Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手   作:マインドシーカー

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この小説は、ご覧の作者の提供でお送りいたします。

はい。
今回は前以上に難産になりました。
何回か書いては消し、書いては消し、書いては修正し、書いては消しを繰り返したんですよね…(
申し訳程度のシーンとかもあったりと、ちょっとなぁって。
あ、皆さん割と前から思ってるかもしれませんよね許してくださいお願いしますなんでもはしません(ぇ
本当は1個挟んでTE本編前の話を書こうと思ったんですけどね。
ちょっと無理そうなのでこういう形になりました。
ではどうぞ。

追記
大幅な修正を加えました。
改めて目を通して頂けると幸いです。

イメージOP「ideal white」


before TE
before TE-01「アルゴス対ウルズ」(2019/12/21 03:56 加筆修正)


国連軍太平洋方面第11軍・横浜基地。

この基地は現在、オルタネイティブ第4計画を進行するための中心拠点として機能していた。

2000年9月現在、この基地は昨年行われた明星作戦以降に横浜ハイヴ跡地に建設され、今現在の基地稼働率は50%程といった状態だ。

表向きには、日本帝国領土内に設置された国連軍基地であり、土地を租借しているという関係から実働部隊が運用する戦術機は、日本帝国から貸与、あるいは給与されたものになっている。

 

表向き、と先程表現したのには理由がある。

それは、この基地において、高いレベルのセキュリティパスを持たなければ入れない区画が存在するからだ。

セキュリティパスレベルが3以下の区画は、その全てが「表向き」の施設であり設備となっている。

それ以上、つまりはパスのレベルが4以上の区画は、例えば基地の副司令でありAL4の最高責任者である香月夕呼の執務室だ。

 

他の例を挙げるとすれば、夕呼の執務室のすぐ隣の「脳髄が入っているシリンダー」がある部屋や、特殊技術研究部の本部的ポジションの部屋いくつか。

表に出やすい、つまり人目に付きやすい戦術機本体を用いた研究・開発は情報としてのセキュリティレベルは低いが、日夜研究員たちが解析している膨大なデータはそうではないため、高いレベルのセキュリティパスが必要となっている。

イオリア・シュヘンベルグ博士が書斎としている部屋も同様に、これに関しては夕呼の部屋と同じレベルのセキュリティパスが必要になる。

 

そのどれもが、この計画においては秘匿性が高いものであり、それが故に基地においては地下の方に存在する。

 

無論、接収予定の「XG-70」と呼ばれる兵器を収める格納区画や、ガンダムが保管されている場所も同様に高いレベルのセキュリティパスが必要である。

これと同様に、GN粒子の研究が行なわれている区画もまたレベル4以上のセキュリティパスがなければ、入れない場所にあった。

そしてこの場所では今、ある物の開発がようやく一区切りつく瞬間を迎えていた。

 

 

 

「GN粒子の発生率、安定域に入りました。」

 

「粒子精製量、共に安定しています。」

 

単なる情報端末でしかなかったはずのハロの中にあったデータベース上にあった「GNコンデンサー」と「太陽炉を接続する技術」。

そして、プトレマイオスが半永久的活動時間を獲得できた理由である、この船が搭載していた大型の粒子貯蔵タンク。

これら、ロックオンの世界におけるこの世界においてはオーバーテクノロジーに等しい技術を解析し、ある程度紐解いたところで、この世界なりの技術で元の技術を応用し、開発されたのが今現在彼らの前で稼働している機械だった。

いわば、この機械はこの世界におけるGN粒子を封じ込め、貯蔵するための「粒子貯蔵タンク」だ。

 

しかしこれは、ロックオンが本来いた世界において実用化されていたものには、お粗末にも及ぶとは到底言えない代物であった。

 

この機械の問題点は、貯蔵はできても、別に供給なりを行う「転用」ができないからだ。

これは、GNコンデンサーが未だ実物を開発するにいたっておらず、それが原因で様々な分野への「転用」が不可となっていた。

しかし、これを携帯可能な、所謂「パック方式」のように、エネルギー量に制限があるとはいえ艦砲ないし、理想としては戦術機サイズにまで使用可能(つまりはガンダムや、GN-Xのように携行した武装に使用可能にする程)になれば、理想としてはデュナメスの武装を、既存の戦術機や艦船を改修すれば使用可能にすることができる。

だが、あくまでこれは理想であって現実ではない。

机上の空論の域を出ないが故の「理想」—————ではあるが、これを現実のものにするため、研究チームは不断の努力を続けていた。

 

「諸君、ありがとう。」

 

そして今日、これまで製造された試作型の粒子貯蔵タンク、その16番目が、ついに一定量のGN粒子を貯蔵することに成功したのだ。

サイズは、戦術機が携行可能な大きさでは到底なく船に載せるには多少小さいそれは、前述の通り、決して「成功作」とは言い難い。

しかし、これまで問題とされた「一定量」・・・つまりは、制限付きとはいえ飛行、歩行、潜水、戦闘、あらゆる面において想定される必要量を留めておけるだけのタンクが出来上がったのだ。

それは確かに、この研究がまた一歩前進したと言えよう。

だからこそ、研究員たちの中心で「彼」は声を大にして感謝の言葉を述べる。

 

「君たちの不断の努力によって、我々の研究はまた一歩前進することができた。」

 

そう言ったのは、最も長い時間研究に携わり続け、誰よりもこの研究と開発に没頭し続けた、稀代の天才科学者—————イオリア・シュヘンベルグ、その人であった。

 

「いえ!博士がいなければ、こんなに早くこれ(粒子貯蔵タンク)の完成度をここまでもっていくことは不可能でした!」

 

「そうです!博士があってこそのこの研究であり、今回のプロジェクトなのです。」

 

周囲にいた研究者たちが口々に言う。

 

—―———イオリア・シュヘンベルグという人物は、学会の鼻つまみ者であった。

 

しかし、その類稀なる頭脳に惹かれる人間はいる。

天才であるがゆえに孤独であった彼を慕う人間は数多く存在したのだ。

勿論、この場にいる彼ら全員がそういうわけではないのもまた事実ではあるが、ここにいる大半の研究者が、イオリア・シュヘンベルグという研究者を慕い、尊敬し、目標にしていた。

 

「だが同時に、君たちがいなければこれは実現できなかったのもまた事実だ。これは、私一人では成し得なかった。」

 

イオリアという人間は、元来「人間嫌い」というやつである。

 

それは、人と人が分かり合えず争い合い、戦争を引き起こす事をわかっているからこそだ。

だから彼は、人が嫌いだった。

だから彼は、人と人が分かり合える世界を目指した。

 

それは、ロックオンのいた世界のイオリア・シュヘンベルグも同様だ。

 

ガンダムと、「トランザムシステム」を託した時にイオリアが言った「人は変われるのだから」という言葉の意味。

外宇宙からの来訪者との対話は、人類意思の統一無くして実現することは叶わない。

そのためのGN粒子であり、そのためのガンダムなのだ。

 

形は違えど、この世界のイオリアもまた、似た思想を持っていた。

だから彼は、夕呼の共犯の1人になる事を良しとしたのだ。

それが、人同士の分かり合える未来を作るためだと信じて。

 

「だが、まだ終わりではない。我々の研究の先に、「彼」が、あの青年が乗っていた機動兵器がある。あれ程の技術を実現するのは、今は叶わないだろう。」

 

そして、イオリアは一拍置いてから、こう言った。

 

「だが、未来を切り開くそのために、我々がやっていることは無駄ではないと。だからこそ、続けていこう。この研究を。」

 

—————そう、人は・・・変われるのだから。

 

 

 

 

 

「それで?」

 

場面は変わる。

ここは、夕呼の執務室だ。

室内には、3人の人間がいた。

1人は言わずもがな、この部屋の主である夕呼だ。

彼女は今、この部屋に2名の人物から報告を聞いていた。

 

「結果は上々ですな。これで、あなた方はアウェーでありながら、かの計画に参加することができるようになったというわけです。」

 

夕呼の質問に答えたのは、彼女の前に立つ男性から一歩引いた位置に立っていたスーツ姿の人物—————鎧衣左近だ。

 

「ミスター・イワヤはこっちの提案を快く受けてくれたよ。こっちが提供した色んなデータやら何やらもあったからこそ、なんだろうがな。」

 

彼の言葉に続くようにしてそう言ったのは、彼女の前に立つ男性、ロックオン・ストラトスだ。

 

「あちらさんからも、ボーニングに打診してくれたそうだ。実質こっちが先に進めてたような話だから、出来レースみたいなやり取りではあるが・・・これで、アラスカに行くことができる。」

 

「そ、ならいいわ。」

 

ロックオン達の報告に、あっさりとした言い方でそう返す夕呼。

 

「気が向いたからやったことだし、私としては以降の事はストラトスと、そこのに任せるわ。」

 

そして、自分はもうそれに関しては用済みとばかりに2人に丸投げするような言葉を発する。

 

「おいおい、ミス・コウヅキ。もういいのかい?」

 

流石に、報告事項を上司に報告するという状況での夕呼の態度に少し困った様子で、ロックオンは言う。

 

「言ったでしょう?任せるって。遠征させる人員の人選も、あんたに任せるわ、ストラトス。それくらいは、あんた達でできるでしょう?」

 

ロックオンの聞いたことに対して、夕呼はそう返した。

そして「わかったらすぐ行動。私は忙しいのよ」と、半ば追い出される形で執務室を後にする2人。

 

「はっはっはっ。相変わらずですな、香月女史は」

 

部屋を出るとすぐ、態とらしい笑い方をしながら、肩をすくめてロックオンへと言う鎧衣。

 

「ま、いつも通りではあるな。さて、仕事に戻りますか。」

 

「ですな。私は私にできることを、貴方は貴方にできることを成せば良い。では私は、これにて」

 

そう言い残すと鎧衣はまるで幽霊のように消えてしまった。

 

「・・・相変わらず、気配を消すのが上手なようで」

 

そうして、ロックオンもまたその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

—————アラスカ・ユーコン基地。

 

北米大陸の上側、アラスカにある国連軍の基地であり、クラウス・ハルトウィック大佐が中心となって行われている「先進戦術機技術開発計画」—————通称「プロミネンス計画」の本拠地だ。

 

「プロミネンス計画」とは、国連軍がアラスカにあるユーコン基地で進めている「各国間の情報・技術交換を主目的とした国際共同計画」の事であり、「外国からの新技術流入によるブレイクスルー」「設計思想の硬化防止」「世界的な技術水準の向上」等のメリットがある一方、水面下では外国への情報流出・機密漏洩の危険性、対BETA戦後を睨んだ参加国の政治的介入や、利益獲得を優先させる企業同士の妨害工作などのデメリットも生じており、国連が掲げる「東西陣営の協調」「人類の大団結」という理想にはほど遠い。

 

この計画を示す計画章には、「太陽」と「人類初の戦術機」であるF-4「ファントム」のシルエットをモチーフにしたデザインが描かれている。

 

そして今、その場所に向かっている輸送機が5機。

そのうちの4機の腹の中には戦術機が抱えられており、輸送機のパイロットは安全なルートを低高度でユーコン基地を目指して飛行していた。

 

「おおー!さっすが、まだ支配地域になってない場所は違いますね!ほら、リーバー少尉、ヤマシロ中尉、シバ少尉!こんなにまだ緑が残ってますよ!」

 

少年のように、機体の窓から下の景色を眺めながらそう言ったのは、PJことパトリック・ジェームス少尉だ。

 

「煩いぞPJ。船と飛行機を乗り継いで来てるんだ。流石に疲れてるから静かにしてくれ」

 

気怠げな声でそう返したのはリーバーだ。

シートのリクライニング機能を使って背もたれ部分を倒し、楽な姿勢でシートに座る彼は顔半分にアイマスクを被っており、その下から目を覗かせてPJを睨むように見ていた。

 

「だって、暇なんですよぉ・・・」

 

「あらほんと。結構綺麗ね、外の景色は」

 

嘆くように言うPJの後にそう言ったのは、意外にも上総だった。

 

「アラスカは、今大戦における初期段階でBETAの支配を免れた数少ない地域の一つですから、自然環境は未だ健在なのでしょうね。」

 

彼女の発言にそう返したのは、それまで読書をしていてあまり喋らなかった智恵子だ。

 

「確か、アラスカ・・・つまりは、カナダに落ちてきたBETAの着陸ユニットは、アメリカ軍による核の集中攻撃で完全に破壊されたため、支配地域になるのを免れたんでしたっけ?」

 

「確かそうだった筈だよ。戦術核の投入で、上陸される寸前に総攻撃で奴らの侵攻を阻んだ。カシュガルの教訓が初めて活かされたケースでもある。」

 

PJが言ったことに対してそう返したのは、先ほどから気怠そうに話を聞いていたリーバーだった。

 

「俺たちが向かってるユーコン基地は、ソビエト連邦の租借地であるアラスカと、アメリカ側がソ連と協議して決めた国境線の境目にある、複雑な立場の基地さ。」

 

「ソ連・・・」

 

彼らが今、アラスカの地に来ていて、ユーコン基地に向かっている理由。

それは、2週間ほど前の出来事に遡る—————。

 

 

 

 

—————2000年9月某日。

この日、4名のウルズ隊のメンバーが呼び出され、ある部屋へと向かっていた。

 

「呼び出し・・・一体なんなんでしょうね?」

 

歩いている4人の中の1人、パトリック・ジェームス少尉—————PJの愛称で呼ばれる青年が、そう呟いた。

 

「私と中尉が呼び出されたという事は、恐らくは89式改修計画絡みの事でしょうが・・・」

 

彼にそう返したのは、今回の計画における次席開発衛士の智恵子だ。

 

「だが、それにしてもなんで俺とPJまでなんだ?」

 

智恵子の発言にそう返したのは、最後尾を歩いていたリーバーだ。

 

「2人はわかる。だが、態々俺たち2人をご指名ってのは少し引っかかるぞ。」

 

「ですよねぇ・・・実際、自分に関しては仮想敵役をやったり、データの整理だとか裏方仕事ばかりでしたから・・・」

 

引っかかる、という意味では意見が合致する2人。

 

「どちらにせよ、何かの辞令でしょう。そろそろ着くわ」

 

先頭を歩いていた上総がそう言うと、少しして呼び出された部屋のドアの前に到着した。

上総はすぐにノックをすると、中からすぐに「どうぞ」と女性の声で返事が返ってきた。

 

「失礼します」

 

彼女はそう言うと、ドアを開けた。

部屋の中へと入る4人。

 

「お待ちしていました。」

 

そこにいたのは、ホークアイだった。

彼女は眼鏡をかけていて、彼女の周囲にはいくつかの書類が積み上げられている。

彼女は「楽にしてください」と敬礼をしてから直立不動で立っていた4人に対してそう言うと、デスクの引き出しから書類を取り出すと立ち上がり、4人の方へ近づいていく。

 

「貴方達に、辞令を言い渡します。詳しい内容は、これから渡す書類に記載が。」

 

そうして、ホークアイは4人へとファイリングされた書類を手渡していく。

 

「これは・・・」

 

上総はすぐにその書類に目を通していき、今回呼び出された理由は「やはりこういうことか」と合点がいく。

 

「貴方達にはこれから、アメリカのボーニング社が「フェニックス構想」基づいて進めているF-15Eの改修計画の補助計画として、アラスカ・ユーコン基地にて進められている「先進戦術機技術開発計画」、通称「プロミネンス計画」に参加するために、ユーコンへ向かって頂きます。」

 

ホークアイは、4人に向かってそう告げた。

 

「既に根回しは済んであります。特にヤマシロ中尉に関しては、別途指示がありますので資料に目を通しておいて下さい。」

 

「別途の指示・・・?」

 

「詳しい話は後程いたします。先程言った通り、貴方達4人にはアラスカ・ユーコン基地へと向かい、計画へ参加、現在改修中のType-89の改修の完成を目指して下さい。」

 

ホークアイがそう言うと、1人居心地悪そうにしていたPJが「あの、質問よろしいですか?」と恐る恐るといった様子でホークアイへと聞く。

 

「どうぞ。」

 

「ありがとうございます。あの・・・なぜ、自分がメンバーの1人に?」

 

その疑問は尤もであった。

PJの中では、自分は今まで裏方仕事などに徹してきた身であり、まさか遠征メンバーに選ばれるとは思っていなかったのだ。

 

「メンバーの選定に関しては、こちらの一存で適正だと判断した人間を選定しています。ジェームス少尉は、何かご不満があるのでしょうか?」

 

「いえ・・・ただ、ねぜ自分、なのか、と・・・」

 

「言った通りです。何かほかに質問は?」

 

有無を言わせぬホークアイの態度に、PJは「わかりました」と言って引き下がる。

 

「それでは、下がってください。ヤマシロ中尉は後程お呼びいたしますので・・・ああ、リーバー少尉は少し残ってください。」

 

3人に下がるように命じ、3人が部屋を後にするとホークアイとリーバーだけが残された。

 

「それで、俺に何か?」

 

「貴方には、彼らのお守り役をして頂く以外にもう1つ、お願いしたいことがあります。」

 

 

 

 

 

 

 

『お客さん方。そろそろ基地に着くぞ』

 

2週間前の出来事を思い出していたリーバーの耳に、機内放送から聞こえてきた機長の声が入る。

やがて、窓からでも死人できる距離まで、基地施設が近づいてきた。

 

「あれが、ユーコン基地・・・」

 

誰かがそう言った直後、輸送機が着陸態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

「へぇ。あれがアタシ達と一緒に“仕事”する連中?」

 

滑走路へのアプローチに入った縦に連なる5機のAn-225「ムリーヤ」輸送機。

それを眺めている人間が3人。

駐機場の外にあたる場所に停められた1台のジープから降りてアプローチ態勢に入った輸送機を眺めていた3人のうちの1人がそう言った。

 

「みたいだな。ムリーヤが5機とは豪勢なこって。」

 

ジープの近く、そこに立つ先程声を発した人間と同じように国連軍のBDUに身を包んだ男性がそう言う。

 

「どっちでもいーよ。退屈しのぎにさえなればね」

 

「あらあら。タリサは相変わらず、拗ねたままなのかしら?」

 

「こ、子供扱いすんなよステラ!」

 

最初に喋った人間と、男性、それ以外にもう1人。

ジープに乗ったままで着陸態勢に入った輸送機を眺める金髪の女性がからかうように言い、それにかみつくように言う最初に喋った人物。

彼らは今、今日ここへきた「お客様」が何かを見るためにこの場所に来ていた。

 

「ったくもう・・・それにしても、どんな奴らなんだろうな?」

 

「タリサ」と呼ばれた一番背が低くボーイッシュな外見の女性が、そんな疑問を口にした。

 

「ああ。確か、2人は女って聞いたぜ?」

 

「あらあら。お耳が早いことで・・・。」

 

「VGよぉ。その情報ってのは一体どこが出どころなんだ?」

 

「それは企業秘密。」

 

3人がそう喋っていると、やがて5機の輸送機は連なって着陸態勢に入っていった。

 

 

 

 

 

 

やがて、滑走路にアプローチに入ったムリーヤが次々に着陸していく。

そのうちの1機に移動式のタラップが近づいており、階段部分をドアへと接続しているところであった。

少ししてムリーヤ近くに2台のジープが到着する。

やがて、ドアが開くとその中から1人の女性が出てきた。

先頭切って出てきたのは、長い黒髪を風になびかせて、国連軍軍装に身を包んだうら若き日本人女性だった。

続いて、白い髪に赤い目で長身の女性が出てくる。

その後にさらに2名、ヨーロッパ系の男性が2人。

ゆっくりとタラップを降りてきた。

 

「山城上総中尉ですね?お待ちしていました。」

 

降りてくる4人へと近づいていき、敬礼をしながらそう言ったのは、ジープを回してきたこの基地の職員だ。

やがて、滑走路上に立った先頭の日本人の女性が、職員を見ながら「ありがとうございますわ」と言いながら手に持っていた鞄を地面へと置くと、敬礼をして自身の名を名乗る。

 

「国連軍太平洋方面第11軍横浜基地特殊技術研究部、試験部隊「ウルズ」より派遣されました、山城上総中尉です。」

 

山城上総は、凛とした声でそう名乗った。

彼女の後ろにいる3名も、同様に敬礼をする。

 

「存じております、中尉。お三方も。お迎えにあがりました。中尉は統合司令部へご案内いたします。」

 

上総は彼女を迎えた眼鏡をかけた秘書風の女性に連れられてジープへと乗り込む。

 

「お三方はこちらへ。宿舎へご案内いたします」

 

残る3人は、残りの1台のジープへと乗せられて別の方向へと走り去っていく。

 

「では、出発しましょう」

 

彼女は上総へと笑みを向けながらそう言うと、ジープを発進させた。

 

 

 

 

 

 

国連軍ユーコン基地・統合司令部施設。

その中にある部屋の1つに案内された上総は、1人の人間と対面していた。

 

「遠路はるばるご苦労。私が「プロミネンス計画」を預かる、クラウス・ハルトウィック大佐だ。」

 

「「アジャイルイーグル・プロジェクト」の開発主任兼主任開発衛士(メインテストパイロット)、山城上総中尉であります。」

 

「君が、かの「横浜」から派遣された部隊の人間か。オペレーションルシファーでは「幻の部隊」とまで言われた。」

 

ハルトウィックは、彼女を値踏みするようにそう言う。

 

「存じて頂けて幸いですわ、大佐。ですが私は当時、帝国斯衛軍所属の部隊の一員として任務に従事していましたわ。なので、正確には当時のメンバーではなく、後から部隊に編入された身・・・どうか、過分な期待は向けないで頂けると、幸いですわ」

 

「はっはっはっ。謙虚なのは良いことだが、事この場所においては、君が籍を置く場所の所為で良い感情は向けられない可能性が十分にある。留意したまえ」

 

最初は笑みさえ浮かべて言葉を発し、最後は鋭い視線で彼女へと言うハルトウィック。

「忠告、痛み入りますわ」と返す彼女は、自身も優秀な衛士であるハルトウィックに気圧された形になっていた。

 

「さて。君に至っては、本来の所属が帝国斯衛軍(インペリアルロイヤルガード)というだが・・・貴国の切迫した状況は理解しているつもりだ。極東の要衝たる帝国の防衛に貢献できるのであれば、尽力は惜しまない。だからこそ、「プロミネンス計画」は「横浜」の参画を受け入れたのだよ。これが人類の為になるのだと、考えたからだ。」

 

「前振りはここまでで良いだろう」と、ハルトウィックは立ち上がり窓から外の風景を眺める。

 

「ここにいる者達は皆、故郷を、家族を、様々な何かを失っている。そんな彼らにとって、「守るべき国土」があるというのは、それだけで大きな意味を持つのだよ。」

 

窓の外の景色。

基地施設が眼下にあり、空は済んだ水色だ。

 

「彼らはそんな希望を信じて、今日もこの場所で任務に従事している。」

 

振り返り、ハルトウィックは上総へと言う。

 

「そんな彼らの努力に報いられるよう、君や他の者たちの努力に期待する。」

 

「はっ!」

 

「・・・さて。」

 

ハルトウィックは引き出しから封筒を取り出すと、彼女の前に置いた。

 

「—————アルゴス試験小隊。君たちが行う計画と並行・・・否、正確にはメインである「フェニックス構想」において行われているF-15Eの強化改修プランを担当する部隊だ。この部隊が、君たちと共に仕事をする仲間になる。」

 

そこにあるのは、計画に関する資料と、アルゴス試験小隊のメンバーの資料だ。

 

「試験小隊のメンバーは全て、現場叩き上げの猛者達だ。君たちが行う計画においても、有効なデータを共有することが可能であろう。」

 

「拝見しても?」と許可を求め、ハルトウィックが頷くと彼女は封筒を手に取り、封を開けて中の資料を取り出す。

 

「無論、君達が提供してくれるであろう「新技術」・・・そちらに関しても、アルゴス試験小隊や我々にとって有意義な情報であることを期待している。」

 

彼女はその資料に少し目を通していく。

 

「さて、長旅で疲れただろう。詳細を確認するにも、腰を据えてみるほうが良い。下がって構わない。」

 

ハルトウィックがそう言うと、彼女は「ありがとうございます」と言って資料を封筒へ戻すと、敬礼し、会釈をして部屋を後にする。

部屋にはハルトウィックと—————

 

「君から見て、彼女はどうかね?」

 

隣の部屋に待機していた、先程上総をこの場所へと案内した眼鏡をかけた秘書風の女性がいた。

否、彼女はハルトウィックの執務を補佐する秘書だ。

 

「あれが、「横浜」から来たという。正直、わかりませんね」

 

彼女が抱いた忌憚のない意見に、ハルトウィックは不思議そうな表情で返す。

 

「ほう。私の優秀な秘書にしては珍しい、漠然とした返答だな。」

 

ハルトウィックは、彼女とこうしてよくやり取りをするのが楽しみであったが、今回は彼女としても相手がまったく所属を変えてからの情報が少ないが故に、評価をどのようにするか決めあぐねていた。

 

「お戯れを、大佐。」

 

「・・・ふむ。まあいいだろう。幻の部隊、ウルズ。彼らがどのような活躍を見せてくれるのか、楽しみだ、」

 

ハルトウィックにしては珍しく、楽し気な笑みを浮かべながら秘書へとそう言った。

 

 

 

 

 

 

「トルコ陸軍所属、イブラヒム・ドーゥル中尉だ。現在は、ボーニングが進める計画にて、君たちと共に研究開発を行う「アルゴス試験小隊」の隊長を務めている。」

 

そして、同じように敬礼しながら、黒人男性ーーーーーイブラヒム・ドーゥルがそう、上総へと名乗った。

 

「長い付き合いになるだろう。よろしくお願いするよ、ヤマシロ中尉。」

 

そう言って、イブラヒムはその大きな手を差し出して握手を求めた。

 

「・・・。はい、よろしくお願いしますわ」

 

にこり、と笑みを浮かべながら、上総は彼の手を取り握手をする。

 

「さて、立ち話もなんでしょう。あとの話は、荷物をまず各々の部屋へと移動させてから・・・ということで、如何でしょうか?」

 

話の間に割り込むのを申し訳なさそうにしながら、職員がそう言う。

「ではそうしよう」「そういたしましょうか」と2人はお互いにそう言うと、上総達は2人ずつに分かれてジープへと乗り込み、その場を離れた。

 

 

 

「さて。全員に集まってもらったのは他でもない。」

 

最初の出会いから数時間して、ウルズ隊とアルゴス試験小隊の面々は、彼らに割り当てられたブリーフィングルームへと集められていた。

席に座る全員の前でそう言ったのは、黒人男性だ。

 

「親睦を深めてもらうよう、まずは自己紹介を全員にしてもらう。まず初めに・・・マナンダル少尉!」

 

彼にそう呼ばれたのは、先程「タリサ」と呼ばれていた人間だ。

 

「げっ・・・先頭私かよ・・・」

 

そう、小さな声で一人愚痴るタリサに、黒人男性が「何か不服かね、マナンダル少尉?」と言われると、すぐさま「いえ、何もありません!」と答えて立ち上がる。

 

「ネパール軍所属、タリサ・マナンダル少尉。コールサインは「アルゴス02」。今は、アクティブ(F-15 ACTV)の2号機のテストパイロットをやってる。」

 

「やってる?」

 

「やっています!・・・むぐぐ・・・よろしくお願い、します。」

 

不満そうにそう言って、席へと座るタリサ。

 

「では次は・・・貴様だ、ジアコーザ少尉。」

 

「了解であります、隊長。」

 

そう言って立ち上がったのは、イタリア人男性だ。

 

「ヴァレリオ・ジアコーザ少尉。コールサインはアルゴス03。主に、随伴機(チェイサー)だったり、仮想敵(アグレッサー)だったり、あとはメインのそこのおチビさんと、隊長のサブでアクティブをいじったりしています。因みにですが、親しい人間には「VG」と呼ばれているので、ウルズの皆さんも、そう呼んでくれよな?」

 

ニカッと歯を見せた笑みを、主に女性陣に向けながらヴァレリオは自己紹介を終える。

 

「なっげぇんだよ、VG。」

 

「うるせーな。何事も最初が肝心って言うだろ?」

 

隣同士に座るヴァレリオとタリサがヒソヒソと喋っていると、最後のアルゴス試験小隊メンバーの自己紹介が始まる。

 

「スウェーデン軍所属、ステラ・ブレーメル少尉です。コールサインはアルゴス04。ジアコーザ少尉と同じく、随伴機と仮想敵、その他の仕事を担当しています。以後、よろしくお願いするわね?」

 

笑みを浮かべながら、ステラが自分の自己紹介を終える。

 

「では最後に。トルコ軍所属、イブラヒム・ドーゥル中尉だ。コールサインはアルゴス1。現在は、ボーニングが進める計画にて、君たちと共に研究開発を行う「アルゴス試験小隊」の隊長、そしてアクティブの1号機の主任開発衛士を務めている。」

 

そうして、アルゴス試験小隊のメンバーはとりあえずの自己紹介を終える。

次はウルズ隊の番だという流れになり、まず最初にリーバーが立ち上がると自己紹介を始めた。

 

「フレッド・リーバー。階級は少尉。コールサインはウルズ05だ。今回は、主に約2名のお守り役でここに来た。よろしく。」

 

気怠げに、かつ手短に自己紹介を済ませるリーバー。

続いて自己紹介をするのはPJだ。

 

「自分は、パトリック・ジェームス少尉と言います。コールサインはウルズ12。メインの2人のサブと、サポートとしてここへ派遣されました。よければ、親しみを込めて「PJ」とお呼びください。親しい人間は、自分のことをそう呼びますので。よろしくお願いします!」

 

PJの自己紹介が終わると、次に順番に回ってきたのは智恵子だ。

 

「志波智恵子少尉です。コールサインはウルズ10。私は、そちらの山城中尉が扱う試験機の2号機の担当です。以後、お見知り置きを」

 

軽く会釈をしながら、手短に自己紹介を済ませる。

最後に、上総の番がきた。

 

「山城上総中尉です。本来の所属は、帝国斯衛軍になります。現在は、国連軍太平洋方面第11軍横浜基地のウルズ隊に所属しています。コールサインはウルズ07。89式・・・F-15Jの改修1号機の主任開発衛士を務めています。皆さん、よろしくお願いいたしますわ」

 

お辞儀をして、そう自己紹介を締めくくる。

 

「さて、これで全員の紹介は終わったようだな。」

 

イブラヒムがそう言うと、次に計画の簡単な概要説明に移った。

 

「皆も知っての通り、我々が進めているのはボーニング社が「既存の第2世代戦術機を第3世代相当にまで性能を底上げする」という「フェニックス構想」の下に行なっているF-15Eの改修と、補助計画という形でそちらのヤマシロ中尉が進めるF-15Jの改修だ。」

 

正面のモニターにスライドが映し出されると、それぞれの計画の概要が説明されていく。

 

「我々が進めているF-15 ACTV「アクティブイーグル」、そしてこのF-15 S/MTD「アジャイルイーグル」(89式改)、これら2つの完成を目指すのが当面の目標だ。」

 

イブラヒムが説明を続ける中で、説明に合わせてスライドが流されていく。

 

「計画性がある程度決まっているアクティブに対して、アジャイルの場合にはまだ様々な課題が残っているとの事だ。よって、アクティブの完成度を高めるアルゴス小隊と、アジャイルの設計のブラッシュアップを図るウルズ隊とで、共同で互いの計画機の完成度を、これから先は高めていく形になるだろう。」

 

そうして、いくつかのスライドを流し、最後のスライドが流れると説明が終わる。

 

「さて、これで説明を終了する。各々、何か質問などはあるかね?」

 

イブラヒムがそう聞くが、特に質問をする者はーーーーー

 

「はい!」

 

元気よく声を上げたのは、タリサだった。

 

「なんだ、マナンダル少尉。」

 

「うちら・・・じゃなくて、アタシ達のアクティブと、あっちのアジャイル。そいつが並行して計画を進めるメリットはあるのでしょうか?」

 

発言を許されたタリサは、そう質問する。

 

「おいタリサ・・・!」

 

「いいだろう、マナンダル少尉。続けたまえ」

 

止めようとしたVGを遮り、イブラヒムはタリサに続けさせた。

 

「元々、性能でE型に劣るC型の日本向け仕様が、F-15Jだったはずです。だったら、態々ライセンス生産品を改修するよりも、例えば日本が運用する第3世代機・・・確か、Type94とか、そっちを改修するか、別の機体を開発する方がよっぽど効率的だと思ったんです。なにより、アタシ達のアクティブと共同で研究・開発を行うってのがどうにも納得がいかなくて」

 

彼女の言うことは最もである。

実際、既に国内でのライセンス生産を終えたF-15Jもとい、89式戦術機「陽炎」は、繋ぎでありながらも多くの部隊で運用されてはいるが、いずれは94式「不知火」や、それらのアップグレード機(つまりは、F-15Cに対するF-15Eの)や、その後継機に移行していくはずだ。

なのにも関わらず、態々陽炎を改修するメリットは、普通なら見当たらない。

 

「そこに関しては、私から説明させて頂きますわ。」

 

そう言ったのは、上総であった。

彼女の後ろに座る形になるタリサへ向けて、前を向いたままで言葉を続ける。

 

「ドーゥル中尉。少し、お時間を頂いてもよろしくて?」

 

そう提案すると、「ああ、構わんさ。」と返すイブラヒム。

すぐさま彼女は立ち上がると、イブラヒムが立っていた場所に立ち、タリサや、残る2人、そして後ろに立つイブラヒムへも向けた説明を始める。

 

「先程も言われた通り、我々が今回改修を行なっているF-15J・・・帝国軍では89式戦術歩行戦闘機「陽炎」と呼ばれるそれは、既に国内でのライセンス生産を終え、現在稼働数が少ない94式「不知火」に、いずれは機種転換していく予定です。しかしながら、現状の帝国の生産力では十分な不知火の数を揃えられるだけの時間的余裕も、なにより資源が乏しく、そのため、急場とはいえこちらのフェニックス構想と似たような思想の下、陽炎の改修を行うことが決定されました。」

 

上総の今の説明では不十分なのか、タリサは未だ不満そうな表情を浮かべていた。

 

「・・・とまあ、これはあくまで表向きの話です」

 

彼女はそう言うと、ブリーフィングルームに持ち込み、先程前に立つときに一緒に持ってきていた鞄からファイルを取り出した。

 

「これから配る資料に、簡単にですが概要を纏めさせていただきました。」

 

そうして彼女は、アルゴス小隊の4名に資料を手渡していく。

 

「今回の我々、ウルズ隊及び「横浜」の目的・・・」

 

配りながら言葉を続ける上総。

 

「それは、こちら側が占有する様々な「先進技術」の公開・共有と、そのデモンストレーションです。」

 

最後にイブラヒムへと資料を手渡すと、今度は端末を操作し、モニターに再び別の情報を表示させる。

 

「これから同じ職場で仕事するにあたって、我々の上司から見せるように言われた資料です。これらは全て、私達独自の技術になります。」

 

そこに映し出されたのは、かつてヘルダイバーや雪風が運用した武装のデータや、戦闘記録だ。

 

「なによりこれは、帝国のみが占有しているわけではなく、「横浜」のみが独自に占有する技術です。あくまで「横浜」は国連軍ですから、帝国やその他の国が関わっているのではなく、「横浜」独自に進めてきた研究と開発になります。」

 

「なら、尚更アタシ達と組むメリットは・・・」

 

「マナンダル少尉が先程仰った通り、メリット・デメリットの面で考えれば、メリットは少なく、逆に占有技術を見せるという意味ではデメリットの方が大きいというのは、聞かなくともわかるでしょう。」

 

上総はそう言い切った。

 

「しかし、今回我々が行うのは、あくまでボーニング社が中心となって行う「共同開発」です。よって、それ以上でもそれ以下でもなく、あくまで対等な立場として、互いに切磋琢磨しながら互いを研鑽し合い、技術の向上を図る。なら、これ以上のメリットはないと、そう考えますが・・・これ以上の説明が必要でしょうか?」

 

そう言って、説明を締めくくる。

タリサは尚も噛みつこうとしたが、イブラヒムに制されて大人しくなる。

 

「さて、長々とした説明はここまでとしよう。」

 

上総とポジションを入れ替えて、再び前に立つイブラヒム。

 

「今日から我々は、同じ計画のメンバーとして仕事をする同僚だ。よってこれより、親睦を深めるためにあることをしてもらおう。楽しいレクリエーションの時間だ」

 

「レクリエーション?」とPJが呟く。

イブラヒムは口元に笑みを浮かべると、この場にいる全員に向けてこう言い放った。

 

「CASE:47だ。」

 

 

 

 

 

 

CACE:47。

それは、テロなどに際してのAH(対人)戦を想定した、模擬戦闘訓練を指す言葉だ。

現在の人類の状況においても、BETAと戦っている以上に、一番怖いのは同じ人間であるという意識が根底にあるとも言える訓練項目だ。

無論、対象はテロだけでなく、もしも()()()で戦争状態に突入した場合も想定しており、今現在存在する各国軍の中では最もそこに力をいれているのは、やはりというべきかアメリカであった。

その際たる例が、「最強の戦術機」と名高いF-22「ラプター」であるのだが、それはまた別の話だ。

無論、他の国家の軍隊も訓練の項目にこれは当然の如く入っており、それは様々な用途で活かされ続けてきているのもまた事実であった。

 

そしてもう1つ。

 

この訓練は、互いの技術を切磋琢磨するという利点もあるが、他にも用途がある。

それは、実力の白黒をある程度はっきりとさせるという事だ。

 

これから行われるCASE:47はまさに、そんな理由も孕んだものであった。

 

CASE:47の内容は市街地における2機編隊同士の対人戦闘演習だ。

訓練条件は、両隊共に対人類装備、付加要素は両軍共にCPは全滅、戦域データリンクは僚機とのアクセスのみに限定、勝利条件はリーダー機の撃墜。

 

アルゴス試験小隊と、ウルズ隊による模擬戦。

 

1回戦目のカードは、タリサ(F-15 ACTV-02)とVG(F-15E)対上総(89式改)とリーバー(雪風)。

 

2回戦目は、イブラヒム(F-15 ACTV-01)とステラ(F-15E)対智恵子(雪風)とPJ(89式改)。

 

3回戦目は、ACTVと89式改の主任・次席開発衛士4名によるカードとなった。

 

アルゴス試験小隊側は、イブラヒムとタリサ。

ウルズ隊側は、上総・智恵子だ。

模擬戦は、1回戦目、2回戦目と互いに1つずつ勝ち星をあげるという結果になった。

最初の模擬戦では、最初は拮抗していたものの、リーバーの起点によりVGを先に潰され、2:1に持ち込まれたタリサは善戦するも撃墜。

一転して、2回戦目では未だ89式改という機体に慣れていないPJと、ベテランのイブラヒムという組み合わせから、智恵子がフォローに回ったもののステラの存在もあり、軍配はアルゴス側に上がった。

結果、勝敗は互いに1勝1敗という状況になった。

 

少しの休憩時間を挟んで行われる3回戦目。

 

互いに配置へとつき、開始の合図を待つ。

 

『これより、CASE:47を想定した3回目の模擬戦闘訓練を開始します。レーザー級による攻撃を考慮した高度制限、その他のルールは先ほどまでと同様となります。開始は120秒後とします。』

 

CPから全機へと通信が入り、そう告げられる。

互いのCPは全滅を想定しているため、以降の通信は制限され、被弾などの判定のみ通達される手筈となっていた。

89式改の管制ユニットの中で、上総は静かにそれを聞いている。

 

『中尉。』

 

待機している彼女に、智恵子から通信が入った。

 

『マナンダル少尉は、中尉とリーバー少尉を相手にあそこまで粘った相手です。それに加えて、もう1人の相手は私が1本取られた相手、ドーゥル中尉です。』

 

冷静な声で、上総へという智恵子。

 

『ご注意を。ACTVの機体性能は、まだ未知な部分が多いです。互いにまだ未完成とはいえ、油断すれば経験の差から―————』

 

「・・・少尉。それは、万が一にでも私たちが負けると言いたいのでしょうか?」

 

『いえ、それは・・・』

 

智恵子の心配は尤もであるが、上総は負ける気などは毛頭なかった。

 

「私は大丈夫です。それに、これからが始まりです。」

 

やがて、戦闘開始まで僅かとなる。

彼女は、戦闘前にタリサに言われたことを思い出していた。

「あたしのアクティブと、あんたのアジャイル。どっちが強いか、白黒つけようぜ」と。

 

「私はここで、何をなせばいいの・・・?」

 

さっきは強気なことを言った彼女であったが、それでも不安はある。

なにせ、知らない土地にきて、知らない人間と、初めての経験ばかりだ。

 

『時間です、中尉。』

 

「了解。勝つわよ、少尉!」

 

『ウルズ10、了解。』

 

そして、鷲同士による戦いの火蓋が切って落とされた。




はい、というわけで実質のTE編第1話です。
原作本編開始時点だと、イブラヒムの旦那は既に指揮を執る方に回ってて、その前のことを描いてるのって「英雄」って呼ばれた時の話くらいしか僕は確認できてないんですよね…。
なので、勝手に「タリサ以上の実力のすっげぇ強いパイロット」って感じに思ってます。
次回はどういう展開になることやら(棒読み)
因みにですが、実力としてはウルズ組ではリーバー≧智恵子>PJ≒上総くらいに考えていますが、明確な実力配分みたいなのってできてないんですよね。
例えばタリサ≦智恵子、リーバーだったり、イブラヒム>リーバーだったりとか、色々難しい。
あ、因みにキャラチョイスに関しては、ウルズの男性陣に関しては両方共考えた時点では考えてました。
あ、違う?そうじゃない?
そ、そそそ、そんなこと言わないで…!
長引くとアレなので、後書きはここまでで。

ではでは次は、(勝手な)恒例の予告ターイム!(ジオウ風)

ーーーーーくそ!機動でこのアタシが負ける!?

ーーーーー獲物を前に舌舐めずりとは、3流のやる事だな。

ーーーーーこういう時は、身を隠すべきね・・・!

ーーーーー最初から黒星つけられたら、親友に・・・唯依に顔向けできないのよ!

次回「鷲対鷲」

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