Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手 作:マインドシーカー
オルタネイティブへとつながるお話の第一歩の締めくくり。
今回のイメージOPは鉄血のオルフェンズからFighterなんていかがでしょう?
止まるんじゃねえぞ。
ヨーロッパでは誰しもが見てきた地獄。
それが、日本でも起きている。
それだけのことだ。
しかして、千年の都はそれでも美しかった。
地獄の業火に焼かれながらも、その姿は未だ持って美しかった。
〜1998年8月14日2220、京都八坂祇園付近〜
千年の歴史を誇った、帝都・京都。
空にはどこまでも闇が広がり、眼前の帝都は、紅蓮の炎に包まれている。
炎は、その灯りをもって闇夜を焦がし、低く垂れ込めた重金属雲を鈍く照らし出していた。
そして、足元でまた一つ火の粉が爆ぜ、そこに立つ巨人を照らし出す。
第16大隊に所属する、赤の斯衛たる月詠真耶。
彼女の乗る戦術機―――――赤色の瑞鶴を、更に赤々と染め上げた。
「確実に抑えよ!まだ、“ここ”を抜かせるわけにはいかぬ!」
彼女は、僚機に乗る斯衛の衛士を叱咤しながら、その類稀なる操縦センスを活かして瑞鶴を操る。
その手に持った突撃砲のトリガーを引き、残り少なくなった36mm砲弾は突撃砲の銃口から発射される。
放たれた弾丸は的確に敵へと叩き込まれ、蜂の巣にした。
彼女の脳裏に、訓練生時代に座学で聞いた言葉が浮かぶ。
“BETAは火砲を用いない“
それは同時に、眼前の帝都を燃やしているのは、BETAからこの場所を護らんとした人類の手によって撃ち込まれた炸薬によるものだという現実を、否が応でも突き付けてきた。
本来ならば、皇帝を守り、将軍を護り、何より民の盾となるべき兵器が、帝国軍が、自らの手でBETAに先んじて、この帝都を灰燼に帰さんとしている。
これほどの皮肉があるだろうか?
「(許せ、帝都よ・・・。我らはそれでもなお、民を護らねばならぬのだ・・・!)」
彼女は、燃え盛る帝都を視界に捉えながら、愛機と共に駆ける。
1998年7月初頭。
ここから始まった本土防衛戦。
初め、この戦いは帝国軍側有利に事が進んでいた。しかし、BETAは海に四方を囲まれている日本本土に対して、西日本におけるいくつもの沿岸部から同時に上陸することで、帝国軍の防衛プランを一気に瓦解させた。
話は横道に逸れるが、人類同士での戦争でも同じことであったが、日本という国は武装や兵士の練度は高くとも、その数が圧倒的に少ない。
戦争というのは、常に練度が高い人間が真っ先に矢面に立ち、すり減らされていくものだ。
それが人類同士の戦争であれば、多少の誤魔化しは効くが、BETA相手ではそうはいかない。
瓦解した戦線は修復することが出来ず、BETAの大群は、上陸から僅か一週間で帝都・京都目前にまで、その牙を突き立てた。
以来一ヶ月に及んだ京都防衛戦。
それが今宵、最終局面を最悪の幕切れで迎えようとしている。
前日に舞鶴港が陥落した時点で、京都の山陰側の守りは潰えたも同然だった。
帝都市街の狭き西門となる亀岡盆地からのBETA侵入を少なからず削っていた亀岡周囲山中の砲兵・戦術機甲部隊も遂に壊滅し、決壊したダムから流れ出た激流と同じ原理で、BETAの大群はいとも簡単に最終防衛戦を食い破り、ここに敗北は決定した。
放棄が決定された帝都市街地に、琵琶湖の米太平洋艦隊所属の第七艦隊と、大阪湾に展開する帝国海軍の連合艦隊艦艇群から砲撃が行われる。
京都は、人類の手によって灰燼へと帰した。
轟音が鳴り響き、京都の街を包む炎の勢いが強くなる。
その中で蠢く異形の集団―――――BETA。
その前に、14機の戦術機―――――瑞鶴が陣形を組んで立ちはだかる。跳躍ユニットの噴射音を轟かせ、数機が地面へ着地した。
その中の1機、赤の瑞鶴に乗る月詠真耶の視線の先にある光景は、彼女に誰もが考えてしまうような|最期(おわり)を連想させた。
「これで、この忌々しい演目も、幕切れとなれば良いがな・・・!」
彼女はそう口にしながら、眼前に迫る突撃級の攻撃を、巧みな操縦技術で回避する。
すぐ横を通り過ぎる突撃級の外郭を一瞥。
直後、一瞬で背後へ回り込むと、残された最後の120mm弾を、返す刀で放ちながら後退する。
網膜投影越しに、血飛沫をあげて前のめりに地面へとめり込み絶命する突撃級の姿が映り込んだ。
そうして、彼女の瑞鶴は低噴射跳躍を駆使し、残った補給コンテナの横に着地する。
「02弾倉交換!援護を頼む!」
『了解!』
残弾は残り少ない。
そして同時に、補給コンテナもここにある数個を除いてもうくることはない。
残り少ない弾薬を補給するため、空の弾倉を外して突撃砲に新たな弾倉を込め、戦列に戻る。
「く...!」
『少尉、そろそろ来るぞ!』
階級としては上である僚機から、通信が入る。
そして次の瞬間、後方から特徴的な甲高い風切り音が闇を貫き、一瞬の後に轟く爆裂音が紅蓮の炎の勢いを加速させた。
それは―――――
「やってくれるな...!」
米軍の第103戦術歩行連隊から放たれた誘導ミサイル、
同時刻。
撤退を命じられた米軍。
しかし、撤退命令が出たにも関わらず、琵琶湖に展開する第七艦隊は攻撃態勢に入っていた。
『
『全機、配置につきました!』
甲板上に配置された、米
それが、その肩に装備した|AIM-54(フェニックス)を構える。
『―――――
号令と同時に、7機のトムキャットから
「BETA共の攻勢、やはり防ぎきれぬか・・・!」
この戦いにおいて、殿を任された日本帝国斯衛軍第16大隊の大隊指揮官である青の斯衛の青年、斑鳩は、苦い表情を浮かべながら戦場に身を置いていた。
部下や、臨時的に我が部隊へ編入となった月詠真耶らと同じ機体である青の瑞鶴に乗って。
ホーンド01のコールサインを持つ彼は、瑞鶴を駆りBETAの侵攻を防ぐべく、斯衛の同士と共に戦場を駆ける。
『閣下、第96砲兵大隊の離脱を確認。頃合に御座います。御下知を!』
傍らの赤き瑞鶴から通信が入った。
「(―――――我が役目は、ここに留まり死することにあらず。)」
彼は決意を胸に、敢えて全員に聞こえるようにオープンチャンネルで真耶へと問いかけた。
「―――――うむ。月詠、そなたの意見に変わりはないな?」
彼の問いに、彼女は強い意思を込めた言葉で答える。
『ございません、閣下。我らは帝国の守護者、この「瑞鶴」は全ての臣民を守る為の「刃」に御座います。民に生き恥を晒して尚、我らは生き延びて、戦い続けねばなりません』
この会話は、ここにいる全隊に聞かせるためのものだ。
一部には、かつての「大日本帝国」時代の「生きて虜囚の辱めを受けず」という古き風習に則り「玉砕」をもって是とする空気もあったが、今この場に斑鳩を含めその考えを持つ者は誰もいない。
皆が、生き恥を晒してでも尚、生きて戦い続けるという決意を胸に戦っているからだ。
いつの日か必ず、蹂躙された祖国の、故郷の地を取り戻す。
そしてこの地球上から、異星起源種供を駆逐するために。
「―――――然り。我ら摂家の不始末にて迷惑を掛ける、この罪はいずれ問われよう。されば月詠、全隊に通達せよ。」
凛とした声で、斑鳩は告げる。
「
『はっ!』
彼の声が戦場に響く。
「ならばゆくぞ。全機抜剣!」
号令と同時に、瑞鶴14機が一斉に長刀を引き抜いた。
そして、青の瑞鶴が、長刀の切っ先をBETAの大群へと向けて叫ぶ。
「皆の者、これが最後の攻勢ぞ!殿を預かる我が斯衛の戦い―――――」
―――――この千年の都に刻みつけてゆけぃ!
『『『『御意ッ!!』』』』
轟音轟かせ、帝国近衛軍第16大隊の瑞鶴14機による最後の攻撃が開始された。
〜第16大隊の突撃から数分後〜
炎に包まれた京都市街地から少し離れた場所にある山間部。
その中に、身を潜めている存在がいた。
光学迷彩で身を潜めているのは、GN-002「ガンダムデュナメス」
それに乗るパイロットであるロックオン・ストラトスは、現状がどうなっているかをリアルタイムで把握するべく、情報の精査と統合を行なっていた。
放棄が決定した京都。
京都を守っていた帝国軍と斯衛軍の部隊は戦力をすり減らしながらも、なんとか持ちこたえていたが、ついに撤退を決定したようだ。京都の防衛に当たっていた帝国軍・斯衛軍所属の部隊は大半が後方へと下がったようだ。
今現在戦域データ上で確認した限りでは、近場で動き回る反応が複数。一定のラインを保ちながら、14個の光点が正面から迫る波を削っては下がっているのがわかる。
ロックオンは、機体の光学迷彩を解除し、漆黒の闇の中にデュナメスの姿が浮かび上がった。
「ハロ。システムを隠密行動モードから戦闘モードへ移行しろ。引き続き、化け物供を紛争幇助対象として武力介入を行う」
『了解!了解!』
操縦桿を動かし、機体を漆黒の空へ飛翔させる。
一定の高度を保ちながら浮遊するデュナメスは、マニュピレーターを動かし、右肩に懸架されたGNスナイパーライフルを掴む。
ロックオンはコクピット上部に格納されたライフル型コントローラーを下ろして構える。
同じように、デュナメスも狙撃の構えをとった。
ロックオンとデュナメスが、引き金に指を駆ける。
緑色のレティクルが表示され、瞳に醜悪な外見のBETAが映り込んだ。
レティクルの十字カーソルがそれをロックオンし、十字カーソルの表示が緑から赤へと変わる。
「いくぜハロ。デュナメス、目標を狙い撃つ!!」
トリガーが引かれ、GNスナイパーライフルの銃口から粒子ビームが放たれた。
戦場を、青の瑞鶴が駆け抜ける。
長刀を腰だめに構え、迫る要撃級を横一文字に薙ぎ払った。
血飛沫をあげて要撃級が崩れ落ちる。
「ホーンド01よりホーンド各機へ。このラインを維持しつつ、敵陣陣形を食い破る。後に、奴らの後方に控えている
『『『『御意!』』』』
斑鳩が大隊各機へ指示を出す。
そして、大群へと突進した14機の瑞鶴が、立ちはだかる要撃級・突撃級・戦車級を蹴散らして光線級の群れへ迫った。
直後。
醜悪な集団が左右へと分かれる。
ーーーーー光線級によるレーザー照射の予兆。
直後に、管制ユニット内でレーザー警報が鳴り響き、網膜投影には「レーザー警報」文字が表示される。
『閣下!レーザー照射が来ます!』
「わかっている!」
斑鳩は各自に通達し、タイミングを図る。
次の瞬間、視線の先が光った。
「全機、乱数回避!!」
斑鳩の号令と同時に、瑞鶴14機が各々で跳躍ユニットを点火し、散開した。
彼の号令は、正に絶妙のタイミングだった。
全機が回避成功し、BETA自身が作ってくれた道を駆ける。
ここにきて、勝利の女神は人類側に微笑んだ―――――
「よし、全軍このまま―――――」
かのように見えた。
『閣下ァ!』
月詠真耶の声が叫んだ。
斑鳩の耳元で警報が鳴り響く。
-----それは、斑鳩の乗る瑞鶴の跳躍ユニットが限界を迎えたことを告げるもの。
網膜投影越しに見える機体の現状。そこで、跳躍ユニットを示す部分が白から黄色に、やがて赤の表示へと変わり、同時に限界を迎えた事を示す「ALERT」の文字が踊る。
「-----っ・・・!こんな時に・・・・!」
そして次の瞬間、跳躍ユニットがスパークし、直後に小さな爆発が起こる。
「ぐっ・・・!」
黒煙が所々から登り、小さな火が残った燃料に引火したことで誘爆が起こり、跳躍ユニットが大破した。
たった数秒間の出来事だった。
爆発寸前に跳躍ユニットを排除する暇はなく、爆発の衝撃で管制ユニット内を大きな振動が襲い、次いで、空中でバランスを崩した瑞鶴が前のめりに地面へと叩きつけられる。
『閣下、ご無事で・・・!?』
斑鳩の耳に、月詠の悲鳴に似た声が聞こえた。墜落した形で倒れ込んだ瑞鶴の巨体を立ち上がらせようとする。
『閣下、逃げてください!
斑鳩が機体の態勢を急いで立て直そうとしているところに、突撃級の衝角が襲いかかった。
「ぐああぁ!!」
再びの衝撃に管制ユニット内で彼の体が揺さぶられ、瑞鶴の巨体が投げ飛ばされる。
そして次に網膜投影越しに確認できた機体状況は、控えめに言っても中破。
直後、復帰したカメラ越しに映った夜空を、要撃級がブラインドした。
突撃級の横から現れ、斑鳩の乗る青の瑞鶴にトドメを刺すべく前腕を振り上げている状態で。
―――――殺られる・・・!
痛みを堪えながら、斑鳩はそれでも機体を動かそうとする。まだ自分は、死ぬわけにはいかない。
だがしかし、無慈悲な死神の鎌が、容赦無く瑞鶴めがけて振り下ろされた―――――
『な・・・!?』
筈だった。
「・・・・・?」
死の衝撃はいつまでたっても訪れない。
音声が、何かが倒れる音を拾う。
見れば、こちらへ腕を振り下ろそうとしていた要撃級が崩れ落ちていた。
何者かによって要撃級が絶命したのだ。
次いで、桃色の閃光が斑鳩へと接近していた突撃級二体の外郭ごと胴体をを貫いた。
斑鳩機を助けた、別方向からの攻撃。
それは、ロックオン・ストラトスの乗る、ガンダムデュナメスが持っているGNスナイパーライフルから放たれた粒子ビームだった。
「ハロ!あの機体を助けるぞ!」
ハロに、青い瑞鶴をマーキングさせると、つづけざまに粒子ビームを発射する。
彼は、青の瑞鶴を破壊しようとしていた数体の化け物を行動不能にしたことを確認し、ハロへ指示をだした。
「援護する!」
『了解!了解!』
「邪魔だてめえら!」
彼は、レティクルに捉えた突撃級の1体を狙撃する。
撃たれたのは、更に青い瑞鶴へ距離を詰めていた突撃級だった。
そして、すぐさま目標を次に切り替え、トリガーを引く。
「早くフォローしてやれ・・・!」
スコープ越しに見える戦場の景色。
倒れた青い瑞鶴に、赤い瑞鶴が近づいていく。
その方向へ殺到するBETA群。
周囲の白の瑞鶴が、赤の瑞鶴と動けない青の瑞鶴のフォローに入るが、BETAの陣形はその部隊を包囲しつつあった。
『ロックオン!ロックオン!』
「これじゃあ全滅だ・・・!わかってる、援護するぞ!」
ロックオンは、更に援護射撃を行う。
「接近戦をかける!ハロ、サポート頼むぜ?」
『了解!了解!』
バーニア噴射。
青い瑞鶴を取り囲むように援護射撃をしている瑞鶴数機に群がろうとする小型種を蹴散らす。
そして、倒れて未だ動くことができていない青の瑞鶴と赤の瑞鶴の前にデュナメスを躍り出させ、着地させた。
『な・・・!?』
ハロが音声を拾い、ヘルメット内蔵のヘッドセット越しにノイズ混じりの女の声が聞こえた。
正面から迫る小型種を移動しながら引き抜いたGNビームピストルで迎撃しながら、ロックオンはすぐさま、通信を有視界から外部スピーカへと切り替える。
「聞こえるか、そこの機体!」
彼がそう問うと、数秒して返事が返ってくる。
相手も外部スピーカに切り替えたようだ。
『な、なんだ貴様は!?援軍など聞いて―――――』
恐らく赤い方の機体だろうか、外部スピーカで突然現れた謎の機体に対する敵意に満ちた声を向けてくる。
それはそうだ。こんな状況で謎の機体が単機で戦闘に割り込んできたら、誰しもそういう対応をする。
『・・・救援、大義である。』
それを、年若い男性の声が遮った。
恐らくは、損傷した方の機体のパイロットの声だろう。
『か、閣下!?』
『良い、月詠。状況が状況だ。』
「(閣下・・・?)とりあえず、無事ではあるんだな?なら、あんた達は直ぐに撤退しろ。」
ロックオンは考えた。
「閣下」と呼ばれているということは、部隊指揮官か、或いはそれ以上の階級の人間なのだろう。
しかし、前線に将官クラスの軍人はあまり出てくるはずはないが・・・。
ましてやこのような「最前線」に出張ってくるのは、普通ではありえない。
だが、必ず「例外」というものは存在する。ロックオンは、状況を鑑みて閣下と呼ばれた指揮官に撤退するよう促す。
男の乗る機体は、どの道長く戦う事は出来ない。
『・・・・・』
「さっき、後方に下がった部隊の通信を傍受した。あんたら、殿なんだろう?なら、そこまで無理をする必要はないさ。」
武力介入する前にハロが拾ったここの軍の通信記録と、簡単な戦域情報。
そこから察するに、彼らの役目は時間稼ぎを目的とした殿であり、役目は終わってる筈なのをロックオンは察していた。
『―――――そうだ。』
「なら、即座に後退することをお勧めするよ。」
『・・・そうだな。それと一つ、先ほど一度遮った質問の続きを聞こう。』
―――――貴官は何者だ?
当然の問いだった。
「・・・・・」
『それに、私は貴官が使用している兵器を見た事がない。』
「―――――悪いが、今はそんな事言ってる場合じゃないだろう?」
彼は、自分へのこれ以上の追求を避けるために話を逸らしにかかる。
なにより、現状ではその問答をしている余裕はお互いにないだろう。
「こっちに、敵対の意思はない。撤退援護のために割り込んだわけだが…水を差しちまったかい?」
彼は答えをワザとはぐらかすように言う。
『・・・了解した。』
納得がいかない様子だが、とりあえずはと男は了承した。
「・・・やけにあっさりと納得してくれたな?」
彼にとっては助かる反面、拍子抜け、という感覚だ。
『それでも、貴官が私を助けてくれた事に変わりはないし、なにより貴官の言うことは正しい。』
彼は、ロックオンに対してそう返した。
『腑に落ちない点、納得がいかない点は多くあるが、まずはこの状況を打破するのが先だ。』
そうして言葉を続ける。
『・・・だが、戦闘終了後には我々に同行してもらうぞ?』
そして、最後に釘を刺す。
当然と言えば、当然の主張だった。
そろそろ、未知の場所での孤軍奮闘に限界を感じていたロックオンは、その条件を飲む。
「了解だ。」
『月詠!全機へ通達せよ。直ちにに撤退せよとな。』
男は、部下である赤い機体の女性パイロットに命令を出した。
『後を頼む。』
赤い機体と白い機体が青い機体を支えながら浮かび上がると、スラスターユニットを噴射させ、後退していく。
しかし、損傷機を抱えているため、他の機体達よりも移動速度が遅い。
そしてそれを追うように、要撃級と戦車級、突撃級の一団が動き出す。
「デュナメス、撤退支援を行う!」
『了解!了解!』
そして、彼はその大軍の横を並走するようにして追っていく。
大群の真横からGNスナイパーライフルで、戦車級数十体を撃ち抜いて蹴散らした。
吹き飛ばされる戦車級の骸を避けるように方向を変えながら前進を止めない要撃級や突撃級。
それへさらに粒子ビームを連続で叩き込むことで、進行速度の遅滞を図る。
「ハロ、トランザムは!?」
『圧縮粒子充填中!圧縮粒子充填中!』
「トランザムは無理か・・・」
この状況を即座に打破する1番の方法はトランザムによる強行突破だが、粒子残量の問題で断念する。
これは、使用後に大幅な性能低下が引きおこるため、そう何度も使う訳にもいかないのが現状だ。
さて、余談の一つであるが、デュナメスには射撃武装のほかに破壊力が高い武装が腰部と膝部の裏側に格納されていた。
補給に難がある以上、ロックオンは使いたくはなかったが、その武装を使うことを決断する。
「ハロ、GNミサイルの残弾はいくつだ?」
腰部と膝部分に格納されている武装―――――GNミサイル。
ここに飛ばされた際に一度確認していたが、虎の子の兵装だ。
その残弾数を聞き、ハロからは全弾が装填済みであることが即座に確認される。
「よし・・・なら、前方の猪野郎にGNミサイルをお見舞いしてやれ!」
『了解!了解!』
腰部のウェポンラックの一つが開き、瞬間、3発のGNミサイルが発射される。
放たれたGNミサイルは、突撃級の脚部を狙った形で地面へ着弾し、着弾地点に突進してきた3体もの突撃級を吹き飛ばした。
次いで、後ろから来ていた突撃級や要撃級が、爆発で動きを鈍らせた突撃級進路を阻まれ、前進を大きく阻害される。
さらにそこへ、GNスナイパーライフルによる射撃が叩きこまれた。
『―――――――――――――――』
その場所は、まるで玉座のようだった。
その中央に位置する場所に、「ソレ」は在った。
様々な場所から情報を収集し、それを集約して統合していくBETAの"上位存在"。
自分たちの拠点を構築すべく、“上位存在”が放ったBETA達。
その一部が、たった一つの"異物"によって少なからず被害を受けていた。
『―――――――――――――――』
そして、BETAの一団は”上位存在”から命令を受け、追っていた異物から方向転換してその場から離れていった。
『化ケ物、離レテク!離レテク!』
「終わった、のか・・・?」
橋が落ちるのを見ながら、ロックオンは一人そう呟く。
BETAの進軍速度を鈍らせるために、鉄橋は破壊された。
その橋の先、そこに設営された野営基地にロックオンとデュナメスはいた。
そして、整然と並ぶ白い機体の列の中、赤い機体と、擱座した青い機体の近くに機体を着地させる。
男―――――斑鳩に言われた通り、彼はこの場所に同行していた。
外から機体から降りるように呼びかけられ、ロックオンはコクピットを開けると乗降用ワイヤーに足をかけて降りていく。
「動くな!」
地面に降り立つと同時に、彼は数人の兵士に包囲された。
兵士が構えている銃の銃口は、全てロックオンに向けられている。
「おいおい・・・・・手荒い歓迎だな?」
ロックオンは、ヘルメットガラスにスモークをかけたまま、飄々とした雰囲気で周りの人間に言った。
「貴官があの戦術機の衛士か?」
すると、彼の方に近づいてくる人物がいた。青い衛士強化装備に身を包んだ青年だ。
そして、目の前に立った青年が問いかけてくる。
「(センジュツキってのはあの妙な機体の事か?エイシってのは、ここで言うパイロットのことか。)」
彼の問いに1人納得したロックオンは、冷静な口調で返す。
「ああ。俺があの機体の"エイシ"だよ。」
相手の信用を得る為に、ヘルメットガラスのスモークを解除し、ヘルメットを外して素顔を晒す。
「貴官がそうか。改めて、先程の戦闘で救っていただき感謝する。私は斑鳩という。」
感謝の意を述べるとともに、簡単な自己紹介をしてくる斑鳩と名乗った男。
「俺の名前は―――――・・・一応、ロックオンとだけ名乗っておくよ。」
彼は、本名ではなく自分のコードネームを名乗る。
「・・・ふむ、そうか。ではロックオン、私の上にいる者が、其方に会いたいと言っている。私についてきて貰うぞ。」
有無を言わさない様子で斑鳩は強い口調で言い放つと、踵を返し、首で「ついてこい」とジェスチャーをしてから言う。
「こちらだ。」
「・・・オーライ。了解だ、イカルガさんよ。」
おどけた様子で彼はそう答えると、後ろからは銃を突き付けられたまま歩き出す。
「(さて、これからどうなることやら・・・・・)」
彼は黒く染まった空を見上げながら、そんなことを考えていた。
帝都・京都は落ちた。
未だ続く防衛戦の中、狙撃手は一人の人間に出会う。
その出会いは何を意味するのか?
混迷を極める世界の中で、彼は何を求め、何を得る?
次回「邂逅」
その出会いは、劇薬か。