたりして再構成されたストーリーだと中身が全然違ったり、他にもゲーム版の帝都燃ゆが、アニメ版に比べると割と濃い目な内容だったり、まだまだ知らなきゃならないことがたくさんあって冷や汗だらだらです。

自分自身でも各種設定や登場人物に関して忘れないように別所に設定を書き出して保存してあるんですよね。

あっと、前書きがこれ以上長引くとただでさえだらだらした文なのにさらに読んでくださる方々に負担を強いてしまう・・・!(震え声)

では、どうぞ。

イメージOP「Garnet Moon/鳥谷ひとみ」


story13「新たな翼」

フェニックス構想。

それは、マグダエル・ドグラム社を吸収合併したボーニング社が、今現在主力である第2世代戦術機を、一部の改修のみで安価に第3世代機相当にまで機体性能をグレードアップさせる構想だ。

 

1999年後半の段階で、G弾とのセット運用を求めた米軍において開発されたXF-22とXF-23。

この2つの機体は次期主力機の座をかけたコンペで争い合い、最終的にXF-22に軍配が上がった結果、米国における第3世代機はF-22「ラプター」と呼称された戦術機になった。

この機体は既存の戦術機全てをねじ伏せる性能を持っており、高いステルス性能に加えてこれによる集団戦法は、東西含めてどこにある戦術機であろうと勝てるはずのない程に強力なものであった。

 

故に、生産には高いコストがかかる。

現状の急務は対BETA戦であって、将来的に起こるであろう対人類の戦いではない。

だからこそ、企業群は生き残りをかけて様々な方法をとってきた。

その方法の1つが、フェニックス構想である。

今回は、その実証試験としてベース機をF-15Eとし、これの改修を行なって評価試験を行う形となっていた。

 

「これが、フェニックス構想の概要です。」

 

特技研のオフィス内。

吹雪を改修した戦術機である吹雪改1号機〜4号機(雪風、初風、磯風、浜風)に加えて、F-14の改修に改修を加えた魔改造機である「ヘルダイバー」。

特技研は現在、これらのデータを反映し、ある程度の改修用パックの開発と、さらなる戦術機の改修案を練っている最中であった。

 

「現在、アラスカの国連軍・ユーコン基地において、ボーニング社を中心としてF-15Eの改修とその実証試験を行なっているようです。」

 

「それで?」

 

研究員の1人の説明を受けて、集められたウルズ小隊の面々の1人であるリーバーが質問する。

 

「今度はイーグルの改修でもやるつもりか?」

 

「現状、我々が自由にできるのはこの基地に配備され始めている国連軍部隊の戦術機です。F-15E、F-4E、77式(F-4J)、89式(F-15J)、94式に97式です。F-4系統の改修は、元が堅牢な作りになっているので必要はないと思われます。なので、必然的にはF-15系統か設計が似通う94式となりますが、94式に関しては帝国軍においても改修が行われています。」

 

「なら、さっきの説明じゃあイーグルも似たようなもんじゃないのか?」

 

リーバーの質問に重ねていくロックオン。

 

「はい。ですから我々は、中間案としてF-15J・・・つまり、89式「陽炎」の改修案を上層部に提出しました。これは、今回ベースに使用した97式が、89式をベースに開発されたというのも理由になっています。」

 

研究員はさらに説明を続けた。

 

「そうしたところ、以前行われた会議の後、帝国軍から快くこの89式数機が提供されることが決まりました。」

 

一旦説明が終わると、同席していてこれまで何も喋っていなかった白衣の女性ーーーーー香月夕呼が口を開いた。

 

「まあ、この間の会議で色々と材料を用意した甲斐があったわね。それでだけれど、今回の新たなプロジェクトに合わせて特技所属のウルズへの増員要請を出しておいたわ。同時に、あんたたち特技の連中には国連軍の実験小隊としてアメリカのフェニックス構想に便乗する形で、アラスカのユーコン基地で行われている「ある計画」に参加してもらうわ。」

 

ある計画―――――先進戦術機技術開発計画、通称「プロミネンス計画」と名付けられたそれは、国連軍がアラスカにあるユーコン基地で進めている各国間の情報・技術の交換を主目的とした国際共同計画だ。

外国からの新技術流入によるブレイクスルー、設計思想の硬化防止、世界的な技術水準の向上などのメリットがある一方、水面下では外国への情報流出・機密漏洩の危険性、対BETA戦後を睨んだ参加国の政治的介入や、利益獲得を優先させる企業同士の妨害工作などのデメリットも生じているという実態もある。

国連が掲げる「東西陣営の協調」「人類の大団結」という理想には程遠いというわけだ。

 

しかしそれでも、この場所に最新鋭の戦術機や各国が有する固有技術などを見れる場所でもあり、無論それは先程のメリットが有用であるという証であった。

 

「フェニックス構想におけるバックボーンであるボーニング社にある程度の許可はもらっている。だけれど、改修自体はこちらの固有技術を用いて行うわ。もちろん、吹雪改の量産向け仕様のパッケージの開発も同時並行でやってもらう。そのための増員よ。」

 

夕呼はそう言うと、手に持っていた1つの書類をロックオンへと渡す。

 

「増員予定の人員のプロフィール。今回は、そのくらいしか分捕れなかったわ。今度はもっと大物・・・人ではないけれど、それをこちら側のものにするのが目的。あとは流れがどうなってくるかよ。と、いうわけで、あとは任せるわピアティフ。」

 

夕呼以外にもう1人、夕呼がもっていた書類を元々もっており彼女のそばについていた国連軍の制服に身を包んだ女性ーーーーーイリーナ・ピアティフに夕呼はそう言うと、そのまま全てを押し付けて外へと出て行ってしまった。

 

「反論の余地はなかったなぁ、中尉。」

 

「・・・慣れました。それではこれより、イーグル改修案、及び吹雪改の量産向け改修パッケージ開発の大まかなスケジュール説明を行なっていきます。」

 

彼女はプロジェクターを起動するとデータを映し出し、説明を開始した。

 

 

 

 

 

夢を見た。

あれは、G弾が横浜に落ちて数日の頃のことだ。

夢の中で見た光景は、あまりにも鮮明だったのを覚えている。

 

それは多分、誰かの記憶だったのだろう。

 

おそらくこの場所は、中東のどこかの街だ。

 

『やめて・・・!』

 

誰かの声がした。

余程切迫した状況なのだろう。

声には、困惑の色が濃い。

 

『どうして・・・!どうしてなの・・・!』

 

走る。

その場所がどこなのか、探し求めて走る。

 

『ソラン・・・!』

 

ソラン、という名を聞いて、足を止める。

聞き覚えのある名前だった。

 

『やめろ!』

 

もう1つ。

自分の記憶にある声からは随分と大人びたような声。

 

『何をするんだ!僕は神の教えを守るためにーーーーー』

 

『この世界に神はいない!』

 

ゆっくりとその場所に近づいていく。

 

『お前がしていることは、暴力を生み出すためだけの卑劣な儀式だ!』

 

建物が見えた。

その中で短い会話が聞こえ、やがて1人の青年が出てくる。

 

「ロックオン・・・!」

 

その場に立っていたのは、刹那・F・セイエイの成長した姿であった。

先ほど聞こえたソランという名は、彼の幼少期の名前だ。

クルジス共和国において、少年兵として戦った時の名前。

驚愕の表情を浮かべている刹那の手には、銃が握られていた。

そしてさっきの会話の内容。

 

「刹那・・・」

 

恐らくこれは夢なのだろう。

だがあまりにも辛い夢だった。

 

「過去によって変えられるものは、今の自分の気持ちだけだ。他は何も変わらねぇ。」

 

刹那の手かは、銃が消えていた。

 

「他人の気持ちは・・・ましてや命は。」

 

銃声が彼の背後から聞こえた。

先程の家の中だ。

振り向いた彼の手には、銃は握られていない。

どんなことをしても、過去に起こった事象を覆すことは不可能なのだ。

この出来事は、彼の記憶の中を再生しているものであって、自分自身の選択肢はあっても、結果は変わることはない。

 

「お前は変われ、刹那。」

 

ロックオンは、愕然とする刹那に言う。

 

「変われなかった、俺の代わりに。」

 

復讐に生きることしかできなかった自分のようにはなって欲しくないと。

 

夢がさめる。

意識が覚醒する寸前、歌が聞こえた。

 

 

 

 

 

「どうか、しました・・・か?」

 

横浜基地における、Lv4以上の権限を持たなければ入れないある場所にロックオンは来ていた。

その場所は丁度、香月夕呼の執務室である副指令室の隣だ。

立ち止まってあるものを見ていたロックオンを心配に思ったのか、先に中で待っていた霞が心配そうな声音で尋ねる。

 

「ああ、大丈夫だよカスミ。こいつを見ながら、少し前に見た夢のことを思い出してただけだ。」

 

彼はそう言って部屋の中へと入る。

自動ドアが閉まり、部屋の中は暗闇に包まれた。

いや、中心に置かれている「ある物」から漏れる光でゆらりと部屋が照らされる。

 

それは、シリンダーだった。

 

中は何かの溶液で満たされている。

シリンダーの中に入っているのは、生きた人間の脳(・・・・・・・)だ。

 

「・・・・・」

 

シリンダーに手を触れて、ロックオンはただ無言のままでシリンダー内の脳を見つめる。

 

かつて、自分をこの場所に喚んだ存在がいた。

 

このシリンダーから感じる雰囲気は、その存在に近いものを感じていた。

 

「お前が、俺をこの場所に喚んだのか・・・?」

 

答えてくれる相手のいない問いを投げかける。

無論、脳が喋るわけもなく、返事は返ってくることはなかった。

 

「カスミ。コレについて、何かわかったことはあるのか?」

 

彼は振り返り、後ろに控えていた霞へと質問の矛先を向ける。

 

「(ふるふる)」

 

首を横に振って、わからないといった素振りをみせた。

 

「わかっているのは、この人が誰かに会いたいという「欲求」の色を見せているというだけです。」

 

そうして、そう答える霞。

 

「誰かに会いたい、か。」

 

思い出すのは、自分がこの世界に飛ばされる寸前に聞こえた声だ。

 

―――――助けて。

 

その声は確かに、助けを求めていた。

誰に助けを求めていたのだろうか?

恐らくは自分なのだろう。

しかし、その声が求めているのは自分への助けと同時に、他の誰かを助けて欲しいというものだった。

 

「お前は、誰に会いたくて、誰を助けて欲しいんだろうな。」

 

シリンダーに額を当てて、問いかける。

やはり、返ってくるのは沈黙だけだ。

 

「・・・・・やはり、わからないです。」

 

しゅん、と、うさ耳カチューシャが垂れる。

霞は申し訳なさそうな様子でロックオンを見ていた。

 

「大丈夫さ。いずれ、わかる時がくるんだろうさ。だが、もしも計画がお釈迦になれば全部終わりだ。」

 

そっと離れると、ゆっくりとシリンダーに背を向けて出口へと歩き出す。

 

「勿論、そんなことはさせねぇよ。折角拾った命だ。俺たちを一度は捨てた連中への礼もできてねぇしな。」

 

首だけ振り向かせて後ろを向いて、2人(・・)にウィンクを送るロックオン。

そうしてドアが開くと、ロックオンは部屋を後にした。

 

「・・・・・」

 

部屋には、霞とシリンダーが取り残される。

 

「・・・・・色が」

 

彼が部屋を出る瞬間に言った言葉。

それを聞いてから、霞には一瞬だけ、シリンダーから違う色が感じられた。

 

それはとても、暖かい色だった。

 

 

 

 

 

 

2000年7月。

世界情勢は情勢は今、更なる混乱の一途を辿っていた。

事の発端は、キリスト教恭順主義に傾倒した国連職員により、明星作戦において使用された2発のG弾の投下地点である横浜ハイヴを中心とした爆心地の写真と様々なデータが暴露されたのだ。

その実状に触れた米国議会内でも、今後のG弾運用に疑問を持つ派閥が現れ始めた。

同時に、G弾脅威論に賛同していた国々の中から、オルタネイティヴ計画そのものの是非を問う動きが出始める。

これがやがて、反オルタネイティブ計画思想を生む結果となってしまった。

そんな中でも、オルタネイティブ第4計画は人類を救済するために着実な一歩を進んでいる。

 

滅びの道に、抗うために。

 

 

 

 

 

 

 

『そら、追い込んだぞウルズ07!』

 

仮想空間。

シミュレータ内で網膜投影越しに視界に広がるのは森林地帯だ。

 

「わかっているわ!」

 

味方の光点が、敵の光点を追い詰めていく。

 

「ウルズ07、FOX3!」

 

森林の中で、少し開けた場所に誘導されてきたのは、国連軍カラーのF-15Jだ。

そこ目掛けて、ウルズ07の乗る戦術機の持つ突撃砲の銃口から口径36mmの銃弾が放たれる。

後方から追いすがっていたもう1機ーーーーーウルズ04のコールサインの衛士が乗る戦術機が、同時に銃撃を行った。

しかし、F-15Jはそれをすんでのところで回避し、再び森の中に匍匐飛行で消える。

 

「また逃した・・・!」

 

2人が乗るのは、統合名称「雪風」と呼称された97式高等練習機「吹雪」の改修機、試製97式戦術歩行戦闘機「雪風」だ。

元々、別名称であった「磯風」「浜風」は、「雪風」も含めて多くの局面に対応できるよう、量産向け改修パッケージの実験台として全て同じ仕様へと変更され、改めて「雪風」という名称が付けられた。

 

狙撃仕様に改修されていた「初風」のみ、これまで通りの運用を行なっているため、最後まで当時のままなのは「初風」1機のみとなった。

 

話が逸れた。

 

今回のシミュレータを用いた模擬戦闘訓練は、全てG-OS使用を前提とした慣熟訓練も兼ねており、同時に異機種同士による模擬戦を行う事で双方の戦闘データの収集などが主な目的であった。

 

『ヤマシロ少尉、追うぞ。』

 

「ふん!先任だからって、私に命令しないで頂戴!」

 

『ハッ・・・!その意気だ!』

 

F-15をベースとした新たな戦術機開発計画。

帝国軍からの派遣及び技術交流を目的として、「白き牙」中隊に籍を置いていた山城上総は今、特殊技術研究部に身を置き、シミュレータを使っての模擬戦を行っていた。

 

 

 

山城上総という女性は、1984年に外様武家の1つである山城家の長女としてこの世に生を受けた。

外様武家というのは、5摂家、そしてその下に位置する譜代武家よりも更に下の階級に位置する武家の事だ。

斯衛における階級付けは色によって決まっている。

 

紫は、最高位である政威大将軍。

 

青は、将軍を輩出する5摂家。

 

赤は、五摂家に近い有力武家。

 

山吹は譜代武家を指す。

 

そして、上総が位置する一般の武家や外様武家が纏う色は、白。

 

武家以外の一般の衛士が斯衛に入った際には、黒を纏うのが通例となっている。

 

つまるところ、その他大勢が白と黒なのだ。

彼女は14歳で、新米の斯衛の衛士になるべく訓練校へと入学。

同期になったのは、譜代武家の1つである篁家の長女、篁唯依だった。

将来に纏う色は山吹色であり、最高位の紫や青、そして赤を除けば一番上に位置するのが譜代武家であり山吹であった。

白という立場の上総は、唯依と出会った当初は彼女に強い対抗心を燃やしていたが、訓練を経てそれは友情へと変わり、2人は親友同士という関係性になっていた。

上総は、同期の同じ武家の少女たち、そして唯依と共に、京都防衛線の最中、初陣を飾った。

この戦いで重傷を負うも生還。

これにより戦場から長く退いたが、前年に行われた明星作戦より少し前に現場復帰。

ある人物の推薦もあり、試製98式戦術機もとい、00式戦術機「武御雷」の先行量産機を運用する大隊へと編入となりそれに合わせて篁唯依が所属する「白き牙」中隊へ所属することになった。

作戦後は、唯依と共に不知火改修計画におけるプロジェクトチームの衛士として任務に従事し、帝国軍が開発する「ある兵器」の開発にも関わっていた。

 

今回彼女は、前述したように技術交流という名目で、帝国軍の技術部から高い評価を受け、強い興味を持たれていた国連軍太平洋第11方面軍の横浜基地に存在する国連軍の特殊技術研究部、通称「特技研」の技術試験部隊「ウルズ」へ一時的な転属という形で派遣されていた。

4月付けで転属されたため、5月における本土奪還作戦で初めてウルズの一員として初陣を飾ったが、その際に出された命令は後方待機。

そのため、帝国軍から国連軍への異例の移籍後は目立った実戦には加わらず、横浜基地で行われるF-15の改修プロジェクトに従事する毎日を送っていた。

現在は実機の改修作業を待ちながら、仮想シミュレータを用いて新型OS「G-OS」の慣熟訓練とともに、仮想敵(アグレッサー)役を務める予定の「雪風」の操縦に慣れるため、模擬戦を行っている。

 

 

 

『そら、ウルズ09、そっち行ったぞ!』

 

『注文の多いことで・・・!』

 

『えー!こっちもこっちで手一杯ッス!』

 

『泣き言言わないで、ウルズ05。』

 

「賑やかですわね・・・!」

 

毎日連続で行われるシミュレータを用いた模擬戦闘訓練は、大きく2つのルールに分かれて行われていた。

対人戦か、対BETA戦か。

今現在行われているのは、5:5に分かれて行われている異機種混合の模擬戦だ。

これから先、実際に扱うF-15系統の操縦に慣れるとともに、ある程度誰でもが扱えると同時に、1番誰が適正かというのを測る目的でも行われている。

ある意味ではこれは、振るい分けなのだ。

 

『背中ががら空きだぜ!斯衛(ロイヤル)のお姫様!』

 

「しまっ・・・!」

 

森林部の比較的手薄になっていた、いわば死角の方向から、匍匐飛行で木々をなぎ倒しながら1機のF-15Eが突撃してくる。

光点の表示は赤。

つまりは敵側のF-15Jだ。

 

『がら空きなのはどっちかしら?』

 

しかし、大胆な奇襲攻撃は別方向からの攻撃で失敗に終わった。

 

「智恵子お姉様!」

 

『・・・ウルズ07、戦闘中は名前ではなくコールサインで呼んで頂けると幸いです。』

 

「も、申し訳ありません、ウルズ10。」

 

ウルズ10からの直撃弾を受けたウルズ08のF-15Jがそのまま地面に墜落する。

 

『CPよりウルズ08。右側跳躍ユニット部に直撃弾、及び管制ユニット背部への致命的損傷。』

 

悲鳴を上げる間もなく、ウルズ08のF-15Jは退場を余儀なくされる。

 

『俺の見せ場が・・・!』

 

『ハハ。ウルズ08、あんたの見せ場があったとはね?』

 

『うるせぇぞウルズ11!』

 

痴話喧嘩のような会話をしている一方で、戦場は1機減った状況でもまだ大きく変化はしていなかった。

なぜなら、ウルズ08撃墜直後に、

 

『ウルズ05、胸部管制ユニットに致命的損傷。』

 

ウルズ05の雪風が撃墜されたからだ。

 

「これで数は4:4・・・振り出しですわね。」

 

今日も今日とて、模擬戦は泥沼の様相を呈し始めていた。

 

 

 

 

 

 

模擬戦終了後、今日のスケジュールも終わり、汗を流すために上総はシャワールームに向かっていた。

脱衣所に着くと、先客がいる。

 

「ヤマシロ少尉じゃない。お疲れ様ね?」

 

そこにいたのは、金髪のショートヘアの女性―――――エイミー・J・ヴァイオレットが立っていた。

彼女は、上総と同時期にウルズへと編入された衛士の1人だ。

 

「お疲れ様ですわ、ヴァイオレット中尉。」

 

軽く会釈すると、ロッカーの戸を開けて服を脱いでいく。

 

「相変わらず、硬いのね。エイミーでいいって言ったのに。」

 

フランクに話しかけてくるエイミー。

同じ女性であると同時に、姉妹関係のように年齢差が激しい上総に、彼女はよく世話を焼いていた。

 

「・・・これは、私の性分ですから。」

 

「なら、仕方ないわね。もう少し打ち解けられれば、チエコみたいに「お姉様」って呼んでもらえるのかしら?」

 

「そ、それは・・・!」

 

エイミーが「チエコ」、と呼んだ人物は、上総が幼いころに面倒を見てくれた同じ武家出身であり、現在同じ部隊に所属する1人の女性のことだ。

裸になると、これ以上からかわれないようにと、急いでシャワールームへと入っていく上総。

その後ろを追いかけるエイミー。

そうしたところで、上総は何か柔らかいものにぶつかって立ち止まった。

 

「・・・大丈夫ですか?」

 

跳ね返されるように後ずさった上総に声をかけたのは、頭1つ大きい背の女性だ。

まるで絹の糸のように白い髪の毛に、人形のような赤い瞳。

先程、エイミーが「チエコ」と呼んだ人物―――――志波智恵子が、そこに立っていた。

どうやら、智恵子自身は既にシャワー浴びて汗を流し終え、脱衣所に戻るところだったようだ。

 

「~~~~~~!」

 

顔を真っ赤にして口をパクパクとさせる上総。

 

状況が理解できていない智恵子。

 

何か悪いことを思いついた顔で、エイミーは智恵子に言った。

 

「ハグしてあげればいいんじゃないかしら?」

 

未だに状況が呑み込めていない智恵子は、首を傾げながら上総に言う。

 

「・・・中尉がお望―――――」

 

「いりませんわ!」

 

智恵子がそう言い終える前に、上総の悲鳴に似た声がシャワールームにこだました。

 

 

 

 

 

 

特技研が持つ区画の一角に位置する部屋の1つ。

そこにいた男性の手には、あるファイルが握られていた。

それらは、ここ数か月の間にウルズ小隊へと編入してきたメンバーのプロフィールだ。

そして、この部屋の中にあるいくつかのモニターには、連日行われている模擬戦の様子が映し出されていた。

 

「遅くまでお疲れ様です、少佐。」

 

両手にコーヒーの入ったカップを持って彼のそばに現れたのは、1人の女性だ。

どうぞ、と言いながら彼女は彼へコーヒーカップを手渡す。

 

「ああ。サンキューな、大尉。」

 

男性の方はロックオン・ストラトス。

女性の方はリザ・ホークアイだ。

 

「3月、そして4月、5月と立て続けにこの部隊へと新たに編入された6名の衛士。少佐はどう思われますか?」

 

そのファイルにファイリングされている人物の経歴やその他の情報を見ながら、ロックオンは考えていた。

 

明星作戦時に戦場を共にしたところから、奇妙な巡りあわせでウルズ小隊へと編入されてきた元クロウ中隊クロウ03の国連軍の衛士―――――パトリック・ジェームス少尉。

ヨーロッパ戦線において国連に所属し、激戦を潜り抜けてきた3名の衛士―――――ジャン=ポール・ル・エスプラ少尉、マクシミリアン・フォン・トイテンベルク中尉、エイミー・J・ヴァイオレット中尉。

そして、数奇な運命からこの横浜に招かれた2人の日本人衛士―――――ある事情から国連軍となった元帝国軍の志波智恵子少尉と、斯衛から帝国軍を経由して国連へと派遣されてきた山城上総中尉。

前者に関してはある意味では異例だが、後者に関しては異例も異例であった。

なにせ、現役の斯衛の衛士であり、白の服を本来は纏っているのだから。

 

「1名を除けば、問題無しって所かね。」

 

「やはり少佐もそう思われますか?」

 

異動命令を受けて異動してきた人間を、自分が都合が悪いからと追い返すという事ができるわけでもない。

ロックオンにとって気がかりだったのは、勿論その1名が特殊な立場にいるからであった。

 

「なんでよりによって、帝国軍から技術交流って理由で派遣されてきた衛士が帝国斯衛軍(インペリアルロイヤルガード)所属なんだ・・・?」

 

ロックオンの疑問は最もであった。

確かに、これまで以上に帝国と密接な関係にあるAL4計画推進派閥にとって、帝国軍自らが少なからずアクションを起こすということ自体は計画にとっても良いことであった。

しかし、彼が頭を抱えているのその1名―――――山城上総の元々の所属だ。

これはつまるところ、技術交流は完全な名目ということに他ならない。

彼女の経歴を見たところ、上総は帝国斯衛軍が帝国軍と共同して兵器開発などを行う部署の試験部隊に所属していた。

彼女の所属の部隊が行っているのは、横浜基地も一枚噛んでいる「ある兵器」の実証試験だ。

それを行っている中での特技研への異動に伴い、F-15J改修プロジェクトへの参加。

これが意味することはつまり―――――

 

「中で何が行われているか調べるための諜報の目的も含まれているのでしょうね。」

 

ロックオンが考えていたことを、ホークアイが述べる。

 

「そういうことだ。彼女だってそれは承知だろうがね?」

 

肩をすくめて見せるロックオン。

ファイルをデスクに置くと、立ち上がり、手に持っていたカップを口へと運んでコーヒーを飲む。

 

「・・・さて。こいつの主任開発衛士(メインテストパイロット)は誰にしようかね。」

 

そう言ってロックオンはまた別のファイルを手にもって眺める。

そこにはあるプロジェクトの名前が記されていた。

 

F-15J改修に関する計画―――――「アジャイルイーグル・プロジェクト」、と。

 

 




はい。最後にタイトル回収を行いました。
ちなみに元ネタは、現実のアクティブもとい空軍からNASAに移管された「F-15 ACTIVE」の前の名前であるF-15Bをベースにして開発された実験機である「F-15 S/MTD」を用いた単距離離着陸機開発計画「アジャイル・イーグル・プロジェクト」です。
新たな翼。つまりそれは新たな鷲の系譜。
これ、なんで陽炎をベース機に選んだといえば、最近知り合いからアユマユオルタ借りたのがきっかけなんですよ。
まあ・・・リアルが忙しくて、まだプレイできていなんですが。
さて、色々と追加事項が1話のみなのに増えたわけですが、皆さんついてこれていますか?
ついてこれていない人は大丈夫です。
作者もそんなに深く考えないでやってはいます!←オイ

・・・そのうち、キャラ紹介とか戦術機とかの設定を公開向けに書き出そうかな・・・?

まさかの上総ちゃんがこんな形で再登場となりました。
はてさて、この先どうなるのか?
それは神すらわかりません!

ではでは後書きはこの辺で。

~(勝手な)恒例の次回予告パート~

新たな翼。それは、正史には存在しない異物(イレギュラー)。
どこかにあったナユタ機関なんてものは存在せず、そこに至るには何が必要か?
鍛冶師は今、新たな剣を打つために火を灯す。

次回「防人の名は」

鷲はどこを目指して羽ばたくのか。

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