Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手 作:マインドシーカー
3ヶ月ぶりくらいの投稿。
はい。今回は前回に引き続いてのお話の決着編(?)。
年末年始いろいろあって忙しかった上になんども書き直してこれなのでまたしても不完全燃焼感(
正直まとまりきらなかったので説明で誤魔化した感、すごくあります。
ではではどうぞ。
イメージOPは「快晴・上昇・ハレルーヤ(遊戯王GX主題歌)」
2000年、アメリカ合衆国・アラスカ州。
その場所にあるのが、ユーコン陸軍基地である。
広大な土地にあるその基地は、1つの巨大な都市とも言える規模を持つ。
テストサイト18、第二演習区画。
E-102 演習場と呼ばれるその場所では今、2つの部隊の試験機同士による模擬戦闘訓練が行われていた。
アルゴス試験小隊のF-15 ACTV「アクティブイーグル」。
ウルズ隊のF-15S/MTD「アジャイルイーグル」、もとい89式戦術歩行戦闘機改。
双方2機ずつによる模擬戦は、対人戦闘を意識した2機1個小隊編成による編成で行われている。
森の中の木々のようにいくつも起立しているビル群。
市街地を模した地形をした演習場は、このユーコン陸軍基地にいくつもある演習区画の1つだ。
この場所では今、鷲の系譜同士による戦いが繰り広げられていた。
(イメージ挿入歌:NO PLACE LIKE A STAGE)
銃撃音。
ビル型の障害物に、ペイント弾が着弾すると中の塗料が撒き散らされてビルの側面を黄色に染め上げる。
「この!チョコマカと・・・!」
管制ユニット内で、悪態をついたのはアルゴス試験小隊のうら若き試験衛士の1人であるタリサ・マナンダル少尉だ。
標的に弾丸が命中しない事に腹を立て、悪態をつく。
『マナンダル少尉。お前の戦闘中での私語は今に始まった事ではないので咎めるつもりはないが、もう少し落ち着け。』
通信機越しに聞こえてきたのは、彼女の上司にあたる部隊長の声だ。
「まるでハエみたいに動き回りやがる・・・!こいつ、本当に
『事前の説明以外の情報はないのが現状だ、少尉。無駄口を叩く暇があるのであれば、各個撃破を最優先として動く。これが最小単位での戦闘の基本だ。面倒ならば、どちらか片方を突き崩せばいい。』
悪態をついて苛立つタリサを嗜めるように声を発しているのは、アルゴス01のコールサインを持つイブラヒム・ドーゥル中尉であった。
『いつも通りだ。やれるな、アルゴス02?』
「アルゴス02、了解ィ!」
威勢よく、タリサはイブラヒムの言葉にそう返した。
アルゴス試験小隊。
彼らが駆るのは、F-15E直径のカスタム機であるF-15ACTV、通称「アクティブ」と呼ばれる戦術機だ。
今現在、彼らアルゴス試験小隊は、日本の国連軍・横浜基地より派遣されてきた部隊であるウルズ隊と、技術交流を主な目的として、同じ計画において「F-15Eの前身ともいえるF-15C系統の日本向け仕様であるF-15Jのさらなる改修機」という複雑な経緯で開発された試作機と模擬戦を行なっていた。
演習エリア外周。
その場所で、模擬戦の風景を眺めているのは、両隊において3戦目ではカードに組まれなかった、所謂「あぶれ組」だ。
その中の1人、アルゴス試験小隊所属のヴァレリオ・ジアコーザ少尉は、戦術機のカメラ越しに見えるウルズ隊側の試作機ーーーーーF-15S/MTD、ウルズ隊側では日本のType-89になぞって「89式改」と呼ばれる機体の動きを観察していた。
「ヒュー。それにしても凄いねぇ、あの機体は。どうやったら、
口笛を吹きながら、機体を眺めるヴァレリオ。
『正確には、その日本向け仕様であり、米軍の用途とは真逆、つまりは集団ではなく「個」としての戦闘力を高めて近接戦に特化しているF-15J。
模擬戦の様子を眺めるヴァレリオの発言を、訂正するようにして言葉を発したのは同じ隊のメンバーであるステラ・ブレーメルだ。
「よくは知らないが、つってもイーグル直系とはいえストライクよりかは型落ちだろう?いくら同系統の機体とはいえーーーーー」
『こっちの技術者に聞いた話じゃ、別物と言っていいくらいには違うらしいぞ、
口を挟むようにして、会話に割り込む人間が1人。
ウルズ04のコールサインを持つフレッド・リーパーだ。
『自分もそう聞きましたね。外見は同じでも、ほぼ別物である、と。』
更に会話に入ってきたのはウルズ12のコールサインを持つパトリック・ジェームス、通称PJだ。
「んん。お二人さんとも、意外とフレンドリーなようで助かるぜ?まあ、この先長い時間を共にするんだ。精々仲良くしてもらえると嬉しいぜ?」
和んできた雰囲気を見て、ヴァレリオはそう3人へと言う。
『そうね。ギスギスするよりかは、こっちの方がいいわ?』
『自分も同意見です。』
『・・・・・俺はどっちでもいいがね。』
「最後の1人は協調性が薄いなぁ。今夜はリルフォートで飲み決定かぁこいつは?」
軽口を叩きあう4人の様子とは裏原に、模擬戦は急激に展開の様相を変えていく。
ユーコン基地内、管制室。
基地内において幾つか設置された、各国試験部隊の演習をモニターする場所。
アルゴス試験小隊、そしてウルズ隊における演習プログラムは、この場所で管制されている。
状況をモニターしている大型のモニターには、現在E-102演習場で行われているアルゴス小隊とウルズ隊の模擬戦の様子が映し出されていた。
「・・・・・」
それを、CP以外に眺める人間が1人。
その人物は白髪をオールバックにし、眼鏡をかけている壮年の男性であった。
ボーニング社、戦術機開発部門の重役であるフランク・ハイネマンだ。
彼は、フェニックス構想においてF-15E改修案であるF-15ACTVの開発者であり、現在はフェニックス構想における技術主任を務めている。
眼鏡越しにモニターを見つめる彼は、ACTVではなくもう片方の部隊の機体—————89式改を注視していた。
「あの、イーグルの改修機・・・実に興味深いものですね。」
誰に聞こえるでもない、そんな独り言をつぶやく。
彼の眼光はじっと89式改を捉えて離さなかった。
模擬戦は思わぬ方向性を持って、展開していた。
機体の性能としては大幅に上回る89式改ではあるが、一定のハンディというのを背負っている状況だ。
故に、その前の模擬戦でも勝ち越しきれなかった。
今回もその例に漏れず、技量では智恵子に劣ってしまう上総が、集中的に狙われた。
変態的な3次元軌道を繰り返そうと、ウルズはほぼこの日が初めての模擬戦闘(アラスカ基地における)、アルゴスは勝手知ったるこの場所での戦闘という差。
更には、天性の才能を持つタリサと歴戦の猛者であるイブラヒム。
埋めようのない経験の差は、いくら機体の性能がよかろうと上総に対して牙を剥いていた。
『中尉!』
「わかっていますわ!」
射撃、射撃、射撃。
何度も繰り返されるその行動に、段々と集中力をすり減らされていく。
「く、やはり私を狙ってくるのね・・・!」
半ば独り言、半ば愚痴。
結局は独り言ではあるが、智恵子のフォローをもってしても執拗に追ってくるアクティブを振り切れないままに消耗戦に持ち込まれてしまい、体力と技量的に最も低い自分自身の未熟さを認識させられてしまうことにより更に苛立ちと焦りが増していく。
『ここらで決めさせてもらうぜ、インペリアルのお姫様ぁ!』
通信制限、もとい敵同士での通信が禁止されている中での相手側からの声。
『その鼻っ面へし折ってやるよ!』
「言ってくれますわね!」
急激な加速。
密集したビル群の中では、地形がわかっていなければ自殺行為だ。
『スモーク!』
『遅ぇ!』
こちらの射撃を回避しての突撃。
智恵子の乗る89式改が煙幕を展開するが、彼女の煙幕展開を置き去りにして、上総の89式改にタリサのACTVが急接近する。
右手には短刀。
「やらせませんわ!」
抜刀。
敵の勢いを利用して、切り捨てる。
しかしそれは、相手にとって予想済みの行動だったようだ。
『どうせそんなこったろうと思ったよ!』
機体のバランスをわざと崩すことで、ACTVは上総機の横凪ぎの一撃を回避した。
そしてまるでスケートリンク上の選手のように流麗な動きで機体姿勢を矢継ぎ早に変えていく。
それは、ACTVが機体各部に備え付けられた噴射口を最大限に活かすことで可能となった機動であった。
『まだ未完成だけどよ!グルカ族直伝のナイフの切れ味、その身で-----』
「・・・ふふ。獲物の前で舌舐めずりみたいな真似は、3流のやる事だって教わらなかった?」
しかし、89式改の機動はその上を行った。
『な、ぁ・・・!?くそ・・・!機動でこのアタシが負ける!?』
咄嗟の機動。
相手の軸線を避け、自身のレンジ内に引き込んで上段から引き抜いた中刀を胴体目掛けて突き出す。
「試製99式中刀。取り回しに加えて、刺突武器まで兼ね備えてるっていうのは、想定の範囲外だったみたいね?」
ブレードトンファー。
トンファーと剣を組み合わせたのがこの試製99式中刀だ。
故に、持ち手の反対側、つまり柄になる部分は少し突き出ていて、その部位にはそれなりの強度が持たされており、緊急時の接近戦に対応可能な「刺突」武器としての役割を持つ。
『が、ぁ・・・!?』
タリサの急襲、そして智恵子の援護、そこへのイブラヒムの横槍、上総の反撃。
わずかな間に起きた出来事は、アルゴス側に対してマイナスに働いてしまった。
同時に、一部の隠し球を晒す羽目にもなった。
「最初から黒星つけられたら、親友に・・・唯依に顔向けできないのよ!」
僅かな隙を見て、正面と側面からペイント弾で蜂の巣にされるタリサ機。
『チ、ックショォォォ・・・!』
タリサの乗るACTVは力なく地面へと落下していった。
『アルゴス2、胸部管制ユニットへの致命的損傷を確認。撃墜判定とします。』
オペレーターの無情な一言が、タリサの耳に届いた。
以降の戦闘は、意外と言うべきか、1機になったことでウルズ側が苦戦することになった。
1機が欠けたことにより、イブラヒムはそれまでのエレメントでの戦法から一点、更に消耗させるべく地形を利用してのゲリラ戦に移行した。
無駄な努力と言われればそれまでだが、一応は勝負だ。
投げ出す気など最初からなかったイブラヒムの戦法は、見事に2人に突き刺さる。
元々機体慣れしきれていない2人に対して、地形でも機体の慣熟度に関しても、なにより戦闘経験でも上をゆくイブラヒムは、全てが初見であればこそ可能な戦術をぶつけ、先に僚機が撃墜判定を受けながらも状況をイーブンに持っていった。
この時点で、ある意味ではウルズ側の敗北とも言えよう。
『こういう時は、身を隠すんだ。』
『な・・・!?』
経験の浅い上総を市街地でのゲリラ戦に引き摺り込み、ビルを利用して行動不能に追い込んだ上で智恵子の89式改と一騎討ちに。
そこは、性能の差が物を言い、智恵子がイブラヒムを徐々に追い込み最後の最後に銃弾が管制ユニットにかすったことで致命的判定とみなされ、模擬戦は終了した。
こうして、鷲対鷲による戦いは、ウルズ隊側が勝ち越す形で幕を下ろした。
しかし結果としては、試合内容という意味では引き分けに近い形であるのは事実なのは明白。
模擬戦後は各部隊のハンガーに機体を格納し、模擬戦終了後に一度デブリーフィングを行ったあとは模擬戦参加者全員が報告書を作成し、提出する運びとなった。
「どうぞ。」
こんこん、という音が聞こえる。
老人はその音に反応するとそう返し、2人の人間を部屋へと招き入れた。
「アルゴス試験小隊、イブラヒム・ドーゥル中尉ならびに」
「ウルズ隊、山城上総中尉両名、ただいま到着しました。」
招かれたのは今名乗った2人。
呼び出したのは、
「いやぁ、すまないね。2人とも忙しいだろうけれど、少し話をしたいと思ってね。」
フェニックス構想。
この構想においてACTVを設計し、横浜が開発した89式改に興味津々と言った様子の技術主任兼開発主任であり、スポンサー側の人間、フランク・ハイネマン氏であった。
「まずはドーゥル中尉。ご苦労様だったね。パイロットが未熟ではあるけれど、あそこまでACTVを使いこなしていることに感服したよ。短い期間でよくあそこまで仕上げてくれたね。」
人間嫌いで知られる彼が人を褒めるのを不審に思うイブラヒムではあったが、賛辞の言葉を素直に飲み込む。
「続いて君たちウルズ…つまりはヨコハマ製のイーグル改修機。あれはどのような技術が使われているのかい?とても興味深い部分が沢山あって、年齢不相応に僕は今とても興奮しているよ。」
表情が読めない。
上総は素直に、ハイネマンを見てそう印象付けた。
「・・・お言葉ですが。」
「なんだい?」
「私は一介の開発衛士です。確かに開発主任の任を与えられておりますが、あの機体はまだ開発途上の機体です。技術共有を目的にしている以上は情報の開示は順次行なっていく所存ですが、今お答えすることは・・・」
上総がそう言うと、ハイネマンは「ははは」と笑みを浮かべながら「誤解をさせてしまったようだね」と言って、努めて優しい口調で2人に話し始める。
「今日はなんと言っても顔合わせの日だ。そういう意味でも、一度はこういう場を設けたいと思って君たちを呼んだだけだよ。特に他意があるわけではないから、そこまで深く考えないで欲しいな?」
ハイネマンはそう、2人に言った。
暫くして会話を交わすと、2人は部屋を退出してハイネマンだけが部屋に残される。
「・・・これは思った以上に、面白いことになりそうだね。」
自分のデスクに座ると、その上にある1つの書類に視線を向けながらハイネマンはそう独り言を漏らした。
その書類の題名はこう記されていた。
-----XFJ計画、と。
リルフォート。
このアラスカ基地において、娯楽施設をふんだんに詰め込んだ小さな町だ。
遠くから、というよりかは某国の集合体に等しいこのアラスカにいる人間たちにとっては、唯一の癒しや憩いの場と言っていい場所である。
この一角に、このバー「Polester」はある。
「んじゃまあ、アルゴスとウルズ。2つの小隊の今後の繁栄を願って、乾杯と洒落込みましょうかね?」
バーの一角の席に陣取った7人。
右から順に、ヴァレリオ、タリサ、PJ、リーパー、ステラ、智恵子。
「・・・なぜ私がここに。」
そして、この世の終わりのような顔をしている上総を含めた面々が、円形に机を囲んで並んで座っていた。
「まあ、中尉。そんなに肩肘張らないで、ね?」
ステラと智恵子の間に座る形になっている上総を、ステラが嗜める。
「大丈夫ですよ、少尉。歓迎会といっても、先ほどVG少尉が言っていたように、軽いものすから。」
「そうそう。だからあんまし気を張らないでパーッといきましょう?ね、ちゅーい。」
VGがにかっと笑みを浮かべて上総に言う。
「お前のそういうところ、なんか胡散くせー。気を付けろよな、インペリアルのお姫様。こいつすぐに手を出してくっからよー。」
そこへすかさずタリサが横槍を入れた。
「しかしそれにしても、マナンダル少尉はとても物分かりが良いのですね。模擬戦前はあれほど・・・・・」
「あ?」
PJが余計なことを言ったせいで一触即発。
隣のリーパーはすぐ様他人のような表情で視線を逸らす。
「まあまあとりあえず仲良く行こうや。ナタリー、全員分の酒はどうだー?」
「あ、あの!」
全員分の酒を頼もうとしたところで、上総が声を上げた。
「・・・・・私、その・・・まだ、お酒を飲める、年齢ではないの、ですわ。」
小さな声で言った言葉。
外見相応の年齢の彼女は、まだ20代に達しておらず、一応は成人していない。
そしてさらにはお堅い帝国斯衛軍だ。
「ああ・・・じゃあ、上品にオレンジジュースでもいっておくか?」
微妙な空気を察したのか、フォローするようにリーパーがそう言った。
余談だが、男勢のためPJは酒から逃れられなかった。(別に成人していないわけではない)
「さて。それじゃあみんなに飲み物は行き渡ったかい?」
幹事のようなポジションで司会を務めるヴァレリオが全員にグラスが行き渡ったことを確認すると宣言する。
「それじゃあ、両隊の今後の繁栄と計画の完遂を祈願して-----乾杯!」
乾杯、と全員が言うと、ぶつかり合ったグラスから軽快な音が鳴り響いた。
はい。お送りいたしましたTE本編前編第二話。
本編でもあったユウヤの歓迎戦に該当する部位になります。
勿論TE編やるにあたって本編ベースに話は進めますが、そこまで持っていくのが至難の技。
さて、どう進めていきましょうかね!()
ではでは、次の話も楽しみにして頂けると幸いです!